吸血鬼異変が終了し、紅魔館は幻想郷の移住を許された。
当初のレミリアの目的は達成でき、皆幻想郷での新しい生活に胸を躍らせた。
だが、一先ずの問題は、先の吸血鬼異変の紅魔館攻防戦にて損害を受けた紅魔館周辺と壊された門である。
吸血鬼異変の為、元々紅魔館で働いていた従業員たちは皆元の世界に置いて行き、別館で過ごさせるようにした。
そして、今、彼らを呼ぶために大がかりな魔法陣を創り出しては、幻想郷側、特に八雲紫を挑発しているようにしか取れない。先の異変を起こしたばかりなのだ。これ以上幻想郷中に変に刺激しないほうがいい。
かといって、今の紅魔館メンバーで後片付けをするには到底人手が足りない。
若干一名は恐らく、すぐに使い物にならなくなるだろうから。
そこで、紅魔館の修復、後片付けには人手が必要だ。そして、紅魔館の周辺で一番近いのは霧の湖だ。
ならば、霧の湖に生息している妖精達を使おう!
と、言うことで、紅魔館が霧の湖の妖精たちに紅魔館で働かないかと申し出た。
そして、妖精たちは是非紅魔館で働かせてくれと快諾したため、新しく、紅魔館には妖精がメイドとして働くことになる。
妖精特有のいたずら好きだったという面影はまるで見えず、皆、レミリアを崇拝しているようにすら見える、そのためレミリアはそんな妖精たちに崇拝されているということに首をかしげていた。
そんなこんなで、とにかく妖精たちをまともに働かさせれるようにするには、教育が必要だ。そこで、メイド経験のある美鈴をメイド長へと昇格させ、妖精メイド達の教育にあてた。
そして、妖精メイド達は美鈴の
着々と紅魔館が復興の道へと進んでいく。しかし、レミリアには少しだけ悩みの種があった。
フランである。
突然、増えたかと思えば、どれも皆色々ヤバイ。
必死に抱き着いて自分の名前を連呼してくるフラン。
ひたすら甘え、甘やかそうとするフラン
何も言わずに黙って、気が付いたらすぐ傍にいるフラン
そんなフラン達に嫉妬と怒り、羨望が限界を迎えた本体のフランが色々積極的になってきた。
時々目のハイライトを消して。
『お兄様は私じゃなくて、あっちのフラン達がいいの?』
なんて聞いてくるんだから堪ったもんじゃない。
妹に懐かれるというのは、特段嫌というわけではなく、反対に嬉しいものだ。だが、4人に増えてしまうと、色々と大変なことがある。だから、より一層、フランには言葉をよく選ぶ必要がある。
まぁ、どれも皆違って皆いいんだけどね!!
そう、心の底からレミリアは思った。シスコンである。
しかし、気を詰めすぎると体がなまってしまうのも確か、レミリアは散歩と称して霧の湖を飛びまわることにした。
そこで、ある一人の少女を見つけた。
銀色の髪をした、9歳ぐらいの小さな女の子。
そんな女の子がぽつんと立っていた。
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「そこで何をしているのかな?お嬢さん?」
ふと声が聞こえた、上の辺りから。
声の後をたどっていくと、大きな木の幹の上で器用に座っている一人の…………………女の子?男の子?がいた。服装から、男の子かもしれない。
月の光に照らされている青い髪、そして、宝石のように輝きを放っている紅い眼、そして、恐ろしいほど整っている顔。
月を背後に、木の幹の上に座って此方を見下ろしているその姿はまるで美しい絵のような、一枚の絵の様な、そんな幻想的な光景だった。
ある、人間にはないはずの物を目にしなければ。
翼だ。大きな、自分の力を示さんとばかりに堂々と翼が生えているのだ。
「…………………ッ!?」
私はすぐさま手に持っていたナイフを構えた。そして、どう動かれても対処できるようにじっと構えて、目の前の子供、人間ではない物をじっと見た。
しかし、その姿は一瞬の内に靄が掛かるように消え去った
…………………消えた!?
「そんな物騒な物を向けないで欲しいな。私は少しだけ、お話をしたいだけだから、ね?」
そう後ろでそんな声がした。
手に持っていたナイフがするりと取られ、クイッと優しく、私の顔を後ろの方に向けさせられる。
目の前には優し気に微笑む美少年。
青い艶のある髪に、宝石の様な紅い眼、そして、口元にはチラリと見える牙。
そんな人間とはかけ離れた美しさに声を出すのも忘れて息をのんでしまう。
「しかし、こんな夜に、一人でここにいると危険だよ?怖い人に、連れ去られてしまうかも」
そうクスリとほほ笑む目の前の少年。
「お嬢さん、お家は?お母さん、お父さんは?」
そう優しく問いかけてくる。
「…………………」
しかし、返答することが出来ない
目の前の美少年に声を出すことが憚れるというのもあるが、それより大前提に帰る家も、親も居ないのだから…………………。
そもそも、私がどのようにして生まれ、そのようにして育ったのかは不明だ。
名前もなければ、家も無し、親と呼ばれるものもいない。
気が付けば、どこかも知れない場所で、身なりが貧しい人たちと一緒の生活を強いられてきたのだから。
私が陥った場所は、自分が強くなければ生きていけない世界だった。
誰も、子供であっても助けようとしない。弱い奴は皆死ぬだけ。そんな世界で過ごしてきた。
表世界で裕福な生活を送っている奴らとは反対に、私達は泥の水を啜りながら生活していくしかない。そんな環境なのだ。
肌身離さず持っていたナイフで多くの人を殺して、奪って、生きてきた。
豪華そうな服を着ている奴から、はたまた食べ物を持っている奴から、そして、自分から奪おうとする奴らから。
奪い、奪われ、殺し、そして、食べて、生きていく。そんな生活だった。
ある日、私はしくじった。
流石に子供の私だ。今までが上手く行き過ぎたのだろう。
奪い取ろうと男に襲い掛かった結果。見事返り討ちにされた。
そして、消え去る意識の中、何かに引き込まれるかのような感覚を感じ。
気が付けばこの変な湖の近くに寝ていた。
私はどこにいるのだろう?あの後、私はどうなったのか。
そんな様々に錯綜していく解決不可能な疑問。
おかしな場所、それも何かと幻想的で見たことないような湖で私は混乱を隠せなかった。
そのまま、その場で混乱して、立ち尽くしているのもなんだと思い、周りを探索することにした。
さっきまで、泥水を啜って生きてきた私にとって、ここは違う世界なのではないかという疑問があった。かといって、私にとってこんな世界で生きていくには知識も、能力も、足りない。
人から奪わずにどうやって生きていけばいいのだろうか。
あの地獄の様な生活から解放されて、喜びも束の間、あの地獄の様な生活でしか生きていけない私自身に絶望した。
このまま、飢えて、そのまま死んでしまおうか。
そう考えた時だった。
「そこで何をしているのかな?お嬢さん?」
そこで、私にとっての救世主の様な声が掛けられた。
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「…………………」
「………そうか、辛いことを聞いたかな。ゴメンね」
そう言ってレミリアは優しく、少女の頭を撫でていく。
小さな少女はレミリアに身を任せ、されるがままだ。
「そうだな、だったら、どうかな?私の所に来ないかな?」
「…………………ッ!?」
そう提案するレミリアに驚いたような反応を示す少女。
「うん。悪いようにはしないさ。それに、言っただろ?夜に一人で歩いていると。攫われてしまうかも、ってね?」
おどけるようにそう言うレミリア。
少女は少しだけ考え、そしてコクンとうなずいた。
「じゃあ、決まりだね。それじゃあ、行こうか?」
そう言って少女の手を引くレミリア。
レミリアの後につくように少女は歩く。
それを見て、レミリアは少女の歩みに合わせるようにゆっくりと歩きだし、レミリアの翼で、少女の周辺をゆるりと囲むその姿はまるで、子を守っているかの様で、美しいものであった。
その後、知らない女の子を連れてきたレミリアを見て
『駄目!!駄目駄目駄目!!お兄様ッ!それは駄目!そういうのは私だけの特権なの!!」
と、意味わからないことを言うフランにレミリアは再び首をかしげることになった。