──朝。陽が昇ると同時に起きる。気持ちのいい目覚めだ。
さて、今日は霊紀の所に行くつもり。合計で六日間も音沙汰が無かったのだから、心配してくれているだろう。そうじゃなかったら悲しい。
到着。相変わらず静かな神社。来る度に誰も居ないのか錯覚するけど、霊紀が居なかった事は最初の一度しかない。
「やっほ~!居る~~?」
本殿の中からでも聞こえる様に思いっきり叫ぶ。こうすれば、霊紀は出てくる。面倒くさそうな顔をしながら。
「……遅い!」
ほら。怒鳴りながら出てくる。でも顔は怒ってない。その代わり、修行用の木刀を持っている。そのせいか、僅かな殺気を放っている様に思える。いや、絶対そう。顔は怒ってないけど、動きの一動作に力が込められている。このままだと本当に木刀で頭をかち割られそう。
「……すいませんでしたーっ!!」
私は今、正座をしている。勿論、教え子からの説教を聞いているのだ。かれこれ一時間以上は。
立場的に私がやる様な事を齢六歳ほどの教え子にされるとは。何とも複雑。
さっきからずっと「貴女が居なかったら」「私が居ないと貴女は」という様な事を言われ続けている。
「貴女はですね、微妙に考えが甘いんですよ。自分の行動で何が起きるか考えていない……」
もう今回の件とは関係なくない?なんで六歳児、今でいう小学一年生にそんな事言われなきゃいけないの……
「今、目を逸らしましたね?『何でこんな子供に言われなきゃいけないの』って考えていたしょう」
もうやだ怖いこの子。心まで読んでくる。
──結局、説教は三時間以上にわたり、この一件の所為で私の立場が一気に落ち切った所で一日が終わった。……流石に酷い。しかも、霊紀は言いたいことだけ言って、疲れたのかそのまま眠ってしまった。逃げられてしまったのだ。
──翌朝。私は説教された疲れで爆睡してしまったらしく、起きた時には既に太陽が真上に昇っていた。お昼時である。しかも、霊紀が居ない。机の上には『出掛けます』と書置きが。どこに行ったんだろう……。近くに行く時はこんな書置きはしないから、遠くに出たのだろうか。でも、そんな用事は聞いてないのだけれど。ちょっと心配。
……と、いう訳で、霊紀を捜索中。近くの民家や林から、出雲大社の近くまで探しにいったが、姿は何処にも無し。一度神社に帰ってみても居ない。
……平安京だろうか。霊紀が行った覚えは無いが、行かない事も無いだろう。まぁ、行ってみるか。
平安京。相変わらず賑やかだ。……この中から小さい子供を探すのはかなり難しい。砂漠でビーズを、とまではいかないが、渋谷の某交差点で探し物をするようなものだ。探し物をしようにも人や民家が多すぎて見当がつかない。
霊紀が行く場所って、どこだろう。貴族の家には行かないだろうし。この辺りで京にしか無いもの、となると甘味処?事前に内容を伝えないとなると、そこまで大事でもなさそうだし。
まぁ、見つかるだろう。居なかったら帰って待ってみればいい。
◇
霊紀を見つけたのは、陽が少し傾いた頃で、十五時くらい。案外早く見つかったものだ。
霊紀は甘味処に居た。それは予想の範疇。対して、予想のできなかったこと。それは、霊紀の隣に居た幼子。貴族の子だろうか、かなり綺麗な服を着ていた。二人とも団子を食べている。
「霊紀、この子は?」
「言ってなかったっけ。ちょっと前に出来た友達の、妹紅だよ」
「……初めまして」
何だか、元気のない挨拶。
「初めまして。私は咬摘。よろしく」
適当な返事をしておく。自己紹介は苦手なのだ。
しかしこの子、雰囲気といい、見た目といい、霊紀とそっくりである。雰囲気に関しては出会ったばかりの頃の霊紀のほうが近いか。
私も一つ団子を注文して、霊紀の隣に座る。
二人は、余り喋らずに、団子をモグモグとひたすらに食べていた。妹紅の皿には四本、霊紀の皿には三本の串が、二人の手にはそれぞれ一本の団子が。
今しがた届いた団子を一本、手に取る。その間にも、二人は団子を注文していた。財布のひもが随分と緩んでいるようだ。
……しかし、この妹紅という子、どう見ても貴族の娘なのだが、周りに護衛が居る様な気配はしない。流石に無警戒すぎないだろうか。
そんな心を読んだのか、霊紀が私に説明してくれた。
「妹紅はね、見れば判ると思うけど、貴族の娘なの。でも、父親はかぐや姫とやらに夢中で、母親は父親に追い出されてね、妹紅には全く興味が無いみたい。それで、家を抜け出していたところを私が見つけたの」
言い終わると、私から目線を外して、団子を食べるのを再開した。
成程、あの貴公子の娘か。苗字を聞いてないから分からないけど、貴公子達は皆四六時中輝夜の事を考えていただろう。家族を捨てる程とは思えないけど。
「……本当は連れ戻して修行させるつもりだったんだけど、まぁ、今日は良いか。ただ、心配だから私はそばに居るよ」
二人はこくりと頷くと、また団子を注文した。食べ過ぎです。
夕方。街灯のないこの時代は、夕方には家に帰らなければ危険。妹紅と別れ、軽く走って神社へと戻る。今では霊紀も私についてこれる位に、足が速くなっている。霊力を操って瞬発力を付けているのだとか。因みに、あのボルトよりも速い。
◇
天高く昇る満月。それをまじまじと見つめる、私と輝夜。屋敷の周りには数多の兵士。少し遠くには野次馬が。貴公子の姿もあったし、妹紅の姿もあった。兵士が邪魔で、こっちには気づいていなかったけど。その隣には霊紀がいる。彼女もまた、こちらに気づいていない。私は出掛けるとは言っておいたけど、別に京に行くとは言っていないし、霊紀もまさか私が居るとは思ってないだろう。
「……それで、本当に見つからない場所なんでしょうね?」
「勿論。それこそ出ようとして何日もかかる程には」
月からの迎えには、輝夜の味方が一人。その味方と共に、輝夜をあの屋敷に連れて行くのが
私の使命である。
輝夜に似た「式神」という人形のようなものを囮にして、バレる前に竹林の屋敷に逃げ、追いつかれる前に、その味方が結界を張って、外から見えなくするらしい。そして、追いつかれないように、見つかりづらい場所を選んだのだ。
「──来たわ」
すぐさま上を向く。満月の光を打ち消す程の強い光を放ち、月からの迎えが天からやって来る。
兵士たちは弓を構えるが、戦う気がしなくなったのか、矢を放つ者はほとんど居なかった。一人が矢を放つが、明後日の方向へ飛んで行った。迎えの幾人かが屋敷に降り立ち、偽輝夜は迎え達の気を逸らす為に、歌を詠んだりしている。
少し離れた所から、なんだか凄く奇抜な服装をした人がこっちに向かってきた。
私はとっさに身構えるが、輝夜から味方であると聞き、態度を改めた。
輝夜は味方に私の事と作戦を説明している。会話から、味方は輝夜の従者であるらしい事が分かった。
輝夜の話が終わり、私は輝夜と味方──名は八意 永琳──を屋敷へと導く。かなりの全力疾走だが、二人は疲れる様子もなく空を飛んでついてくる。
竹林はすぐそこである。幸いにも妖怪に襲われることも無く、迎えに追いつかれることも無く。無事に着いたようだ。
そのままの勢いで竹林に入り、屋敷へと直行する。探し当てた時のように、すぐに到着した。中に誰も居ないことを能力で確認し、輝夜たち二人を中に案内する。
「まぁまぁね。広すぎる気もするけど、狭いよりはマシね」
どうやらこの屋敷で問題ないらしい。
「……貴女は一緒に住まないのかしら?永琳は私の従者だから、このままだと友人は居なくて退屈だわ」
「……悪いけど、私はまだやることがあるから。一緒に住むのは出来かねるかな」
輝夜がこの屋敷にかける術によって、この屋敷は外界から隔絶される。そうなると、もし私がここに住むことになると、霊紀に会えなくなってしまう。何も言わずに霊紀を捨てることは出来ないし。
「そう……じゃあ、また逢いましょう。それまで、死ぬことは許可しないわ」
「……分かった。じゃあ……またね」
私は二人に見送られながら、屋敷を後にした。ふと振り向くと、そこに屋敷は無かった。
分かっていたこととはいえ、友との別れは、やはり寂しいものだ。
危うく、投稿間隔は一カ月まで、という自分の中でのルールを破るところでした……。
それ故推敲は大してしていないので、後日手を加えます。
タイトルについて
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変えようぜ!
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このままでいいでしょ