視点はないよ。
吸血鬼異変 ~導入~
「…………………それで、この紅魔館に助力を願いに来たというわけか?」
「はっ、左様で御座います。今こそ、我ら吸血鬼の威光を再興すべきかと」
玉座に座り、その場を凍てつかんばかりに威厳のある声で言い放つレミリア。
それに対し、跪いて協力を願い出る翼の生えた男。彼の言葉からレミリアと同じ吸血鬼であるということが見て取れる。
彼の後方には、護衛と思われる同族の吸血鬼2名が同じように跪いている。
成人の見た目をしていることから、レミリアより断然年上である吸血鬼がなぜ頭を下げてまでレミリアに何かに対して助力を願いに来たのか。
それは、今は忘れ去られ、数を減らしていった吸血鬼の再興である。
吸血鬼は、人間達からその存在を忘れ去られて久しい。
人間達が吸血鬼という存在を恐れ、吸血鬼に支配されていたのもほんの少しであった。
吸血鬼の始祖ヴラド・ツェペシュ、その後を継ぐように力を持った串刺し公の血を引き継ぐとされるスカーレット家
当時はそういった吸血鬼達が台頭し、人間達に恐れられるようになった。
しかし、そんな吸血鬼の支配は長くは続かない。
ヴラドがある帝国との戦いで戦死、スカーレット家もレミリアの父が死亡してから人間達への影響力が弱まり、人間達に吸血鬼を撲滅せんという動きがみられるようになった。
吸血鬼に対する武器、対策が次第に開発され、人間達のゲリラ、奇襲により、吸血鬼達はその数を次第に減らしていくことになった。
そのため、吸血鬼達は恥を忍んで人間達から隠れて生活する様になり、ある者は人目の離れた辺境へ、ある者は、吸血鬼という存在を隠して人間界へ。
それは、人間という存在を見下し、家畜同然の様に扱っていた吸血鬼達にとって屈辱の極みである。
しかし、それらを耐え忍んで生活をしてきた。
だが、現在、今や吸血鬼という存在は人間達から忘れ去られ、物語上の存在として認識される。
私達の存在を嘘に塗り固められ、奴らは十字架に弱いだのニンニクに弱いだの。
強大な存在ではあるが弱点だらけで恐ろしくはないだの、ただの死体だの、根拠のない嘘の情報で吸血鬼という存在そのものが穢されていく。
ついに我慢ならなくなった吸血鬼達は考えるようになった。
『人間達に再び我らの威光を見せるべきではないか』
だが、戦力が足りない。
せいぜい生き残りの吸血鬼達を集めても、千にも満たすかどうか。
それに、我らの絶対的な指導者がいない。
人間達は人間同士対立しあってはいるものの、一国の数でさえ我らの何倍にも人口はいる。
自分たちの力は絶対的なものだと確信はしているが、流石に数が足りなさすぎる。
そこで、吸血鬼達は自分たちの絶対的な指導者と、自分たちの戦力を増強するために長年再考を繰り返し、ようやくその二つを解消する方法を見つけることとなる。
一つ目、絶対的な指導者『紅魔城のレミリア・スカーレット』
吸血鬼の中でも、スカーレット家は強力であり、レミリアは当代きっての実力者であると噂になっていた。
レミリアの父が急死してから人間達への影響力はなくなってしまったものの、レミリアの実力は歴代でも最高ではないかという見解が吸血鬼達にはあった。
弱冠500にも満たない吸血鬼ではあるが、幼い内から紅魔城をまとめ上げる統率力、人間達の魔の手を容易く打ち破る実力からレミリアに白羽の矢が立った。
そして、戦力の増強策として、とある場所の占領が挙げられた。
『幻想郷』である。
幻想郷。忘れ去られし者たちが集うこの場所。
かつて人間達から畏れられた妖怪なる存在が存在を忘れられ、幻想郷に移り住む。
妖怪は、人間を超える身体能力と運動能力を有し、人間を襲う存在である。
ここで吸血鬼達は考えた。
我ら吸血鬼がこの妖怪たちを支配すれば、我ら吸血鬼の再興に役立てるのではないか。
妖怪たちは頭が弱い。
その妖怪を凌駕する吸血鬼の力と頭脳をもってして妖怪達を支配するのは容易い。
そう考えた吸血鬼達は早速幻想郷への支配の準備を整えようとする。
そこで、吸血鬼達はあることに気が付いた。
『そうだ、幻想郷を支配するための拠点が必要だ』
それを解消するため、『レミリア・スカーレット』と『紅魔城』を必要としている。
これが、彼らが紅魔館に訪れた理由である。
正直、レミリアとしては吸血鬼の再興などあまり興味が無く、難色を示した。
吸血鬼の再興と綺麗な言葉で隠しているものの、要は人間達が調子乗っててムカつくから痛い目見せてやりたい。
そのため、幻想郷にいる妖怪達に八つ当たりして従わせよう。
ということである。
千に満たない吸血鬼で、幻想郷を支配できるほど楽なものではないだろう。
そうレミリアは考えているが、他の吸血鬼達は自分たちの威光を傘に自分たちがこの世界で至高の存在であるということを絶対視している。
無為に拗らせることはすべきでないと判断したレミリアはこの助力を了承した。
無謀とはいうものの、レミリアにとってこの生活が暇そのものであるということは否定できない。
日々退屈にさらされていたレミリアは、この幻想郷への侵攻を面白そうに見ていた。
適当に戦って、暇潰しできたら和平を結んで幻想郷に居座ってみようか。
それに、この提案を拒否すれば、他の吸血鬼達と面倒になる。
ならば、そいつらを殺せばいい。それも、利用という形で。
幻想郷での侵攻で紅魔館以外の吸血鬼達を一掃し、自身も力を見せて幻想郷に紅魔館のレミリア・スカーレットなる畏怖の存在を認識させ、幻想郷に居座ろう。
そう考えたレミリアはこの提案を快諾することになった。
それも、条件付きで。
以下がその条件である。(口語訳)
『幻想郷侵攻の為に自分も協力するし、拠点として紅魔館を使わせてあげるよ。でも、ここの従業員たちは戦闘経験が少ないから、後方支援役として別館の方に置いていくよ。』
というものである。
紅魔館内の従業員は戦闘経験はかつての人間達の襲撃によって積んではいるが、レミリアは嘘をついて認めさせることにした。
なんだかんだ優秀な部下であるから、失うのは忍びない。
この無謀な作戦ともいえる侵攻作戦で失うのはもったいない。
とレミリアは考えたのだ。
この条件を付けて彼らの提案を受諾し、レミリアは、生き残りの吸血鬼達と共に幻想郷への侵攻の準備を進めていった。
これが、幻想郷に大きな影響を及ぼした。『吸血鬼異変』である。
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…………………というわけで、レミリアは、紅魔館内の全員に以上のことを伝える。
紅魔館で働いている同族の従業員たちに別館に移り住んで自身の帰りを待つように告げる。
しかし、難色を示す者達もいた。これが以下の会話である。
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「お兄様が行くんだったら、私も行く。いいよね?お兄様?」
「でも、危険だぞ?命の危険があるかもしれn」
「お兄様と一緒だから死なないよ!お兄様が死ねば、私も死ねばいいだけだもん!」
「そ、そう…………」
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「専属メイドとして、御傍に控えさせていただきますよ!それに、幻想郷で実力のある妖怪と戦えそうですからね!」
「お前が言うんだったらそれでいいが………」
「………ッ!?こ、これが俗に言う夫婦の共同作業…………?が、頑張りますからね!お坊ちゃま!」
「…………………?」
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「レミィ、私も行くわ」
「え…………?」
「私の魔法無しにどうやって幻想郷に行くのかしら?」
「い、いや、別にお前の助力は必要ないt」
「いいわね?」
「あ、ああ」
「………素直にお坊ちゃまが心配だからって言えばいいじゃないですかご主人様(ボソッ)」
「…………………こあ、黙りなさい」
こうして、レミリア達は着々と幻想郷への準備を整えていくのだった。
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森という自然の中にとある建物が一つ。
恐らくそれは、知るものは神社と呼ばれるものだろう。
周囲には桜の木が一面に咲き、春の訪れをウグイスが告げる。
その神社の中、一人の女性が臥せている。
成人した女性を感じさせ、アンダーウェアの上に紅白の色合いをした服装に身を包んでいる。言わば、巫女服というものだ。
ストレートの艶のある美しい髪、整った顔は、大人びた女性を感じさせる。
病に侵され、苦しそうである。
「…………体調はどうかしら?」
「ああ、少し、良くなってきたみたいだ」
そこへ、何もないところから空間の裂け目が生じ、紫にフリルのついたドレスを身に着けた女性が顔を出した。神社の中であるというのに大きな日傘をさし、その女性に体調を問いかける。
病に臥せっている女性は彼女に驚くこともなく返事をしてみせた。
「…………そう、なら、安心だわ。まだまだあなたには、やってもらうことがまだ沢山あるもの」
そう、日傘をさした女性は片方の手で扇子を開き、口元を隠してそう言う。
「ははっ、これは手厳しいな。」
紅白の女性はそう笑いながらそう返す。
無理に笑った結果だろうか、すぐにゴホゴホと咳をする。
「…………、後、何年持つの?その体は」
「…………数年程、ぐらいだろうな」
「…………………」
「無理に身体を酷使しすぎた代償が、とうとうやってきたのだ、別にどうってことはないさ」
押し黙る日傘の女性にそう紅白の女性は何ともないように言って見せる。
「…………あなたは」
「うん?」
「あなたは、私を恨まないの?貴女の身体を壊してしまう程、過酷な運命を背負わせ、死地へと向かわせる私を………」
「…………………」
「私がいなければ、貴女は幸せな生活を享受できたでしょう。少女らしく笑っていられたのでしょう。多くの死体を見なかったでしょう。そして、大事な人達との別れも経験しなかった。そんな人生を台無しにした、この私を、憎いと、思っていないの?」
「…………いや」
そう、紅白の女性は返す。
「確かに、多くの悲劇を経験して、多くの苦痛も味わってきた。立ち直れないほどの苦しみも。でも、私がここにいることは間違いだとは思っていない」
「多くの命が救われ、沢山の人達から感謝され、助けとなることができた。私がやって来たことが、多くの人の命を救った。それは、私にとってこれ以上ない喜びで、その喜びを与えてくれたのは、お前だ」
「……………ッ!」
「お前と会わなかったら、確かに平凡な少女として暮らしていったのだろう。だけど、多くの人を救うことが出来ず、逆に多くの人の命が奪われ、一生後悔するほどの傷として、私の中に巣食うことになるだろう」
「私は、この選択に後悔はない、ましてお前を恨むことなど最もない。逆に感謝しているんだ。私にこんな大事を託してくれてありがとうと」
「…………………」
「それに、今の私は不幸なんかじゃない。満ち足りているよ」
そう、紅白の女性は心の底からの本心を打ち明ける。
日傘の女性は、扇子を口元を隠すように広げ。顔を横に向けているため、表情を伺うことは出来ない。
そんな彼女を見てふっと笑った紅白の女性は続ける
「あの娘を、『霊夢』を頼む。あまり、良く面倒を見ることが出来なくて、ほぼお前に預けてしまっているようなものだが、それでも、あの娘は私の希望。きっとあの娘は私を覚えていないだろうが、あの娘は私の幸せ」
そう紅白の女性は思い返すように話す。
神社の前で捨てられていた赤子。
生まれたばかりの赤子を捨てるなどと憤慨し、赤子の面倒を見ることになった。
しかし、彼女は多忙であった。一年程度しか面倒を見れず、日傘の女性へ預ける形になったが、それでも赤子との思い出は至福の時であった。
「あの娘は、強いぞ。それも、私以上に、だから、私の様に成ってほしくはない。自分の身体を犠牲にして戦い続ける私の様には、な」
だから、と紅白の女性は加えて言う。
「頼まれてくれないか?紫」
「…………ええ、任されたわ」
「そうか、なら、安心だ」
安心したように紅白の女性は微笑む。
「少し、眠る、せっかく来てくれたのに、すまないな、紫」
「いいえ、ゆっくり、眠りなさい。・・。」
こうして、眠りに入る紅白の女性、それを慈愛の表情で見守る日傘の女性。
その姿を、美しい自然と日照りが彩り、一枚の情景になっているようだった。
後半の2人の女性って誰なんでしょうねぇ?(すっとぼけ)
紅魔館内全員の従業員を別館に移させて幻想郷に行かせないのは流石にご都合入ります。
じゃないとメイド長とか成れないから(誰がとは言わない)
紅魔館以外の別館あるのもご都合。