「シィッ!!!」
「ふっ、遅い遅い」
藍の鋭い爪を用いた接近戦、レミリアはするすると身を切り裂こうとする藍の爪をことごとくかわしていく。
「………グッ!!!」
お返しとばかりに手に持っているグングニルを横薙ぎに振るう。
藍もその一撃を受け止めるものの、吸血鬼の力に押され、その衝撃に吹き飛ばされてしまう。
レミリアは追撃を仕掛けようとするも、衝撃に吹き飛ばされているまま、追撃を阻止するかのように藍が放つ妖弾を放ち。追撃は不可能に終わる。
そのまま、藍は距離を離しながらレミリアに妖弾を放つ遠距離からの攻撃にシフトチェンジする。
レミリアは、藍から放たれている妖弾をグングニルで、またはレミリアも魔弾を放って相殺させてその距離を詰める。
「そおら!」
「…………ガッ!?」
そして藍に肉薄したレミリアはそのまま藍を地面に叩き落す。
「……………カフッ!!」
想像以上の一撃を食らった藍はそのまますぐに動きだすことが出来ず、一瞬で近づいてきたレミリアに喉元を掴まれてしまう。
レミリアと藍がこのような状況になってしまったのは、数十分前にさかのぼる。
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「止まれ!!」
八雲紫の姿を発見したレミリアはその方向へ向かって飛んだ数分後、目の前に横切るようにして現れた九尾の狐『八雲藍』と接触した。
「何用だ、狐」
「ここから先は、貴様を通すわけにはいかない」
「そうはいかん、私はお前の飼い主、八雲紫に用がある、死にたくなくばそこをどけ、式神」
……どうして
それに、私が紫様の式であることも知っている!?
「そんなことまで知っているのか。光栄だな。なら、尚更通すわけにはいかない」
そうした動揺を表に出さず、藍は無表情を努め、そう返して見せた。
「ふん、式になった程度の狡猾な狐が、誇り高き吸血鬼である私を足止めする、と。そう大言壮語するか」
「私は九尾。そして式神。貴様を殺すことなど訳もない」
「ハッ!粋がるなよ女狐!たかがペットの分際でッ!!!」
「百聞は一見に如かずってね!!!」
そこからというと、レミリアのグングニルを用いた接近戦を避ける藍は、距離を離し、遠距離からの攻撃を主体としてレミリアに立ち向かった。
しかし、レミリアの飛行スピードが藍を上回り、すぐに肉薄されてしまう。
そこで、藍は接近戦として鋭い爪を使ってレミリアに対抗する。そして、何合か打ち合った後、隙を見てまた距離を離していくのだ。
レミリアを紫へ近づけさせないための時間稼ぎ。
初期の段階で、レミリアとの勝負の勝ちより、時間を稼いでレミリアを孤立化させようとしているのだ。
レミリアをこちらの陣内に孤立させ、そのまま物量で圧してレミリアを殺そうという目的だ。
しかし、レミリアは強く、藍にも限界が訪れ、ついに藍はレミリアに掴まれてしまった。
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「…………どうした?私を殺すのではなかったか?」
「…………ガッ!……ッカハッ!!!」
掴んでいる手に力を込めていくレミリア。
苦しそうに呻く藍。
「あまり、私の式においたをしないで欲しいわね」
「ッ!?」
レミリアは藍を絞め殺そうと、さらにその手を込めようとしたその時。
突然その声が響いたと同時に、側面から藍に当たらないようにしてレミリアを狙ったレーザーが放たれる。
咄嗟に手を離し、その場から距離を離してそのレーザーを回避する。すると、藍の辺りからに空間の裂け目が生じる。いわゆる『スキマ』が生じ、そこから幻想郷の賢者『八雲紫』が登場した。
扇子を口元で広げて、表情をうかがい知ることが出来ない。
「お初にお目にかかる、だな。八雲紫」
「あら、御立派な挨拶ね。レミリア・スカーレット。あまりにおいた過ぎるから礼儀を知らないかと思ったわ」
「何、そちらのペットがこちらに噛み付いてきて、抵抗させてもらっただけのこと、飼い主がまともで何より。しつけすらできない奴かと思っていたよ」
何げなく会話をしているが雰囲気は一触即発、互いに挑発をする。
「藍。大丈夫かしら?」
「…ケホッ!ケホッ!!は、はい、紫様。……このような失態、申し訳ありません」
「いいえ、良くやってくれたわ、藍」
レミリアから視線を外さず、藍へ安否を問いかける紫、藍は咳き込みながら返事をする。
「レミリア・スカーレット。貴方の目的は何かしら?」
「幻想郷の支配……と、言ったら?」
「なら、盛大に歓迎してあげましょう。私自らが直々、に」
そう受け答えをして、自身の周辺に『スキマ』を展開し、そこからレーザーを発射する。
レミリアはレーザーを躱し、そのまま、紫と藍へ距離を詰めようとするが、『スキマ』によって距離を離されてしまう。
「藍、まだ、やれるかしら?」
「はい、今度は失態を犯しません」
「その意気よ、藍。盛大に歓迎してあげなさい」
「はっ!!」
紫と藍が協力し、二人がかりでレミリアに対抗していく。
「……チッ!!」
レミリアは二人の連携された攻撃に手を焼く
どこからか現れる『スキマ』からのレーザー、かわそうとしても、藍の妖弾に追撃を受ける。
二人の距離を詰めようとしても、『スキマ』に離され。
時に藍との接近戦中に側面からの紫の攻撃によって踏み込んだ攻撃が出来ていないでいる。
大したダメージではないが、次第にレミリアの被弾が増えていく。
状況は紫と藍の有利に傾いている。これは誰しもがそう思った。
だが、次第にレミリアの動きが変化していく。
あくまで遠距離で戦う紫と藍に合わせて、接近戦では分が悪いと判断したレミリア。
自身も魔力を用いて魔弾で対抗していた。
しかし今はどうだ。
魔弾で対抗しているのは以前変わりないが、それが所々紫と藍へ向かってくるのだ。
『スキマ』で移動を繰り返して居場所を確定させない紫と藍。
それがレミリアには多方面から向かってくる弾幕の様に映っているだろう。
だが、『スキマ』で転々としているのに、そこに魔弾が飛んでくるようになる。
パターンでも読まれていたのか、と相手の意表を突こうとしても、しっかりとレミリアに読まれている。
そこで紫は確信した。
やはりレミリアは『スキマ』が見えている。と。
ふと、レミリアがグングニルと創り出す。
そして、紫と藍の元へ颯爽と突撃していく。
自身が被弾していることに目もくれず。今までに出していないスピードで。
「ッ藍!!」
「はっ!!」
紫は自分の式に呼びかける。
「邪魔だ!」
「……………ッあ!?」
藍は紫を守るようにレミリアの前に躍り出るが、レミリアのグングニルの横薙ぎに簡単に弾き飛ばされてしまう。
…………………藍はレミリアと何合か打ち合えたはずッ…………!
紫の想像以上を行くレミリアの進化ともいえる急成長に驚きながらも、肉弾戦は分が悪いと判断している紫は『スキマ』を使って、レミリアから距離を離そうとする。
「ッ!?」
しかし、『スキマ』を使って移動した先にはレミリアの魔弾がすぐ目の前に迫っていた。
突然のことで反応が遅れ、紫は被弾してしまう。
一瞬、ほんの一瞬目の前が見えなくなってしまう。
「!?」
ぱっと目の前が明快になったとき、目の前にいたのは魔槍引いた紅い眼の
吸血鬼だった…………。
「クッ!?」
咄嗟に、反射ともいえる反応で即座に身を捩る紫。
「アグッ!!??」
幸い、身を捩った効果はあり、紫の心臓を狙って穿ったグングニルは紫の右肩を貫くのみに終わり、紫は右腕を振るってレミリアを吹き飛ばし、レミリアに向かってレーザーを放つ。
「くあッ!!!」
そのレーザーはレミリアの左翼を貫いた。
「紫様!?」
吹き飛ばされた藍が紫の元に急行して、貫かれた右肩を見て悲痛そうに呼びかける。
「だ、大丈夫よ、これくらい………ッ!!」
紫は、そう言って、右肩を貫通している『グングニル』を抜いて、右肩を治療する。
あっという間に右肩は万全に治療し、レミリアを吹き飛ばした方向を見る。
レミリアも、貫かれた左翼を一瞬の内に再生して、その場に健在している
紫と藍もレミリアの動向に警戒し、レミリアは無感情でその場に立っている。
また、レミリアと紫・藍の激戦が繰り広げられる……
「……………やめだ」
「……………」
「なっ!?」
かと思われたが、レミリアの一声にてレミリアから戦意が消散した。
紫は疑わしい目で、藍は意表をつかれ、驚いたように、それぞれ反応する。
「……………何のつもりかしら?」
「いやなに、元々、私達、『紅魔館』は幻想郷への移住の為にここに来ただけのこと」
「貴方たちはこの幻想郷を支配すると、言ったはずだけれど?」
「それは他の吸血鬼共の言い分だろう?私達『紅魔館』には何も関係はない」
「幻想郷の賢者『八雲紫』、我々、『紅魔館』はこの幻想郷の移住を願い出に来た。我たち紅魔館の移住の許可をいただきたい」
その言葉を受け、紫は少し思考を巡らせる。
『紅魔館』レミリア・スカーレット。突如幻想郷に現れた存在。
幻想郷を支配ではなく移住しに来たと彼は言ってはいるが・・・。
正直怪しくないと言っては嘘になる。だが、彼が嘘をついている様には思えず、そんなつまらない愚物の様には見えない。
しかし、移住が目的であったこの戦いで参戦したのは自衛のためと言えるし、これまで各地での戦闘で一切関与していなかったのにも説明がつく。
紅魔館自体、鋭利な刃物ではあるが、扱い方によっては幻想郷を守るために利用できる。
現在、吸血鬼達との戦闘で、天狗を主体として抵抗してきたが、繰り広げられる激戦によって妖怪の山の妖怪達、天狗達に大きな被害が出た。
本来、幻想郷は人間と妖怪のバランスをとって成り立っているもの、この戦いで妖怪隊が大きく消耗してしまった。
そして、妖怪達の気力も減って、とうていバランスをとれるとは思えない。
そこで、新たに来たこの『紅魔館』レミリア・スカーレットを利用して、新たな妖怪勢力として幻想郷に君臨させれば、妖怪と人間とのバランスをとれるところだろう。
それに、吸血鬼達と同じように外の世界から来た勢力に対抗できるのではないか。
扱い方を間違えなければメリットの方があるのではないだろうか。
「……………解りました。『紅魔館』並びにその住人たちの移住を許可します」
「紫様!?」
「………感謝する。八雲紫」
「藍、終戦を天狗達に知らせてきなさい。講和は成った、と」
「し、しかし紫様!」
「二度は言わないわ」
「ッ!?わ、解りました」
そう言って藍はこの場から離れていく。この場に残されたのはレミリアと紫だ。
「レミリア、聞きたいことがあるのだけど」
「ああ」
「………どうして、私の右肩を貫けたのかしら。私の『スキマ』が、まるでそこに来ると解っていたかのように迷いのない、一撃だったわ」
「……………運命を操る、それが私の能力だからだ、まぁ完璧に、とは言えないが」
「ッ!?そう…………………」
レミリアはそう言って紅魔館の方へ歩き出している
紫はレミリアの言葉を聞いて戦慄したような気持ちになった。
私が、『スキマ』でそこへ行くことを最初から仕向けられていたとでもいうの?
それにレミリアは自分の能力を完全には扱えてはいないらしいが、これが完全に扱えるようになったら………。
…………レミリア・スカーレット、やはり、危険ね…!
「ああ、そうだ、紫」
「……………何かしら?」
はっと気が付いたかのように立ち止まって紫の方を向いて呼びかけるレミリア。
何を言い出すつもりなのかしら、と紫は少し警戒を強める
「……………血を、分けてくれ」
「……………え?」
言うが早いか、紫に一瞬で近づいたレミリアは紫を押さえ、紫の首筋に牙を立てて、吸血していく。
あまりの衝撃に紫は思考を止めて、呆然としてしまう。
「ん…………。助かる。ちょうど、戦闘で消費してたから血が欲しかったんだ」
「………………」
「では、約束通り、頼む」
しばらくレミリアの吸血が続き、吸血が終わった後そう言ってレミリアは紅魔館へ飛んで行ってしまった。
後に残されたのは、呆然とした顔でそこに立ち尽くしている紫のみだった。
…………………レ、レミリア、や、やはり危険ね…ッ!!
その後、紫は個人的に紅魔館への監視を強めた。
…………………恐らく私情ではないだろう、多分。
次は、フランちゃんと美鈴さんの戦闘シーンを2本立てで投稿します。