私レミリア♂紅魔館がヤバい!   作:たぶくむ

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長らくお待たせいたしましたが、只今帰って参りました!

今回から2.5章 妖々夢と永夜抄の間の物語、萃夢想に入ります。
しかし、永夜抄への繋ぎ?の様な扱いとして書くため、少しだけ短めです。


原作 ~東方萃夢想~
日置きの百鬼夜行 ~1~


「お坊ちゃま、異変の調査に向かわせていただきます」

 

 

長かった冬も、短いながら盛大だった春も、幻想郷から過ぎ去ろうとしていた。

あれほど山を薄紫色に染めていた桜はなりを潜め、既に深い緑に包まれていた。

 

今日も変わらず普通の一日を満喫しようと起床した瞬間、目の前にはいつも変わらずメイド服の咲夜が寝起きのレミリアに向かっての唐突の一言であった。

 

 

「……………………」

 

 

そんな咲夜の一言にレミリアは無言を貫き、言葉を返さない。

言葉を交わさずに、無表情に咲夜を見つめるレミリア。咲夜はもちろん心得たとばかりに頷く。

 

言葉を交わさずともお坊ちゃまと私は理解し合える。言いようのない高揚感を覚える咲夜。

 

 

レミリアの紅い瞳を一身に受ける咲夜は、その場からすくっと立ち上がり、ドアの前まで戻って一礼して一言。

 

 

「では、失礼いたします」

 

 

「ちょ、まてまてまてまて、成り行きが解らん、成り行きが」

 

 

 

 

しかし、現実は非情である。

寝起きで唐突に告げられたレミリアにはまったく理解されなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なるほど、だから異変だと?」

 

 

「ええ、明らかに宴会の頻度が多すぎます。…………頻度は恐らく三日ごとの周期かと思われます。それに、宴会が終わるごとに高まっていく妖気もどこか不穏ですわ」

 

 

時は進み、テラスでは咲夜と日除けのパラソルが付けられたチェアに座り、咲夜が淹れた紅茶を口に含みながら咲夜から説明を受けているレミリアがいた。

 

 

もう春も終わりを迎え、時期は既に夏。

 

もはや宴会も鳴りを潜める時期になっているというのに春と変わらず繰り返し行われている宴会。

夏に入っても宴会を繰り返し、それに違和感を覚えない人里の人間達。

 

 

咲夜も初めは問題にすら感じていなかったのだが、どんどん妖気が高まっているというのに違和感を覚えず宴会を繰り返していく人間達や妖怪達の姿に流石に違和感を覚え、レミリアに直訴しに来たという訳である。

 

 

「ふむ…………」

 

 

レミリアは咲夜の説明を受けて少しだけ思考する。

 

人間界の事情についてはあまりよく知らないレミリアであるが、確かに夏に入っても宴会三昧で誰も問題と捉えないこの状況には少しだけ不思議に思っていた。

 

 

だが、別に紅魔館に危害が加わる程の事件ではない。それにそういうことも偶にはあるだろう、とさほど問題にしていなかったということもある。

事実、宴会は人里、または博麗神社で行われていたのだ。

 

妖気が高まっているというのも、それほど問題視しておらず、そういうこともあるのかとレミリアが一人納得していたのである。

 

 

「しかし、咲夜も今になって気付くとは珍しいな。異変だとすればすぐに察知してしまいそうなものだが」

 

 

「ええ、ですから不思議なのです。…………この時になって今更異変だと気付いたというのもおかしい話です」

 

 

しかし、咲夜が珍しくも短い周期で何回も繰り返されていく宴会に嫌な顔をせずに喜々*1として宴会に参加しているものだったから今更咲夜がこの状況を異変だと感じたのは少しばかり驚きだ。

 

 

そこで、レミリアはこの異変であるとされる今の状況を改めて危険視する。

 

自慢ではないが、咲夜は優秀だ。

いや、まぁ、多少の粗はあるのだが*2さほど問題ではなく、咲夜は完璧な従者であると自慢できるほどによくできた子だ。

 

 

そんな咲夜が今になって終わらない宴会を異変だと認識したということは、咲夜をしてもこの異変を意識外にすることのできる実力者、もしくは能力者がいるということである。

 

 

「…………なら、早めに手を打っておいた方が吉か」

 

 

レミリアは誰に言うまでもなく独り言ちる。

 

咲夜が異変に気が付くとなれば、同じくらいに霊夢達もこの状況に違和感を感じ、異変だと思って動き出してくる頃だろう。

 

 

 

…………それに、異変解決、妖怪退治は人間の役目だ。

 

 

「解った。咲夜、遅れたが異変調査を許可しよう。準備ができ次第、異変調査、可能であれば異変解決してくれても構わない」

 

 

「かしこまりま「ただし」…………?」

 

 

咲夜の言葉を遮るようにしてレミリアは続ける。

 

 

「調査中に異常だと感じたら、もしくは予想外のことが起こったら、すぐに私に伝えること。それと、暗くなったらすぐに帰ること。それだけは約束してくれ」

 

 

「…………はい、肝に銘じて」

 

 

「…………なら、これで私の話は終わりだ。いい報告を期待しておくよ」

 

 

咲夜はレミリアの言葉をしっかりと聞き遂げた後、「失礼いたします」と一礼してその場から姿を消した。

 

 

咲夜がいなくなったテラスで、レミリアは一人温くなった紅茶を口に含みながら、快晴と言わんばかりに燦燦と晴れている外を眺める。

 

 

春雪異変の二の前だけは決して踏むまい。と密かに決意を宿してレミリアはまるで我が子の帰りを待つ親の様にそこに居る。

 

 

もし必要とあらば。否、咲夜に少しでも危害が加わろうものなら、すぐにでも…………。

と、そこまで考えてふと、多少過保護が過ぎるかなとレミリアは思ったが、それほど咲夜を大事に思っているからこそだと払拭させる。

 

 

人間達から怖がられ、恐れられる存在である吸血鬼が人間を心配するとは、私も変わってしまったものだ。

レミリアはふっ、と一笑して、再び紅茶を口に含む。

 

 

「…………ッ?」

 

 

そして、レミリアは微かに、意識しなければ到底気が付かない程に微弱な妖気がこの場から消え去ってしまったのを感じ取る。

 

 

そっとテーブルにティーカップを置き、ティーポットを手に持った途端、くっ、と顔を歪めさせて咲夜が出ていったドアを眺める。

 

その目は悔恨の様な表情を帯び、レミリアが今何を思っているのか解らない。

 

 

「…………咲夜に行かせる前に、もう一回だけ紅茶を淹れて貰えばよかった」

 

 

空になったティーポットの軽さを感じながら、多少の後悔と共にそんなことを口にする。

 

 

確かに微弱になった妖気が消え去ってしまったのは少しだけ不思議だったが、そんなことよりティーポットが空になってしまったことが今のレミリアにとって死活問題だ。

 

 

妖精メイドに淹れて貰えばいいのだが、如何せん咲夜の紅茶に慣れてしまった。

妖精メイド達も咲夜が育て上げたので悪くはないのだが、咲夜の紅茶と比べてしまえばまるっきり違う。何をすれば味わい深い芳醇な紅茶が出来上がるのか。

 

 

咲夜の紅茶でなければ満足が出来ないくらいにレミリアの舌は完全に調教されてしまっている。

それほどまでにレミリアは咲夜の紅茶をどこぞの紳士の国よろしくキメてしまっていたのである。

 

 

無表情ながら、テラスでポツンと空になってティーカップを持ってドアを眺めているレミリアの後姿は元気なく垂れ下がっている翼も相まって憐憫を誘う程しょぼくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鬼』

 

 

それは強さの象徴、そして、人間の天敵とされ、強さの代名詞にまでも用いられてきた妖怪だ。

昔、それも古来から人間に天狗と並び恐れられてきた存在ではあるものの、時がたつにつれてこの地から存在を消してしまい、伝説上の妖怪とされていることがある。

 

幻想郷の中でも『鬼』という存在は空想上の存在だとされることがある。

それほど、人間界での『鬼』という存在は歴史的に浅い妖怪であったのだ。

 

逆に、鬼と並んで恐れられていた天狗は妖怪の山に独自の社会を作って生活しているため、鬼とは違ってその存在をきちんと認識されている。

 

 

人里の人間達に問いかける。『地上で最も強い妖怪とはどの種族であるかと』

多くの人間は間違いなく『天狗』と答えるだろう。

 

独自の社会、それも人間達と同じように縦社会を作り上げ、人智を超えた力と秩序持って妖怪の山に居座っている存在。

 

かつては『鬼』の名がついた吸血鬼の襲撃を押し返して幻想郷を守り抜いた存在。

 

幻想郷で、長い事強大な勢力を誇り、最強格の一角として君臨している天狗であるからこそ、多くの人間達に畏怖されてきた存在であるからこそ天狗達は知っている。

 

 

何百、何千と時を生きる妖怪は知っている。

それ即ち『鬼こそが最強であると』

 

空想上の存在であるからその言い分は机上だと一笑に付されることだろう。

 

否、鬼は存在する。

 

それは不変の真理、どれほど時を経ようとも強さの枠組みの中で『鬼』を超える妖怪の種族が生まれることがあろうか。

 

吸血鬼に『鬼』が付いている通り、強さの代名詞として『鬼』があるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、この件はだんまりって訳か」

 

 

「ええ、こういうのもまた一興。でも、珍しいわね。貴方にも幻想郷中に漂う妖霧には言うまでもなく気が付いているでしょう?それも、次第に高まり続けている。貴方なら、動くと思っていたのだけど」

 

 

咲夜が異変の調査に向かって数刻した後、紅魔館に訪れてきた幻想郷の賢者『八雲紫』とレミリアは、テーブルを挟み、紅茶と茶菓子を用意された部屋で会談していた。

 

 

「まぁ、危険性は限りなく薄いようだったから、動くほどでもないと思っていたからな。それに、こういうのは人間、博麗の巫女の役割だろう?だったら無暗に動くことなどしないさ」

 

 

「心配ではないの?」

 

 

「きちんと注意はしているよ。だからこうして紫と話している。お前がいれば危険はないだろう?」

 

 

「…………あら、そう」

 

紫は顔中から熱が上がっていくのを感じながら、それを隠す様に扇子を広げて顔を隠し、照れ隠しにティーカップを持って口に近づける。

 

 

「…………それにしても、妖霧が高まっている今になって今更異変だと気が付くだなんて、ね。一方は宴会の幹事を務めている時に妖気を感じて、一方は不吉な勘を感じたから。だなんて」

 

 

「フッ、そう悪く言ってやるな。この異変の元凶は、お前が認める実力者なんだろう?上手く妖気、いや、妖霧を隠し通せたものだ。中々に興味深いな」

 

 

「もっと鍛錬が必要かしら」と、紫は咲夜と同時期に異変と気付いた魔法使いと巫女に苦言を呈して呟く。

レミリアは、そんな紫に諭す様に言いながら、面白そうに興味深いと呟く。

 

 

「それに、最強の代名詞たる『鬼』の名を名乗っているのだから尚更な」

 

 

レミリアは、好戦的な眼をギラつかせながら、不敵に嗤って見せる。

 

レミリアは、理性を持って抑えているものの、元々の種族からも一因して、非常に好戦的である。

だからこそ、最強の名を手にした『鬼』という種族に対して並々ならぬ興味を抱いていた。

吸血『鬼』の通り、これも戦いを好む『鬼』としての性なのか。

 

戦ってみたい、とその紅い瞳が語っている。

 

 

「…………はあ…………」

 

 

紫は、そんなレミリアを見て溜息を吐く。

 

 

「貴方、仲良くやっていけそうね。アレと」

 

 

紫は呆れたようにそう漏らすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、ところで、レミリア。貴方の所に良いお酒があったでしょう?」

 

 

「酒?まぁ、酒などあるにはあるが、どういったものだ?」

 

 

「なんだったかしらねぇ。えぇと、電気ブラン」

 

 

「ブランデー。それがどうしたっていうんだ?二人で飲み明かしたいと?」

 

 

「…………それもいいのだけれど、そのお酒を頂きに来たのよ。ほら、数日後には宴会でしょう?」

 

 

「何だ、だからこんな時間から紅魔館に尋ねに来たっていうのか。ふざけた奴め、追い返してやろうか」

 

 

「あら、それはご勘弁」

 

 

「そうさな、後で妖精メイド達に用意させよう」

 

 

「ふふ、ありがとう。レミリア」

 

 

「しかし紫よ」

 

 

「何かしら?」

 

 

「良いお酒とは、飲んでみないとわからないものだろう?」

 

 

「…………えぇ」

 

 

「仮にお前に渡すブランデーとは別に、もう数本。あると言ったら?」

 

 

「…………ふふ、なら、御一緒させてもらおうかしら」

 

 

「そうこなくてはな」

 

 

実の所、私も飲んでみたかったんだ。と愉しそうなレミリアの声が響いた。

 

*1
他の人から見れば無表情ではあるが、長年暮らしてきたレミリアにとっては微弱な表情の変化も感じ取っている

*2
時折忠誠心と言って鼻から赤色の滴を流している等




いや、吸血鬼異変の時に鬼出ましたやんって思われるかもしれませんが。

人間と妖怪達の認識のズレです。吸血鬼異変の時は人間達は人里でブルブル震えてたからね。仕方ないね。
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