私レミリア♂紅魔館がヤバい!   作:たぶくむ

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春雪異変 ~Extra 2~

「そ、そんな…………幽々子様が…………」

 

 

「…………状況は理解したけど、これからどうするつもり?解決できそうにないから手を引きます、とでもいうのかしら?」

 

 

「…………まさか、私は博麗の巫女よ。異変を解決するって言ったらするのが信条よ。めげてたまるもんですか」

 

 

「…………でもよ、あのお化け桜をどうするったって、近寄れないんじゃ話にならないぜ?」

 

 

西行妖から少し離れた場所に避難した霊夢と魔理沙は、その場で合流した咲夜と妖夢に事情説明をしている最中であった。

 

 

妖夢は、幽々子が西行妖に取り込まれてしまったことへ驚愕と、絶望の表情を隠しきれず、動揺のあまり目が泳いでいる様子だ。

 

 

あまりにも強大な西行妖。

 

 

しかし彼女たちは戦意を喪失することなく、西行妖が放つ威圧感に多少竦むものの、彼女たちの霊力、魔力からなる『気』によって多少、受ける威圧感は緩和されている様だ。

 

 

西行妖をどうにかする。

 

 

しかし、西行妖をどうにかするといっても、幽々子以上に強大な妖気を放ち、現時点でも近づこうものなら、おびただしい量の弾幕とレーザーが襲ってくることは明白だ。

 

 

まともな解決策が出ず、どうしたものかと魔理沙が苦言を呈する。

 

 

「………簡単な話よ。全員で西行妖を完全に破壊して、再封印する。たったこれだけ。どう?簡単でしょ?」

 

 

「………はぁ、まともな解決案何て大して期待はしてないけど…………」

 

 

「…………簡単に言ってくれるぜ、まったく…………」

 

 

結局はどうにかして西行妖に近づいて、完全に無力化する。

単純明快であるが、それが出来れば苦労はしないというものである。

 

 

「………ッ!?だ、駄目です!!あ、あそこには、ッ西行妖には、幽々子様がッ!!!」

 

 

だが、やはりというべきか、西行妖を完全に無力化する。いや、破壊するという案に対しては妖夢が難色を示す。

 

 

それはそうだ。今の西行妖には彼女の主である『西行寺幽々子』が取り込まれているのだ。

 

西行妖を完全に破壊して封印してしまえば、自分の主である西行寺幽々子が無事でいられる可能性が低いだろう。

 

 

「…………仕方がないでしょ、あの西行妖を放っておいたら、ここだけじゃなく、幻想郷にも被害を及ぼしかねないわ。それも、幻想郷が崩壊してしまう程の危険性を帯びている。そんな私情、捨てなさい」

 

 

「…………………ッ!!!」

 

 

霊夢のあんまりな言葉に妖夢はぐっと唇を強く噛む。

妖夢にもあの西行妖への危険性を今にはっきりと感じている所だ。

 

霊夢の言い分は正しくて、自分の主だからという理由で反対している自分の言い分が正しくないということを妖夢は理解している。

 

 

 

今まで、封印されていると言われている西行妖であった。

祖父から、あの西行妖について何かしら言われていたような気がしたのだが、幼い妖夢にはその重大性が理解できなかった。

 

ただ、主である幽々子が、なんとなく西行妖の封印を解いて、満開になる姿が見たいと言ったから、その命令通りに幻想郷から『春』を集めていただけなのだ。

 

 

…………西行妖について、その危険性を私が良く知っていれば…………ッ!!

 

 

たらればの話など、考えても仕方がない。

だが、妖夢は、当時の自分の短慮さを恨めしく思わずにはいられない。

 

 

「…………なぁ、霊夢。その幽々子ってやつと西行妖から救い出すってことは出来ないのか?」

 

 

「……………不可能ではないけど、可能性は限りなく低いわ」

 

 

「あら、可能性があるなら十分じゃない。それで?方法は?」

 

 

顔を伏せて、両手に力が入って後悔の念に苛まれている妖夢の姿を見かねて、魔理沙と咲夜は幽々子を救い出す方法を聞き出そうとする。

 

 

魔理沙と咲夜は、ただ自分の主をみすみす見殺しにしてしまうことになってしまう妖夢へ同情の心が湧いたのである。

 

咲夜に関しては自身も敬愛する主がいるため、尚更である。

西行妖に取り込まれてしまったという状況に置いて、妖夢に同情の気持ちを隠し切れない。

 

 

もし、私がお坊ちゃまを見殺しにしなければいけない状況に陥ってしまったら…………?

 

それは、今すぐにでもお坊ちゃまの後を追って殉死してしまいたいくらいだ。

 

もし自分が妖夢の立場であったら。それは筆舌に尽くし難いほどの悔しさと、情けなさ。そして己の無力さを痛感してしまうほどの苦悩だろう。

 

 

それだけに、やはり主を見捨てなければいけない妖夢の不憫さに憐みの心が湧いた。

 

 

「…………………妖夢って言ったわね。あんたの持ってるその剣で西行妖をぶった斬って、切り離すのよ」

 

 

「……………この、楼観剣、で…………」

 

 

妖夢は、一筋の希望を受けて目に光が入り、ぷるぷると震える右腕を動かし、右手にある『楼観剣』を見る。

 

 

「一振りで幽霊10匹分の殺傷力を持つ」とまで謳われたこの剣で、西行妖と幽々子様の境界を切断しなければいけないのだ。

 

 

失敗すれば、そのまま幽々子様ごと西行妖が消滅してしまう可能性もあれば、幽々子様がこの剣によって殺されてしまうかもしれない。

 

いや、その両方の方が可能性ははるかに高いだろう。

 

 

「…………やるんだったら早くしなさい。アレにこれ以上力を増させるわけにはいかない。あまりうかうかしてられる時間はないもの」

 

 

「…………………ッ、わかり、ました…………」

 

 

妖夢は、ぎゅっと楼観剣を握っている右手に力を込めて顔をあげる。

 

 

しかし、その顔は何かを決意した顔ではなく、何とか持ち直したような、酷い顔色であった。

 

 

「作戦は頭に叩き込んだわね?じゃあ…………行くわよッ!!」

 

 

霊夢のその一声によって妖夢を残して3人は一斉に西行妖へと向かっていく。

霊夢、魔理沙、咲夜の3人は標的にならないように空を飛んで注意を逸らそうと動き出す。

 

対する西行妖も、向かってくる3人の侵入者に向けて大量の弾幕と、直線的なレーザーの弾幕を放つ。

 

 

しかし、美しさもなければ、緻密に練られている弾幕でもないようで、4人にとっては簡単に避けやすい様なものだ。

 

 

「ハッ!!こんな弾幕ッ!そこらの子供でもましな弾幕は放てるぜッ!!まずはそのデカい図体に一発お見舞いしてやる!それだけデカければ当てがいがあるぜッ!!」

 

 

――恋符『マスタースパーク』

 

 

西行妖へ向けられたミニ八卦炉から、マスタースパークが放たれる。

爆音が鳴り響き、極太のレーザーが西行妖へと向かっていく。

 

幽々子の様にちょこまか動くような相手でもなければ、当てられないほどの大きさでもない。

 

 

魔理沙のマスタースパークは、特に西行妖が放つ弾幕によって霧散させられることもなく、西行妖へとまっすぐに向かっていく。

 

 

 

バチィィィィィィィィイイイイ!!!!

 

 

しかし、魔理沙のマスタースパークが西行妖に衝突する寸前に、西行妖全体を守るように大きな結界が展開され、マスタースパークが防がれてしまう。

 

 

「………………ッ、おいおい。結界かよ…………冗談じゃないぜ。当たったと思ったのに」

 

 

魔理沙は、煙立つミニ八卦炉をその場でブンブンと軽く振りながらそう軽口を呟く。

 

 

「だったら、結界ごとぶち壊すまでよッ!!」

 

 

――霊符『夢想封印』

 

 

「ふむ、意見が被るのは少し癪に障るけど………」

 

 

――奇術『エターナルミーク』

 

 

魔理沙のマスタースパークに続くように、霊夢と咲夜もスペルカードを宣告し、西行妖前の結界を破壊してしまおうと全弾幕を結界へ叩き込む。

 

 

 

――――パリィィィィィィイイン!!!

 

 

ガラスが割れたような音と共に、結界が破壊される。

 

 

しかし、霊夢達もスペルカードを切ったものの、結界を破壊するだけで終わってしまった。

 

 

「おぉ、邪魔だった結界が壊れたぜ、後は妖夢が…………いや、まだみたいだ」

 

 

「……だったら、それまで西行妖をぼっこぼこにして弱らせてやるわ。それより、アンタ、ナイフはどうしたのよナイフは」

 

 

「結界なんかにナイフなんか投げたって意味がないでしょう?結果的に結界を破壊させれたのだから結果オーライよ」

 

 

魔理沙は、西行妖の結界が破壊された後、後方にいる妖夢を一瞥するが、未だ彼女は心の整理がついていないようで、目をすっと閉じて気を落ち着かせている姿が目に入る。

 

 

その姿はまるで居合の様だ。

 

 

霊夢と咲夜に関しては、この状況に陥っているというのにやりあっている。

 

 

「…………ッ!無駄口を叩いている暇はないぜ、霊夢、咲夜。」

 

 

「……………ッ、ええ、そうね。やっぱり待ってられそうにないわ。…………やるんだったらさっさとやってほしいけど」

 

 

「…………どんどん西行妖の花が開いていってるわね。それに、妖気も増している。辛い耐久戦になりそうね」

 

 

しかし、そうこうしている間に西行妖は着々と『春』を集め、その力が増していく。

一分咲であった西行妖は、その身に『春』が集い。

さらに花開く。

 

 

それに合わせ、西行妖が放つ弾幕にも厚みが増す。

邪魔な者には死へと誘なわんとばかりに攻撃が激しくなる。

 

 

まるで、感情に例えるのならば、怒っているかの様な激しさだ。

 

 

お返しにと霊夢達も弾幕を撃つが、いつの間にか再結成したのか、西行妖を守るように結界が展開されており、霊夢達の弾幕は全て無効化されてしまった。

 

 

「だったら…………またぶっ壊してやるまでよッ!!」

 

 

──霊符『夢想封印 集』

 

 

「ハッ!上等ッ!………手が痺れるからあんまし使いたくなかったんだが。新技だぜッ!」

 

 

──恋心『ダブルスパーク』

 

 

「………………結界にナイフは通用するのかしら?………まぁ、やってみないと解らないけど」

 

 

──幻符『殺人ドール』

 

 

三人は、勢いが増した弾幕を躱し、散開してそれぞれ西行妖へとスペルカードを放つ。

 

 

彼女たちの弾幕は、結界を破り、西行妖へとその弾幕が到達する。

しかし、決定打にはならなかったものの、西行妖に所々焼き目が着くのみ。

 

霊夢達も西行妖に負けじと弾幕を放っていく。

 

 

西行妖の封印が刻一刻と解かれているこの状況、何とかしてその流れを断ち切らんと。

 

 

そして、最後の一人、『魂魄妖夢』が再起することを信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

…………どうしてこうなってしまったのか。

 

 

後方にぽつんと、妖夢は目を閉じ一人自問自答していた。

 

 

西行妖に幽々子様が取り込まれ、そして今、西行妖の封印が解かれてしまうという状況。

そして、封印が解かれてしまえば、文字通り、幻想郷の終わりとなってしまうということ。

 

 

ぽっかりと空いた虚無の心。そこに悲しさ、虚しさ、無力感が続々と流れ込んでくる。

 

 

自らの剣であの西行妖を断ち切らねば、幽々子様を助け出すことが出来ない。

しかし、もしその剣が幽々子様へと届き、消滅させてしまったら?

 

 

そうこうしている間にも彼女たちが西行妖を破壊して、再び封印してしまうことだろう。

 

 

嗚呼、こんな時、祖父が、師がいれば…………。

きっと、幽々子様を救い出してしまうことだろう。

 

 

祖父が、『魂魄妖忌』がいれば…………。

 

 

…………私には、『半人前』の私に、『幽々子様』を斬れるのか…………。

 

 

幽々子様を守れずして、何が魂魄家だ。

為せばならぬ。そうだ…………為さなければ。

 

 

妖夢は自身の中に激しく沸き立つ焦燥と迷いを無理やりにでも押し込む。

はっと目を開けると、未だ封印は解かれていないが五分咲の西行妖と、未だ戦っている三人の姿。

 

 

振るえる腕をこらえ、ぎゅっと楼観剣を握る。

 

…………そうだ、迷ってはならぬ、迷っては…………。

 

 

妖夢は、三人に遅ればせながらも、西行妖へと突き進む。

 

 

「うぁあああああああああああああああ!!」

 

 

妖夢は、己の迷いをかき消すため、大声をあげながら西行妖へと走り出していく。

 

 

西行妖も、新手の妖夢に対し、近づかせまいと妖夢に弾幕を集中させる。

 

 

「フッ、弾幕から他人を守るなんて、初めてね」

 

 

──時符『パーフェクトスクウェア』

 

 

咲夜のスペルカードによって、妖夢に向かっていた弾幕が全て停止する。

 

 

「おいおい、お化け桜!!気を取られてていいのか?がら空きだぜ!!」

 

 

──恋符『マスタースパーク』

 

 

「はぁ、そろそろ潮時かしら?疲れすぎて何の感情もわかないわ」

 

 

──霊符『夢想封印』

 

 

妖夢へと弾幕を集中させていたため、他三人に対して無防備になっていた西行妖。

他三人が満身創痍であったということもあるのだろうか、完全に西行妖にとってはノーマークだった霊夢と魔理沙の攻撃。

 

 

そして、咲夜によって全ての弾幕を停止させられてしまったため、ろくな反撃もできない。

 

 

滅多にない好機、走り出していた妖夢は西行妖へと接近しており、踏み込めば一太刀浴びせられる距離にまで近づいている。

 

 

「よしッ!!やっちまえ!妖夢!!」

 

 

「…………………ッ」

 

 

妖夢は、後ろの方から聞こえる魔理沙の応援を背に、キッ、と目を開く。

 

 

西行妖から、幽々子様を救い出す。

 

 

…………幽々子様、今少しの辛抱です。必ず、お助けいたします…………ッ!

 

 

妖夢は、楼観剣を振りかぶり、そして、西行妖へと振り下ろす。

 

 

 

…………止めて…………妖夢…………

 

 

「…………………ッ!!!!!!?????」

 

 

しかし、楼観剣に西行妖が斬られる寸前で妖夢の手がピタッと止まった。

 

 

予想外の主の声。そして予想外だった主の拒絶の声。

それは懇願する様にも、助けを乞うようにも聞こえる声。

 

 

押し込んでいた自身の迷いが、一気に沸き上がった。

刀を持つ手に、震えが生じ、振り下ろしてしまえばすぐに斬ることが出来るのに、その手は一向に動かない。

 

まるで、自分の手ではないように…………。

 

 

…………止めて…………妖夢…………お願い……。

 

 

「……………ッ!」

 

 

妖夢は再び聞こえる主の声にきゅっと目を閉じる。

 

 

「何やっているの!?その声は西行妖の物よッ!!あんたの主の声じゃないわ!!早くッ!!」

 

 

「妖夢ッ!!!早くその手を下ろして斬っちゃうんだぜッ!!妖夢ッ!!!!」

 

 

「…………………ッ!妖夢ッ!!!」

 

 

後方から、焦燥を帯びた三人の声が聞こえる。

 

きっと、西行妖は今もなお、起死回生となる『春』を集めようとしているのだろう。

 

 

これが、幽々子様が発している声ではなく、この西行妖が時間稼ぎの為に主である幽々子様の声を模倣して発しているだけだ。

これは妖夢にも解る。

 

 

………けれど………けれど…………ッ!!!

 

 

「…………………ッ斬れま…………ッせん…………ッ!!」

 

 

妖夢は、西行妖からじりじりと後退し、脱力したかのように膝を着く。

 

ポロポロと、彼女の頬から雫が流れ落ちる。

 

 

「…………………ッ!!あの馬鹿ッ!!!!」

 

 

「魔理沙ッ!!近寄っては駄目ッ!!」

 

 

「………………妖夢を持ってくるッ!!」

 

 

「西行妖がまた復活するわ!!危険よ!!」

 

 

魔理沙は、西行妖のすぐそばで戦意喪失し、泣き出している妖夢の姿を見て、そうつぶやくと、急いで妖夢の元へと急行する。

 

霊夢は、その魔理沙を呼び止めようと声を張り上げる。

 

しかし、魔理沙は、その声を無視する様に一目散に妖夢へと飛び出していく。

 

 

「チッ!!咲夜ッ!!魔理沙を援護するわよッ!!」

 

 

「ええッ!言われなくてもッ!!」

 

 

霊夢と咲夜は、西行妖に向けて、弾幕を放つ。

少しでも『春』を集めるのを妨害するために。

 

 

魔理沙は妖夢の元へと近づき、妖夢を救出する。

 

 

しかし、霊夢と咲夜の弾幕が西行妖に当たる瞬間、既に遅かった。

 

 

『春』が集う。 その桜は八分咲へと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、傷だらけであった西行妖が完全に回復した。

焼き目は見る影もなく完全に修復され、焼き焦げた部分もすっかり治った。

 

 

八分咲になった西行妖は完全復活を遂げ、以前とはまるっきり違う人智、それも、妖怪ですら理解を超えるであろう妖気を帯び、見るものを震え上がらせるほどの威圧感と不気味な美しさを醸し出す。

 

 

満開には劣るが、それでもどうにも手の施しようのない西行妖が、そこにはあった。

 

 

「魔理沙ッ!!急いでそこから離れなさいッ!!」

 

 

叫びにも似た霊夢の声が辺りに響く。

 

 

「………あ、ああ!!…………うわッ!?くそッ!!弾幕が激しいッ!!」

 

 

「………………あ…………あぁ…………」

 

 

魔理沙は、箒の後ろに呆然となっている妖夢を乗せ、急いで西行妖から距離を離そうとするが、近くにいる分、西行妖の攻撃は激しくなる。

 

避けても避けても迫りくる弾幕に悪戦苦闘している。

 

 

「うわッ!!??しまった!?」

 

 

何とか避けていた魔理沙であったが、遂には避けきれず、またがっている箒に西行妖の弾幕が当たり、体勢を崩してしまう。

 

 

「魔理沙ッ!!??妖夢ッ!!」

 

 

体勢を崩した絶好の獲物を逃さないと、西行妖は、トドメのレーザーを放つ。

 

 

「…………………ッ!!」

 

 

「………あ…………」

 

 

西行妖のレーザーにどうすることもできず、魔理沙たちは呑み込まれてしまう。

 

 

「………ッ!!咲夜ッ!!あんたッ!!時を止めれたんでしょ!!??」

 

 

「………やっているッ!やってるわッ!!けどッ!!『能力』が発動しないのよッ!!!!」

 

 

「…………なんですって…………ッ!!??」

 

霊夢の嘆きにも似た怒号が咲夜へと投げかけられる。

しかし、咲夜も何がどうなっているか解らないと、でも言うように

霊夢に返す。

 

 

咲夜も、魔理沙たちを助けようと時間停止を発動させようとした。しかし、突然その能力が使えなくなってしまったのだ。

 

これはどうしたことかと、咲夜に動揺が走る。

 

 

しかし、その一瞬の隙が命とりであった。

 

 

「…………ッ!!咲夜ッ!!前ッ!!!」

 

 

「…………なっ!!??」

 

 

霊夢の声にはっと気が付き、前を向く。

 

 

そこには、魔理沙たちを飲み込んだものと同じ弾幕。レーザーが。

 

 

急に咲夜は視界がスローモーションになる。

しかし、それと同様に自分の身体も思うように動けず、ただ、目の前に向かってくるレーザーを見ているのみ。

 

 

咲夜は完全に今の状況を理解した。

ああ、これは避けきれない。と。

 

 

咲夜の目の前には、敬愛するレミリアの姿と、紅魔館で優しい笑顔を向けてくれる皆。そして自分を慕う妖精メイド達の姿が映る。

 

 

これが走馬灯かと、冷静になった頭で咲夜は考える。

 

 

 

 

…………嗚呼、申し訳ありません。お坊ちゃま。命令を遂行できないばかりか、多大なるご恩をお返しできずにここで散ってしまうとは。

 

 

 

咲夜は、ゆっくりと目を閉じる。ただ感じるのは、命令を遂行できない自分の不甲斐なさと、敬愛するレミリアへの後悔の念。

 

まだ、お坊ちゃまに御恩をお返しできず、志半ばで費えてしまうのかと。

 

 

咲夜は、そんな主に対する後悔を抱きながら、深く目を閉じた。

不思議と痛みは感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ふぅ、何とか間に合ったようだな」

 

 

…………嗚呼、こんな時にお坊ちゃまの御声が聞こえるなんて…………。

 

 

「……うん?どうした。咲夜。そのように目を閉じて」

 

 

…………夢………ですか。フフッ………私には勿体ない幸福ですね…………。

 

 

「何だ。笑顔など浮かべおって、まだお前に命じた異変解決は終わってはいない。ほら、目を開けよ」

 

 

…………?これは…………夢…………?

 

 

「冬を終わらせることがお前に命じたことだ。『冥界』で死ぬなど命じてはいない。ほら、さっさと目を開けよ」

 

 

咲夜は敬愛する主の声にこたえるようにゆっくりと目を開ける。

 

 

「……………あ………お坊…………ちゃ……ま」

 

 

「フッ、呼んだらすぐに応えぬか。馬鹿者」

 

 

咲夜の目の前には、美しく透き通る青い髪と、宝石の様に輝く紅い瞳。

不敵な笑みを浮かべながら、その目は慈愛に満ちたその顔。

 

 

そう…………。

 

 

長年お仕えし、そして敬愛する『レミリア・スカーレット』だった。

 

 

 

 

 

 




主 人 公 降 臨 !!

いつからおうぜ様が原作未登場シリーズに顔を出さないと決めたァ!!!
長かった。本当に長かった…………。
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