蛇妖怪古代を生きる   作:冬䖵きりな

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あんまり関係ないサブタイ第二弾。


蛇の眼は野の全景をおさめたり?

「──覗いていないで、こっちに来なさい、妖怪さん」

 

 覗きがバレてしまった。それはさほど重要ではない。問題なのは種族まで見抜かれている、という事だ。妖力を出来る限り抑え込んでいるにも関わらず気づかれるという事は、そこらの陰陽師よりも力量が断然上であると考えていいだろう。その気になれば私程度の妖怪なぞ赤子の手を捻るより簡単に殺せるだろう。

 ここで逃げようとしたとしても、少しでも逃げようとする素振りを見せたなら即座に殺せるかもしれない。相手の力がどれ程か分からない以上、最善手は大人しく言う通りにする事だろう。

 

 私は大人しく従い、屋根の穴を広げ、床に落ちる。勿論、綺麗に着地する。

  

「──何故、覗きなんてしていたのかしら?襲いたいのなら堂々と入ってくれば良かったじゃない」

 

 聞かれたからには嘘は吐けない。というか、嘘を吐いたり隠し事をするのは苦手。聞かれなくとも嘘は吐けないだろう。……でも、これ言っていいのかなぁ。

 

「……姫の姿を見てみたかったからです。可能なら友達になろうと思ってました」

 

 嘘は吐いていない。正直に話した。少し恥ずかしい。

 別に、友達になれるとは微塵も思っていなかった。──けど。

 

「いいわよ。友達になってあげる。……但し、私を退屈させない事。それと、敬語も必要ないわ。もっと気楽になさい」

 

 あっさりと承諾された。条件も付いているが、それも大したものではないだろう。

 

「わかりま……わかった。じゃあ、これからよろしく…と、その前に、自己紹介からだね。私の名前は咬摘。今は人型だけど、種族としては蛇の妖怪」

 

「私は、蓬莱山 輝夜。一応、人間よ」

 

 ……知ってる。月の人間だから、一応、が付くのだろう。まぁ、それを口に出すことはしない。

怪しまれるだけだし。転生した、なんて事は言える訳もない。

 

「改めて、よろしく、輝夜」

 

「こちらこそ、咬摘」

 

 

 ──こうして、また一人友が増えた。ただ、これが切っ掛けとなって、とんでもない厄介事に巻き込まれる事など、当然この時の私は知る由もなかった。

 

 

 ……友達になってから数日。本当は毎日でも輝夜に会いに行きたかったが、頻繁に来られると気づかれるので、三日に一度だけ行く事になった。丁度昨日行ったので、二日間、暇が続く。

 輝夜と話している間は楽しいのだが、その分一人になると物凄く暇になる。一日中ぼーっとしているときも屡々あった。最初の頃は何を話すか考えるのに時間を費やしていたが、私の話す知識は悉く「知ってる」で返されてしまう。流石に現代の事を話す訳にはいかないので、私が妖怪の時に経験した事しか話せないのだ。かといってそれでは飽きられてしまうだろうから、現代の知識を活かして遊びを考えている。それも結局すぐに飽きられてしまうが。

 前世でも経験した事が無い程の暇な生活。何せ、基本的には食事をとる必要が無いから、それ以外の用事が無ければ殆ど動く事は無い。腹が空くのは一月に一回程度。

 

 そんな暇な生活をしている時、ふと妙案が思い浮かぶ。

 ──そうだ、神社のあの子に会いに行ってみよう。あまりに喋る相手がいないと、一度しか会った事の無い人とも喋りたくなってきてしまう。

 

 と、言う訳で、現在飛行中。後から気が付いた事なのだが、妖力を隠している状態でも飛ぶ事は可能なようだ。ただ、余り速度は出ない為、基本的には使う事は無い。

 その実験中に更に判明した事が、妖力を出来る限り隠していれば、殆どの神社の神域に立ち入っても大丈夫だという事。但し、出雲大社の様な高位の神が祀られている場所には立ち入れない。

 勿論、霊紀の居た神社に入れるのかは既に試している。容易く入る事は出来たが、力を上手く出す事が出来なかった。まぁ、当たり前。

 

 

 ……到着。この神社は名を『博麗神社』という。参拝者は少なく見えるが、周りに人が余り住んで居ない事も一因。町よりも集落といった方が良いか。

 そんな場所に建つ神社。当然ながら権力は強い……と、思いきや、そこまでの権勢は無い。その原因としては、当主となるのは女で、女よりも男の方が力を持つこの時代では見下されてしまう。

 ただ、その当主は巫女。更に、この博麗神社の巫女は妖怪退治をするらしい。妖怪が現れた時だけは皆が言う事を聞く。

 

「おーい、霊紀ちゃん、居る~?」

 

 その神社には、今、一つの問題が発生している。どうやら、神社には霊紀しかいないという。母親の現当主は確かに霊紀の持って行った鈴蘭で回復したらしいが、その後、自分を襲った妖怪を祓うとだけ言い残し、行方不明に。神主はかなり昔に死亡した。残されたのは子供一人のみ。何とか周囲の者に助けられて生活できているが、それも時間の問題。この状況で妖怪に襲われれば為す術もなく全滅するだろう。現に、私という妖怪が民の頼りの神社に侵入出来てしまっている。襲うつもりは無いけど。

 

「……誰もいないのかなぁ」

 

 呼びかけにも空しく、返事は帰ってこない。どこかに出かけているのだろうか。仕方がないので帰ってくるまで待つ事にする。外で待つのも退屈なので、家の中に入らせてもらう。許可は無い。

この家、本殿と繋がっているようで、本殿の入り口からでないと入れない。窓の様なものも小さすぎて蛇になっても入れそうにはない。

 

「お邪魔しまぁ~す」

 

 勿論、返事は無い。

 

 本殿の入り口は実質的な玄関となっており、ここだけ見ると神社とは全く分からない。他の部屋も同様で、現代の和室とさほど変わらない。

 さて、何をして待とうかな。料理しながら待ってるとデキる女子に見えるかも。まぁ、道具も食材も何も無いけど。

 ……この家、特に目立つ物が無い。有るのは必要最低限の家財といかにも神社らしい巫女装束だとか、神事に使う道具だとか。想像以上に何も無い。食べ物すら無い。そのくせ使ってない部屋は無駄にあるから、元々はそれなりに裕福だったのかもしれない。

 

 ……物色をしている間に、家主は帰ってきたようだ。まだ家に入っていないけど、私の温度センサーちゃんが反応したから間違いない。さーて、どうやって迎えてやろうか。怖がらせない様にしないと、きっと嫌われてしまう。妖怪なんて嫌われてナンボだけど。

 

 ……そうこう考えている間に、霊紀は目の前に居た。とても分かりやすい驚愕の表情をして固まっていた。ちょっと申し訳ない。ちょっと。

 

「やっほ。こんちわ」

 

 怖がらせないように、かる~く挨拶をする。ほーら私は怖くないよー。優しいお姉さんだよー。

 

「………………。」

 

 やっぱり固まっている。すごいジト目で見てくる。もしかして、忘れられてる……!?

 

「えーと……お、覚えてない?ほら、咬摘だよ、咬摘。名付けてくれたじゃん!」

 

「忘れてるわけない。……それより、何でここに居るの?」

 

 そりゃそうだ。いくら知ってる人でも、勝手に家の中に入られるのは嫌だろう。不法侵入ってやつ。

 

「あぁ、えぇ~っと……返事が無いから、寝てるのかなぁって…………」

 

「……もし私が寝ていたら、どうするつもりだったの?」

 

「んっと、その~……起きるまで待つつもりでした」

 

 実際、待つと思う。襲う事はしないと思う。多分。

 

「まぁいいや。……で、何しに来たの?」

 

 うーん。まぁ、考えてはいたけど。ちょっと恥ずかしいな。……というか、自分がやりきれるか心配。

 

「──生活、困ってるんでしょ?私が何か手助けしてあげられないかなぁ……って。ほら、名付けて貰った恩もあるし。恩返しがしたいの」

 

「ありがたいけど……食事に困ってるわけじゃ…………」

 

「ふむ……妖怪退治の仕事、あるでしょ。私もあまり詳しくないけど、身体を鍛えさせる位は出来る。……つまり、修行に付き合ってあげる、ってこと」

 

 自分を鍛えるのは独学じゃかなり厳しいだろう。それに、人にも宿る妖力の様な力、霊力を扱えるようになるには、教えてもらわなければ無理だろう。私は他の妖怪が行使する所を見たからこそ扱えているが、霊紀の周りに霊力を操れる人間は恐らく居ない。

 

 「…………わかった。お願いします」

 

 霊紀はあの時の様な御辞儀をして、それから顔を上げた。その表情には多少の喜びが含まれていたが、口角が上がったりはしなかった。

 

 

 

 ……結局、輝夜の所に行かない日は神社で過ごす事になった。修行はするにはするが、霊紀の呑み込みが早く、一日の内二時間弱しか修行は無い。それ以外の時間は談笑したり、食事したり。普通に暮らしていた。

 対して、輝夜は最近は愚痴ばかり。帝がしつこいだの、貴公子の対応が面倒くさいだの。そんな事を聴いてあげながらトランプ擬きで遊ぶ、というような事を繰り返している。最初は緊張しながら話していたが、今ではお互い家族の様に接している。

 そんな輝夜は時折、空の月を眺めては溜息を吐いている。十中八九月からの迎えの事だろうが、話を聞こうとしても直ぐに話を逸らされてしまう。

 しかし、私は輝夜が月に帰ってほしくはない。誰だって、友人が遠くへ行ってしまうのは出来る事なら拒否するだろう。

 月からの迎えが来るまで残り僅かひと月ほど。それまでに何か考えておかなければ……

 

 

 ◇

 

 

 

 

「……ちょっと、頼みたい事があるのだけど。いいかしら?」

 

 ……もしかして。

 

「何?……って、随分と真剣な顔してるけど、そんな大事なの?」

 

「まぁ、大事ね。…………実は、私は月から来たの。それで、八月の十五夜に月からの迎えが来る。……頼みたい事は、その迎えから私を隠す事」

 

「うん……まぁ、普通の人間じゃないだろうなぁとは常々思っていたけど。戦えばいいの?」

 

「普通じゃないって、どういう意味かしら?……こほん。戦う訳じゃないわ。月の戦力じゃ地上の存在なんて足掻けもしないわ。まぁ、迎えの中の一人に私の味方が居るから、協力してもらえば大丈夫。貴女に頼みたいのは、隠れ家の用意。迎えを欺くのはこっちでやるから、貴女は隠れる先を見つけてくれればいいわ。出来る限り、人も辿り着けない様な場所をお願い」

 

「随分と難しい注文だね……。まぁ、頑張ってみるよ」

 

「じゃあ、お願いね。この事は家族にも言うわ。ま、確実に兵士にこの家を警備させるだろうから、当日以外は無理に来なくても大丈夫よ」

 

「分かった。でも、頑張って来てみるよ」

 

「ふふ。無理しなくていいのよ。……家族には今日の内に言うつもりだから、そろそろお開きね」

 

 ……なんとも難しいお願いをされてしまった。誰からも見つからない家なぞ見当もつかない。本当に一カ月で見つけられるのだろうか。霊紀の修行もあるし、実質二週間程しか猶予は無い。

 まぁ、お願いされたからには全力でやるしかない。助け合いを忘れてはいけないし。それこそが良い意味での人間らしさなのだから。

 

 

 ◇

 

 

 

 

 家探し。結論から言うと、最適な場所があった。……しかし、余りにも最適すぎて、私自身帰れなくなってしまった。かれこれ五日は経っただろう。家探しの序盤に見つかったのは良かったが。下手すればひと月後までに間に合わない可能性もある。それに、霊紀の所にも行ってないから心配。何も無ければいいけれど。

 

 ……家は比較的綺麗で、立派だった。周りには広い竹林があり、空から見ても家は見る事が出来ない。竹林は迷路の様で、迷い込んでしまったのか、人の亡骸が幾つも転がっていた。

 私は空を飛べるのだから竹のない上空から帰ればいいのでは。そんな事はとっくに試している。

勿論失敗した。上に向かって飛んでいると思っていたら、数秒後には地面に激突していた。ここに居ると平衡感覚が狂ってしまう様だ。

 今は視覚をシャットアウトして竹林の外の温度を頼りに歩いている。温度を形として受け取れば温度が変わっても位置は分かるままなので、非常に頼りになる。このままいけば一日もかからずに脱出できるだろう。ただ、障害物を避けると場所が分からなくなる可能性があるので、何かにぶつかったら、それを壊しつつ進まなければいけない。その時に出る音の所為で幾度となく木端妖怪に襲われた。

 

 ……お、脱出できた。全力でダッシュし続けた甲斐があったなぁ。

 

 目を開ける。そこには、竹は一本も生えていなかった。私は思わず歓喜の声を上げる。

 

「ぃよっしゃー!」

 

 そしたら、また妖怪が出てきた。うそぉ……パト〇ッシュ、私はもう疲れたよ。

 

 

 いや、まぁ、疲れてても負ける事は無いけど。無事に京の近くまで帰ってこれた。今はもう夜なので霊紀に会うのは明日。心配させてしまっているかもしれないが、夜に会いに行くのは迷惑。仕方がないので野宿。そういえば、最近は霊紀の所に寝泊まりさせてもらっているから、久しぶりに外で寝る事になる。

 

 ……木の上ってこんなに寝心地悪かったっけ?

タイトルについて

  • 変えようぜ!
  • このままでいいでしょ
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