行く手を阻む妖精たちを蹴散らして、異変の元凶であろう紅い館が見えた。
「……………………あそこね」
霊夢は、目の前の紅い館から、紅い霧が生じているのをしかと目に入れる。
禍々しく、全面赤一色だから目に悪い。これを建てた奴はかなり趣味が悪そうだ。
それに、窓がこちらから見て、数えるほど、いいや、片手程度で事足りるほどの窓しかない。
そんなことより、人騒がせなここの館の領主さんに合わないといけない。
穏便にお話し、まぁ、ボコボコにして異変の霧をなくしてもらわないと。
そう思った霊夢は、門の前にゆっくりと降り立った。
「おや、案外、お早い到着ですね」
降り立った先で立ちふさがっている女性。華人服、緑色の帽子についている『龍』と書かれている星。
そう、紅魔館の元メイド長、現門番の『紅美鈴』である。
「あぁ、私のことを知っているんだったら話が早いわね。ここの異変の主に会わせなさい」
「フッ、断る。と言ったら?」
「言いたくなるまで痛めつけるだけよ」
「……博麗の巫女とやらは、案外乱暴なんですねぇ」
「あんたらの所の紅い霧、あれ、洗濯物が乾かないし、肌寒いし、いろいろ面倒なのよ。だから、さっさと異変を解決したいの」
「それは困りますねぇ、あの霧は日の光を遮るためのもの、私たちにとってはあの霧は大事なものなんですよ」
「そんなこと知ったことじゃないわ。ただまぁ、どうしてもというのなら、今ここでボコボコにしてやろうじゃない」
「フッ、退く気はない、ですか。ならば!」
そういって、構えをとる美鈴。対する霊夢は自然体であるが、その眼はしっかりと相手の動向を見極めようとしている。
……………………強いですね!
流石は博麗。世代最強と謳われるだけのことはある。
少々、弾幕ごっこは苦手なんですけど。まぁ、それがルールですもんね。
「私は、紅魔館門番『紅美鈴』!!私を倒さぬ限り、ここから先は通れぬことと知れ!!」
「博麗霊夢。覚えてても覚えなくてもいいわ。さっさとあんたを倒して、親玉んとこに行かないといけないんだから」
紅魔館門前、博麗の巫女と紅美鈴の対戦の火蓋が今切られた。
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「氷符『アイシクルフォール』!!」
「えいッ!!」
「おおっと!!危ないぜ!」
現在、霧の湖では、『ルーミア』を倒した魔理沙がまた紅魔館に進もうとしたとき、チルノと大妖精に弾幕ごっこを仕掛けられているところである。
危なげなくルーミアを倒した魔理沙、さらに紅魔館へと進もうと霧の湖を通ろうとした時に、ちょうど氷の妖精『チルノ』に勝負をしかけられたのである。
『ここから先はぜったいにとおさないぞ!!」
『レミリアさんとフランちゃんの所にはいかせません!!』
そんな意思とともに、チルノのみならず、普段おとなしく、臆病な気もある大妖精が珍しく勇気を出してチルノと一緒に魔理沙に弾幕ごっこを挑んできたのである。
普通だったら、弾幕ごっこは魔理沙に分がある。素の実力からすでに魔理沙は2人を越えている。
単純な実力であれば、妖精が1匹から2匹になった程度、どうってことないのだ。
チルノの弾幕は比較的まっすぐな弾幕が多く、それ単体ならばよけることはたやすい。
現在の『アイシクルフォール』だって、目を瞑ってても躱せてしまうくらいには余裕だ。
だが、魔理沙は真剣になって、チルノのスペルカードをよけているように見える。
理由は簡単だ。『大妖精』である。
彼女はチルノのようにスペルカードは持っていないものの、チルノのスペルカードの穴を埋めるように、まっすぐなチルノの弾幕とは反対に、誘い込むような弾幕、変化を交えた弾幕など、チルノのカバーをするかの如き弾幕がチルノのスペルカードと交わって油断ならない弾幕になっているのだ。
しかし、必死によけるだけではない、所々反撃をしたり、的確に安置を見つけてそこに潜り込む能力は、魔理沙の勝負のうまさというものをうかがい知れる。
「チッ!あんましここじゃ使いたくなかったんだけどな」
ヒュンヒュンと、自分の周囲を通り抜けていく氷の弾幕、緑色の弾幕を避けながら魔理沙は懐から一枚のカードを取り出す。
「魔符『スターダストレヴァリエ』!!」
魔理沙も一枚のスペルカードを宣告する。
その瞬間、魔理沙の周囲に複数の魔法陣が展開され、そこから色鮮やかな星形の弾幕が、チルノたちの弾幕を打ち消しながら、チルノたちへ殺到していく。
魔理沙を軸に周りを回りながら、それでいて全方位に展開される星形の弾幕
それはまさしく彼女を象徴するスペルカードである。
「わっ!わっ!……………………わっ!?」
「大ちゃん!こっち!」
「チ、チルノちゃん………!」
多少勇気を出したものの、大妖精はもともと、弾幕ごっこでやりあえるような実力は備わってはいない。あくまでチルノのカバーという役目のみであり、弾幕を避けることはあまり上手ではないようだ。
あたふたを弾幕を避ける大妖精を見かねたチルノが大妖精の手を引いて誘導する。
しかし、それを見逃す魔理沙ではない。2匹で多少手を焼いたのだ。ここで一匹脱落させれれば戦況は有利になる。
「そこだぜッ!!」
「きゃあッ!!??」
魔理沙は手を引かれた大妖精を狙って弾幕を放つ。魔理沙の『スターダストレヴァリエ』を避けるだけで精一杯であった大妖精はよけきれずに被弾。脱落してしまう。
「大ちゃん!!」
「お友達の心配をしている暇はないぜ!
チルノは被弾した大妖精へと声をかけるが、魔理沙の言う通り、大妖精の心配をしている暇はない。魔理沙が作るはずがない。
「くッ!凍符『パーフェクトフリーズ』!!」
一瞬で劣勢に立たされたチルノ、状況を変えようとチルノはもう一枚のスペルカードを切った。
赤、黄、緑、青と色鮮やかな弾幕が周囲へと広がる
「…………おっ!!」
広がった弾幕は一瞬で氷、その場にとどまる。チルノの第二波の弾幕は魔理沙を狙った弾幕。
しかし、まっすぐな弾幕は通用しないとばかりに楽々躱す魔理沙。
そして周囲から凍った弾幕が時が進んだように動き出すが、しかしこれも余裕で躱してしまう魔理沙。
「まだまだ甘いな!そんな弾幕じゃあ、一生かかっても当てられないぜ?」
チルノからの弾幕を躱しながら弾幕を放っていく魔理沙。
対するチルノはやはり、もともとの実力差があり、徐々に追い込まれてしまう。
迫りくる弾幕を紙一重で躱していくチルノ、直撃はしないが、スレスレでチルノの衣服にあたってしまう。言うなれば『グレイズ』で何とか躱していくことしかできない。
「ッ!!??」
「終わりだぜ!」
そして、ついにチルノの目の前に魔理沙の弾幕が近づいてきてしまう。
躱した先に弾幕を予測撃ち、もう、チルノは被弾する。
そう思われたその時、はっと自分の中で何かアイデアが浮かび上がる。
自分の目標であって、印象的に目に映ったあの紅い槍を。
半ば無意識ながらも、スペルカードを一枚、提唱する。
「氷槍『アイシクル・ランス』!!」
最後の一枚を宣告する。
瞬間、チルノ周囲の弾幕は消え去った。
それと同時に、周囲に勢いよくチルノから弾幕が発射され、あっという間に広がった弾幕が凍って、魔理沙の行動範囲を縮小する。
「………………!!」
チルノの右手には氷の槍。それも、チルノの何倍も大きい槍を片手に持っているチルノがそこにはいた。
「…………ッ!!!」
チルノは思いっきりその槍を魔理沙に向けて投げる。
しかし、その槍単体だけでは容易に躱せてしまうだろう。
しかし、スピードは今までの弾幕と比べても圧倒的に早い。
気を一瞬でも抜いていたら被弾してしまいかけてしまうほどの速度だ。
しかも、チルノの投擲した槍が周囲で凍っている弾幕に接触し、その衝撃で弾幕が割れるように砕けはじめ、さらに小さな弾幕として分散して、魔理沙に向かって殺到していく。
「…………クッ!?」
チルノが投げる槍は一本ではない。投げたらまたもう一本と、すぐにまた大きな氷の槍を作り出し、また魔理沙に向けて思いっきり投げる。
そして周囲に凍っているままの弾幕が槍にあたり、その衝撃で砕け、小さな弾幕となってむかってくる。
徐々に、徐々に、魔理沙を追い詰めていくチルノのスペルカード。
とうとう、大きな氷の槍が魔理沙のすぐ傍で通り抜ける。
ヒュンッ!!という音が聞こえるほど、そのスピードがどれほどのものかをうかがい知ることができるだろう。
「クゥッ!?」
通り抜けた氷の槍の風圧に一瞬体制が崩れる魔理沙。
すぐに体勢を整えなおしたが、しかし、その一瞬の隙は弾幕ごっこにおいて命とりだった。
「…………ッ!?」
魔理沙は眼を見開いた。
目の前には尖りのある先端部分。
然り、チルノのスペルカード、氷の槍だ。
魔理沙はあまりのことに一瞬動くことを忘れ、そのまま動きを止めてしまう。
そのまま、チルノの大きな氷の槍は、魔理沙を襲った。
……………………
…………………………………………
「はあッ、はあッ…………や、やった?」
チルノは乱れた息を整えながら目の前の光景を見据える。
魔理沙に大きな槍が被弾したと思われる場所には、一層深い靄がかかり、様子をうかがうことすらできないほど濃い霧が立っている。
確実に、チルノは手ごたえを感じた。あの状況ならば、きっとあたるはずなのだ。
乱れている息を整えている間。あまりにも静かな空間があたりを支配した。
「………あ、あぶなかったぜ~」
「……………………ッ!!」
目の前の靄から聞きなれた声が聞こえる、先ほどまで戦っていた白黒の人間のものだ。
「……………………ッあ!?」
いた。そこには、五体満足の敵、霧雨魔理沙が。
箒にまたがっていたさっきとは違い、今は、箒に片手でぶら下がっている様子である。
…………一瞬の反応で『アイシクル・ランス』を避けた!?
一瞬で自分の目の前に迫ってくる槍を紙一重で体をひねり、その勢いで箒にぶら下がるような体勢になってあの大きな氷の槍を避けたのだろうか。
チルノはさっと魔理沙の様子を観察する。
所々氷の粒が衣服についているようだ。
「へッ!!『グレイズ』だぜ?」
箒にぶら下がったまま、不敵に笑う魔理沙。
いつの間にか、もう片方の手には『ミニ八卦炉』
「さすがに焦ったが、なかなかいい弾幕だったぜ!お礼に、私のとっておきのスペルも見せてやるよ」
そういって、魔理沙はミニ八卦炉に魔力を込める。
「恋符『マスタースパーク』」
ミニ八卦炉に魔力が集中して、チルノが気付いた時には、けたたましい音と共に、目の前には辺り一面レーザーの輝きに覆いつくされた。
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「ふう、案外危なかったぜ」
魔理沙は一息つきながら、シュゥウウ……と煙立っているミニ八卦炉を軽く振って言う。
「さて、と」
そして、目の前にうっすらと見える紅い館の姿を確認して、そこへ向かう。
目の前に見える紅い館、見た目はともかくご立派じゃないか。
そう、独り言をつぶやいた魔理沙。あそこに隠されているであろうお宝に期待を胸に、飛び立っていくのであった。
その後、どこか遠くまで吹き飛ばされてしまった友達のチルノを探しに大妖精はあちこちへ探し回ることにもなるのだが、それは別の話だ。
ついでに、見つけたルーミアと仲良くなるのも、また別の話。
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「来たか」
と、レミリアはつぶやくようにそう言った。
「霊夢が、来たのね?」
「ああ、そろそろお前もどこかに姿を隠せ」
「ええ、直に、霊夢が近づいてくるようでしたらそうしますわ」
そして、未だ紅茶を楽しんでいる紫にそういうが、まだまだ紫は隠れる気はないようだ。
レミリアも、そのままゆっくりとティーカップを手に、また一口紅茶を含もうとする。
『レミィ、レミィ?』
すると突然、レミリアの耳元で自分を呼ぶ声が聞こえた。
パチュリーことパチェだ。
魔力を通じて、こちらに連絡してきているのだ。
『なんだ、パチェ』
レミリアもパチュリーと同じように微弱に漂う魔力の波を操って、彼女がいる場所、図書館へとつなげて、返答する。
『貴方、妹様に詳しいこと教えてなかったでしょう?』
『あ、あぁ?』
「お兄様に嫌われてるってこっちの隅でまるくなってぶつぶつ言っているのよ」
「お兄様に嫌われたお兄様に嫌われたお兄様に嫌わお兄様に嫌われたお兄様に嫌われたお兄様に嫌われたお兄様に嫌われた」
図書館の方では、隅で丸くなってぶつぶつ言っているフランと、それを見かねて、レミリアに報告しているパチュリー、そしてそんなフランにおびえている小悪魔である。
本来、一匹のネズミ、要は博麗ではない方の侵入者、『霧雨魔理沙』に対しての措置であったのだが、レミリアはこのことをフランに伝えなかった。
理由は、いろいろあるが、伝えると、躍起になってフランが暴走してしまう可能性があること。そしてその結果、紅魔館が大きな被害を受けてしまいそうなこと。
何とか、フランに紅魔館を弾幕ごっこのはずみで破壊してしまわないように、結界を張れるパチュリーと一緒にさせた方がいいだろうという見解であった。
しかも、フランであるならば、霧雨魔理沙にも十分対抗できるからだ。確かにパチュリーでも、十分な実力はある。ただ、持病持ちでなければの話だが。
そう考えたレミリアはフランに地下室に向かうよう伝えた。
当然、戦う気満々だったフランは不服の表情である。一緒に博麗を倒そうよ!だとかいろいろ言ってきたが、有無を言わさず地下室に向かわせた。
それがこの結果である。
『あ、あぁ……………………』
「………ある程度の事情は伝えるべきよ。流石に」
「お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様」
『……………わ、わかった』
「ええ、そうして頂戴」
そういって、ぷつんと連絡を切るパチュリー。
『フ、フラン?』
「お兄様お兄様お兄様お兄様おn…………………お兄様?」
『肝心なことを伝え忘れていたが、そっちにもう一匹侵入者が来る。パチェじゃ、持病もあるし、対抗できないかもしれない。だから、フランにそっちを任せたい』
『……………………!』
『任せた。フランだけが、た、頼りだ』
『!!!!!任せてお兄様!!!!』
『お、おう……………………』
レミリアは端的に用件を伝えて、すぐに連絡を切った。
「えへへ!!!お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様!!!!!!」
今度はさっきの虚ろな目をした時とは打って変わって目に見えるほど幸福ですオーラをまとって、満面の笑顔で立ち直るフラン。
「えへへ、お兄様には私だけ、私にはお兄様だけぇ……………………」
恍惚とした顔をするフラン。幼いながらどこか妖艶に見えてしまう。
「……………………」
それを尻目にパチェリーはゆっくりと本を読むのであった。
適当に、レミリアを意識したチルノによるオリジナルスペルカード。
適当な名前を付けただけ。
周囲を大量の弾幕をまき散らして凍らす。プレイヤーの動きを制限したと同時に自機狙いの大きめの槍が何本と向かってきます。
それに接触する弾幕が砕けて分散すると同時に動き出し始め、徐々にプレイヤーの動きを制限。
最終的には動きが封じられて、スピアでピチュらせるといった程度の弾幕。
なれない人でも限界まで粘ってボムで躱せてしまう。
うん、弱い!