紅魔館で始まった異変解決後の宴会。
この異変に関わった『博麗霊夢』と『霧雨魔理沙』を招き、緩やかに宴会が始まった。
しかし、この宴会も緩やかに、穏やかに終わるはずもなく・・・。
「あははッ!!もっとのめ~!!」
「よっしゃ!負けてられないぜッ!!」
「チ、チルノちゃん……………」
「大ちゃんだってもっと飲みなよ!あんまり飲んでないじゃん!」
「わ、私はいいよ!あっ!?ちょ!?やめてッ!!??」
「あはは~、もっとやっちゃえ~!」
「後片付けが面倒だし、せいぜい面倒事なんて起こそうなんて考えないことね」
「それはあんた次第ね。木偶の棒みたいにそこらへんに立っとけばいいんじゃない?」
「そういうわけにはいかないわ。メイド長の立場ながら色々やることがあるもの。………そうね、例えば、紅白色のゴミ掃除。とかかしらね?」
「…何よ、やろうっての?」
「……フッ、御所望とあらば、いつでも」
「……いい度胸じゃない」
「…………………」
「お兄様!こっちもおいしいよ!」
「………ああ!……そうだな」
「フフッ、お兄様も、美味しそう♡」
「…………………」
レミリアが目を向ける先にはいつの間にか宴会に参加していたチルノがこれもいつの間にか仲良くなっている魔理沙と一緒に飲み比べをしている光景。
これに『大ちゃん』と呼ばれている『大妖精』が止めに入ろうとするも、チルノによってあえなく撃沈。
その光景を愉しそうに笑いながら飲んでいる『ルーミア』
チルノが飲んでいるのはジュースなはずなんだけど、絡み方が酔っ払いのそれなことにレミリアは少しだけ疑念に思いながら目を背けた。
今度は霊夢の方向へと目を向ければ、咲夜と色々険悪な雰囲気を醸し出していて、堰を切ったらすぐにでも殺り合う雰囲気だ。
レミリアはそれはいけないと止めようと間に入ろうとしたのだが、霊夢と咲夜がなんだかんだあって飲み比べの競争に移行してしまったため、それはそれでいいかと席に座りなおす。
流石に場を理解している様で、レミリアは安心した。
でもなんだかんだ言って仲いいんじゃないかとレミリアは思い始めたのである。
一息ついたと思えば、隣からフランが寄ってきた。
一見普通に会話していたため、安心していたら。突然妖しい雰囲気でこちらを見るもんだからレミリアは言葉を失ってしまった。
顔は赤く紅潮しているため、酒に酔っているということはすぐにわかった。
レミリアの腕に擦り付けるように頬をくっつけながらレミリアに抱き着いている。
「レミリア、宴会はどう?盛り上がってる?」
困ったような表情で目の前の惨状を見ているレミリアであったが、突然その近くに『スキマ』が発生し、そこから中身の入ったワイングラスを手に持って声が掛けられる。
「………見ての通りだよ。色々な意味で盛り上がっているさ、紫」
「……あら、……えぇ、そうね。盛り上がっている様で何よりだわ」
『スキマ』からの声の主、八雲紫にそう返すレミリア。
紫も目の前の光景を改めてみてみると何とも言えない表情でレミリアに声をかける。
「……ところで、レミリア、そこのフランちゃんは…………」
「…………………」
「ああ、酒に酔っている様でな」
改めて紫はレミリアに向き直り、腕にひっついているフランを見る。
フランはレミリアの腕にひしっとくっつきながら、キッと紫を睨みつける。
紫も少しだけ、いや、特に意味はないはずだが、ムッとしてしまったので、フランを睨みつける。
「…………………」
「…………………」
「…………フッ」
「…………ッ!!」
「……?どうした?フラン?紫?」
にらみ合うフランと紫。
言葉を交わしていないがある程度両者の思惑が理解できるようで不敵な笑みを浮かべ始めるフランと悔しそうに顔をゆがめる紫。
『どうぜお前にはお兄様に抱き着くだけの度胸がないんでしょ?このヘタレ』
とでも言いたげなフランの笑み、いや、恐らく言葉無しにそう言っているのだろう。
「……………むう」
「…………ッ!?」
「…あぁッ!?お、おい、紫?どうした!?」
とうとう紫も我慢の限界だ。
吸血鬼の小娘に煽られる訳にはいかない。
負けじと紫もフランが抱き着いているレミリアの腕とは反対の方に抱き着く。
フランは少しだけ驚愕の色を見せたが、すぐに敵意剥き出しの表情に変わる。
レミリアも突然の紫の行動に戸惑いを隠すことが出来ず、両方の腕が防がれてしまったため、まともに動かすことが出来ず、なすがままだ。
「…………………」
「…………………」
フランと紫も未だ睨み合っている。
どきなさい泥棒猫。黙れ小娘。
とでも目で牽制しあっているのだろう。
「……………う、うー?」
そんな険悪な二人の間に挟まれて、困ったような表情で、しかしこれといって解決策があるわけでもない。
視線を左右へとキョロキョロと動かしていくが、これといっていい案が思い浮かぶはずもなく。
切羽詰まっている様子で思わず声にならない声が出た。
「あはは!そのていどか~!」
「へッ!まだまだだぜ?」
「あ、あはは~、お、おつきさまが見えますぅ~。ピ、ピカピカ光って……」
「あはは!やれやれ~!」
「………その程度で潰れるのかしら?メイド長とやらも大したことないのね」
「………あら、この程度水と同じよ。貴女こそ、もうしんどそうだけど?博麗の巫女も底が知れるわね」
「……ふん、言ってくれるじゃない。それなら、完全にあんたが潰れるまで付き合ってやろうじゃない」
「………望むところ」
そんな賑やかで、色々な場所で修羅場が巻き起こっているが、紅魔館での宴会はまだまだこれからである。
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「………すー、すー」
「………うう、お酒がぁ、お酒がぁ………」
「………すう、すう、」
「………飲み過ぎたぜ」
「………………すー」
「……………………」
宴会もそろそろ終わりを迎え、チルノ達は疲れ切ったように眠っている、……………ただ、一人だけ、うなされてはいるようだが。
恐らくあちらでの飲み比べに勝ったのだろう魔理沙が痛む頭を押さえてふらふらとなっている。
霊夢と咲夜に関してはどちらも酔いつぶれてしまったようで今では仲良く眠っている。
酔いつぶれる時も両者仲良くダブルノックダウンだ。
「……ううん……おにいさまぁ」
レミリアの腕には未だ気持ちよさそうに眠ってはいるものの、抱き着いて離さないフランの姿。
紫は少し前に帰っていった。
「……楽しんでくれた様ね。白黒の魔法使いさん?」
「……う、あ、ああ、おかげさまで…………………ッて!?げぇっ!?お前は!?」
「………まだまだ余裕そうだから、これから私に付き合ってもらおうかしら?」
「…………あ、いや、その、あ、あはは」
「そうね、人間ではあるけど、魔法使い。一応同業の誼。貴女の魔法に関して少しだけ興味があるの。それに、魔導書に関しても、ねぇ?」
「あ、あはは、わ、私はこれで退散させていただきます、だぜ…………」
「……こぁ」
「かしこまりました!!」
「うわッ!?なんだお前!?やめッ!?ちょっ!?放せって!!」
「ええ、盛大に歓迎させていただくわ。そう、盛大に、ね。色々話したいこともたくさんあるもの」
「た、助けてくれ~ッ!!霊夢ッ!れいむ~~!!」
そう言ってパチュリーに捕まって地下室の方へと引きずらられながら霊夢に助けを求める魔理沙ではあるが、当の本人は酒に潰れて眠ってしまっている。
そんな魔理沙の悲痛な声は眠っている友人には届かず、魔理沙にとって地獄となるであろう場所へと引きずり込まれてしまった。
「……………とりあえず、運ぶか」
レミリアは酔いつぶれてしまっているチルノ達、咲夜と霊夢、フランを寝室に運んでしまおうと考えた。
そして、まずは抱き着いているフランから運んでしまおうと、フランを横抱きにして立ち上がり、フランの寝室へと進んでいく。
「……………全然、飲めなかったな」
少しだけ、残念そうな声でそんな不満の声をぽつりと漏らすのであった。
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宴会の場で酔いつぶれてしまっている皆を寝室へと運んで行ったレミリアは、流石に全然酒を飲むことが出来なかったことに満足がいかず、夜空を見ながら一人で楽しもうと屋上へと出た。
手にはワインとグラスを持って。
「……あれ?お坊ちゃまじゃないですか!」
「……ああ、レミリアさん、こんばんは、お邪魔しています」
屋上には先客がいたようで、『紅美鈴』と『八雲藍』がそこにはいた。
「む、どこにいたかと思ったら、こんなところで飲んでいたのか?」
「はい、賑やかな所で飲むのもいいんですが、たまには静かな場所で、と思いまして」
「私も美鈴さんと同意見です。どうにも騒がしい場所は私には合わない」
「そうか、私自身、あの場所が混沌とし過ぎて碌に飲めなかったんだ。ご一緒させていただこう」
「ええ、どうぞ!」
「ええ、飲み仲間が増えるのはいいものです」
そう言って美鈴と藍はもう一人分のスペースを作る。
そこにレミリアは腰を掛けて、3人は夜空を眺めて談笑をしながらゆっくりとお酒を楽しむのであった。
余談ではあるが、レミリアが霊夢を寝室へと運んでいる時、霊夢を客室へと運び、ベットに寝かしつけてやったときに眠っている霊夢がポツリと『お母さん』という寝言を漏らしてしまったそうだ。
翌日、霊夢と散々飲み比べをしていた咲夜や、無礼講ではしゃいでいた妖精メイド達に関して 当初から心配していた 咲夜をはじめとする妖精メイド達が羽目を外し過ぎて、二日酔い等でまともに動けないであろうことを危惧していたレミリアだったのだが。
何ともない顔で宴会の後片付けをする咲夜と妖精メイド達の姿を見て、流石に自分の配下である妖精メイド達と咲夜の優秀さを改めて実感せざるを得なかった様だ。
魔理沙に関してはパチュリーが散々『お話』をしたと言っていた。
魔理沙の目が虚ろになっていたのが、恐らくすべてを物語っていたのではないだろうか。
しかし、流石に憐れに思ったのか、期限通りに本を返すのであれば魔導書を貸してもいいとパチュリーが魔理沙に本を借りていくことを許可したそうだ。
その後の魔理沙の舞い上がり方はすごかった。本当に。
こうして、レミリア達は紅霧異変と、その後の紅魔館の宴会によって、幻想郷での一つの節目を迎えたのである。