ラブライブ!恋愛譚   作:ぽぽろ

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幸か不幸か ~津島善子~

また、私は側溝に落ちた。更に通り雨で全身ずぶ濡れ。

ポタポタと雨水と泥水が混じった水を垂らしながら私は帰路を辿っていく。

この不幸な体質には昔から振り回されていた。

楽しみにしてた遠足や運動会などもことごとく雨が降り中止。

 

神に疎まれた悲しき堕天使。

 

今まで自分にそう言い聞かせて、どんなに辛い事があってもそれで涙をこらえてきた。

そんな私にも幸せを感じる時があった。

それは………

 

「おーい、善子!」

 

遠くからこちらに走ってくる人影がひとつ。

手を振りながら大きな声で私の仮の名前を呼びながら向かってくる。

それに対して私も大声で叫んだ。

 

「ヨハネよ!」

「また、落ちたのか。何度目だよ………」

 

そう言って呆れた様な顔で彼は、バックからタオルを取り出し、拭いてくれる。

 

そう、私の幸せな瞬間は、この彼と話す時間。

 

「なんでこっちに来たの?あんた帰ったはずでしょ?」

「なんか誰かが側溝に落ちてるような気がしたから………かな。」

 

微笑みながら優しくそう答えた彼。

その微笑みに私の心が大きく高鳴った。

私、津島善子は彼、桜季春人に恋をしている。

今もドキドキと心臓が喧しいくらいに鼓動して、相手に聞こえてしまうんじゃないかと言うくらい。それを取り繕うのは至難の業だ。

それも相手に悟られないように出来るのもこの堕天使ヨハネの力と言うわけね。

 

「まぁ、私のリトルデーモンなんだから当然ね!」

「調子乗んな。」

「イタァ!」

 

デコピンでおでこを弾かれた。

思ったより強く弾かれたようで私は額を手で抑える。

 

「はい、終わり。ほら、帰るぞ。」

 

拭き終わったのかタオルを私の頭に掛け、こちらに手を差し伸べる。

 

「ありがと………」

 

私は小さく呟いた。

この自分の気持ちを素直に言えないのにも困ったものだ。もっとこの仮初の身体が良ければ良かったのに。

もっと、貴方を魅了し、堕天させられる様な………

例えばリリー見たいな都会の女の子!って感じで美しかったり、マリーみたいにスタイルが良かったり………

「家でシャワーでも使うか?気持ち悪いだろ。濡れたままだし。洗って乾燥機掛ければ直ぐに乾くだろ。俺の家の方が近いし。ここからだと。」

「はぁぁぁあ!?」

 

この男は何を言っているのだろうか。

女の子を家に誘うという意味を知っているのだろうか。

べ、別に私としても嫌じゃないし、そういう事を考えた時もゴニョゴニョ……………

って私は何を考えてるのよ!

 

「なんで、シャワー使うだけでそんなに驚くんだよ………」

「そ、そうね、シャワー、シャワーだけなんだから…………」

「?」

 

この朴念仁には私が今どれだけドキドキしているか知らないのだろう。

きっと私の気持ちすらも少しも知らない。

なかなか素直になれない私にも非はあるけど………

リトルデーモンなら、主の気持ちくらい察して欲しい。

どれだけ貴方に恋焦がれているかを。

どれだけ貴方を想い毎日を過ごしているかを

 

「ほら、善子行こうぜ」

 

手を差し伸べて来る彼。

何気なくやっている動作の一つ一つで私がどれだけドキドキしているのかわからないのだろう。

腹いせに腕を掴んで抱きつくように手を取った。

 

「お、おい善子………」

「なに?何かおかしい?」

 

必死に顔を真っ赤になるのを抑えながら、あたかもそれが普通かのように振る舞う。

まぁ、心臓の音聞かれたら1発アウトなんだけど……

 

顔を赤くし照れているので作戦は成功なのだろう。これで私を"友達"から"一人の異性"として感じてくれれば上出来だ。

 

すると、彼はいきなりポンと頭に手を乗せてきた。

私は焦った。

 

「にゃ、にゃにするのよ!」

「うわ、ドブの匂いする」

 

私は強く腕を締め上げた。

 

***

 

「シャワー、ありがと。助かったわ。」

「おう。」

 

シャワーを浴び、彼の居る部屋へ向かうとゲームの準備をしていた。

 

「ゲーム、するだろ?やろうぜ一緒に」

 

コントローラーをこちらに向けながらまた優しく微笑む。

その笑顔がとても眩しく、にやけてしまいそうになる。

それを隠す為に素早く受け取り、髪をいじるフリをしてから

 

「もちろんよ!」

 

こう答えた。

格闘ゲームをやりながら、私はふと疑問に思った事を投げかける。

 

「なんで、あんたはそこまで私を助けてくれるの?」

 

今回みたいに側溝に落ちたり、雨でずぶ濡れになっていたら優しくタオルを差し出してくれたり、その起きる前に止めてくれたり何かと私に色々してくれる理由。

それが私にはわからなかった。

一緒に不幸な目に合う時もあったが、彼は笑って済ましていた。

恋する乙女の考えをするならば、彼は私のことを好きと考えるのが自然ではないか。

彼も厄介な女に好かれたものだ。

 

「ん~」

 

と考える仕草をしてからこう呟くように言った。

 

「善子が好きだからかな。」

「は、はぁ!?!!」

 

特に恥ずかしがる様子もなく呟かれた言葉に私は気が気じゃない。

また心臓がドクドクと早く脈打つのを感じる。

 

「相変わらずのいい反応するなぁ。善子は。

……冗談だよ。」

「言っていいことと悪い事があるわよ!」

 

揶揄った恨みを込めて、思っきり背中を叩いた。

とても痛がっているが、恋する乙女で遊んだ罰は重いのだ。

 

もう半分自暴自棄のようになっていた私はこんなことを無意識的に言っていた。

 

「私もあなたのことが好き」

 

彼はゲーム画面が映し出されているテレビから目を離そうともせずにこう答えた。

 

「はいはい、冗談だろ。騙されないよ。」

「本当よ。」

 

画面から目を離し、大きく目を見開いて私を見た。

その隙を逃さず、彼の頬に手を添え唇を重ねた。

 

「これで嘘じゃないって分かるでしょ?」

 

畳み掛けるように私は思っきり彼を抱きしめた。

 

「ずっと、ずっと好きだったのにあなたは気づかないんだもの。主から言ってあげたのよ。感謝しなさい?私のリトルデーモン」

 

彼はぎゅっと私の事を抱き締め返してくれた。

とても暖かくて安心するそんなハグを。

 

ゲームの画面ではGAME OVERと書かれていた。

彼の運命は既に私によって決められたのだ。

この厨二病を拗らせた厄介な女の手によって握りつぶされたのだ。

 

***

 

「今日はどこに行くの?」

「ん~、特には決めてないけど。」

「ま、歩きながら決めましょ」

 

私は彼の腕に自分の腕を巻き付ける。

こうやって、自分の不幸がきっかけで付き合えているのだから、自分の不幸な体質もあまり悪くないかもしれない。

 

「おい、善子前………」

「にゃぁぁぁぁあぁ!!!」

「善子が水溜まりでずぶ濡れに……」

 

……やっぱりこの体質は滅ぼさなければならない。

 

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