「………………これは、どういうことだ?」
紅霧異変が終結し、レミリアが紅い霧を消滅させてから翌日。
何とも言えず、呆れたような顔で、頬杖をつきながら座っているレミリア。
目の前には正座している3つの影が。
「侵入者と命令違反者と職務怠惰者よ」
パチュリーが『射命丸文』『フランドール・スカーレット』『紅美鈴』の順に棘のある言い方をする。
話を聞くには、『射命丸文』は言葉通り、無断で紅魔館の敷地内に侵入してきた烏天狗の様で、フランが本来の白黒の泥棒と勘違いして捕まえてきたそうだ。
『フラン』に関しては、確かに射命丸文を捕まえてきたのはお手柄だが、本来の白黒の侵入者『霧雨魔理沙』を捕まえることができずにとり逃してしまったのだ。
いや、まぁ、それだけなら仕方がないで済む話であるが、魔理沙を追う際、無駄に戦地を広げてパチュリーの図書館内が悲惨な状況になっているのだそうだ。
その事実がパチュリーの逆鱗に触れてしまったのだろう。
……………………まぁ、仕方がない。
とレミリアは納得した。
『紅美鈴』は、博麗霊夢と戦闘後、なぜか眠りについてしまったのだそうだ。
霊夢との戦闘後、図書館内にで増援にでも来てくれていたのなら、ある程度被害を抑えられたかもしれないし、そもそも、博麗の巫女以外に簡単に侵入者に入られてしまうのはどうなのか、という咲夜の言い分によって、結果的に有罪判決になってしまったようだ。
額にナイフが刺さっているのは、まぁ、見なかったことにでもしておこう。
「まぁ、そこの烏天狗は置いておいて、フランと美鈴から、だな」
「う~」
「あ、あはは、す、すいません……………」
力なくうなだれて唸るフランと、心底申し訳なさそうに謝る美鈴。
「…………まぁ、フランに関しては、烏天狗を捕まえたっていう功績が」
「……………ッ!!そうだよねッ!お兄様ッ!!」
「駄目よ」
「ッ!?」
「ッ!?」
とりあえず、射命丸文の捕縛という功績があるからという言い分に同調して、一気に元気になるフランであったが、パチュリーの一言で挫かれる。
「そもそも、妹様の役目は白黒の泥棒の捕縛のはずであったし、戦闘向きではない私の護衛役として派遣したのが目的でしょう、レミィ?」
「…………あ、ああ、そ、そうだな」
「むざむざ、魔導書を盗まれて逃亡され、その逃亡経路は妹様が破壊した図書館内、大穴から。まぁ、私も本意ではあったのだけれど戦闘せざるを得なくなってしまったわ」
「…………う、うん」
「本来与えられた使命を守れずして何が功績なのかしらね?レミィ?」
「……………う」
「………………」
有無を言わせないパチュリーの言い分に、ぐうの音も出ないレミリアとフラン。
「そ、それで、パチェは?」
「妹様には図書館内の後片付け、それと、大穴の修復だとか、魔導書の復元といった様々なことをやらせるべきね」
「……………そ、それでいいか?フラン」
「う、うん」
「ならいいわ」
そう言って、言いたいことを言い終えたとばかりに本を開くパチュリー。
「じゃ、じゃあ、次は美鈴に関して、だが。」
「お坊ちゃま。美鈴は罪状は職務放棄に近い居眠り。それに、侵入者に侵入を許してしまったこと、それに並んで紅魔館内にかなりの被害が出ましたこと。これら全て重い罪ではないでしょうか?」
「あ、あはは」
「………………い、いや、あの、」
「そうですね?お坊ちゃま?」
「…………は、はい」
「ありがとうございます。でしたら、美鈴は紅魔館の修理を第一に、妖精メイド達を指揮して、現場で働かさせます。それに、給料を半分カットで」
「……………えッ!!??」
「……………まぁ、それで、咲夜の気が収まるんだったら」
「お坊ちゃまァァァッ!?」
信じられないものでも見たかのような目でこちらを見る美鈴、若干縋るような目でこちらを見てくるのだが、目を合わせないように目を背けておいた。
「じゃ、じゃあ、フランと美鈴に関しての処遇はもう決まった。もういいぞ」
そう言ってフランと美鈴を開放して、紅魔館内での刑務作業に移らせておいた。
我慢ならず、こちらに抱き着こうとしてきたフランを引きずりながら連れ出すパチュリーには、終始有無を言わせない凄みがあった。
美鈴は咲夜に耳を引っ張られながら、連れていかれた。
「最後はお前だな」
「…………あ、あやや」
あははと苦笑してこちらへと愛想を浮かべる烏天狗。
「お前は……………」
「…………初めまして、清く正しい射命丸文と申します」
「…………まぁ、この状況になってしまっている時点で大半が破綻しているな」
「………………あ、あはは、そうですよね…………」
「しかし、どうしてこの紅魔館なんぞに侵入するのだ」
「いやですね?私、新聞出版を生業としておりまして、何かいいネタはないかなー……と」
「………………新聞?」
ピクッと、レミリアの体が動いた。
「……………ええ、あの、『文文。新聞』という新聞を出版しているのですが…………」
「『文文。』?もしや、これのことか?」
そう言って、レミリアが取り出すのは『文文。新聞』と書かれた新聞そのものであった。
「…………ッ!?そ、それです!それが私の出版している新聞です!」
そう言って、ものすごく食いついてくる射命丸文。
「あやややや!!感激ですねぇ!よもや、レミリアさんに読んでいただけるなんて思ってもいなかったです!」
「ああ、いや、適当に散歩していたら、捨てられていたのを偶然拾っただけなんだが」
「あぁ、そうなんですか………………」
途端に元気がなくなってしまった射命丸文。
人里ではある程度の人気を獲得しているのだが、天狗社会の中でもさほど人気がなく。記事が薄い割には派手かつ膨大な量で割増しているし、事実ではあるのだが、どうでもいいことをわざわざ大げさに脚光したりなど、デタラメゴシップ新聞として扱われている『文文。新聞』は、こういった道端に捨てられているなど、少なくはないのだ。
そういった事実を認識している文は、何とも言えない顔をしてしまうのだ。
「………………まぁ、お前の新聞に関してはな、中々面白かったんだ」
「……………………ッ!?そうですか!?」
バッと勢いよく顔を上げて喜色満面にレミリアを見つめる射命丸文。
ただでさえ、自分の新聞を楽しんで読んでもらっている読者が少ないのだ。
予想外の大物が読んでいるという事実と、面白いという言葉に再び元気を取り戻す。
「ああ!あそこまでどうでもいいことをわざわざ大胆に演出して面白おかしくしているのは滅多にみないからな!!なかなか新鮮だったな!!」
「……………………」
「そういったのが目的のゴシップ新聞物なんだろう?」
「……………あ、あはは……………」
すっかりと取り戻した活力すら失って、燃え尽きてしまった射命丸文。
死んだ目になって、哀愁を帯びていることなんて、熱心に『文文。新聞』がいかに滑稽で面白いかを熱弁しているレミリアには届くまい。
「そうですよ、どーせ私は才能なんてないんですよ
「………………それで、今回の異変の件も新聞にするのか?」
「…………ッ!?あ、は、はいッ!!お許しいただけるのであれば、是非!!」
「ああ、いいぞ」
「本当ですかッ!?」
レミリアの言葉を聞いてまた嬉しそうな反応を返す文。
自分の新聞が云々に関しては、まぁ無視はできないが、とりあえず置いておくとする。
実際に異変の張本人であるレミリアと対面して、公認で新聞を書くことを認められたのは私しかいないのではないだろうか!
それに、ある意味不本意だが、本当に不本意だが、レミリアの『文文。新聞』に関しての印象はいいようだし、うまくいけばスポンサー契約に取り付けることができるかもしれない。
紅魔館に独自で関係を結ぶことができれば、天狗の中でも、差をつけることができるかもしれない。
そういった、メリット面での恩恵が大きいということを考えても、紅魔館との関係を結ぶことは絶対だ。
そう考えた文はすぐさま行動に移すことにする。
「では、日を改めて、今度お時間が合えば、異変とは別に貴方に関しての独自取材をしてもよろしいですか!?」
「……………ん?まぁ、いいが」
「ありがとうございます!!でしたら、その日に関してのご相談とお時間をですね………………」
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「本日は、本当に有意義なお時間ありがとうございました!!」
「あ、ああ、喜んでもらえたら何よりだ。」
「今後とも、『文文。新聞』をよろしくお願いいたします!!」
そう言って、勢いよく空へ飛んで行った文を見送るレミリア・スカーレット。
独自取材の日にちと時間に関しての相談を受けていたと思ったら、今度の自分の話だとか、異変に関してだとかについていろいろ聞かれてしまった。
すごい勢いでズバズバ聞いてくるため、圧されてしまった。
「………………さて」
そして、レミリアは再び自室へと戻ろうとする。
今日はどのようにして一日を過ごそうか。
紅魔館の修理に関しては美鈴とフランを筆頭に妖精メイド達がやってくれるのだろうし、パチェと咲夜も掃除だとかに忙しいのだろう。
「………………お坊ちゃま?お話は終わりましたか?」
すると、咲夜が突然現れて、聞いてくる。
「ああ、もう終わった。私はこれから自室に向かうところだが。」
「あら?お坊ちゃまも紅魔館の修理ですよ?」
「……………………ん?」
「お坊ちゃまと博麗の巫女の弾幕ごっこの流れ弾で、紅魔館にかなりの被害が出たのですから。…………忘れたとは、言わせませんよ?」
「…………………はい」
その後、皆で紅魔館を修理した。
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「ッ!!クッ!!」
「どうした!霊夢!まだまだ甘いぞッ!!」
「ッ!!ま、だ、まだッ!!」
場所は変わって博麗神社。
博麗神社では。霊夢と八雲藍が弾幕ごっこを繰り広げている。
先の異変に関して、偶然とは言え勝ちを得たものの、実質的に負けていたのは自分だと。
何か、レミリアに感じるものがあったのだろう。
霊夢は珍しく、修行に意欲を出し、起きてから今まで、修行に力を入れているのだ。
「甘いぞッ!」
「あぐッ!!??」
藍の弾幕が横腹にあたって吹き飛ばされる。
多少の痛みは感じるものの、立ち上がれないほどの威力なのではない。
しかし、起きてから今まで修行続きである、流石の霊夢でも疲労の色は隠しきれない。
「その程度で音を上げるな!霊夢!立ち上がれるだろう!?」
「くッ!!!」
その言葉にこたえるように、立ち上がろうとする霊夢。
「…………………負けない。次こそ、負けないッ!!」
立ち上がろうとする足が震えて、まともに立っていられないであろう。疲労の色が濃くなってまともに動けないのであろう。
だが、霊夢は辛抱強く。それでいてめげることなく立ち上がる。
「……………あいつに、レミリアにッ!負けない!!」
「……………………その意気だぞ!霊夢!!!」
立ち上がって、意思のこもった目を藍へと向ける。
藍は心の底から嬉しそうに答える。
(霊夢が、ここまで変化したのも、レミリアさんが大きな理由なんだろう。レミリアさんには感謝しかないな)
藍は、未だ向かってくる霊夢へ応戦しながらレミリアへと感謝の言葉を心の中で言う。
「足が止まっているぞ!的にでもなる気か!!」
そうして、藍は今日も嬉々として怒号を飛ばすのである。
「………………あら?私の役目って…………」
すっかり自分の式に役目を奪い取られてしまった紫は、一人、ぽつんと取り残されてしまったのだ。
余談ではあるが、異変解決後一週間ぐらい、何やら幸せそうな夢を見ながら眠る霊夢がいたとかいなかったとか。
寝言で「お母さん」と口にしているのは、誰の耳にも聞こえないのであろうか。