初めて7000文字も書いちゃいました。総文字数7681文字ですって奥さん!
……それぐらい楽しかったってことです。ちなみに、私は九州に行ったことがありません。あと言語に関するご都合主義的なアレに本文で触れてます。
言い訳してます。そんなことしていいわけ
土の底から蛇が出る
…………意識が呼び起こされる。体の感覚が少しづつ戻って行き、全身に血液が巡り始める。
いつぶりの感覚だろうか。長いこと眠っていた。その間に何があったのだろう。完全に土に埋まっており、今が朝か夜かも分からない。分かる事は、自分の周りを覆っていた氷が解け始めていた事だった。手足にはまだ残っているが、顔の部分は胸あたりの氷は既に解けて無くなっていた。
意識が戻っているし、自分で解かす事も出来るだろうが、私は敢えて自然に解けるまで待って、その間に眠る前に起きた事について整理する。
私は……深い森を見つけ、木の上で眠った。起きてから森の中を探索して、白狼天狗とやらに襲われて、そいつらのボスと戦って、負けた。負けるとき、私はレーザーを喰らっていた。死ぬと確信した私は、力を振り絞って自身を分厚い氷で覆い、地面にめり込みんで、レーザーが途切れてからも勢いのままに地中に入っていき、その途中で私は意識を落とした。
意識を取り戻したのは奇跡だろう。コールドスリープだとしても、一瞬の間に作ったので生きていられるかどうかは分からなかった。
だが、私は生きている。地中に埋まって、体の前で腕をクロスさせたまま固まっている、なんとも不細工な恰好で。
そろそろ氷も全て解ける。外に出たら先ずはルーミアの居た場所に行こう。どれだけ経ったのかは分からないけど、居るかもしれない。居なくても、荷物がまだ残っているかもしれない。十中八九残っていないだろうけど。体感では軽く数百年は眠っていた感じがする。それどころじゃないかもしれない。氷は相当分厚く作ったはずだ。それも極低温の。恐らく解けないとも思える程の見事の氷塊に私はなっていた。マンモスにでもなったかのような気分だ。まぁ、凍っていた時は意識はなかったしそんな気分は味わっていないが。
……足の先に残っていた最後の氷が無くなった。自分に重く圧し掛かる土は、相当年月を隔てたのか堅くなっており、全く手足は動かない。呼吸も苦しくなってきた。なんで今まで苦しくなかったんだろう……?
そんな疑問は置いといて。今はここを抜け出すことが先決。早くしなければ今度こそ死んでしまう。誰も助けてくれやしない。
まずは軽く手の周りに熱を持たせる事が出来るかか試す。
……成功。ほんのり温かくなった。成功を確認した私は、自分の周りを超高温にして、土を溶かしていく。大丈夫。自分の体の周りは超低温にしておけば上手いこと熱が伝わらないようになる。
……成功した。周りの土はどんどん溶けていく。溶けた土はマグマのような物体になって危険だが、能力を解除すればすぐに冷えて固まるので問題ない。
上に上がる為に必要な足場は溶けないように注意する。上に掘りあがりつつ、足場を作ってよじ登っていけば地面まで到達するだろう。
草の根が見えてきた。根から茎に繋がる部分も見えるので、もうすぐ地上だ。
少し緊張するなぁ、と思った。緊張する要素は無いような気もするが。どちらかというとドキドキだろうか。
地上に上がることに出来る程度の高さに足場を作った。これで、あとは上に掘り進めば久しぶりの空を仰ぐ事が出来る。足場に登り、拳に力を籠める。それから、思い切り土をぶん殴る。いつかぶりの空を見る為に。
──久しぶりに見た空は清々しい程の快晴だった。雲の一切ない晴れ程気持ちのいい天気はない。
この場所で戦闘していたと思わせる様な痕跡は全く見つからない。薙ぎ倒された木や抉れた地面はどこにもない。あるのは足元の大穴だけ。
細い木が一本生えていただけの場所には立派な大木があった。屋久島の縄文杉程の大きさ。最早神木である。
そんなことは置いといて。ルーミアがいたであろう場所に向かう。幸い、此処には一直線で来ていたので、方角さえわかれば何れは着くだろう。情景も全く変わってしまっているが、森の入り口部分を探せばその場所は見つかるだろう。問題は、目印が場合によっては皆無であること。
もしも置いてきた荷物が無く、又ルーミアもいないとその場所を見つける事は出来ないような気がする。あくまで気がするだけだが。見つけようと思えば僅かな記憶から探し出す事も不可能ではないと思うが、ルーミアや荷物があることにはそこまで期待していない。恐らく人間が何度も寿命を迎える程の時間が過ぎていただろうから。
可能性は「無いかもしれない」であって全くない訳では無いし、探す意味は十分あるとは思うが。
暫く走るとすぐに森の入口に着いた。進行方向で言えば出口に当たる。その場所を起点としてぐるりと一周する。当然、すぐに一周出来る様な距離ではない。だが、別に時間が迫っている訳でもない。この程度の時間であれば全く気にならない。
……そう思っていたのだが。これが予想以上に大変で、景色がほとんど変わってしまったが故に慎重に見なければそこが目的の場所なのかの見分けはつかない。
そうなると、走って移動するよりも時間は何倍、十倍近くにまで膨れ上がる。更に、ほとんど変わり映えのしない景色を延々と見分け続ける事は流石に飽きが来る。最初は目を輝かせた幻想的な森もいつしか日常になった。現代では到底見ること出来なかった景色も、この古代では大したものではないのかもしれない。
……最終的にその場所を見つけたのは探し始めてから太陽が3回ほど昇った頃だった。
一周しても見つからず、結局その場所とは起点とした場所のすぐ近くであった。まさに灯台下暗し、だ。
見つからなかった理由としては、私達の休んだ木がほとんど成長せずに残っており、周囲と同化していたことが大きい。その木の根元には、私の持っていた土器が、根に絡まっていた。どうやらひとつだけのようだった。その一つとは、ワインを作る事に使った土器である。
当然、その中には今もワインが詰まっているだろう。それも大木が成るほどの時間が掛かった年代物である。
現代だとどれ程の値が付くのだろうか? 味はあまり良くないだろうが、人間では管理が続けられない程時間の掛かったもの、というだけでかなり値が張るだろう。
その土器を守り続けた木は既に枯死していた。状態からして枯死してからそこまでの時間は経っていないだろう。
しかし、既に枝や根は脆くなっており、少し力を込めれば簡単に崩れ落ちる。そんな儚い木に私は一言、「これを守っていてくれてありがとう」と言ってから、丁寧に、崩れないようにそっと守られていたものを取り出す。その蓋を開けると、予想通り、紫の液体がしっかりと詰まっていた。葡萄の良い匂いにアルコールの匂いが混ざる。
どこか厳かな、嗅いだことのない匂いも混ざっている。嗅いだことのある者は全くいないと思える様な。
一口舐めてみたい気持ちもあったが、まだ我慢することに決めた。もう少し酒の味を楽しめるような状況でなくちゃ、全てを味わうことは不可能だろう。
結局、ワインはそれ程量が無かった事もあり、そこらへんの木から切り出したボトル型の容器に移し替えておいた。常識的に考えて木では腐ってしまうが、能力で内部の壁に厚めの氷を張っておいたので恐らくは大丈夫だろう。念のため、木の内部を凍らせてあるが。
ボトルには必須であろう肩紐は拵えてある。その為、土器は結局のところお役御免なのだ。申し訳ないとは思うが、既に亀裂が複数入っており、このまま持ち運べば間違いなく割れてしまうので仕方がない。取り敢えずこの木の下に埋め直しておく。いつか現代人が見つける日も来るかもしれないなぁと思いつつ。
土器を埋めてから暫くして、旅を再開させた。今までと同じことをしたいと思っている事が理由だが、今の時代がどの辺りなのかを調べる、という目的もあった。
取り敢えず、私は日本列島の本州に行く事にした。私の知っている範囲で古代の文化の中心となると、京都か奈良しか知らないのだ。
此処がどのあたりなのかはよく判らないが、この山に来た方向から反対に向かえば見えてくるかもしれない。時間はたっぷりある。
そう考えて、既に走り出していた。時間があっても、知らないことを知ろうとするのは自然と優先してしまう。知識欲はそこそこある方だ。
3時間程度走っていると海に着いた。その
……今までにやった事の無い事に挑戦する時は、先ず「自分は出来る」と心の奥底から確信して、自分に対して兎に角自信を持つ事が大事なのだ。
勿論どうやって行うのかも考えなければいけない。まぁ、足に氣──良く分かっていないが、身体に在る見えない力──を籠めれば出来るだろう。弾を撃つのと同じだ。
物は試し、早速やってみよう。先ずは自信を持つ。ナルシストも顔負けの自尊心。その心持ちこそが大事なのだ。謙遜は要らない。
……そうしたら、足に氣を籠める。力が一点に集中する──その瞬間、目の前の景色が変わった。……力を入れすぎたのだ。遥か上空一粁へと体が投げ出される。
余りに突然な出来事。予期せぬ位出来事に何とか対処しようとする...が。慌ててコントロールしようとした故に力を足から遮断してしまった。身体が落ちて行く。
「ひゃぁぁぁあああ!?」と、間抜な声を上げる私は急転直下……誤用ではあるが、字の感じからしてはピッタリである。
悠長に一人で実況している暇はない。地面まで凡そ残り
何とか立て直す為に再度足に氣を籠める。今度は同じ事の起きない様、軽く、ふんわりと浮くイメージで。
──ぴたり、と落下が止まる。地面に激突する寸前の、距離にして僅か50米程。ほんの少し遅ければ命は危うかった。良くても内蔵や骨は諦めなければいけなかっただろう。時間が経てば再生されるのだが。
……一先ず、程よい高度で浮く事は出来た。そのまま前に進もうとする。ぎこちない動きではあるが、緩と前に動き出した。速く進もうとすれば、速く進む。
だが、これでは納得いかない。幽霊の様に進んでいるのはあまり格好良くも可愛くもないだろう。もっと恰好良く飛べないのだろうか?
イメージするのは、少し前斜めに傾いた体。それ位のほうが何となく「飛んでいる」というのではないだろうか。言い換えれば前傾姿勢。だが、上半身の傾きに合わせて下半身も傾く。近いのはマイケル・ジャクソンの45度だろうか。
そんな姿勢で私は前に飛ぶ。ある程度の──車よりも速い位のスピードを出しながらの、生身の空の旅はこれまでにない感覚でとても心地よかった。
現代の高い科学力ですら為し得ない、生身で空を飛ぶという行為は、元人間の私としての喜びと、妖怪としての私の、人間を見下す悦の混ざった感覚は、何とも両方の私を満たす気持ちの良い行為だった。
暫くして、とても高く大きな神社を見つけた。その高さは私の飛ぶ高さよりも少し低い程度であった。
──これだけ高い神社、となると一つしかない。古代には百米に及ぶ高さのあったという「出雲大社」である。建造されたのは遥か昔、神話時代にまで遡る。
現代では見れない昔の神社の姿に惹かれたが、此処は神社、それも位の高い神様の神社。私の様なちっぽけな妖怪なんて入った瞬間に消し飛ぶだろう。観光は断念するしかない。これだけ見せつけられて、観光する事は許されないとは少々癪に障るが、私が激怒した所で何も変わりはしない。
しかし収穫はある。これが出雲大社という事は此処は現代の島根。あと少し進めば京都や奈良に着くだろう。
だが、今から直ぐに出発、という訳にもいかない。何故かって?
……変身が解けそうなのだ。あと一時間程度で完全に蛇に戻ってしまうだろう。都の中で蛇になってしまっては危険だ。速攻退治されてしまう。
仕方がないので人の居ない様な場所にある木を見つけてさっさと寝るしかない。急がなくては、蛇になった時も飛べるかどうかは分からない。
好都合な木を見つけるまでに時間は掛からなかった。神社から離れると直ぐに見つかった。余り広くなく、林とも呼べない程度の木の密集地帯。
その中心辺りにある木の十分な太さの枝に腰を掛ける。ワインの入ったボトルを上にある枝に掛ける。蛇に戻って寝ようとすると、少し離れた場所に何かを探している様子の女の子が居た。私は人を喰らう妖怪ではあるが、もともとは平和ボケした日本人なのだ。今いち人間だった時の性格は思い出せないけれど、今の私は目の前で困っている子供を見捨てるほど冷たくはない。
……前々から気になっていた事がある。それは古代の人間の誰に対しても言葉が通じていた事。現代の言葉は大体江戸時代頃の物だ。外来語の存在を除けば殆ど変わらない。だが、さすがに古代の人間に話が通じるのは変である。
この世界は私の知る世界では無いのかもしれない。もしかしたら、自分には普通に聞こえていても、相手からしたら自分達と同じ言葉を使っている様に聞こえるのかも知れない。そんな話があってたまるか、と思うが、実際言葉が通じている理由を説明できない時点で否定することは出来ない。
「……どうしたの?何か困っている事でもあるのかな?」
喋りかける。突然背後から声を掛けられたことに肩を弾ませながら、幼子は答える。
「……おかあさんが妖怪におそわれたの。それで...おかあさんがたおれて……おかあさんをなおすための薬のざいりょうを探してるの……」
妖怪に襲われたって?……おいおい、私も妖怪だしなぁ……ちょっと申し訳ななぁ。でも、助けない理由にはならないよね。
……死んではいないよね?怪我だろうか?薬で治るものではないと思うけど。
「そうなの……分かった。私も一緒に探してあげる。……探している物はどんなもの?」
「ちいさなしろいおはなをいくつもつけた草。はっぱは大きな笹のはっぱみたいだって……」
それ、鈴蘭やないですか...毒だよね...?
考えつくのは、他の毒で心臓が弱った。解毒はしたけど、心臓は弱いまま。そこで強心作用を持つ鈴蘭を使う、という事か。……もっと良いものは無いのだろうか。
「それって……鈴蘭でしょ?毒じゃなかった?」
「しってる。でも、
その医師とやらは相当博識の様だった。今の時代がどのあたりか分からないが、古代にそこまでの知識を持つ人間は居ない筈。人外なら或いは、とも思うがそこまで協力的になるだろうか。
まぁ強心作用が必要なら仕方ない。ジギタリスとか、他の材料は無いのかもしれない。
「分かった。鈴蘭ね。……でも、貴女は武器も何もないのだし、私の傍で一緒に探そう?」
「わかった。おねがいします」
ぺこり、と聞こえてきそうな可愛らしいお辞儀。何かに目覚めてしまいそうな心を押さえつける。誓って私はロリコンではない。
──そして探す事数十分。そろそろ変身を維持するのも限界に近い。そんな中、漸く目的の花が見つかった。
もうすぐ陽が沈む。こんな幼子を一人で返してしまったら妖怪の格好の餌。仕方なく、怪しまれない程度に急ぎ足で進む。距離はそれ程でもないから直ぐに着くだろう。
肝心の女の子は私の背中に居る。おんぶしながら走るのはそこそこに難しい。女の子が何故こんなに速いのか、と聞いてきたので、適当に「鍛えているの」とでも言っておく。
十分ほど走った所で、町が見えてくる。夜が近づいているからか活気は無い。
「家はどの辺にあるの?」と聞いてみる。どうやら神社住まいの様だ。そこまで大きくない、かといって寂れた訳でも無い、ごく普通の神社。
神域には出来るだけ近づきたくないので、神社が見える程度の街中の開けた場所で女の子を降ろす。あの神社で間違いないようだ。
「此処からでも気を付けて帰りなよ?妖怪は何処に居るか分からないんだから...あ、最後に、君の名前を教えてくれる?」
初対面ではあるが、名前を聞いておく。何時か再開する様な気がするから。
「うん……私の名前は、霊紀。苗字は……まだ継いでないの」
ふむ。どうやら苗字は襲名していく家のようだ。でも、苗字を継ぐって、余り聞かないなぁ。ま、私が知らないだけか。
そして、私は非常に厚かましいお願いをする。いや、してしまう。この子に聞きたい、そんな思いが芽生える。知り合ったばかりなのに。
「霊紀ちゃんね……私ね、まだ仮の名前しかないんだ。それで……いきなりだとは判っているけど、私に名前、付けてくれるかな?」
あまりに無責任な私の願いに、昔の友の付けてくれた名を結局誰にも名乗らずに捨ててしまうことに罪悪感を覚えつつも。女の子は、待っていましたと言わんばかりの速度で、こう言った。
「……
ったから」
絶句。この一瞬でそこまで考えるか。字も私にピッタリだ。蛇は実際のところあまり咬まないが、歯は鋭く、何も知らないものが見たら相手の肉を噛み切る為の歯と思うだろう。
……オオカムヅミノミコト。さすがは神社住みである。私は知らない。どんな神様なのかは知らないが、まさか神から名を借りるとは。思いもしなかった。
何はともあれ、この子が考えてくれた名前。自分で考えろと言われるかも知れないが、私にネーミングセンスなぞありゃしない。
「……ふふ、私によく似合う名前だね。有難う。私なんかの為に考えてくれて」
「……」
何も返されなかった。気にすることではないが。さて、そろそろお暇させていただこう。リミットはあと十五分程度。
「それじゃあ、気を付けて」
「……またね」
またね、と私は返して、立ち去る。彼女が神社の方に向いた隙に全力疾走する。障害物さえなければ走ったほうが飛ぶよりも圧倒的に速い。
……またね、かぁ。それは、縁があったなら会いましょう、という事だろうか。それとも、必ず会う、という事かも知れない。どちらにせよ、私は会いたい。名付けて貰った相手に一度しか会わないのは変だから。
──そんな一瞬の間に、私は確かに先ほどの林の様な場所に着いていた。それなのに、何処からか、いつか必ず会う、と聞こえたような気がした。
ん?なんか、名前に半分ぐらい既視感が?それに神社……
おっと、ここから先は駄目ですね。
タイトルについて
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変えようぜ!
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このままでいいでしょ