私レミリア♂紅魔館がヤバい!   作:たぶくむ

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とうとう50話目に到達、変わりなく本編でごめんなさい!


春雪異変 ~3~

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「…………お、おい……霊夢。咲夜も…………」

 

 

ここは、雲の上。

 

なにやら大きな結界が上空に展開されており、どこかしら亀裂が生じている様子であり、そこから大きな妖気の様な物が感じられる場所である。

 

 

そこで、咲夜と、行動を共にしていた霊夢と魔理沙が鉢合わせになって数分後の光景である。

 

霊夢と咲夜が無言かつ無表情ながらも両者睨み合い、それを魔理沙がなだめているという状況なのである。

 

そんな両者のガンつけ合いが起こったことの発端は、少し前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上空の方が地上よりも断然暖かいなんて…………素敵すぎて涙が出そうだわ」

 

 

アリスの言葉通りに上空に昇っていった咲夜は、その上空の暖かさに感動していた。

 

 

吹雪で、辺りが見えず、それでいて服越しでもその雪の冷たさと寒さというのをひしひしと感じられる地上では、流石の咲夜も参っていた様子だ。

 

 

上空ではまるで春の様に暖かく、暖着を脱いでもいいくらいだ。

 

 

「………あの結界……不自然ね。あそこかしら」

 

 

上空に昇った咲夜は、そこで亀裂の生じている大きな結界を発見し、そこが異変の元凶ではないだろうかと当てを付けてそこに向かおうとする。

 

 

「………はぁぁぁ~!!暖かいぜ~!!」

 

 

「…………雲の上に桜が舞っている…………?あら、本当に暖かい」

 

 

結界の方へ向かおうとする咲夜であったが、下の方からそんな声がしたため、足を止める。

 

 

咲夜としても、無視できない声が聞こえてきたからである。

 

 

「…………貴方達」

 

 

「おっ!!咲夜じゃないか!久しぶりだな!」

 

 

「…………あんた」

 

 

声は、魔理沙と、やはりというべきか咲夜にとって因縁の相手である霊夢であった。

 

 

魔理沙は気さくな笑顔で此方に対して笑顔を浮かべているが、反対に霊夢の方は無表情は変わらないのだが、心なしか嫌な相手に出会ったと嫌悪の色の混じっているように思われる。

 

 

これは咲夜に関しても変わらないのだが…………。

 

 

「なんだ、咲夜もこの異変の解決か?」

 

 

「ええ、異変の解決をお坊ちゃまから命じられたの」

 

 

「そうかそうか!お前も異変解決が目的なら心強いぜ!なぁ?霊夢!…………霊夢?」

 

 

魔理沙は純粋に咲夜も異変解決に乗り出しているということを聞いて嬉しそうに霊夢に振る。

 

 

が、霊夢は魔理沙の言葉を無視したように無表情で、目では咲夜を睨みつけるように見ながら咲夜に面と向かう。

 

 

「…………何かしら?博麗の巫女様?」

 

 

「…………異変解決は私達の仕事よ、部外者は引っ込んでなさい」

 

 

「あら、そういう訳にはいかないわ。さっきの話を聞いていたかしら?それとも、理解できない凡愚なのか…………かしらねぇ?」

 

 

「…………おい、霊夢……咲夜も………落ち着けって」

 

 

無表情、冷たい目で咲夜を睨みつける霊夢と、そんな霊夢を挑発するかの様に煽っていく咲夜。 そんな彼女たちをなだめようとする魔理沙。

 

 

「あんたの飼い主の御命令?そんなこと、私が知ったことないわ。異変解決は私の仕事、部外者のあんたが来られちゃ迷惑なのよ、足手まといだわ」

 

 

「それこそ私にとってどうだっていいことだわ、そもそも、貴女が早く異変解決に乗り出してたら私が異変解決に乗り出さなくてよかったのよ?今更異変解決に躍起になるなんて、怠慢が過ぎるのではなくて?」

 

 

「…………」

 

 

「そんな怠慢な貴女の代わりに私が異変解決をしてあげようっていうのよ?迷惑者扱いではなくて、感極まって泣きながら土下座して、感謝するのが道理ではないの?」

 

 

「…………あんたねぇ…………!」

 

 

「ま、まぁまぁ!二人とも!落ち着けって!こんなところで言い争っている場合じゃないぜ?な?な?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、霊夢と咲夜が睨み合って現在の冷戦状態になっているのである。

きっかけがあればいつでも火蓋が切れる危うさがある。

 

 

「ふん、癪だけど、温情で異変解決についてくることを許可してあげるわ。感謝して、せいぜい足手まといにならないように隅の方でじっとしてなさい」

 

あの~すいませ~ん

 

「あら、御心配御無用。腕の方では自信があるもの、それも、貴女よりも…………ね?」

 

 

しかし無情、その二人の火蓋は切れかかる。

 

 

「…………へぇ、大した自信じゃない」

 

 

「ええ、そうね。醜態をさらした巫女様に温情で勝ちを譲られたお坊ちゃまの御墨付ですもの」

 

ちょっと~?

 

「…………なら、今ここで確かめてあげようかしら?」

 

 

「ふっ…………貴女にしてはいい案じゃない」

 

 

「ちょっと待てって!行ったそばからやり合うのはやめてくれ!!落ち着いてくれ~!!」

 

 

「す、すいませ~ん!!」

 

 

「「あ゛ぁ゛??」」

 

 

「なんだぜッ!!??」

 

 

 

「ひぃぃぃいい!!??」

 

 

 

霊夢と咲夜の言い合いと、それを必死でなだめようとする魔理沙の間に割って入って声をかけた勇気ある者は赤い服装に身を包んでいる薄茶色のショートヘアーの少女である。

 

 

勇気を出して声をかけたのはいいのだが、それに対する二人のガンつけと、少しだけ苛立っている様子のある魔理沙の返事である。

 

 

特に前者の方ではかなり恐ろしい形相になっているのだろうか、少女は目に見えて怯え、後ろに控えていた姉と思わしき薄水色のセミロングウェーブの少女に抱き着いている。

 

 

「あ、あの。わ、私達、これから花見大会の演奏があって…………そ、その…………肩慣らしに、予行演習を…………と思って、あ、あの…………」

 

 

「…………あわわわわわわ!!」

 

 

「…………だから声をかけるのはやめようって言ったんだよ、メルラン、リリカ」

 

 

三人の前で、怯えながらも必死に説明をしようとするトランペットを手に持っている薄水色の髪の少女『メルラン』

 

 

そのメルランの後ろに隠れてメルラン以上に怯えている薄茶色の少女、傍にはキーボードを備えている『リリカ』

 

 

そんな二人へ声をかけている一番冷静な金髪のストレートショートヘアーの少女、黒一色の服と手にはヴァイオリンを手に持っている『ルナサ』

 

 

姉の順から『ルナサ』『メルラン』『リリカ』の姉妹である彼女たちは騒霊という種族の『プリズムリバー三姉妹』である。

 

 

どうやら、話を聞くに、これから始まる花見大会の為に演奏をするためにやってきた妖怪達らしく、予行演習を聞いてもらうために、近くにいた霊夢たちへと声をかけたのだが、それが現在に至るのである。

 

 

「…………丁度いいわ。今ちょうどむかむかしていたところよ」

 

 

「…………フフッ、準備運動にちょうどいいわね」

 

 

「へ?え?あ、あの?ちょ、ちょっと!?」

 

 

「あわわわわわわわわ!!!」

 

 

突然合わられたプリズムリバー三姉妹に対して、先ほどの両者のガンの付け合いと煽り合いから生じたむかむかを、ぶつけてしまおうと霊力を纏わせ始める霊夢と咲夜。

 

 

それに対して困惑するメルランと怯えるリリカ。

 

 

「メルラン、リリカ、逃げるよ…………!」

 

 

「へぁ!?あ!?ルナサ姉さん!?」

 

 

「あわわわわわわわわ!!!」

 

 

「待ちなさいッ!!」

 

 

「逃がさないッ!!」

 

 

ルナサがメルランとリリカの手を引っ張って逃げ出そうと飛び出していく。

 

 

その後を追って霊夢と咲夜が後を追って飛び出す。

 

 

「…………………」

 

 

魔理沙はというと、話しかけただけなのに、難癖付けられている騒霊たちには同情するのだが、これで霊夢と咲夜の気が収まるんだったらそれでいいかと、黙って騒霊たちをボコボコにする霊夢と咲夜を見守るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………すっきりしたわ」

 

 

「…………………ふぅ」

 

 

「…………………これからは…………声をかける相手を…………選ばないと、ね」

 

 

「…………肝に銘じるわ…………ルナサ姉さん…………」

 

 

「人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い」

 

 

事が終わった後、魔理沙の目の前にあるのは、ボロボロにされているプリズムリバー三姉妹と、すっきりとした顔の霊夢と咲夜である。

 

 

三姉妹揃って演奏しているプリズムリバー三姉妹だが、弾幕ごっこでの彼女たちの連携は逸脱しており、並みの妖怪以上の力をそれぞれ持っているため、かなり霊夢たちにとっては強敵であるはずなのだが、それは今の霊夢たちにとっては関係がなかったらしい、まともにスペルカードでの対抗もできずにただ一方的に弾幕ごっこで嬲られていたプリズムリバー三姉妹。

 

彼女たちの十八番である合同スペルカードも十分に発揮できぬまま、完封されてしまった様子である。

 

 

「じゃ、先、行こうぜ。霊夢、咲夜」

 

 

「ええ、そうね」

 

 

「そうしましょう」

 

 

いがみ合っている霊夢と咲夜であったが、本来の目的は異変の解決であり、流石にいつまでも相手している場合ではないと両者感じたのか、魔理沙の言葉に二人素直に受け入れる。

 

 

魔理沙は、憐れな目でプリズムリバー三姉妹をチラリと一瞥した後、先を進むのであった。

 

 

三人は、亀裂の入っている結界へと向かい、その亀裂へと入っていくのだ。

 

 

彼女たちは、ようやく、異変の元凶ともいえる『冥界』へと足を踏み入れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

その日は、冬のように寒く、雪が降っていた日でした。

 

 

 

私は毎年春を告げるために外に出ます。

 

いつもはその頃には温かく、草木も芽や蕾を覗かせ、まさしく春到来といった景色が広がっているのですが…、今年は違いました。

 

 

本来咲くはずの草木、芽や蕾が咲き並ぶ暖かい春の姿とは反対に、見えるのは白一色、未だ冬の姿そのものでした。

 

 

しかし、私には今は春だということを本能的に感じ取っているのです。

 

だから私は、その本能に従い、そして春を告げるという使命感と共に私は各地へ飛び出し、春を告げるのです。

 

 

「春ですよー」

 

 

最初の行先は人里へ、春は人里の人たちには始まりの季節として喜ばれる季節です。

 

だから私が春を告げに行くと、皆嬉しそうな顔をして迎え入れてくれるのです。

 

 

でも、今年はどの家も扉をしめ切って、通りを歩いている人の姿が一つも見えません。

 

 

「春ですよー!」

 

 

大声で春を告げても、それに反応を示す人なんていませんでした。

こちらに少しだけ目を向けた後、それっきり目を向けることなく足早に立ち去ってしまいます。

 

 

「春ですよー!」

 

 

 

 

「春ですよー」

 

 

 

 

「………春、ですよ?」

 

 

 

 

「………春、ですよー…」

 

 

春を告げても告げても誰も反応してくれない。自分の役目であるはずの春の訪れを誰も聞いてくれない。

 

冬の様に寒いから、皆春だっていうことがまだ解らないだけかもしれないけれど、私には、なんだか春を歓迎されていない様にも感じられてしまう。

 

 

人里から離れ、妖精や毛玉に春を告げていきますが、毛玉は基本的にそういうことには無頓着ですし、妖精はこの天気にはしゃいで聞いてなんかいません。

 

 

なんだかいつもより張り切っている妖精と毛玉が多いようにも思われます。

 

私はだんだん自分の役割を果たせない状況に苛立ってきました。

 

 

「春ですよー!」

 

 

と、半ばやけくそ気味に偶然出会った銀髪の女性の方に春を告げると、『邪魔ッ!』と弾幕を放たれて吹き飛ばされてしまいました。

 

 

吹き飛ばされた先にも人間の女性の方が二名いらっしゃっていたので、同じく春を告げても『五月蠅い』とまたまた吹き飛ばされてしまいました。

 

 

 

吹き飛ばされた先、目の前には白一色の雪の光景しか見えません、きっとうつぶせに倒れているのでしょう。

 

 

「……ッ…………ふぇッ…!!」

 

 

次第に私の身体が震え始めます。寒いのではなく、春を告げても誰も聞いてくれず。歓迎されるどころか邪魔者扱いされてしまう私自身に、悔しさと、悲しさが胸いっぱいになってしまって

 

 

「ずっと春だって…………ッ言ってるのに………何で…………ッ誰も……ッ聞いてくれないんですか…………ッ!」

 

 

泣きながら、自分の中で燻っていた本音が、悲しみと悔しさが、口から吐き出す。

 

誰にも春を告げても聞いてくれない。私の存在意義がすっかりからっぽになってしまった空虚感ばかりが今の私に襲い掛かります。

 

 

「………うん?そんなところで泣いて、どうした?」

 

 

そんな私へと声をかけ、ゆっくりと労わるように体を起こしてくれた人がいました。

 

潤んでぼやいて見える瞳に映ったのは微かに見える綺麗な顔。

 

 

透き通るような青い髪と、輝くように、燃えているかの如くきらめく紅い瞳。

 

背後に見えるのはこの人の紅い眼と同じ赤い建物。

 

 

「あぁ、ほら、涙で顔がぐちゃぐちゃじゃないか。綺麗な顔が勿体ないぞ?…………ほら」

 

そう言って、優しい笑顔で声を掛け、手に取った絹のハンカチで優しく私のぐちゃぐちゃになっている顔を拭いてくれた美しい人。

 

 

…………私はこの人を知っています。

 

 

紅い瞳に青い髪、そして力を誇示しているかの如く生えている大きな翼。

 

この人は、いいえ、この吸血鬼さんは、人里の人間達からすごく恐れられている『レミリア・スカーレット』という吸血鬼だってこと。

 

 

前に、紅霧を発生させる異変を起こしているので人里の話題から未だ冷めることがないある意味有名な人。

 

私も、恐ろしい妖怪だっていう話を人里の人から聞いていて、怖い妖怪だなって思っていました。

 

 

そんな恐ろしい私の『レミリア・スカーレット』像とは正反対で、慈愛の笑みを浮かべながら私の顔を優しく拭いてくれるレミリアさん。

 

 

「どうしたんだ?そんなに泣いて。話くらいなら聞いてやれるぞ?」

 

 

と、優しい笑顔でそんなことを言う物ですから、すっかり私は絆されてしまって、今までのことを話してしまいました。

 

 

今は春のはずなのに、春を告げても誰も聞いてくれないこと。

 

 

春を告げる妖精なのに、その仕事を全うできず、自分の存在意義という物の有無を悩んでいるということ。

 

 

全て、私の愚痴も込みで入っているのに、レミリアさんは嫌な顔をせず、うん、うん、と聞いてくれています。

 

 

話しているうちにまた思い出してきて。再び泣き出しそうになってしまったとき、レミリアさんは落ち着かせるようにゆっくりと私の身体を抱きしめて

 

 

「大丈夫さ。皆、まだ冬だって錯覚しているだけで、無視なんてしていない。長い冬はもうすぐ終わる。この長い冬が終わった後、その時に春を皆に告げてくれ。そうさな、今夜中には終わるさ。私には解る」

 

 

抱きしめながら囁いてくれるその言葉に、その温もりに、身を委ねてしまいたい気持ちに陥ってしまう。

 

本当に、今夜中に冬が終わるって確証はないけど、この人が言うんだったらきっとそうなるって思ってしまう。

 

 

「それでも、不安なら。今、ここで、私がお前の春の告げを聞こう。私がお前(の存在意義)を守ってやる。それでいいだろう?」

 

 

「…………………あ、あう…………は、はい」

 

 

レミリアさんのその言葉に、私の頬は紅潮し始めます。

雪の白色もあって、きっとレミリアさんに顔が赤くなってしまっていることに気が付かれているかもしれません…………。

 

 

恥ずかしくって、顔をふいっと背けてしまいましたけど、レミリアさんは私を抱きしめる力は何ら変わりなく、優しく頭を撫でてくれます。

 

 

レミリアさんの言葉は甘言の様に甘く、私の中に溶け込んでしまいます。

 

 

…………こ、こんな優しくて、綺麗で…………カッコいい人に、守られるなんて…………

 

 

その後も、すっかりレミリアさんに絆されてしまいましたが、元気を取り戻して、私は再び、めげずに春を告げる仕事に戻りに行きました。

 

 

レミリアさんは、「頑張れよ」と、言葉をかけて、私を見送ってくれました。

 

 

紅魔館でのレミリアさんとの会話は私にとって沢山の勇気をいただけました。

 

 

だから、私は再び春を告げるために今度は妖怪の山へと向かうことにしました。

 

 

レミリアさんのあの綺麗な顔と、慈愛の笑みを思い出しながら、私は妖怪の山へと向かうのでした。

 

 

 

 

 

 

…………今度からは、紅魔館の優しいあの人に、一番最初に春を告げにいきたいな、なんて考えながら…………。

 

 

 




リリーちゃん報われ路線
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