ガキィィィィイイイイイイイイン!!!
固い金属のようなものが打ち合う音が激しく鳴り響く。
一方は燃える剣、元の姿は杖の様な物であるが、本領を発揮する際、燃え盛る剣『レーヴァテイン』へと変貌を遂げる神剣である。
一方は、なんと日傘である、一見、普通の日傘とも見て取れる獲物で対する神剣『レーヴァテイン』を相手取っているのだ。
『レーヴァテイン』を操るフラン。
フランの猛攻を日傘によって防ぐ風見幽香。
両者の剣戟は、力と力のぶつかり合い、まともな流派の剣術ではなく、どちらもただ力任せに振りかぶっているだけ。
しかし、本来の両者の持つ単純な力は妖怪というスペックも加わり、計り知れない衝撃となっていることだろう。
その証拠に、剣と傘が剣戟する際、その周囲へ衝撃の波が辺りを襲う。
「しつッ、こいなァ!!さっさと斬られロォ!!」
「あらあら、激しくて乱暴ね。そんなんじゃ、舞踏会にすらでられないわよ?」
「うるッ、さあい!!!」
吸血鬼としての怪力任せの一撃も、幽香の日傘によって楽々と受けられる。
幽香の方は、軽口を叩く余裕すら見受けられ、事あるごとにフランを挑発する余裕すらある。
フランが距離を離し、魔法を使用して攻撃をしても、日傘を開いて横薙ぎに払うだけでフランの魔法を打ち消す。
「チッ………。何なのよ、その日傘」
「特注の日傘よ?愛用しているの」
レーヴァテインと剣戟をすることも、魔法、それも、火属性の魔法も引火すらせずに簡単にかき消す日傘。
フランの攻撃という攻撃全てが日傘のみに対処され、その苛立ちからか、フランはそう口にする。
しかし、幽香の回答はのんべんだらりとした口調で、それが余計フランの苛立ちを増す。
「いいから、私の為に、お兄様の為に、さっさと、死ね!!」
「………さっきからお兄様、お兄様って、いい加減、兄離れしなさいな」
「うるッ、さいなァ!!!」
フランが幽香にとびかかるようにして肉薄し、レーヴァテインの猛攻を繰り出していく。苛立ちも合わさって、鋭さも増していく。
だが、幽香は半ば呆れたようにその鋭い攻撃すら防いで見せる。
「クッ!!」
そして、幽香のカウンターの一撃がフランに襲い掛かるが、何とかフランはその一撃と受け止め、その衝撃で後ろに後退する。
「はぁ…………………。お兄さん以外に、色々いるでしょう?」
「いない。私にはお兄様だけ。お兄様は私だけ。それでいいの。それが最善。それだけで十分」
「…………ある意味、一種の狂信ね。打つ手無し」
おどけたように肩をすくめる幽香。
「たった一人、いえ、たった一吸血鬼に過度な期待はしない方がいいわ。一人では限界があるもの」
「オマエにはッ!関係ないッ!」
「お嬢さんに過剰に期待を寄せられるお兄さんが憐れってことよ」
「うるさぁぁぁあああい!!!」
「………癇癪持ち。まるで子供ね。…まぁ子供なのだけれど」
向かってくるフランを再び、日傘で押し返す幽香。
単純な実力差では互角であるが、冷静さを失っている分フランが不利だ。
攻撃の所々に荒さが目立ち、精彩さを欠いている。
戦闘経験が豊富な幽香は、遠慮なくそこを突いていく。
形勢は幽香に分がある。
「まぁお兄さんにばかり固執するのは勝手だけど、それで困るのは貴女とそのお兄さんよ?」
「黙れ!!!」
「貴女自身も薄々勘付いてはいるんでしょう?このままじゃ駄目だってことに」
「…………………ッ!!」
最後の幽香の言葉に少しだけ、反応したが、返事は無用とばかりに無言を貫く。
「ッあ!?」
そして、幽香の日傘がレーヴァテインを弾き。フランの手元から離れていく。
「ガハッ!!??」
手元の獲物が無くなったことにフランは一瞬反応が遅れた。
その隙を幽香は見逃さず、左手でフランの首元を掴んで、そのまま締め上げる。
「まぁそんなこと、今この場では関係のないことだし、同情はしてあげるけど、今、ここで殺してあげるわ」
「…………………ッ!あッ…………………」
手の力を強めていく幽香、力が強まるにつれ、手の力が抜け頭に靄の様なものが掛かっていくフラン
次第にフランの意識も薄れていく。
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────あれ?そういえば、なんで私、紅魔館を守ってるんだろう。
ふと、幽香に首を絞められて、意識が朦朧としている時にそう思った。
何で私は紅魔館を守っているんだろう?って
お兄様に任されたから?お兄様の場所だから?
それも、ある。でも、それだけじゃない気がする。
私としては、お兄様だけが居るだけでいい、たったそれだけで。
私にとって、『紅魔館』って何だったんだろう。
ふと、考える。
『紅魔館』生まれた時、そこは嫌な所だった。お兄様が手を差し伸べてくれたから、引き上げてくれたから。
私は乗り越えることが出来た。
それこそ、消え去ってしまいたいほどの忌々しい思い出。
今更になって、お母様が死んだことに喜んだ私自身を浅ましく。
父だったモノを殺した時は嬉しかったが、違う未来もあったのだろうかと思い悩むこともあった。
それを、感情の片隅に隠して、そこに『お兄様』への感情で隠し通してきた。
過去の『紅魔館』は私にとって最悪な場所だったはずだ。
でも、今は?
少しだけ、納得できなくて、不満な時もある。
美鈴は、お兄様の専属メイドでいい思いをしてきている。それが不満だ。
…………………だけど、いつも笑顔で、苦しいはずなのに、それを周りにみせずに、頑張ってる。屈託ない笑顔で私に接してくる。
パチェリーはお兄様の友人だって言うから不満だ。
…………………だけど私に一から魔法を教えてくれる。意外と面倒見がいい。
小悪魔は…………勝手に居座っただけだから別に不満はないけど。
いつも私にいろんな本を勧めてくる。
…………。
…………………。
……………………………………。
何だ。
もう、答えは簡単じゃん。
私が、この『紅魔館』を守りたいんだ。
お兄様の為、美鈴の為、パチェリーの為、小悪魔の為。
今、この生活を崩したくないんだ。
お兄様に甘えて、美鈴を虐めて、パチェリーに魔法を教えてもらって。小悪魔とお話しして。
そして、皆の居場所を守る為、皆の命を守る為に。
私はお兄様が好きだ。大好きだ。お兄様の為なら、他のどんなことでも捨てれるくらいに。
でも、いつの間にか。皆が好きだ。美鈴が、パチェリーが、小悪魔が。
狂ってる『私』に何の忌避もなく、ただ純粋に私と接してくれる『皆』が大好きなんだ。
お兄様に頼まれてるからじゃない。私が私の意志で
そんな……………、簡単な事だったんだ。
じゃあ、こんなことしてる場合じゃないよね。
『皆』を守らないとね…………………!!
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「…………………?反応がないわね?」
先ほどまで、苦しんでいたフランが急に動きを止める。
死んだかと一瞬思ったが、そんなことはない不自然だ。
「…………………!」
しかし、ピクッとフランが動き出す。
目ざとく発見した幽香は生きていることを確信し、再び手の力を込めようとする。
「グフッ!?」
突然、ザシュ!!という音と共にフランを掴んでいた左手、左腕が胴体から切断された。
それをしっかりと確認する前に、腹部に強烈な衝撃が幽香を襲う。
そして、その衝撃で後方へ吹き飛んでしまう。
「…………………なっ!?」
体勢を整え、前を向いた幽香に目を疑う光景があった。
フランが立っている。それも、掴んでいたフランと瓜二つの、2体のフランを合わせて3体のフランが目の前に立っていた。
「………参ったわね。突然、増えるなんてねッ!!」
混乱は一瞬で収まった。すぐに冷静さを取り戻した幽香はその場で、残った右腕使って日傘を閉じ、三体のフランの方へと向ける。
そして、即座に妖力を一点に集中させて、フラン達へと発射させようとする。
「『きゅっとしてドカアァァァァァン!!!!』」
「………ッ!?」
突如、その声が鳴り響き、ドカーンという爆発音とともに持っていた日傘が内部から破裂する様に砕け散る。
「アハハハハハハハハ!!!」
人際甲高い声が鳴り響く。
「ッ!上かッ!!」
すぐさま声の発生源をたどって幽香は上を見る。
気付いた時には時すでに遅い。
上空で、先ほどの三体のフランとは別のフランがレーヴァテインをこちらに向けながら突進してくる。
「ゴホッ!?」
そのまま、四体目のフランは幽香の身体を突き刺す。
しかし、突き刺されると同時に、四体目のフランへ腕を振るって弾き飛ばす。
弾き飛ばされたフランはしっかりと空中で体勢を整える。
幽香の目の前には、4体のフランがそこに立っていた。
「…………………ッ!!」
刺さったレーヴァテインを幽香は抜く。燃え盛る剣であるが、何とか剣を抜き取る。そして、目の前を向くと、4体いたはずのフランは消え去り、その場には一体のフランのみがそこにいた。
「…………………驚いたわね。とんだ隠し球を持っていたこと」
「フォーオブアカインド………今、たった今出来たわ」
「土壇場で急死一生の手を打てたってこと…………………。それも、お兄さんの想いの強さからかしら?」
「いいえ、それもあるけど、『紅魔館』の『皆』への想いが、私を救った」
「…………………へぇ」
面白そうに目を細めながら、幽香は自身の傷を修復していく。
幽香の身体に植物が巻き付く、失った左腕、貫かれた腹部。それらはうごめく植物たちが巻き付くことによって修復される。
「いい顔、してるじゃない。面白くなりそうね」
そう言って再び、二人は対峙する。
だが、その時、周囲がざわめくように、自然が揺れる。
まるで、何かを伝えるかのように。
「…………………そう、今回は、ここまでの様ね」
「…………………?」
「終戦。戦いは終わったってことよ。貴女と私が戦う意味はもう無いってこと」
そう言って、興味を失ったかの様に踵を返す幽香。
今も、状況が掴めないフランは突然のことに混乱するばかりだ。
「ああ、そうね。今度、貴女のお兄さんと一緒に、太陽の畑って言う場所に来なさい。歓迎してあげるわ」
「…………………どういうこと?」
「退屈しのぎに付き合ってくれたお礼よ。朝に訪れると、キレイなヒマワリが沢山咲いているのだけれど。まぁ、貴方達は吸血鬼だから、日光に弱いでしょうから、特注の日傘も2本送っておくわ」
「…………さっきまで、殺し合っていたはずだけど?」
「あら、私にとって殺しも遊びよ?それに、貴方たちに興味が沸いたし、交流を深めるもの悪くはない。そう考えただけよ」
「…………………。」
「まぁ、気が向いたら来て頂戴」
そう言って。幽香はその場から去っていった。
「…………………」
残ったのは、その場に立ち尽くしているフランのみだった。
「………様!、フ・・様!!フラン様~!!」
遠くの方からそう声が聞こえてくる。
「…………美鈴?」
遠くで美鈴がフランの名前を呼びながらこちらへ近づいてくる。
「フラン様!!お怪我は!?」
「う、ううん、別に大丈夫だけど」
「だ、大丈夫なんですね!?はぁ~、良かったぁ~」
そう言って安心したように胸をなでおろす美鈴。
怪我はないかとこちらに詰め寄ってきたが、逆に、傷だらけの美鈴が心配だ。衣服もボロボロだし。
「……………美鈴の方が、大丈夫じゃないように見えるけど」
「あ、あはは、ちょっと、手強い強敵と遭遇しちゃって………。でも、大丈夫ですよ!ほらっ!!」
そう言って美鈴は何ともないことをアピールしてくる。
「……………ッいてて!!」
しかし、無理していたようで、すぐにボロが出た。
「ほら、言ったじゃない。仕方がないなぁ、怪我、治してあげるから、戻るよ」
「えっ!?」
「……………何よ」
「い、いえ、あっ!な、何かいいことありました?」
「…………何それ、私だってそう言うことぐらいあるよ」
「あっ!そ、そうですよね、す、すいません」
「ふーんだ!そういうこという美鈴なんてもうし~らない!!」
「ええ!?ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ!す、すいませんって!フラン様~」
そう言って走り出すフラン、後を縋るように追いかける美鈴。
走り出すフランには純粋な笑みが浮かんでいた。
後日、紅魔館の元に、差出人不明の荷物が送られ。
その中には二本の日傘があった。
ピンクと白の美しいスイートピーが添えられて。
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「な、………な…………………!?」
フランは目の前の光景に声も出ず、わなわなと体を震わせる。
目には怒り、妬み、羨み。様々だ。それは、フランにとって受け入れがたい光景であるのは一目瞭然であろう。
「お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様」
「はい!お兄様!あ~ん♡」
「…………………」
「あ、あわわわわわわ、フ、フランが、フランが三人、フランが三人!?」
大好きなお兄様名前を連呼しながらの胸に顔を埋めてスリスリとお兄様の匂いを堪能している『私』
まるで恋人を見るような眼で、
お兄様の隣で、恥ずかしがりながら控えめにちょこんと座っている『私』
もう、限界だ。同じ『私』ではあるが、もう限界だ。
「お兄様は私だけの物なの!!そこをどいてぇええええええ!!!!」
「ッ!?!?!?!?フ、フランが………4人!?…………………あ、あばばばばばばば!?!?!?。…………………う~☆」
「お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様」
「お兄様…………………可愛い♡」
「…………………///」
『本体』の怒号と、キャパオーバーをして『ブレイク』するレミリア。
レミリアを見て思い思いに堪能をする『偽物』
そんな光景が後にあったとかなかったとか。
ゆうかりんは子供に優しくあって欲しい。
狂気極みフランちゃん
甘え極みフランちゃん
内気極みフランちゃん
全て偽物。全部合わさって化学反応が起こったのが本体
なお、全てお兄様ラブらしい。