カリカリとペンを走らせる音だけが響く浦の星女学院の生徒会室に私、黒澤ダイヤは居ます。
その隣の席で、疲れた表情を浮かべながらペンを走らせているのが、この学校唯一の男子生徒、テスト生の
そこには会話も無いのですが、何故か心が暖かく心地が良いもの。
「終わったァァァ!」
「春人さん、お疲れ様でした。すみません、いつも手伝ってもらって……」
春人さんには、いつも私の仕事を手伝ってもらっていて、申し訳ない限りですわ……
「いいって!僕がやりたくてやってるだけだから。ダイヤさんもお家の事とかAqoursの事で忙しいだろうし!」
それなのに、春人さんは優しく私に微笑んで、いつも私にそう答えてくれる。
何とも優しいお方。
これは、そんな私と春人さんの恋の物語……
***
雨がしとしと降るある放課後、教室に残る人は少なく、皆さんは各々の部活等に励んでおります。
私は、自分の机に座りはぁとため息を付く。
視線の先には鞠莉さんと果南さんと楽しくお話をしている春人さんの姿。
無意識的に目でつい追ってしまう。
「………と………ヤは……きよ!」
「…………りや………ねぇ~」
「………かな~?」
コソコソと近づいて話している3人。
声が小さいのとある程度距離があるので、あまり聞こえません。一体何のお話をしているのでしょうか?
最近、あの3人でいる事が多いような気が致します。
いつからでしょう。
彼を見る度に幸せな満たされた気持ちになるのは。
彼の笑顔を見る度に私の顔が赤くなってしまうのは。
今も果南さんと鞠莉さんと楽しそうに笑っている顔を見るだけで身体が熱湯のように熱くなる。
まさか、私が恋をするなんて………
私、今顔赤くなってませんよね……?
彼にはバレないとは思いますが、鞠莉さんや果南さんにバレたらどう言われることか……
でも、今彼が浮かべる笑顔は私といる時とまた違った心の底から楽しそうな笑顔。
やっぱり、春人さんは明るくて、元気いっぱいな女性の方が好きなんでしょうか……
硬度10なんて呼ばれるくらい頭が固くて、思った事も素直に言えないそんな私では振り向いて貰えないでしょうか……
考えれば考える程落ち込む一方で、気持ちが滅入ってしまう。
切り替えるために頬杖を付いて、窓の外を見つめる。
昇降口からは、流れる水の様にゾロゾロと昇降口から流れていって、帰宅しようとしている人達の傘が見える。
今の私の気持ちはこのどんよりとした空模様の様に、気分的に落ち込み晴れやかではありません。
彼を見ていると心が締め付けられるように苦しくなる。
それでいて、陽だまりのようにポカポカして、多幸感に満ち溢れる。
苦しいのに幸せな気持ちになるとは、なんと恋とは不思議なものなのでしょう。
「ダイヤさん。」
「ピギッ!」
「どうしたの?」
「いえ、少し驚いただけですわ。」
こほん。と1回咳払いをする。
「それで何か私にご用事が?」
「いや、何か悩んでるようだったから。」
貴方の事ですわ!と口から出そうになりましたが抑えます。
「特に何も無いですわ。今日のAqoursの練習メニューを考えてただけです。」
適当に誤魔化しておく。
「そっか。そう言えば今日は生徒会の仕事ある?」
「いえ、特にありませんが……」
「Aqoursは今日練習無いしな……この雨だし。」
窓を再度見れば先程より強く窓に雨が打ち付けている。
傘持ってきてたでしょうか……
「なら今日はもう帰ろっかな。」
「あ……」
「どうしかしました?」
「いえ、何でも。」
「なら、ダイヤさんさようなら。また明日!」
「えぇ、また明日。」
もっと貴方と話していたい。
そんな事も言えるはずがなく、彼は果南さんと鞠莉さんにも別れの挨拶をして帰ってしまいました。
それでは私も帰ろうかと席を立とうとした時に、ニヤニヤとした顔で2人がこちらに向かってきました。
「いや~ダイヤったら、案外奥手なのね~!」
「まぁ、ダイヤだからねぇ~」
バ、バレてたんですの……?
「まぁ、ダイヤは分かりやすいのデース!」
「春人と話してるダイヤ、とても笑顔だし。」
うっ……まさかお2人にバレてしまっているとは……
「べっ、別に私は春人さんの事を何とも……」
「なら、マリーが貰うわね!優しいし、気が利くし、彼と私ならいい夫婦になれると思うわ!」
「鞠莉、私忘れてない?結構スキューバダイビングの知識あるから、結構手伝ってもらっていてるし私が船運転して、彼が受付とかしてもらって、夫婦二人三脚で経営していくのもいいと思うんだよね~」
「だ、ダメですわ!」
揶揄う為にわざと言ったのでしょう。
普段なら、見抜けるはずなのですが恋をしている事がバレた時の恥ずかしさで見事に罠にハマってしまいました………
そう証拠にお2人がニヤニヤとした笑みをこちらに向けていますわ……
「何でかしらね~?果南?」
「なんでだろうね~鞠莉」
「うぅ……」
「告白はしないの?」
「こ、告白!?」
「そう、告白。早くしないと誰かにGET!されるかもよ?」
彼が誰かと仲睦まじく歩く姿、あまり想像したくありませんが、そしたらその御相手に嫉妬してしまいそうです……
「今すぐにでも告白すればいいのに……」
「べ、別に今すぐじゃなくても……」
「思い立ったがGood day!」
それじゃあ!と言い残してお二人は帰ってしまいました。
その日は、果南さん達が色々言っていたせいで私も、もし夫婦になったらという妄想をしてしまっていて、恥ずかしくて顔を枕に埋めてました。
***
また私はいつものように春人さんと、生徒会室で2人で仕事をこなします。
恋をしていると自覚してからの2人っきりは心臓がドクドクと早く鼓動し、中々集中が出来ません。
「ダイヤさん、ここ間違えてますよ」
「ほ、本当ですわ。直ぐに直します……」
「ん?何か今日ダイヤさん顔赤くありません?」
「き、気のせいですわ!」
「今日というか何か最近生徒会室で仕事してる時に顔を赤くしてるような………?換気でもします?」
私の気持ちには気づかないのに、こういう所は見ているんですね……
そして、ガラガラと窓を開けると、外の冷たい空気が部屋に入ってきます。
これで赤くなった顔も冷えるといいのですけど……
「お茶でも入れますわ。」
「あ、そこら辺コード沢山あるので気をつけて下さい。」
「えぇ。……キャア!」
注意してもらって直ぐにコードに引っかかってしまいました。
そのまま前に倒れて、目を瞑り、来るであろう痛みに備えます
………?来ませんわ。その代わりに何かに包まれているような……
ゆっくりと目を開けると春人さんが下に滑り込んでました。
「ダイヤさん大丈夫ですか………あ、」
「えぇ、春人さんのお陰で大丈夫ですが 」
何故か彼は頬を赤らめている。
そこで自分の体勢を見ると……
私が彼を押し倒しているような体勢ではありませんか!
「本当にわざとじゃないんです!だから……あの………えっと……あぁ……」
これは告白をするチャンスなのでは……?
彼は今、私の手で逃げられなく力が抜けたように地面に伏しております。
雰囲気はありませんが、これを逃したらもう来ないような気がします。
「春人さん、私は貴方の事を好いています。
いつも優しく私を支えてくれるそんな貴方が。私とお付き合いを致しませんか……?」
急な告白で直球ですが、鈍感な春人さんにはこれくらいが良いかもしれません。
「春人さん……急にとは言いません。お返事をお待ちしております」
「あら?春人さん、春人さん?」
少しも反応をしてくれない春人さんを怪訝に思い、呼びかけても反応がありません。
「もしかして、急な事で頭がパンクして気絶でもしたのでしょうか……」
案外ウブなんですね……異性と近くで接した事は少ないんでしょう。
その気絶している春人さんの顔にそっと顔を近づけ、頬に口付けをした。
「私にこのような事をさせたんです。責任を取ってもらわねばなりませんね。」
硬い宝石は貴方のせいで粉々に砕かれた。
私は、軽く手で春人さんの顔を撫でました。
その出来事を鞠莉さんと果南さんに見られてからかわれるのはまだ別のお話