私レミリア♂紅魔館がヤバい!   作:たぶくむ

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バッリバリの戦闘回。どうぞ。


日置きの百鬼夜行 ~3~

「……フッ!!」

 

 

「おっと」

 

 

ヒュッ、と空気を切り裂くような乾いた音と、それに遅れるようにして鳴り響くドゴォォォッッ!!と鈍い音が周囲へ衝撃波と共に走る。

 

 

しかし、レミリアの蹴りは、容易く萃香の腕で受け止められる。

怪力であるはずの吸血鬼の蹴りを受け止めても萃香の表情は揺らぐことはなく、鈍い音が鳴っているのにもかかわらず痛みに顔を歪める素振りさえ見せない。

好戦的な、かつ無邪気な笑みだけがレミリアの眼には映っているのみ。

 

 

「お返しだよッ!」

 

 

「…………ッ!?」

 

 

瞬時にレミリアが蹴りを繰り出した方の足を受け止めた腕でガシッと掴み、自身に引き寄せながら、片方の拳でレミリアへと繰り出す。

 

対するレミリアも、萃香の拳を前に腕を交差させて迎え撃つ。

 

 

「………………グッ!!」

 

 

レミリアの顔面に繰り出された萃香の拳をレミリアは両腕を前に交差させることで防ぐが、その衝撃に押され、吹き飛ばされる。

 

空中で体勢を整えて、両足を力強く地面に着けるものの、衝撃の余波によって地面をザザザと擦りながら吹き飛ばされるレミリア。

ようやく止まり、ジンジンと痛む両腕に少しだけ顔を歪めながら交差させている両腕を解く。

 

痛みに顔を歪めるレミリアだったが、両腕の痛みは吸血鬼の治癒能力によってすぐに引く。

そして、レミリアははるか遠くで佇んでいる萃香を睨む。

 

 

「……………チッ」

 

 

「レミリア。中々の一撃だったよ。吸血鬼、それも鬼と自称しているだけのことはあるね」

 

 

抉れた地面を一瞥して、思わず舌打ちをして萃香を睨むレミリアに対して萃香は愉しそうに笑顔を見せながら嗤う。

 

 

「威力も十分、そんじょそこらの鬼相手でも通用するくらいには……………………でも惜しい、私相手にはまだまだ威力不足」

 

 

「…………………」

 

 

挑発にも似た萃香の一言に、レミリアの眼光は鋭くなる。

萃香はそんなレミリアを知ってか知らずか意に介さずに続けて言い放とうとする。

 

 

「鬼相手に啖呵を切る度胸と肉弾戦をする根性は褒めてあげるよ。でもまだまだ実力不足だね。……………………って、あれ?」

 

 

自慢げに話しながら萃香が顔を上げた先に、レミリアの姿は無かった。

一瞬逃走したか疑う萃香であったが、吸血鬼、それも貴族と自称するレミリアなだけあって敵を前にして逃げるという醜態は晒すまい。

 

ならばレミリアは何処へ、と萃香は目だけを動かして周囲をキョロキョロと確認する。

 

 

「何処を見ている」

 

 

「……………ッ!!」

 

 

そんな萃香を嘲笑うかのようにどこからともなく声が響く。

その声の主は言うまでもなくレミリアそのもの、しかし、萃香を驚かせたのは別の理由にある。

 

 

「私はずっと眼前にいる」

 

 

突如として目の前に姿を現したレミリア。

レミリアの紅く輝く眼は残光を走らせながらこちらを見据えている。

 

 

「ぐはあッ!?」

 

 

しまったと萃香が察すると同時にレミリアは萃香の腹部に強烈な一撃を見舞う。

 

 

「へぶッ!!」

 

 

レミリアは萃香に腹部の一撃を見舞った後、少し身体を引き、突き上げるような衝撃を受けた萃香への追撃として、無防備になった顎目掛けて拳を振り上げる。

 

レミリアの追撃のアッパーは萃香の上半身を仰け反らせ、その勢いのまま萃香は後ろへ大の字で仰向きに倒れ込む

 

 

「侮ったな萃香。確かに力では貴様に劣っていようが、いくらでも戦い様はある。単純な力だけで実力など測れぬということだ。一つ賢くなったな」

 

 

萃香の実力不足という言葉に多少なりともレミリアにはカチンときたところがあったのだろう。

 

挑発を返すようにレミリアは倒れ伏しているままの萃香に紅い瞳で見下ろしながら言い放つ

 

 

吸血鬼という種族は人智を超えた存在であり、最高クラスの格と実力を備えている種族であるのだ。

 

純粋な力は片手で大木を持ち上げるほどの怪力を誇り

純粋な速さは瞬く間に人里を通り抜けてしまう程のスピードを持つ。

 

簡単に言うのであれば、鬼の怪力と天狗のスピードを併せ持った存在であると言える。

 

 

他には驚異的な再生能力と、他と比べて膨大な魔力量と、挙げればきりがないが。

かつての吸血鬼異変でも、自前のパワーとスピードで幻想郷中の大妖怪達に対して互角に渡り合う程だ。

 

 

如何に幻想郷で伝説と名高い鬼を前にしても、私達吸血鬼は最も誇り高く、人智を超える能力を持つ不死身の存在。

レミリアは若いながらもその中でも完全無敵の吸血鬼の王として君臨しているのだ。

 

やられっぱなしなのは癪に障る。

 

 

「フッ、アハハッ、アハハハハハハッッッ!!!」

 

 

倒れ伏したままの萃香は一際大きな歓喜の声を挙げる。

 

 

「いいねぇ、いいよレミリア!!こんなまともに一撃、いや二撃を食らったのはいつぶりだろう!!!いやぁ、効いた!いや効いたよ!酒の酔いが醒めるくらいに!!!!こんな気持ちは何年ぶりだろう!!!!」

 

 

上体を起こした萃香は心底愉しそうな笑みと浮かべてレミリアを見る。

その眼には歓喜の色を映し、高揚と興奮が見られる。

 

 

伊吹萃香は久しぶりの命を科して自分と渡り合える存在との死闘に沸き上がる激情を覚えた。

 

 

彼女は鬼という種族の中でも特に強い力を有していた。

昔ながら、幻想郷に姿を晒していた時は山の四天王の一角としてやんちゃしていたくらいだ。

 

 

昔は良かった。

命を懸けて死闘を繰り広げ、死と巡り合わせの刺激的だったあの日。

鬼に勝負を挑む命知らずな輩を、私達は嬉々として迎え撃っていたものだ。

 

だが今はどうだ。

 

人間にも妖怪にも『鬼』という存在は畏怖され、次第に鬼に勝負を挑もうとする人間も妖怪もいなくなり。

代わりに現れたのは小細工を要して愚かにも鬼を退治しようとする人間達の姿。

 

 

本来、鬼は『人攫い』という「人間との真剣勝負」を純粋に楽しんでいた。

それが次第に人間達が小細工や知謀を用いて我々を騙し、罠にかけようとする。

そんな昔と変わってしまった人間達の姿に失望したのかもしれない。

 

私達鬼は幻想郷から姿を消し、今では地底でダラダラと酒を飲んで嘆いている始末。

やれ最近の人間は骨が無いだの、やれ血肉湧き踊る死闘が無いだの。

 

私達鬼は常に死闘を恋しがっている。

されども、鬼に挑む者などいなかった。

 

 

だからこそ、この『伊吹萃香』強烈な二撃を食らわせる目の前の存在。『レミリア・スカーレット』に並々ならない激情を抱く。

 

 

歓喜すべきか、恐れるべきか。

 

忘れていた『死』の感覚を思い起こさせてくれた存在。

心にぽっかりと空いてしまった虚無感を再び埋めてくれたレミリアに。

 

 

萃香は心の底からの歓喜を身体中に表現したい気分になった。

 

 

「レミリア・スカーレット。私はあんたのことを侮ってた。詫びるよ。あんたは………………………いい漢だ!!!」

 

 

「………………」

 

 

「嗚呼…………!これほどゾクゾクする戦いなんて久しぶりだよ!こんな死闘は過去に幾つあっただろう!!!!」

 

 

萃香は背中にゾクッ、と走るナニカを感じながら、熱に絆されたかのような眼でレミリアを見据える。

 

 

「…………ッ!!!???」

 

 

しかし、萃香の目の前で再びレミリアの姿がふっ、と消えた。

今度は油断なく、しっかりとレミリアの姿を確認していたのにも関わらずだ。

 

瞬間、頬に感じるピリッとした痛み。

痛みを感じる頬を拭って、拭った指を見てみると、そこにはべったりと着いた赤の液体。

 

 

血だ。

 

 

「感傷に浸るのは結構だが、今はそんな場合じゃないだろう?」

 

 

声がする後ろを振り返れば、鋭い目でこちらを見据えるレミリア。

先ほどと違う所は、両手の鋭利に尖った爪。

 

恐らく、その爪で萃香の頬を抉ったのだろう。

 

 

「今は過去の事よりも、目の前の敵である私の事だけを考えろ。妬けてしまうだろう?」

 

 

好戦的な紅い瞳で此方を見下ろすレミリア。

爪にこびりついている赤い液体をペロッ、と舐め、妖艶に嗤う。

 

萃香はより強く背筋にゾクゾクとした感覚を覚える。

 

 

「へへへ、そう………だね。目の前のあんたを無視して考え事何て無粋だったね。ごめんよ!!レミリア!!!嗚呼、本当にいい漢だ。攫ってしまいたいくらいに!!!」

 

 

そう言って萃香は指に着いた血を舐め取り、手を高々と挙げて、その手に妖気を集結させる。

そして、その手にもとに集まるように岩が集結していく。

 

 

身の丈程に大きな岩が次々と集まって、とうとう萃香の身の丈を軽く超えるほどに巨大な岩石を作りあげる。

 

 

「もっと…………もっと愉しもうじゃないか!!折角の上玉!!遠慮なんてつまらないことは無しで行こうよ!!!」

 

 

もはや、ただの殴り合いだけでは味気ない。

己の全てを掛けて相手を叩き潰す。

 

 

――萃符「戸隠山投げ」

 

 

レミリア目掛け、萃香は巨大に作りあげた岩石を力のままにぶん投げる。

しかし、目の前のレミリアは前と同じく姿を消す。

 

 

「!!………………うあっ!?あぐっ!?」

 

 

そして、レミリアの姿が目視できないまま萃香の身体は次々と斬り刻まれるように切り傷が増える。

 

脚、腕、顔。次々と傷が増えているのに関わらず萃香は笑みを絶やさない。

 

 

(…………私の目でも姿を捉えられないッ!!!)

 

 

そう、レミリアは鬼の目、それも萃香の目でさえも姿を捉えられない程のスピードで飛び回りながら攻撃している。

 

かろうじて目視できるのは紅の残光のみ。

 

 

鬼の身体は頑丈だ。

それも、簡単には切り傷はおろか、傷の一つもつけることが出来ないくらいには。

 

それでもレミリアは容易に萃香の身体に傷をつける。

それが、萃香には新鮮で、よりゾクゾクとさせる。

 

だが、高速で動き回るのはレミリアの前にも経験済みだ。

妖怪の山で昔戦ったことがある鴉も同じように目で捉えられないスピードだった。

 

興が乗って来たと思えばあっさりと負けを認めて釈然としない気分となってしまったが…………。と余計な事まで考えてしまい、すぐさま頭の中から消し去る。

 

 

萃香は再び妖気を帯びた手を掲げて岩石を作り出そうとする。

もちろん、片手を掲げたままである隙だらけの萃香をレミリアは逃さない。

 

「…………ッ!!ふふッ!!…………くうッ!!」

 

 

切り刻まれる痛みに萃香は笑みを浮かべながら顔を歪めるものの、掲げる手で岩石を集結させるのだけは止めない。

 

そして、先ほどと同じように、巨大な岩石を作り出す。

 

だが、すぐにその岩石をぶん投げるようなことはせず、ただじっと何かを待っているかのように佇む。

その間でも高速に飛び回るレミリアの攻撃は止まない。

 

ただじっと、萃香は耐えている。

 

 

「……………………………そらッ!!!」

 

 

「………………ッ!?」

 

 

カッ、と目を見開いた萃香はギュッ、と掲げた手を力強く握る。

そして、掲げた手の上の巨大な岩石は萃香が手を握った瞬間、全方向へと岩石が分散して撒き散らされる。

 

 

今度はレミリアが驚く番だ。

全方向に撒き散らされる身の丈以上の岩石。その速度はかなり早い。

 

レミリアは、即座に上空には放たれた岩石が少ないと見て、上空へと飛び上がる。

 

しかし、その時に一瞬だけ隙が生じてしまい、ほんの少しレミリアの飛行速度を緩めてしまう。

 

上空へと飛び上がったレミリアは、突然足に強い抵抗感を感じる。

否、掴まれている。

 

 

「ふふっ…………………捕まえたよ」

 

 

「…………なッ!?」

 

下を向くと、足を掴む萃香の姿。

それだけではない。

 

 

「巨大化だとッ!?」

 

 

「正解♪」

 

 

目の前の萃香は明らかに巨大だった。

レミリアの身長をはるかに超えるほどに大きくなった萃香。

 

 

先ほどまで、レミリアとほぼ変わらない程の身長であったはずなのにいつの間にか巨大化していた。

 

 

『密と疎を操る程度の能力』。それはあらゆるものの密度を自在に操る能力。

 

物質は密度を高めれば高熱を帯び、逆に密度を下げれば物質は霧状になる性質がある。この特性を使い彼女は霧になることが出来る。

 

また、彼女はその能力を利用して、自身を巨大化させたりミクロマクロ化、分身を作り出すのも変幻自在である。

 

 

鬼符「ミッシングパワー」

その技こそ、萃香が巨大化する技そのものだ。

 

 

「ッ___!!??」

 

 

「そうらッ!!」

 

 

そして、萃香はレミリアの足を掴んだまま、地面へと力強く叩きつける。

巨大化した鬼が全力で地面へと叩きつける。その衝撃は凄まじいものだった。

 

 

「カッ___ハッ___!!!」

 

 

レミリアは、その衝撃に身体中を圧し潰されるほどの衝撃を受け、息をする事すら出来ないほどの痛みに襲われる。

 

 

メキメキと地面が罅割れる。

地面はレミリアを中心に凹み、露天掘りの様な穴が生じた。

そして、辺りを土塵が覆う。

 

叩きつけられたレミリアの姿を目視することは出来ない。

 

 

萃香は巨大化した身体はそのままに、レミリアがいるであろう土塵が巻き起こる地点に目を向ける。

 

 

「こんなんで根を挙げる奴じゃないだろうレミリア!第二ラウンドと洒落込もうじゃないか!!」

 

 

レミリアはこの程度で倒れるような奴じゃない。そんな信頼にも似た確信が萃香にはあった。

 

 

「ああ、もちろんだ」

 

 

土塵の中から信じて疑わない好敵手の声を聞いて一層笑みを深める萃香。

 

その瞬間、土塵が一気に治まり、レミリアが姿を現す。

流石に無事ではいられなかったようで、至る所から血を流しながらも、しっかりとした足取りでレミリアが立っていた。

 

 

「こんなものでは終わらない」

 

 

手には己の魔力で模った『槍』を手に、不敵に嗤う『鬼』がそこにはいた。




もう一話分使いますよ。


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