ショート ストーリーズ   作:犬屋小鳥本部

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あらすじ
遊園地のおばけ屋敷の受付のバイトで先輩が俺のスマホに入れたアプリの名前は「あべのせいめい」!




→ココカラハジメマスカ?




ここに嘘発見器がある。はい、どうぞ。よおくご覧になってみてください。






あははっ。怒るなよ。そうだって。これ、ただの箱だ。空っぽの箱に「嘘発見器」っぽいあれこれをつけてみたんだ。
どうよ、それっぽいだろ?

話したいのはさ、別にその機械が本物の嘘発見器かってことじゃない。嘘か本当かの見分けはどこでつけるのかってこと。
まあ、聞いてくれや。



ここから一番近い遊園地、そこそこ古くて小さい、はっきり言ってショボい遊園地。そこにはおばけ屋敷がある。
聞けば開園当初からある施設で、ショボい遊園地の中でも群を抜いてボロい。そのボロさが逆にいい味出してて、まさにおばけ屋敷! って感じの建物。だからお子さまは建物見ただけでビビっちまって逃げ帰る。逆に一部の恐いもん好きにはたまらないスポットらしくて、園の客が増える週末よりも平日の方が混んでる。
やけに詳しいだろ? バイトしたことがあるんだよ、そこで。って言っても受付だけどな。
これはその時の話だ。



まず言っておく。俺はその時金欠だった。多少ヤバめの噂があるバイトにだって応募してやろうと思うくらい、追い込まれてた。アパート住まいで家賃はギリギリ。電気水道ガスは既に止まってる。それくらいヤバかった。
求人にもそのバイトは載ってなかったよ。でも誰からか話は聞いた。
あの遊園地のおばけ屋敷、受付のバイト募集してるぞ。ってさ。
なんでやろうと思ったのかはもう覚えてない。ただ、遊園地は近かったし、連絡くらいしてもいいんじゃないかって思ったんだろ。多分、な。
気づいたら俺は遊園地の電話番号調べて、かけて、バイト募集の話が本当か訊いてた。そこら辺の経緯はほんと覚えてないんだ。

あっという間にバイトには採用された。なんと言っても応募してくる奴が他の施設と比べて極端に少なかったらしい。それと、あの噂があったから。
結構広まってたあの噂だけどさ、はっきり言って嘘っぽい内容なんだよな。
ああ、知らない?
出るんだってさ、あの遊園地。

おばけ屋敷の見た目がアレだから、そこからくる噂だと思ってたんだ。で、面接の時に言われんの。出るかもしれないけど大丈夫かって。
いや、何が大丈夫かって話なんだけどさ。実際に何人もそういう体験してるらしくて。でも俺は問題ないですって答えて終了。
いくにちから来てくださいって言われて、あと、その場で業務とかの説明を受けたかな。そんだけ俺は金欠で、あっちも人手不足だった。

俺のやったバイトは昼過ぎから閉園までのおばけ屋敷受付。何回かやって、特に何も起こらなかったしさ。俺、噂は作り物の嘘だって思ったんだ。それか間違い。



出るわけないって。しかも遊園地だぜ? あんな明るいとこに出たら誰かが気づくだろ。そしたらあっ! という間にバズっちまう。
そういうのは大体やらせって決まってんの。
って思ってたのは最初の方だけだったよ。いや、ほんと。

まずな。俺はそれをバイト先の先輩に言った。
マジありえませんって~。
文字にすると草が這えるくらいのテンションで言ったわけさ。先輩はこう返してきた。
じゃあこのアプリ入れてみそ。
それがこれ、じゃじゃーん。幽霊おばけ怪奇に妖怪なんでもござれ、近づくだけで感知して音がなる。その名もあべのせいめい。いや、元ネタ絶対陰陽師の安倍晴明だよ。
先輩はこれをスマホに入れとけって言うんだ。というか、勝手に入れられてた。
その日から俺のスマホにはあべのせいめいが同居し始めたってわけ。ちなみに俺は無宗教です。

先輩からはいろんなことを教わったよ。いろいろ話した。
その人はバイト先のおばけ屋敷じゃなくって、遊園地のどっかで働いてるらしかった。結構長いっぽいから、俺みたいな新米の世話もしてくれる。
先輩の働いてる姿は見たことない。いや、何回か迷子を案内所に連れて行くのを見たかな。一応制服の上着も着てて、関係者ですって一目でわかるよ。
今度行ったら探してみ? 絶対いるから。
ああ、どこの遊園地かわかんねえか。
園内のどの人に訊いてもその人のことはすぐにわかる。あああいつか。みんなそう言うんだ。
名前は知らないけど知ってる。神出鬼没。その先輩はそういう人だった。

俺がその先輩に会うのは大体帰りだった。閉園まできっかり勤務時間に入ってるんで、門に向かい始める時にはもう真っ暗。
照明も最低限のしか着けてないからヤバい。何がって? 夜のおばけ屋敷、見たことないだろ。あれはマジでヤバい。出る出ない関係なく、ガチでヤバい。
おばけ屋敷のナイトツアーはやめとけ。ほんとやめとけ。やめてください。
で、毎回俺はやべーやべーまじでやべーとか言いながらおばけ屋敷を出て、門までビビりながら歩くわけよ。



夜の公園とか学校って一気に雰囲気変わるよな。昼間はあんなにうるさくて賑やかなのにさ、夜になるとこう、何て言うか、俺たちはお呼びでないって感じがする。
違う何かがそこにいるから、俺たちは入っちゃいけない。入れない。入ったらどうなるか、俺にはわかんねえよ。
夜出歩くのは禁止。それって多分そういうことなんだと思う。
変な人がとか事件がとかそういうんじゃなくてさ、人じゃない何かがいても夜に紛れて見えにくいんだ。猫とか狸みたいな獣でもない。何かわかんないけどさ、何かいる気配がする。あるだろ? そういうこと。
そういうのと関わっちゃいけないんだよ、きっと。きっと、な。



だから夜の遊園地も同じ。
そう教えてくれたのは件の先輩だ。



俺がおばけ屋敷の裏口から出ると、その先輩はいつも近くを彷徨いてる。ちょうどその時間はお客が残ってないかの最終見回りなんだってさ。
ついでだからって言って、先輩は俺と一緒に門まで行く。いつもだよ。そういう流れだった。
そうだよ。先輩は俺を送ってくれてたんだ。
その時間だけ、俺は先輩と話をする。今日何があった、帰ったら何をする、何が好きか、何が嫌いか、この遊園地は好きか、この遊園地の人たちは好きか。
俺はその時間が嫌いじゃなかった。夜の遊園地は怖いけど、先輩といれば大丈夫な気がした。二人だしな。安心したよ。
それにスマホの中にはあべのせいめいもいるし! ははは。
その時だよ。俺が遊園地の出るっていう噂の詳しい内容を知ったのは。




その遊園地には出る。時間は夜、日が沈んで暗くなってから。日が昇るまでの時間は注意すべし。
その遊園地には出る。どういうものが出るのかは見てはいけない。
その遊園地に出るモノは後ろからやって来る。後ろから徐々に近づいてくる。だから振り向いてはいけない。
その遊園地に出るモノは遊園地の中を歩き回る。ただし施設の中には入ってこられない。守護の鈴を四方へ吊るせ。鈴がなければ外と同じである。
その遊園地に出るモノはいるものではない。出るモノは外からやって来た悪いモノである。出るモノは出ていくことができずに居座り続けている。
その遊園地には出る。その遊園地から出ればそれらは追ってこられない。遊園地から出られないのならば守護を得ている施設の中へと逃げ込め。守護なき場所ではそれらはどこまでも追ってくる。
振り向くな。逃げよ。
鈴を鳴らせ。鳴らし続けて朝を待て。



俺が先輩から聞いたのはこういう話だった。



だから先輩は俺にアプリを入れさせた。
ここでそのせいめいさんの説明な。あべのせいめいっていう嘘っぽいアプリは、幽霊的なものが近づくと音を鳴らして知らせるアプリだ。近づけば近づくほど音が大きくなる。マナーモードにしてもバイブになるだけで、センサーはちゃんと反応するらしい。
何に反応してるかは、それこそ謎だろ。とにかく何かを感知して所持者にそれを知らせる。そういうアプリだ。
そんなアプリを俺のスマホにほぼ無理矢理入れた先輩が言う話。最初こそ嘘っぽく聞こえたよ。でもな、施設のいたるとこに鈴がぶら下がってんだなぁ、これが。
その鈴は一つの施設に四つ、ぶら下がってる。入り口とか、出口とか、まあそういうこと。方角的に四方だろうなって。
しかもそれが鳴ってるのは見たことがない。いや、聴いたことが、かな。風で揺れてても鳴らないんだよ、その鈴。

遊園地の一角に二十四時間営業してるコンビニがあってさ、もちろんそこの店内にも鈴はぶら下がってる。俺、見てたことがあるんだ。店内から。
客が来る度に鳴る入店音。開くドア。その上に吊るされた鈴。
ぶらぶら揺れる。ドアが開く度に鈴は揺れる。
でも一度だって鈴は鳴らない。

開閉が激しいコンビニの入り口でこれなんだからさ、他の鈴が鳴るはずねえじゃん。
そこで俺はやっと先輩の話を信じたんだ。

夜、遊園地の中で振り向いてはいけない。
あべのせいめいのアプリが外で鳴ったら、すぐに鈴がぶら下がってる施設に逃げ込め。それか遊園地の外へ出ろ。
絶対に振り向くな。絶対、絶対に振り向くな。

後ろからやって来るナニカを振り向いて見てはいけない。



本当に本当の話なのかって?
だからさあ、見た奴はいないの。いないんだって。
見てないってことじゃない。見たからいなくなるんだ。
ほら、意味解るだろ?
見た奴はいない。

その話の大元が何なのかなんて知らないさ。でも怖くて恐い話にはモトがある。どんな話でも、な。
そんときばっかは知りたくなかった。
だってその園内でバイトしてるんだぜ?
知ったら即辞めるに決まってんだろ。
俺は誰にも訊かなかった。あの先輩にも。




センサー

それでも何かのきっかけで知ることになるのは、これ、あれだろ。フラグとか運命ってやつだ。

俺にとってのそれは回避できそうでできない、自然に一体化してる機会だった。だからこそ避けられないんだな。

バイトで夜勤することになった。

 

体調不良で夜勤だった人が急に休みになったんだ。その日たまたま俺は出勤してて、次の日もその次の日もたまたま休みだった。夜勤の内容は監視カメラのチェックだけでサルでもできる。代わりに延長することになったんだ。徹夜だよ。

マジありえねーって。始めはそんな風に言ったんだけど、夜勤手当てと残業代追加してくれるってことで了承した。それにずっとカメラに付きっきりってわけじゃなくて、本とかネット、ゲームもしていい。ならいいですって言うしかねえだろ。俺は金欠だったんだ。

ただし夜の間は外に出てはいけない。それだけは守れ。

あの噂に関係してるってピンときたよ。遊園地の中ではそれがルールだった。用事がなければ夜に出るな。

上司も同じことを言った。先輩から聞いているかと思うがっていう前置きをしてな。

夜は長い。遊園地の、それもおばけ屋敷の中で一晩過ごすなんてたまったもんじゃねえよ。ネットやらゲームやらで暇潰しができるからいいって言ったんだ。

でもなあ。

さすがに空腹だけは我慢できない。

 

 

 

俺は閉園ぎりぎりの時間に園内のコンビニに向かった。その時はまだ日が半分も落ちていなかった。

だから、戻ってくるまで時間があるだろう。今行けばまだ間に合うだろう。そう思っていた。

完全に読み間違えたんだ。

 

日はどんどん沈んでいった。観覧車の影が大きくなって、闇に消えていった。馬とコーヒーカップにはライトが点灯し、閉園間際の花道を作った。そうなったらあと何分で門は閉じられる。頭の中ではしっかり計算できていた。できていたはずだったんだ。

日没時間なんてそんな気にしてなかったんだ。毎日ちょっとずつ夜の長さが変わっていたことも。

おばけ屋敷とコンビニの丁度中間地点にあるミラーハウスの前で、日は完全に沈みきった。

 

夜がやって来た。

 

俺は焦った。理由はわかんねえ。でも何となくその夜が嫌だった。

一人の夜が怖かった。

先輩と一緒じゃない暗闇を行く帰り道が怖かった。

俺はいつの間にか駆け足になっていた。

たったったっ、っていう俺の足音が足の裏から聞こえた。それを後ろに落としながら

走った。

走った。

走った。

何かに怯えている。自分でそれを自覚した時だよ。後ろから足音が聞こえてきたのは。

自分のじゃないもう一人の足音が後ろからやって来る。近づいてくる。ヤバい。ヤバい。それしか頭になかった。

 

その時だよ。

 

ポケットの中に入れておいたスマホがふるえたんだ。

 

 

 

着信か? 通知か? 違うね。俺はあのアプリだけ特別な着信音を設定していた。先輩が他のと違うってわかるようにしとけって念を押してたからだ。だから着信音とバイブ、両方を目立つように設定した。

着信音は有名な時代劇で流れる殺陣のテーマ。バイブは三三七拍子。

これは目立つだろと思って、俺はそう設定した。

その三三七拍子がズボンのポケットから感じるんだ。

あべのせいめいが何かを感知している。こう言うと笑い事だけど、実際俺の背筋には嫌な汗が伝ってたし、鳥肌もばちくそたちまくり。

 

後ろからなんだよ。

後ろから。

何かがやって来る。

 

ふるえは大きくなっていった。スマホも、俺の体も。ガタガタ震えてた。

 

歩く度に、近づく度に、あべのせいめいは感知したナニカを俺に伝えてくる。

どんどん速く。どんどん大きく。もう、限界だって思った時に、俺は後ろから肩を叩かれた。

 

 

 

 

 

 

「おい、門はそっちじゃねえぞ」

 

 

 

 

 

 

先輩だった。

 

 

 

 

 

 

先輩は俺を探してくれてたんだ。いつもだったら歩いてるはずの時間、道に俺の姿がない。ただそれだけの理由で。

くっそ。マジでビビった! やっぱりアプリなんて信用できねえんだよ。

あべのせいめいが感知したのは先輩だった。このアプリはぼったくりだ!

 

俺は先輩に事情を説明した。

ああ苦労人のスキルをとうとうお前は所得してしまったのだなとかなんとか言われながら、俺と先輩はコンビニへ急いだ。周りはもう真っ暗で、施設のきらびやかな照明もすぐに消える。噂が嘘でも本当でも早く戻るべきだった。

コンビニへは俺だけが入った。入り口で先輩は用事があるからって別れた。ちゃんとアプリつけとけよなんて言ってな。

先輩に反応したあべのせいめいなんて俺はもう信用しませぇ~ん。スマホをささっと操作してバイブもオフにした。そういう裏技を俺はとっくに見つけてたんだ。けどあの先輩を思い出すとアプリ自体を消すことはできなかった。

だから、もし何か感知してももうスマホはふるえない。ランプがチカチカ光るだけ。そうなるように俺はした。

 

 

 

コンビニのドアが開いた時、入店音に混じって鈴がちりんと鳴った。

気のせいだよ。気のせいだ。

 

 

 

上司からもらった臨時小遣いで食料を買った。パン、カップ麺、スナック菓子、飲み物、ついでに期間限定のデザートも。買いすぎか? いや、費用は上司持ちだしもっと買おうか?

俺は満腹になったレジ袋を持ってドアを潜った。

 

 

 

ドアが開いても閉じても、鈴の音は聞こえてこない。

俺の頭はどうやって暇な時間を過ごそうかで一杯だった。もしかしたら鳴ってたのかもしれない。鳴ってなかったのかもしれない。

胡散臭いアプリとただぶら下がってる鈴に何の違いがあるっていうんだ。聞こえてないならそこには何もいない。いないんだよ。いないはずなんだって。

 

 

 

 

俺は走った。スマホはランプをチカチカ点滅させ続けている。

ああもっと、もっと速く。白い袋から何かが飛び出して落ちた気がする。それでも止まっちゃいけない。

 

おばけ屋敷に向かう帰り道はもう真っ暗だった。管理室から漏れる蛍光灯の光が星みたいに小さく瞬いてはいたけど。

俺は必死で走った。

ズボンのポケットに押し込んだスマホがバイブと一緒にランプを激しく点滅させている。嘘っぱちのアプリだ。気にすることない。

そうは思えないほど心臓がばくばく言ってるんだ。

いる。後ろに何かいる。

まだ遠く離れてはいるけど、それは確かに俺の後ろにいる。

噂のアレが、先輩の言っていたアレが、今、俺の後ろを、俺の、後ろに!

空気が異様にビリビリ震えている。こんなの、こんなの、おかしいだろ!

俺は走った。後ろを振り返らないように、まっすぐ前だけを見て走った。

 

りん。

りんりん。

りりんりりん。

りりりりりりりり。

りりりりりりりりりりりりりりりり。

り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛り゛

 

ぶら下がった鈴の近くを通り過ぎる。その少し後から鳴らないはずの鈴が音を出し始める。始めは小さく、だんだん大きく、鈴は震えていく。

俺は走った。止まっちゃいけないと本能が何かを感知している。見えない何かを、見ちゃいけないナニカを。

それはきっとそいつじゃない。そいつらだ。何人も俺を追ってくる。人じゃない。足音は聞こえない。そいつらには足はない。そいつらは絶対生きていない!

俺は走った。俺は逃げた。俺は、俺は。

 

 

 

ナニから逃げているんだ?

 

 

 

鈴は激しく震えている。ポケットのスマホも震えている。

 

 

 

感知しないはずのモノが遊園地の中にいる。関知できない、してはいけないモノだ。だから鈴を吊るす。

鈴はソレを感知して震える。ソレが近づけば鈴は鳴る。あのアプリもそういうもんだったはずだ。

今、鈴は激しく震えて鳴っている。その意味は。

 

 

 

俺は走った。

 

 

 

おばけ屋敷の中に逃げ込んだ俺は扉を閉めて、すぐに鍵をかけた。その場にしゃがみこんで頭を抱えた。

鈴は激しく鳴っている。

すぐそこにナニカがいるんだ。ナニカが。

先輩の話は本当だった。この遊園地には何かがいる。ナニカが出る。

 

 

 

鈴は一晩震え続けた。

 

 

 

遊園地中にある全部の鈴が鳴っていた気がする。頭が痛いくらいに。音にだってならなくなるくらいに、鈴は震え続けた。

 

 

 

鈴たちは、何を、感知していたんだろう。

 

 

 

 

 

 

その夜、俺は監視カメラも観れていない。

朝交代で戻ってきた上司にそれを言ったらさ、まあそうだよなで終わった。

鈴はもう鳴っていなかった。

 




どうだよ、こんな話。
嘘だと思うか? 本当だと思うか?
よく言うだろ。嘘の中に真実を交ぜる。真実の中に嘘を交える。どこで嘘と本当が入れ換わるか。
信じればそれは本当になる。でも真実じゃないかもしれない。
嘘はつき続ければ本当になる可能性がある。もちろん嘘のままってこともな。

だからさあ、嘘と本当は裏と表の表裏一体じゃないんだよ。同時に存在することができるものだ。同時に存在して、どっちにも変化することができるもの。
俺はそう思うぜ。



あべのせいめいも鈴も、その震える要素があったから震えて鳴ったんだよ。それが何かって?
わかんねえよ。見てないんだから。






ただ言っとくけど、遊園地のバイトは本当だぜ。
信じる? 信じない?
じゃあ、今からその場所教えるんで、このアプリ入れて行ってみ。
当然夜にな。
んじゃ、またなー。






その遊園地には何かが出る。そして誰かがいる。
その遊園地に出るモノはいるものではない。出るモノは外からやって来た悪いモノである。出るモノは出ていくことができずに居座り続けている。
振り向くな。逃げよ。
守護の鈴を四方へ吊るせ。鈴を鳴らせ。鳴らし続けて朝を待て。






その遊園地のおばけ屋敷はさ。
創立からそこにあってさ。

いや、ちょっと違うか。

おばけ屋敷の中には祠と鳥居があってさ、それは遊園地ができる前からあるらしいんだ。祠の中には大きな鈴が奉られてる。
ちょっと変わった色の大きな鈴が。






あれ? あの先輩の目って。






はい、しゅうりょーう。












りーん。
りーん。
りーん。りーん。
りんりん。
りんりん。
りりりん。りりりん。

りん。
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