7割くらい出来ているのでご安心を
カチッカチッと時計が時を刻む音とカリカリと紙に文字を書く音だけが鳴り響く音ノ木坂学院の生徒会室。
僕はふと、時計を見ると書類仕事を初めてから2時間ほど経っていた。
凝り固まった身体をほぐすべく、うぅん、と少し唸りながら身体を伸ばした。
それを聞いてかその生徒会室にいたもう1人は書く手を止めた。
「春人……大丈夫かしら?疲れた?」
僕は今心配そうに自分の左手をさり気なく僕の右手に重ね甘えている恋人、絢瀬絵里その生徒会長としての仕事を副会長として手伝っていた。
「うん、大丈夫だよ。」
共学へのテスト生として入学した僕だったが彼女達のスクールアイドルグループ、μ'sのお陰でそれは無くなったもののまだテスト生や学校に慣れる為と無理やり理事長にさせられた副会長としての仕事はまだ続いていた。
それでも恋人との時間を増やせるのは案外悪くはなかったりする。
「そう、なら良かったわ。」
絵里はそのまま書類に目を落とした………かと思いきやいつの間に近づいていたのか頭を僕の肩に乗せてくる。
近づくと同時に彼女の綺麗な金色の髪が窓から射している夕日に照らされ優雅にそれでいて、この世の物とは思えない程綺麗に反射し、それが一層彼女を魅力的に僕の目に映る。
本当に僕と同じ髪の毛の素材から出来ているのかと、人形ではないかと疑う程に。
殆ど密着しそうな程近づき見つめあった所…
「こら!春人くんここ学校やろ?」
丁度運動部の活動調査に行っていたもう1人の副会長、東條希が制止した。
もう終わったみたいだ。
「いや、僕何も悪くないんだけど……」
勝手に絵里が近づいてきただけなんだよね。
嫌じゃなかったかと聞かれるとむしろ嬉しかったりしたけれどと心の中で呟く。
「だからウチは、エリチと春人君は隣同士じゃない方がええって言ったやろ?やっぱり二人きりにするんじゃなかったな……」
「確かに僕も賛成した。」
席を決める時に僕と絵里は、隣同士にすると仕事にならなくなるという事で向かい合う形か希を挟んだ形を提案した。
まぁ、仕事にならなくなる、甘えてきて仕事が出来なくなると言った方が正しいのか、殆ど原因は絵里なのだが。
でも絵里はしっかりと仕事は出来ている。
出来なくなるのは僕の方。
「うぅ…明日は我慢するわよ」
「エリチそれ昨日も言ってたで」
人の前でのスピーチやいつものキリッとした凛とした表情が崩れて、恋人に甘える様なそんな顔になってしまっている。
沢山甘えてくれるのは嬉しいけどね。
「ほら、ここ間違っとるで。エリチとイチャイチャしてるからやろ」
睨む様に強い口調で書類の不備を指摘される。
確かに些細なミスをしていた。
「別にイチャイチャは………」
副会長の威圧に押されつつも書類を受け取り不備を直す。
「エリチももう少し我慢しいや?春人くんが仕事に集中出来ひんやろ?エリチはちゃんと出来てるのがエリチらしいけど」
「えぇ……分かったわ」
しゅんと、眉を下げて申し訳なさそうにする恋人をそのままにしておけなかった。
机の上に上げていた手を下へと放り、隣の彼女の左手を求め、さ迷わせ、バレないように優しく握る。
それに気づいた様子の彼女は、ぱぁと目に見えて顔を輝かせる。
いつもは大人っぽい彼女のこういう子供っぽい所を見るのは新鮮で面白いし、やはり姉妹なのか彼女の妹と似ている部分もあった。
しかし、それに気づいているのは一人だけではなく……
「春人くん、お茶入れてくれへん?」
「なんで……?」
「いや、さっきまでウチ外で調査してたから寒いから。」
「でも、ポットは一番希が近いけど」
「ひどーい、そういうのは男の子が率先してやってくれる物やろ?女の子に優しくない男の子はモテへんで」
「いや、絵里以外にモテなくていいから」
「もしかしたらエリチに女の子に優しくないからって愛想尽かされて別れる可能性もあるやろ?」
「それは怖い。」
「他の女の子に優しくする方が心配よ……」
ボソリと呟いた絵里の言葉は立つと同時に鳴った椅子の音でかき消された。
このまま人肌を離すのは惜しいけれど、握っていた手を離し席を立って急須に茶葉を入れてお湯を注ぐ。
嫌がらせに、センブリ茶でも入れようかと思ったが仕返しが怖いのでそっと棚に戻した。
誰かへの嫌がらせで買ったこのお茶は使い切ることが出来るのだろうか。というか日の目を見れるのだろうか
こぽこぽと湯のみに注がれる。
そして、ふわりとお茶特有の優しい匂いが漂う。
三個湯呑みを持って二人の前に置き、最後に僕の分を自分の席に置く。
「あれ、茶柱立ってる。」
置いてから気づいたが僕の湯呑みに一本茶柱が立っていた。
「ウチのスピリチュアルパワーのおかげやな。」
「希はそのパワーがたった茶柱如きでいいのかしら………」
その後は三人でお菓子を棚から出してきて、すっかり周りが暗くなるまで会話に興じた。
***
「じゃあ、帰るか。」
ガチャリと生徒会室の鍵を閉めたと同時に2人にそう言う。
「すっかり外暗くなってるな~」
「ちょっと怖いかも。」
三人でそのまま帰路を辿っていく。
会話は、今日あった面白かったこと、楽しかったこと、楽しみなことμ'sの次のライブの予定、練習の進行具合等色々な話だ。
面白かったアニメの話を僕がしていたら、絵里に「ちゃんと勉強もするのよ?」とちくりと小言を言われてしまったけれど。
その後分かれ道で希とは別れて絵里と2人でどちらが最初か分からないけれど手をつなぎながら帰る。
暫くすると絵里がモジモジと顔を赤らめ始めたので僕は怪訝に思って顔を覗き込む。
すると何かを決心したかのように顔を合わせる。
「今日、うちでご飯食べていかない?」
「ん?」
いきなりモジモジし始めたから何事かと思ったらご飯か。
「絵里の家で?」
「私の家で。ほ、ほらロシア料理食べてみたいって言ってたじゃない?だから今日はどうかしら…?」
確かに前に好きな食べ物の話になった時に絵里はロシアにいるおばあ様が作った料理が好きとか言ったのを聞いて僕も食べてみたいと言ったような………言ってないような……
「うん、迷惑じゃないならご馳走になろうかな。」
少し気になっていたロシア料理、ましてや絵里の手料理(多分)なら食べてみたい。
そう答えると彼女は顔を明るくし、なら早く行きましょ!と急かす。
いつもは大人っぽいのに、ふとした時に小さい子供みたいに無邪気になるんだから……
でもそこが彼女の魅力なのかもしれない。
***
がチャリと玄関の扉を開け、ただいま。と言うと遠くからドタドタとした足音と共におかえり~!と言う大きな返事が聞こえてくる。
「お姉ちゃんおかえり~って春人くんだ!早く上がって上がって!」
「うん、亜里沙ちゃんお邪魔します。」
正体は彼女の溺愛する妹、亜里沙ちゃんだった。
無邪気な笑顔を見ていると確かに溺愛するのも分かる。
もう一度お邪魔します。と言ってから家に上がる。
亜里沙ちゃんがこっちこっちとソファに手招きする。
そこに座ると隣にぽすんと亜里沙ちゃんが座った。
「今から作るから少し待っててくれる?」
台所から絵里の声が聞こえる。
「うん、楽しみにしてるね。」
「亜里沙もー!」
出来上がるまで亜里沙ちゃんとテレビを見ながら待つことにする。
ずっと腰の辺りに手を回して巻き付くように抱きつかれていたのが気になるが人懐っこい彼女のことなのでみんなにしてるんだろうなと納得する。
暫くするとブイヨンやお肉等の香ばしく、食欲をそそるいい香りが台所から漂ってくる。
それだけでお腹が空いてきそうだ。
「はい、出来たわよ……って亜里沙そろそろ春人から離れなさい?」
「お姉ちゃん嫉妬?」
「ち、違うわよ!」
顔を真っ赤にして否定しても意味ないぞ絵里よ。
椅子に座り、いただきます。と言ってから様々な料理に目を奪われる。
真紅色のスープとザワークラウトの白のコントラストが目や心を奪われてしまうほど綺麗なボルシチ。
綺麗なきつね色に焼かれたピロシキ等様々なロシア料理が並んでいる。
名前が分かるのはそれくらいだった。
ボルシチを一口飲んで心配そうにこちらを見ていた絵里に「美味しいよ」と伝えると「良かった。」と笑顔で答えてくれた。
***
お腹いっぱいロシア料理を堪能した後、ソファーで人工灯に照らされ月のような金色の髪を放つ絵里の髪を手で梳きながら食後に用意されたロシアンティーを飲みながらまったりした時間を過ごしている。
「それでどうだったかしら?ロシア料理は。」
「うん、どれも美味しかった。美味しすぎたから食べすぎちゃって困ってるくらい。」
「ふふっ、それなら良かったわ。」
背中を向けられていて顔は見えないけれどきっと声色的に笑顔なのだろう。
「こんなのが毎日食べれる亜里沙ちゃんは幸せだな。俺も毎日食べたい。」
ぽつりとそう呟くと嬉しそうに
「今のってプロポーズって事でいいのかしら?」
妖艶でそれでいて純粋な少女の様な可憐な笑みを浮かべて揶揄う様にそう尋ねてくる。
「いや!今のは嘘………でも無いけどそんな意図はなくて!願望はあるけれど……決して!そういう意味で言ったんじゃなくて!別に絵里が嫌いって訳じゃない寧ろ結婚したいくらいだけど!!」
突然の事に戸惑った僕は、いきなりだったので上手く言葉が纏まらなくて自分でも何を言っているか分からない
「ふふっ、揶揄っただけよ。」
ツンとその白く細い指で鼻を突いてくる。
何だか顔が暑いのは、熱い紅茶のせいだと信じたい。
その後そのやり取りを見られていた亜里沙ちゃんに
「夫婦?二人結婚するの?」
と言われて二人して顔を更に赤くさせたのは別の話……
章作るの面倒臭いので、名前を入れておきました。
タイトルを変えたのは、虹ちゃんや他のμ'sを書けるようにです。