「せやッ!!」
「ッ!!」
「せいッ!!」
「チッ!!」
紅魔館門前、紅美鈴と博麗の巫女『博麗霊夢』が接近戦を交えながらの弾幕ごっこを行っている。
接近に持ち込もうとする美鈴と、弾幕を放ちながら距離を離し、距離を詰めさせまいとする霊夢。
美鈴の拳を、半身で、時には上、上空を使って避けていく霊夢。そして距離を離すと同時に弾幕を放つ、しかしそれらは美鈴にかき消されてしまう。
「……………面倒ね」
そう霊夢は素直に口に出した。
「ふふっ、誉め言葉として受け取っておきましょう。しかし、貴女も相当の体術を極めていると見ました。でしたら、素直に肉弾戦でもどうです?飛び道具に頼っていては勿体ないですよ?直接殴った方が気持ちがいいんですからッ!!」
そういって、また距離を詰めようと目論む美鈴。
向かってくる美鈴に少しだけ舌打ちしながら、迎撃として弾幕をばら撒くが、それすらもかき消しながら向かってくる美鈴。
向かってくる美鈴の顔からは、襲ってくる弾幕に怯み、おびえている表情を作るどころか、それらを見て、まるで、血が滾ってくるといわんばかりの笑みを浮かべながら突進してくる。
「結構よ。私ッ!痛いのは好きじゃないッ!し、一方的に殴れるのならッ、考えてもいいわね」
「あら、それは残念です、ねッ!!」
「グッ!!!」
美鈴の拳、蹴りを何とかよけながら軽口を叩いているが、とうとう耐えきれなかったのだろう。
美鈴の腹部を狙った蹴りをお祓い棒で受け止めざるを得ず、その衝撃で遠くまで吹き飛ばされ、体勢を崩してしまう。
妖怪である美鈴から繰り出される蹴りで、吹き飛ばされてしまう程度までに抑えるのは霊夢の無意識的な技術の高さではあるが、霊夢にとっては相当の衝撃を与えられたようだ。
しかし、ただ黙って吹き飛ばされている霊夢ではない。
吹き飛ばされている間でも、追撃の手を封じる、そして、相手の能力を削ぐために、複数枚の札を美鈴に投擲する。
美鈴も、その投げられたお札をひとつひとつ撃ち落としていく。
……………………全く、あまり手の内を知られたくはなかったんだけど。
と、霊夢は独り言ちる。
そして、霊夢は自身の周りに陰陽玉を創り出していく。
これらは、霊夢の弾幕ごっこの補助を務めるものだ。
霊夢と同様に弾幕を放って射撃を行うもの、それらを創り出したということだ。
「……………………」
美鈴はじっと相手の動向をうかがい、霊夢の周囲に『気』が増していることを確認し、とうとう実力を見せるのかと構える。
「ッ!!!」
霊夢から放たれる大量の弾幕、それは、何重にも重なり、時に札、と組み合わせて放たれる弾幕はより濃度を増しているように見える。
これでは、接近戦は困難か。とすぐに美鈴は判断を下す。
対して美鈴も弾幕を放って応酬していく。
こちらも、通常の弾幕とは別に、時計の針のような弾幕を混ぜて、弾幕を放っていく。
…………やはり、弾幕戦ではこちらが不利ですか。
「虹符『彩虹の風鈴』」
美鈴は一枚のスペルカードを宣告する。
美鈴から周囲に放たれるのは色鮮やかな弾幕、まるでそのスペルカード名の通り、風鈴のような回転をしながら霊夢に向かってくる。
しかし、霊夢はその弾幕を避けながら的確に美鈴を狙う弾幕を放っていく。
「夢符『二重結界』」
美鈴のスペルカードブレイクを見計らって、お返しとばかりに霊夢も一枚目のスペルカードを切った。
「ッ!!??」
霊夢の周囲に、結界が張り巡らされ、それが二重になっている。
霊夢が札の弾幕を放つかと思えば、不規則に結界内を移動し、気が付くと目の前に札の弾幕が殺到してくるのである。
しかし、すぐに冷静さを取り戻した美鈴は着実に落ち着いて弾幕の行方をうかがい、しっかりと避けきる。
そして、美鈴は一度勝負にでた。
「…………消えた」
霊夢がぽつりと声をもらす。先ほどまで弾幕を避けていた美鈴の姿が見えなくなった。
かと思えば急に姿を現して弾幕を放ってきたりと、そういった能力なのだろうと推測をたてる
「……………こっちかしらね」
そういって、何気なく、霊夢は誰もいない方角に弾幕を放つ。
「…………ッ!?クッ!!」
しかし、恐るべき霊夢の勘である。
しっかりと美鈴の場所を当てる。
「幻符『華想夢葛』」
そして美鈴は二枚目のスペルカードを切る。
今度は先ほどの美鈴と同じように、弾幕が突然姿を表して霊夢へと向かう。
「夢符『封魔陣』」
対する霊夢も二枚目のスペルカードを宣告する。
すると、大きな結界が生成され、それが美鈴の弾幕をかき消し、大量に連なる札と通常の弾幕が周囲に埋め尽くされるほど放たれていく。
「さすがは博麗の巫女!スペルカードの戦いは一流ですね!!」
「………すごいと思うなら、さっさとあたって頂戴」
「……………それは勘弁ッ!!」
「彩符『彩光乱舞』」
そういって美鈴は最後のスペルカードを宣告。
彩豊かな弾幕、まるで雨粒にも見えるその美しい弾幕が周囲へとまるで雨のように降りしきる弾幕。
それに美鈴はある弾幕を組み合わせる。
ばらばらに入り乱れて発射される弾幕と雨のように降りしきる弾幕、
まるで乱舞のように霊夢に襲い掛かってくる。
精巧で彩鮮やかな弾幕があたりを覆いつくす。
美鈴は弾幕を放ちながらしっかりと霊夢の姿を目視する。
「……………ッ!?消えた!?」
が、スッと霊夢の姿が見えなくなり、一瞬驚愕の色に染まる。
…………いや、違う!上だ!!
「霊符『夢想封印』」
バッと美鈴が上を見上げるとともに、上空に上昇していた霊夢による最後のスペルカードが宣告された。
ホーミング性能が備わった霊夢のスペルカードを代表する弾幕。
一瞬の隙を見せた美鈴にはもはや避ける術がなかったも同然。
そのまま、美鈴は霊夢の弾幕に覆いつくされた。
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「ふう、負けてしまいましたか」
そういって、門にもたれかかる美鈴。
「入るわね。まぁ、許可は得ないけど」
淡々と館に入っていこうとするのは霊夢。
勝敗は美鈴の負けである。
「ええ、どうぞお好きに、負けてしまったんですから私にその権限はないですからね………………あぁ、お給料下げられるかなぁ」
そういって、がっくりとしたフリをする美鈴。
実際、給料を減らされたということは一回もなく、なんとなく、霊夢を未だ引き留めようとそんなことをわざと口にしたのである。
相手に少なからず人情があれば、同情してくれるかなぁ、と。
そう考えての行動である。
「……………………」
しかし、帰ってきたのは無言、目を向けると、そこには霊夢の姿はなく、霊夢はといえば、すでに館の玄関前に足を踏み入れていたのだ。
「………………博麗の巫女に人の心ってあるんですかねぇ」
霊夢の後姿を見て、美鈴はそんな風に言い放って、また一仕事終えたといわんばかりに一息ついた。
「……また、修理かぁ」
目の前にはボロボロに傷んだ門。
弾幕ごっこによっていたるところに傷や壊れている個所がある。
しかも、紅魔館内に霊夢が入っていったことから、また紅魔館のほうでも修理が必要になるのだということは考えなくても分かった。
「……………まぁ、今は、休みましょうか」
そういって、軽く美鈴は瞑想に入った。
少し、心地よくて眠ってしまったというのは内緒だ。
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「ふう、ここが紅魔館ってところか」
そういって、紅魔館を見ながら空を飛んでいるのは霧雨魔理沙。
霧の湖の弾幕ごっこから数十分後、ついに紅魔館前まで到達したのだ。
「さ~て、どこから入ってやろうかな…………て、げっ」
紅魔館を眺めながら、入り口はどこかと探そうとする魔理沙。
しかし、入り口、正門の方に目を向けてそんな声がでた。
紅い髪の中国の格好をしている人と、紅白の巫女服の友人。
博麗の巫女『博麗霊夢』である。
魔理沙が、いると動きづらいと言っていた『あいつ』である。
霊夢と遭遇しては、思い通りの行動ができなくなってしまう可能性がある。
霊夢は異変の解決、魔理沙は紅魔館の掘り出しもの目当てで紅魔館に訪れていたのだから。
……………………見つからないようにこっそりと中に入ってやろうか。
そう思って魔理沙は、二人が戦っているのを尻目に一足先に紅魔館へと入っていくのである。
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「案外、見た目より全然広いな」
紅魔館へと入っていった魔理沙はそう辺りを見ながらそういう。
紅魔館は見た目より全然広いのには訳がある。
それはまぁ、後々になってわかるので割愛しておく。
なんだかんだで想像以上の広さで、魔理沙は迷ってしまった。
「う~ん、ここか?」
魔理沙は何気なく目の前の大きなドアに当てをつけて、ドアを開けて中に入る。
「うわッ!!」
目の前に映るは大量に並ぶ大きな本棚に、ぎっしと一つ一つの本棚に並んでいる大量の本である。
それが何階層にもなっていて、何年分。いや、一生かかっても読み切れないほどの数の本であるということは想像に尽くさない。
魔理沙は目の前の光景に目を奪われながら、ゆっくり、ゆっくりとしたに降りていく。
階層を降りても同じように大量の本があるということを認識させてくれる。
魔理沙には言いようのない高揚感のようなものが襲い掛かる。
「本がいっぱいだぁ。後で、さっくり貰っていこ」
「………勝手に家のものを持っていくのは困るわね」
「お、何だ、人がいたのか」
魔理沙が目を向けた先には紫色のゆったりとした衣服を身に着けている女性。
『パチュリー・ノーレッジ』である。
「ここに、何の御用かしら、白黒の泥棒さん」
「おっと、泥棒とは失礼だな。私は『霧雨魔理沙』 普通の魔法使いだぜ」
「……………魔法使い?」
ピクッと本を読んでいたパチュリーが一瞬反応した。
「…………貴女、捨食の術は?」
「あん?なんだそれ?」
「…………そう、そっちのほう、ね」
そう、パチュリーは一人、納得した。
魔法使いというのは種族名である。先天的な魔法使いは捨虫・捨食の術をその体に施している。
自身の身体の成長が止まり、老化しなくなるものが捨虫。
食事、睡眠が必要のない体になるのが捨食である。
しかし、人間でも、捨食の術を使用して魔法使いになるというケースもある。
だが、魔理沙はその術を知らないということは、つまり、ただの自称魔法使いかぶれであるという判断に至ったのである。
「そういうお前は?」
「私は『魔法使い』よ、貴女とは違って純粋な、ね」
「………なんか釈然としない言い方だけど、まぁいいぜ、それなら話が早い。魔導書、あるんだろ?」
「……………………」
「よっしゃ、それなら、貰っていくとするぜ」
無言で返すパチュリーの様子に確信に変わる魔理沙。
目の前の持ち主に堂々と盗む宣言とは肝が据わっている。
パチュリーは、ふと、ここに派遣されてきた妹様、フランドール・スカーレットのことを思い出す。
『パチュリー!私、行ってくる!』
どこに、とは言わなかったが、図書館内から颯爽と姿を消してしまった妹様。
本来、こいつ、泥棒退治の為に派遣されてきたはずなのに。
「………はぁ、手荒事はあまり好まないのだけど」
「おん?」
「家の私物が、それも、魔導書が盗まれてしまうというなら、仕方がないわね」
「なんだ、やる気か?」
「ええ、それに、今は調子がいいの。泥棒退治ぐらいはできるでしょうね」
「失礼な奴だな、泥棒じゃない、普通の魔法使いだぜ」
「……………その減らず口も言えないようにしてあげるわ」
丁度、かぶれ者が公然と自分は魔法使いだという発言に少々カチンと来たのだ。
適当に痛めつけて追い出してやろう。
パチュリーはそう思って本を開く。
美鈴と霊夢の弾幕ごっこが終了した同時間帯に、紅魔館地下図書館でも魔理沙とパチュリーの弾幕ごっこが始まろうとしていた。