BanG Dream!〜Destiny STAR〜 作:バリート
姉さんからコーチを頼まれたグループはPastel*Palettes。少し前に活動を開始したアイドルバンドグループだ。そのグループについて知っていることは日菜と麻弥さんがいること。そして、少し前に口パク事件が発覚し、現在は活動を自粛している。俺には技術面を鍛えて、今度は実際にライブが出来るくらいに仕上げてもらいたいとのこと。
そして、当日。
「来ちまったよ‥」
目の前にはデカイ建物。
「(芸能事務所ってこんなにデカイのか‥)」
少し後退りそうになったが勇気を振り絞り一歩進んだ。
「うわぁ‥姉さんの名前使ったら一瞬で入れた。やっぱヤバイなあの人‥」
受付で『小川琴葉の弟なんですが‥』と言ったらすぐ通れた。てかあの人がこの業界で何の仕事をしているかは俺も知らない。
「えっとトレーニングルーム‥ここか‥」
ちょっと迷いそうになったが地図を見ながら進むとちゃんと目的地に着いた。そして俺は大きくて少し重い扉を開く。
「失礼しま‥」
「パスパレ、ふわふわピンク担当!彩でーす!えへっ♪」
なんかお笑い芸人がやりそうなポーズをしている人がいた。
「ふぅ‥今回は中々よかっ‥」
しまった、目と目が合ってしまった。でも好きだとは気づかなかったわ。
「あれ?奏斗じゃん!どうしたの、こんなところで?」
「あ、どうもです!」
室内には顔見知りの日菜や麻弥さんもいたけど
「失礼しました」
気まずいから退散!
「誰なのー⁉︎」
「えっとさっきはごめんね大声出しちゃって」
「いや、こっちこそなんか‥ごめん‥」
あの後麻弥さんがミーティングルームに案内してくれた。そしてそこでさっきの変なポーズ女子と対面している。
「いやいや、ビミョーな雰囲気をぶち壊すのに役立ったから、奏斗ナイス!」
日菜は親指をグッとたてた。
「も〜!」
「あの‥早く自己紹介をしませんか?奏斗さん困ってますし」
脱線仕掛けた話真弥さんが上手いこと戻してくれた。流石麻弥さん!
「あっ、そうだね。私は丸山彩。私アイドル研修生出身なんだ。よろしくお願いします!」
この子はとてもアイドルらしい可愛さを持った子だ。さっきの変なポーズを除けばアイドルとして完璧なんじゃないか?
「私の名前は若宮イブです!モデルをやっていてアイドルもブシドーの気持ちを持って頑張ってます!」
こっちはモデルというだけありスラっとしていて肌も綺麗だ‥ってブシドーってなんだ?
「神田奏斗です。高2で麻弥さんと同じクラスなんだ。これからコーチとして頑張るからよろしくお願いします」
「あ、じゃあ同い年だ!よろしくね」
「丸山さんも高2なんだ」
「彩で大丈夫だよ」
「そう、じゃあそうさせてもらうね彩ちゃん」
「ちゃ、ちゃん‥?」
「あ、ごめん嫌だった?」
つい癖が出てしまった。キモがられてないといいんだが‥
「え、いや、男の子なのに『ちゃん』って呼ぶなんて珍しいなって思って‥」
「奏斗さんは昔からの知り合い以外はあまり呼び捨てしませんもんね」
「まぁね。あとなんか俺個人的になんか『彩さん』って呼ぶより『彩ちゃん』って言った方がしっくりきたから」
「そうなんだ‥じゃあ私も奏斗くんって呼ぶね!」
「なら私はカナトさんとお呼びいたします!」
「うん、イブちゃんもよろしくね」
「あたしは‥」
「いや、日菜は知ってるからいいよ」
「ちぇ、面白くないな〜」
「日菜ちゃんは呼び捨てなんだね」
「まぁ、日菜にちゃん付けはなんかアレだったから」
「ブーブーあたしもちゃん付けしてよ〜」
「えーやだ」
「差別だ!差別だ!」
「そういえばパスパレにはもう一人いたよね?」
ブースカ言う日菜は無視して彩ちゃんに尋ねる。
「うん、千聖ちゃんは今日もお仕事でいないんだ‥もしかしたらこの後来るかもだけど」
「それでは神田さん、今日はミーティングだけですのでこれで終了です。次回からの練習の日程についてはまた後日連絡致します。皆さんはこれから個人練習の方をお願いします」
マネージャーさんが俺にわざわざ終了の知らせをしてくれた。
「えっとこのまま練習見ていっても大丈夫ですか?まず自分の目でどんなものか確認したいので」
「えぇ、構いませんよ」
許可を貰ってトレーニングルームで一度音合わせを行うことになった。面倒を見ることになったのだ、しっかり改善点を発見しなければならない。
「イブちゃんはショルダーキーボードなんだね」
「ハイ!カナトさんはキーボードが弾けると聞いていますがこれでも弾けるんですか?」
「まぁ、一応ね。でも俺は置く方が得意だな。って言ってたら皆準備が出来たみたいだね。じゃあそろそろ‥」
練習を始めようとした時
「ごめんなさい、遅れちゃって。今どの辺りを‥」
「よぉ、千聖」
そう彼女とは‥
「‥どちら様でしょうか?」
「えぇ⁉︎俺だよ⁉︎神田奏斗!」
「えっと、千聖ちゃん、奏斗くんと知り合いだったの?」
「知らないわ、こんな人」
「嘘だろ⁉︎小学生の頃、時々遊んだじゃん!」
マジで忘れられてたら泣くぞ。
「冗談よ、久しぶりね奏斗。あなた昔とそこまで変わりはないんじゃないかしら」
「はぁ‥お前は大分変わったな」
「色々あるのよ、この業界に長くいると‥」
白鷺千聖。彼女とは別の小学校だったのだがひょんなことから時々遊ぶようになった。当時から芸能界にいたので遊ぶ頻度こそ高くないが暇が出来たらいつも一緒に遊んでたっけ。
「ねぇ、せっかく千聖ちゃんも来たんだし揃えてやってみようよ!」
「いいですね!やりましょう!」
「ジブンも賛成です」
「奏斗〜やるなら早く〜!」
彩ちゃん達が全員でやることを提案した。早く答えを出さないと日菜がまたブースカ言う。
「って言われてるけど、どうすんの千聖?」
「もちろんやるわよ。その為に来たのだから」
千聖もベースを持ってきて準備を始めた。
一度演奏してもらい、ちょうど一曲終わったところだ。
「うーん‥」
「どうだった‥?」
「正直に言うと確かにまだ実力不足が感じられる」
全員、特にイブちゃんと彩ちゃんの顔が暗くなる。
「でも、全然駄目な訳じゃない。ちゃんと磨けば次はいけると思うよ」
でも結成されてすぐでまだ実力もなかったあの時なら、普通はライブなんてしないと思う。そしてそれを開催した大人は口パクを要求させてきた。大人が求めたいものは分からない。
「ホントですか!マヤさん、やりました!」
「ハイ、奏斗さん、是非ご指導の方お願いします」
「もちろん!」
結局見学よりみっちりとした指導になってしまったが
「まぁまぁ良くなってきたよ。ってもうこんな時間か‥」
大幅に予定時刻を過ぎていた。
「じゃあ私は明日もあるから早めに失礼するわね」
「うん、じゃあね千聖ちゃん!」
ー日菜sideー
時間は過ぎたし自主練しとけと言われたけど、練習でテキトーにやってもいけたからいいや。奏斗には真面目にやれ〜って言われたけど。そして家に帰ろうとしたら
「ともかく、こんな状況になって我々も心苦しいのです」
廊下でスタッフさんと千聖ちゃんが話していた。
「バンドとして挽回出来るようスタッフも苦心していることだけはどうかご理解ください」
「あたし達よく会うよねー」
スタッフさんがいなくなったタイミングを見て千聖ちゃんに声をかけた。
「日菜ちゃん‥いつからそこに?」
「んー、ついさっきだよ。だからスタッフさんとの会話は全然聞いてないよ」
ちょっと驚いた反応から見てあまり聞かれたくない内容だったのかな。
「全然、ってことは少しは聞いたのね。ごめんなさい。重たい話を聞かせてしまって‥」
「あー、あたしは別に大丈夫だよ。千聖ちゃんの言いたいことも分かるしね。ここにこだわる理由は無いし、今はパスパレが面白いし、せっかく奏斗も来たしここにいるけど、飽きたらあたしもいなくなっちゃうかもなー」
「日菜ちゃん、どうしたの急に?私はいなくなったり‥」
「なんとなくなんだけど、千聖ちゃんって今パスパレと別の選択肢を探してる気がするなーって思ってね」
千聖ちゃんはいつも目の前の事に集中してなかったので、何か別にやりたことがあるのかなと思った。
「ふふ、何言ってるの日菜ちゃん」
誤魔化してる気もしたが聞くのが面倒なので終わりにする。
「ま、いいや。あたしも帰るから。じゃねー」
ー千聖sidedー
日菜ちゃんの後ろ姿が見えなくなるまで私はずっと微笑んでいたがそれを今止めた。
「(脱退を申し出たことを聞かれたのかと思ったけど杞憂だったみたいね)」
本当にあの子は勘が鋭くて多少なりとも警戒しなければならない。
私は先の会話の内容を思い出していた。
「もし今ここで抜けてしまうと千聖さん個人に対する中傷は悪化するかもしれません‥」
「悪化‥というと?」
「我々はPastel*Palettesなのでメンバーは守れます。逆にそれ以外の方は守れないんです」
「今は中傷記事に耐え、バンドも続けろ‥と?」
「結論から言うとそうです。今、技術面の向上のため彼を雇いましたがあくまでも条件を満たし且つ小川さんの弟だから特別に推薦されたに過ぎないので最悪、彼は解雇になりうることもあるでしょう」
「そう‥ちなみに彼が辞めることになっても世間からは何も言われないのですよね?」
「はい、彼がここでコーチをしていることは秘密にしてあるので彼の私生活に問題が起きることはないでしょう」
「‥なら結構です」
さすがに私達の事情で彼にまで迷惑をかけるのは良くないと思っていたがそれは大丈夫みたいだ。でも私はこれからもPastel*Palettesにいるしかないという最悪の状態になった。
ー奏斗sideー
パスパレとの顔合わせから翌日、今日は友希那達との練習の日。ホームルームがちょいと長引いた俺らは急いで校舎から出ると既にリサとあこちゃんが校門前で待っていた。
「あっ、キタキタ。じゃあ皆でスタジオに行こーか☆」
「私は先に行くわ」
友希那は皆を置いて我先とスタジオに向かおうとする。
「ええっ、行き先は一緒じゃん!って友希那!追いかけるよ、奏斗、あこ!」
「あいよー」
「うん!友希那さん待った!」
あこちゃんが友希那の前に立ちはだかる。
「どいて」
それに対し友希那は冷たい態度をとる。
「もう、行くとこ一緒なんだから、並んで歩くくらいいいでしょ?」
「そうですっ。いいでしょ?」
「友希那、諦めな」
「‥はぁ。わかったわ。少し静かにするならいいわよ」
「やった!イェーイ!」
リサとあこちゃんがハイタッチをする。
「‥ってあれ⁉︎リサ姉どうしたのその爪。ネイル全部剥がしちゃってボロボロ‥」
「リサ、お前‥」
リサの爪をよく見ると爪に所々白い斑点が出来ている。
「えっ、い、いや〜これは‥その‥ほら?別にネイルだけがギャルのすることじゃないし?なんて言うかな‥あ、そうそう!イメチェンイメチェン!」
「もしかしてリサ姉、ベース弾くために‥」
「そんなことよりさ、あこ!練習終わったらクレープ食べない?あの裏通りに出来たやつ♪」
「クレープ!知ってる知ってる、いつも混んでるところでしょ!」
「でもリサ、ペースも守らないと指が‥」
先の斑点も一気にネイルを剥がしたせいだろう。
「そうよ、ネイルを取るのは正しいけどそんないきなり‥」
友希那も流石に心配そうな態度を取っている。
「分かってるって☆も〜二人は心配症なんだから〜。クレープ奏斗も友希那も‥って友希那は来ないか〜あはは。アタシ生クリーム増し増しにしよッ!」
「‥ホント優しい幼馴染を持ったな、俺ら」
それに対し友希那はただ黙っているだけだった。
そして練習はとても過酷だった。
「あこちゃん、今テンポ遅れた!」
「‥っ!うん!」
「リサ、もっとあこちゃんのテンポを意識して!」
「‥りょーかい!」
「氷川さん、今一瞬ズレた!俺が皆の音を指摘するから絶対に止めようとしないで!」
「‥分かりました!」
「友希那、もっといけるだろ?」
「‥えぇ」
少しのミスも逃さず指摘する。下手をしたらどこの軽音部よりも濃い練習をしている。
「「はあぁぁー、疲れた〜」」
流石にあの練習でぐったりしているリサとあこちゃん。
「はは、お疲れ」
まぁあれだけ厳しくしないとあっちの二人が黙っちゃいないから、申し訳ないがリサとあこちゃんには頑張ってもらうしかない。
「皆さん、少しいいですか?」
氷川さんが皆の注目を集める。
「オリジナル曲の方がまとまってきたので、課題曲を増やそうと思うのですが‥」
「バンドの底上げには最適だと思うわ。来週までに全員練習してくること」
「「ク、クレープ‥」」
あの二人はさらにぐったりしてしまった。
ー燐子sideー
最近あこちゃんとチャットをしていると、バンドの話一色になる。あこちゃんは本当に楽しんでいるんだなと感じる。そんなあこちゃんから一本の動画が送られてきた。
「(凄い‥あこちゃんが、友希那さんと‥)」
内容は友希那さんとの練習風景だった。動画を見ての感想をチャットで送ったが全く返信が来ない。あこちゃんが自分からチャット落ちるなんて初めてのことで少し心配になる。でもすぐバンドの疲れから寝てしまったとわかった。
「(それにしても、この動画‥なんだか、身体が引き寄せられる感じがする‥)」
さっき見た時もそうだ。何か不思議な力が働いているみたいに。
「どう‥なるんだろう‥例えば、少しだけ‥少しだけ動画に合わせて弾いてみたら‥」
そして部屋にあるピアノの前に行く。動画に合わせて鍵盤を叩くと
「(何‥これ‥)」
ずっと前から弾いていたみたいに指が動く。
「(凄く‥楽しい‥!)」
こんな感覚始めて‥そう感じた。
奏斗「はい、9話終わり〜!そして今回の次回予告担当は‥」
日菜「氷川日菜でーす!」
麻弥「大和麻弥です」
奏斗「二人は今回どうだった?」
日菜「るんっ♪ってきた!」
奏斗「わからん!」
麻弥「まぁやっとジブンらの出番でしたからね」
奏斗「確かに結構長かったね」
麻弥「それで奏斗さん、次回はどうなるんですか?」
奏斗「次回は俺が誘拐されるみたい‥」
次回 集まっちゃった!
日菜「なにそれ、面白そう!」
麻弥「いや、一大事ですよ!」