私レミリア♂紅魔館がヤバい!   作:たぶくむ

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嬢の亡骸よ、永遠に


春雪異変 ~Extra?~

「ふふっ、紅白の蝶、黒い魔。御喜びになって?じきに西行妖の封印が解ける…………。決して満開にならなかった西行妖が…………ッ。封印が解かれ、もうすぐに花開きッ!本来の姿に戻るときが近づいているわ!!…………嗚呼、それはきっと…………。それはもう美しく!…………だから、貴女達も足掻き、美しく散りなさいッ!!」

 

 

絶対的な強者としての威圧感。

そしてそれを証明する次第に増大していく妖気と、膨大な弾幕。

 

 

もはや幽々子の表情はまるで、待ち遠しく何かを待つ無邪気な幼子の様に、そして愉しそうに笑いながら、無慈悲に霊夢達へ弾幕を放つ。

 

 

「…………………早いッ!?」

 

 

「…………………ッ!!」

 

 

始めの時とは一変し、魅せる美しい弾幕が崩れ、ただ『死』をもたらすためだけに放たれた殺意を込めた弾幕。

 

その攻撃の激しさに、霊夢は眉をひそめ、魔理沙はすぐさまその場から飛び離れる。

 

 

「ッ!?くッ!!まったくッ!品のないのはッ!どっちよッ!」

 

 

「おわッ!?おぉッ!?おいおいッ!反撃する暇がないぜ!?」

 

 

避けても追撃の弾幕が暇もなく襲い掛かってくる。

それは、霊夢達が反撃の動作すらできないほどに激しい弾幕。

 

 

「ふふっ!もっと踊り狂ってしまって?」

 

 

――幽曲『リポジトリ・オブ・ヒロカワ』

 

 

弾幕の激しさは変わらず、幽々子五つの弾幕の円を形成する。

祝言・幽玄・恋慕・哀傷・闌曲を現したそれぞれ5つの円に回る弾幕群。

 

 

その弾幕群は、直線的に霊夢と魔理沙に向かってくる。

 

 

「…………………ッ、魔理沙ッ!こっちに来なさいッ!」

 

 

「あぁ!?こっちに来いッたって避けるのが精一杯なんだっての!!」

 

 

その直線的に向かってくる弾幕が加わり、一層に激しさを増した幽々子の弾幕。

 

 

霊夢と魔理沙は、幽々子の弾幕を避けながらもそんな会話を交わすが、霊夢と魔理沙も、幽々子の弾幕を必死に避けるので精一杯であり、互いに合流することが出来ない。

 

 

「…………………ならッ!」

 

 

――夢符『二重結界』

 

 

霊夢は、二重に連なった結界を前方に形成して、弾幕を防ごうとする。

 

 

「………チッ!!やっぱり無理ね、すぐに押し返されそうになるッ!」

 

 

しかし、霊夢が切ったスペルカードは、前方の幽々子の弾幕と衝突するやいなや、次々とその結界が打ち破られていく。

 

かろうじて、少なからず時間稼ぎ程度にはできる様だ。

 

 

「ほらッ!これで一瞬くらいは動けるでしょ!?早く来なさいッ!」

 

 

「…………ッ!これなら十分だぜッ!助かるッ!」

 

 

霊夢が稼いだ少ないながらできた一瞬の安置、魔理沙はそれを見逃さない。

 

先ほどの霊夢の指示通りに、その一瞬で来た時間を利用して霊夢へと近寄る。

 

 

「もう一枚ッ!!」

 

 

――夢符『封魔陣』

 

 

そして、もう一枚のスペルカードも連続して宣告し、再び霊夢達の前に結界を張る。

 

 

「…………………魔理沙、耳を貸しなさい」

 

 

「あ、ああ。何だ?」

 

 

そして、前方の結界が幽々子の弾幕を受け止めている時間を利用して魔理沙へと作戦を告げる。

 

 

「……………一刻も早く、この異変を解決する。これはいい?」

 

 

「………ああ、私も薄々感じてるんだが、あの西行妖っていうのか?あれ、多分危険物だ、早々に何とかしないと不味い気がするぜ」

 

 

「………………時間は稼いでやるわ」

 

 

「…………!おい、それって…………ああ、解った!」

 

霊夢達は、幽々子の後ろにそびえたつ『西行妖』を見る。

今もなお、ざわざわと『春』を吸収していく姿が目に入る。

 

 

妖気を帯びた大きなお化け桜。

きっと満開になれば到底手が付けられない大事にでも発展するはずだ。

 

 

ならば、満開になってしまう前に早急に手を打つ。

 

 

そう、二人は目で合図する、それと同時に前方に張った『封魔陣』にひび割れが生じ始める

 

 

「…………できるだけ早くしなさい!そんなに時間を稼いでられないからッ!」

 

 

「へッ!三分もあれば余裕だぜ!それくらいだったら稼げるだろ?」

 

 

「……………簡単にいってくれるじゃない!…………上等ッ!」

 

 

魔理沙は、霊夢から、そして幽々子から距離を離す様に飛び出す。

 

見方によっては戦線を離脱したともとれる、いずれにせよ、幽々子からは魔理沙の姿を確認できない状況にできたはずだ。

 

 

…………なら、今度は時間稼ぎの役目ね…………!

 

 

霊夢は懐から再び数枚の御札を取り出す。

 

 

魔を、妖怪を封印するために作られた博麗直伝の封印用のお札。

 

これが亡霊相手に効くかはこれが初めてだから解らないが、妖気を持ってはいるから多分効くだろうと思い、霊夢は取り出した。

 

 

霊夢はそのお札を投げるタイミングを待つ。

先ほどからずっと防戦一方であるため、相手が反撃を予想してないであろう一瞬の隙を、相手の弾幕を受け止め続け、破壊寸前の結界越しに、幽々子がいるであろう場所を見定める。

 

 

…………ッ!今ッ!!

 

 

パリィィィイン!!と、霊夢の封魔陣が破壊される。

その瞬間、刹那の内に幽々子の姿を確認し、咄嗟に霊夢は手に持っていたお札を幽々子へと投げつける。

 

 

「………………あら?」

 

 

投げられたお札は、それぞれ拡散し、さらに分裂して幽々子へと殺到していく。

 

 

しかし、幽々子が放つ弾幕に逆らうようにこちらに向かってくるお札には、流石に勘が付くという物だ。

 

すぐさま幽々子は投げられたお札を確認し、それらに弾幕を放って撃ち落とす。

 

 

「この程度の弾幕量では、折角の反撃も無駄に終わってしまうわよ?………………ッ?」

 

 

投げられた拡散アミュレットを全て撃ち落とした後、霊夢がいるであろう方向へと目を向けるのだが、幽々子はすぐに目の前の光景の異常に気が付く。

 

 

霊夢がその場から姿を消している。

 

 

周囲には、幽々子が放った弾幕で覆いつくされており、目の前から素早く離脱できるほど大胆に回避行動をとれるようなスペースもないはずだ。

 

 

しかし幽々子は一切動揺せず、冷静に思考を巡らせる。

 

周囲に自分の大量の弾幕で行動範囲を制限しているため、考え得るのは弾幕が薄い場所へ、無意識的に弾幕が薄くなってしまうであろう場所へと霊夢が移動したということに考え付くのは容易である。

 

 

ならば、意識外に弾幕を薄くしてしまう場所とは…………?

 

 

「………下ねッ!!」

 

 

「ご名答ッ!!」

 

 

――霊符『夢想封印』

 

 

幽々子はすぐさま目線を下に、地面付近へと目を向けると、そこには低空飛行しながらこちらに近づいてくる霊夢の姿があった。

 

 

そして、幽々子が気が付いた瞬間に、霊夢は一枚のスペルカードを切る。

 

 

「無駄よ!『死』という概念から逃れられない貴方たちには、私へと弾幕を届かせることなど不可能に近いもの」

 

 

しかし、もう少し幽々子が気が付くのが遅かったならば、結果は違っていたのだろう。

 

 

霊夢の夢想封印は、容易に幽々子の弾幕によって霧散させられてしまい、霊夢の攻撃も無駄に終わってしまう。

 

 

「残念だったわね。もう少しで当てられそうだったのに」

 

 

「………………フッ」

 

 

「………どうして笑っているの…………?…………ッ!!??」

 

 

折角の攻撃が無駄に終わり、悔しがるかと思ったが、当の霊夢は不敵な笑みを浮かべているばかり。

 

それを不思議に思った幽々子だが、霊夢が自分ではなく、さらに後ろ、『西行妖』の方を見て笑みを浮かべているということを瞬間的に察した。

 

 

…………そういえば、あの黒い魔は?

 

 

先ほど、博麗の巫女と合流して、結界を張ったきり、あの黒い魔の姿を確認していなかった

 

 

…………まさかッ!!

 

 

幽々子は焦燥を顔に浮かべ、後ろを振り返る。

 

 

「サンキューだぜ!霊夢!時間稼ぎはバッチリだッ!!」

 

 

振り返った先には、箒に乗っている黒い魔。手には魔力が込められている小型の炉が。

 

 

「………やっちゃいなさいッ!魔理沙ッ!!」

 

 

「おう!これで終わりだぜッ!!」

 

 

――恋符『マスタースパーク』

 

 

駄目ッ!!それを放ってしまっては駄目ッ!!封印が解かれてしまう!!!…………………………ッ!!!???」

 

 

 

幽々子は、思わず無意識的に出てきてしまった自分の言葉に驚愕を隠せなかった。

思わず自分の口を抑え込み、先ほどの自分が放った言葉に驚愕する。

 

 

…………どうして?私は西行妖の封印を解くために、『春』を集めていたはず。

 

 

西行妖の封印を解こうとしたのには大した動機なんて何もないはずなのに。ただ単に、西行妖が満開になった姿を見たかっただけ…………。

 

 

確かに、ここまで強烈に物事へと惹かれたのは初めてだった。

自分が認識外でナニカを感じて、それに呼応したことには深い意味がある筈。

 

 

…………その『ナニカ』って…………?。

 

 

幽々子が思考を巡らせているのを妨げるかのように、けたたましい音が辺りに鳴り響く。

 

 

「…………………ッ!!」

 

 

思わず、その思考が止まり、目の前の光景へと向き直ると、西行妖に魔理沙の『マスタースパーク』が今にも当たりそうな光景だった。

 

 

マスタースパークが西行妖に衝突する。ゆっくりとスクロールして流れていく光景を目の前に見て。

 

 

「………あ…………あ…………ああ…………ッ!!??」

 

 

幽々子の中で、何かが弾けた。

 

 

「あ、あ、あああ…………。ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!

 

 

先ほどまでの気丈で、優雅であった幽々子の姿とは、まるで違う今の姿。

 

変貌ともいえるまでに崩れて、まるで悔恨の念に苛まれているかのような少女の慟哭。

 

 

西行妖を前に、急に胸のうちに込み上げてきた不安は、心を蝕む。これが何なのか、幽々子にもまるで解らない。

 

しかし、何故か自分が取り返しがつかない罪を背負わされたかのような、悲哀、憤激、悔恨、そして、懺悔。様々な念が幽々子へと襲う。

 

 

 

西行妖へと攻撃を行った魔理沙は、幽々子の異変に気が付き、急いで霊夢の元へと近寄っていく。

 

 

「ッ!!な、なんだってんだ!急にどうしたってんだ!?」

 

 

「…………ッ、私にだって解らないわよッ!急に大声で叫びだすもの…………ッあんた、西行妖はッ!!??」

 

 

「あ、ああ、目一杯食らわせてやったが…………」

 

 

あれほどの高火力のマスタースパークを食らわせてやったんだから、多少なりとも弱体化しているはずだ。

 

と、魔理沙が西行妖へと目を向ける。マスタースパークを食らって、先ほどまで活発に動き出している西行妖は、今では大人しくなっている様だ。

 

 

「あ、あぁ……いやだ。怖い、嫌だ…………ごめんなさい…………ごめんなさい…………ッ!!」

 

 

自分を抱え込んでいた幽々子の体がほんのりと妙な発光を始めた。体が薄く、希薄になってゆく。

 

 

「…………………ッ、何、これ?」

 

 

「な、なんだ?じょ、成仏でもしてるのか?」

 

 

光は拡散し、それが周囲の舞散る春の中へと紛れていく。

 

 

「ああ、い、いや……いやだ…………」

 

 

うわ言の様に、繰り返す幽々子。

 

 

次第に光の発行は強さを増し、ついには幽々子は光の粒となって消え去った。

 

 

「………消えた」

 

 

「…………消えた、な」

 

 

霊夢と魔理沙は、状況が掴めずに、困惑するのみ。

 

 

「………お、おい…異変解決…………で、いいんだよな?」

 

 

「……………知らないわよ、こんなケース、初めてだもの」

 

 

異変解決、そして妖怪退治を生業としている霊夢だが、このように、異変解決をしたとも言えない何か釈然としない空気もそうだが、異変の首謀者が突如消え去ってしまうといった摩訶不思議な事象は初めてであった。

 

 

ただ、幽々子と呼応するように、ざわざわと動き出していた西行妖だったが、今はすっかり鳴りを潜め、静かに佇んでいるのみであり、動き出そうとする気配すら感じない。

 

 

 

――――――ドクンッ

 

 

「「………………ッ!?」」

 

 

 

――――――――ドクンッ、ドクンッ

 

 

突如、どこからか聞こえてくる鼓動の音。

それと同時に感じる濃厚な『死』の気配。

 

 

いち早く察知した霊夢と魔理沙は、周囲を警戒しようと身体を動かそうとする。

 

 

「…………………なッ!?」

 

 

「…………う、動かないぜッ!?」

 

 

今まで感じたことのないざわめきにも似た警告音が、二人の中でバクバクと振動する。

 

 

これ以上は危険だ。早く離れろ。と

 

 

しかし、それとは裏腹に、強烈な威圧感が霊夢達の身体を押しつぶし、行動を阻害する。

 

 

「……………霊夢ッ!あそこを見ろッ!!」

 

 

「…………ッ!光が…………ッ!?」

 

 

霊夢と魔理沙は西行妖へと目を向けると、幽々子『だった』光の粒が西行妖へと集まっていく。

 

そして、西行妖が、先ほどの沈黙が嘘のように、息を吹き返したのかのように再びざわざわと鼓動を始める。

 

それは、先ほどまでより激しく、それでいて力強く。

 

 

空気を圧する『死』の気配は、より強く。そして、それに相乗する様に、身体を圧する威圧感も身体を押しつぶす。

 

 

…………西行妖が、動き出している。

 

 

霊夢と魔理沙に嫌な汗が噴き出てくる。

 

 

光の粒が西行妖へとどんどん集まってくる度に、ポツ、ポツ、と一つ一つ西行妖に蕾が開き始める。

 

 

「…………………ッ!?まずいッ!!」

 

 

「…………………おいおい、冗談じゃない!!」

 

霊夢と魔理沙は、重い身体を何とか動かして、何とかして西行妖へと光が集まるのを防ごうととにかく動き出す。

 

 

しかし、相手は実態のない光、どうすることもできず、そもそも身体が上手く動かないため、西行妖自体をどうこうすることもできない状況に居た。

 

 

西行妖に、光の粒が西行妖へと集まっていき、光の粒が次第に集結する。

 

 

そして、光が、西行寺幽々子が、西行妖に入った。

蕾が、開いた、一分咲。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………くあッッ!!??」

 

 

「…………………あぐッッ!!??」

 

 

霊夢と魔理沙は、突如として のしかかる重圧に、身体が押しつぶされるような感覚を感じて苦悶の表情へと変わる。

 

 

すぐに、顔をあげて、辺りを確認する。

 

 

「…………………くッ」

 

 

「………………これ…………は…………」

 

 

 

 さざめいていた木々の音も、春を告げる暖かな温風も、全てが死んだ。

西行妖が復活を遂げるその前兆。

 

 

『死』の重みが、重圧となって霊夢達にのしかかり、『死』の恐怖が辺りに蔓延する。

 

 

身体のいたるところから危険信号を告げる。逃げろ、と。

 

 

凄まじい死の呪いが辺りに滲み出る。

強力な呪いは辺りへと広がり、白玉楼に咲き誇っていた桜の木を次々と腐らせ、死を迎えさせた。

 

 

かろうじて霊夢たちが『死』を迎えていないのも、その身に宿している霊力と魔力のおかげであろうか。

 

 

しかし、ある程度の耐性があったとしてもその身にかかる重圧は平気でいられない程の威圧感だ。

 

 

今でもなお、胸を締め付けられそうな重圧に襲われ、心臓がバクバクと、鼓動が落ち着く暇がない。

 

 

「…………………ッ、魔理沙、一旦離れるわよ…………ッ!」

 

 

「………………あ、ああッ、そうした方が、よさそうだぜッ!…………ッ」

 

 

霊夢と魔理沙は、西行妖から放たれる威圧感と『死』の気配から逃れるように距離を取ろうとする。

 

 

 

「………貴女達…………ッ、どういう状況ッ、なのかしら?」

 

 

「……………ッ、ゆ、幽々子様は…………?幽々子様はどこに……?それに、この威圧感はッ!?」

 

 

はたして偶然か、霊夢達が退避している所に鉢合わせになるように、咲夜たちと合流を果たすのであった。

 

 

 

――――――『反魂蝶 一分咲』

西行妖は、より『春』を集める。

 

 

その先にある世界の終焉へ向かって。

 

 

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