というわけで、今回もペルソナ要素無しです。
本当に申し訳ありません。次回は必ず出します。
後、最後らへん駆け足です。
誤字脱字報告など、いつでも待っています!
それではどうぞ!
僕達三人は夕焼けに染まる街中を歩いていく。グレンが先を行き、僕とルミアが追いかけるといった形であるが。
「うわぁ、すごい綺麗!」
学院を出て数分、歩く三人の視界に入ってきたのは、夕焼けに染まる空を背に、堂々たる姿で浮かぶメリガリウスの天空城であった。
「おぉ……」
「……ふん」
僕達の驚嘆といった感情に対し、グレン先生の反応は冷めきっていた。
「あんなもんがあるから、魔術を勘違いする馬鹿がいるんだよ」
そう言うとグレンは歩き出してしまう。
「いつまでも、よそ見してないで行くぞ」
「は、はい……」
僕達二人は急いでグレン先生の後を追う。
それからというもの、特に会話もなく歩いて行く。若干の気まずさの中、どうしようかと考えている時、不意にルミアがグレンに話しかける。
「先生って、本当は魔術がお好きなんですよね?」
「はぁ?なんでそう思うんだよ」
「えっと、さっきの法陣の練習をしてた時、先生楽しそうにしてらしたので」
「そういえば、ちょっと笑ってたような……」
僕も思わず声が出てしまう。あの時、確かにプラスの感情が表情に出ていた。
二人の言葉にグレンは固まってしまう。
「ははっ、ねーよ」
しかし、すぐに飄々としたいつもの態度に戻り、言葉を紡ぐ。
「俺は魔術が大嫌いだ。楽しいなんて、ありえん」
グレンは自虐するような笑みを浮かべる。その顔からはグレンの真意は見えない。
「そうですか……でも、先生が本当に魔術が嫌いだとしても、今日のはちょっぴりひどいですよ?」
ルミアはシスティーナが何故、魔術に励んでいるのかを話す。
システィーナにとって、魔術は大好きだった祖父との絆の証であり、いつか祖父に負けない魔術師になる、と祖父と約束した。そのため、日々魔術の研鑽を積んでいる。
「そうだったんだ……初めて知ったよ」
「……そうか。それは流石に悪い事をしたな」
これにはグレンも少し罪悪感を抱いたらしい。素直に反省している。
「つーか、俺を説教するために誘ったのかよ?」
「それもありますけど……聞きたいことがあって」
ルミアは少し考えてから言葉を続ける。
「この学院に来る前は何をされていたんですか?」
確かに気になることではある。あそこまで魔術嫌いになるには相当な経験をしたと思っていいだろう。
そのため、グレンの答えに自然と身構えてしまう。少し間を置いてからグレンが口を開く。
「引きこもりの穀潰しをやってました」
「「え?」」
流石にこの答えは斜め上すぎた。僕とルミアは何も言えずにいると、グレンが続けて言う。
「学院にセリカって偉そうな女がいるだろ?この一年はそいつのスネをかじりまくってた」
「一年以上前は何してたんですか?」
僕の疑問にグレンは口を詰まらせると、バツが悪そうに言う。
「……すまん、嘘ついた。学院を卒業してからずっとだよ」
そう言うグレンは明らかに何かを隠している雰囲気だったが、何も聞けなかった。
「俺の黒歴史を掘り起こすのはもう終わり!」
そう言うと、僕達二人に目を向けた。
「今度はこっちが聞かせてもらうぞ。なんでお前らはそんなに魔術に必死なんだ?」
グレンの言葉は続く。
「さっきも言ったが、魔術は本当にロクでもないもんなんだぞ?なくても困るものじゃない」
この言葉を受け僕達は考え込んでしまう。
そして、先に声を発したのはルミアだった。
「私は魔術を真の意味で人の力にしたいと思っています」
今、そこに
「……言っておくが、徒労に終わるぞ?絶対に」
「それでもです」
「わかっていながら、どうしてそんな報われない道を行こうとするんだ?」
そのグレンの言葉にルミアは笑みを浮かべる。
「私……恩返ししたい人達がいるんです」
そして、ルミアは自身の過去を話す。
三年程前、家の都合で追放され、システィーナの家に住み始めた頃。悪い魔術師に殺されそうになった時、別の魔術師が助けてくれた事。その魔術師にお礼が言えずにいる事。
これも初耳だった。家を追放された時の気持ちなんて、きっと僕の想像の何倍も上だろう。
「その魔術師は悲しいそうな顔をしながら戦ってくれたんです」
「悲しそうな顔?助けてくれた魔術師が?」
「はい、とても優しい人だったんだと思います」
そして、グレンの顔を真っ直ぐ見つめながら、はっきりと言葉を告げる。
「だから、私はそんな悪い魔術師がいなくなればいいなと思ったんです。そうすれば、あの人はもう悲しまなくて済むから……」
「……そうか」
それだけ言うとグレンは歩きだそうとするが、何かを思い出しすぐに足を止める。
「そういや……恩返ししたい人
「えっと、そうですね。もう一人います」
何処か遠くを見ながらに言う。
「私がシスティの家に居候し始めたばかりの時、どうして私がって塞ぎ込んでたんです」
システィともほぼ毎日喧嘩してたんですよ、と笑いながら言うその顔は、とても懐かしんでいた。
「それである日、私家を飛び出したんです。それでずっと泣いてた私に声をかけてきた人がいたんです」
「おいおい、泣いてる女の子に声をかけるなんて、危ないヤツじゃないのか?」
「いえ、同年代の男の子だったんです」
そのままルミアは続ける。
「なんていうか、すごく安心できる人だったんです。一緒にいると落ち着くっていうか。それで私、ほとんどぶちまけちゃったんです、イライラとか不満とかを言葉にして」
何故自分がこんな目にあうのか、自分には居場所がない、誰も味方なんていない等々、出会ってすぐの男の子に愚痴を吐いたと言う。
無理もないだろう。普通じゃ考えられない状況だ。その時のルミアは、それほど精神的に追い詰められていたのだろう。
「その人は最後まで聞いてくれた後、私に言ってくれたんです。本当に味方はいないの?って」
男の子はしどろもどろになりながらルミアに話したという。君の味方になろうとしてくれている人はいないのか、いないと思い込んでいるだけではないか、と。
「それを聞いた時、またぐずっちゃったんです。いるわけないって」
それでも、泣くルミアを宥めながら必死に伝えようとした。
「散々泣いて、少し冷静になれた私は言われた通りに考えてみたんです。そしたらすぐにわかったんです。システィやシスティの両親はずっと私のそばに居ようとしてくれていたことが」
ルミアはとても嬉しそうに言う。
「その後、色々あって名前も聞かずに別れてしまって。いつかお礼が言えたらなって思っていたんです」
「ふーん、そんな奴がいたんだな」
「はい、今の私がいるのは彼のおかげなんです。本当に感謝しているんです」
そう言いながら、こちらを見て笑っている。
なんでだろ?そんなことをした覚えはない。
「えっと……なんでこっち見てるの?」
「ふふ、別に〜?何でもないよ」
モヤモヤとした気分のまま歩いて行くのであった。
それからは特に会話もなく歩いて行く三人だったが、十字路に着くとルミアはそこで別れることになった。そして、幸か不幸か僕とグレン先生の帰り道は同じ方向らしく、再び無言のまま足を進めていく。
そんな中、グレンが唐突に声をかける。
「……そういや、聞いてなかったな」
「えっ?な、何がですか?」
「お前が魔術を勉強してる理由だよ」
そう言いながら、グレンは振り返り続ける。
「ルミアは言ったからな。お前だけ言わないなんて、不公平だろ?」
「ま、まぁ確かに……?」
そう言いつつ考えてみる。
「僕が、魔術を学ぶ理由……」
頭の中を整理しながら、言葉を紡いでいく。
「別に、ルミアやシスティーナみたいな確固としたものはないと思いますよ?」
「それでもいいから言え」
横暴ではないだろうか?というか意外だ。なにか、ルミアの言葉に感じたものがあったのだろうか?
だとしたら、何も言わないと言うのは良くないだろう。もう正直に言ってしまおう。
「えっと……分からないからです」
「分からない?魔術が?」
言いたいことを思い浮かべ、言葉にしていく。
「その、なんと言いますか……実は僕も悪い魔術師に襲われたことあるんですよ」
「お前らどうなってんの!?普通そんなホイホイいるもんじゃねえだろ!最近の若者は襲われ属性でもついてんのか!?」
ごもっともである。後、グレン先生も若者だと思います。
「まあ、その時に思ったんですよ。魔術ってなんであるんだろって」
正確には、襲われたことがあると知った時であるが。
「それで魔術に本当の意味で興味を持った……そんな感じですかね」
「ふーん、じゃあ魔術の事なんか分かったのか?」
「いや、それがあんまり」
「はあ?」
実際、そうなのだから仕方ない。
満を持して魔術学院に入学したが、魔術そのものについて深く追求するのではなく、魔術の使い方を重点的に教わってきたのである。
講師に聞いても、あまり真面目に取り合ってくれなかったりもした。ちゃんと聞いてくれる講師もいたが、つい最近辞職してしまったのは悲しいことだった。
「というか、魔術ってなんで使えるんですかね」
「……ん?」
「いや、呪文唱えたら魔術は起動するけど、それがなんでかもよく分かんなくて」
「ほう……」
術式が世界の法則に介入するとか言われてもよく分からない。世界の法則ってなんだよ、僕が知りたいのはそこなんだよな。
こんな感じの愚痴をグレン先生に言ってしまったが、何故かグレン先生は少し真面目な顔で何か考えていた。
そんなこんなで僕の家の近くに来たので、声をかけることにする。
「あ、えと……僕の家こっちなんで」
「おう、じゃあな」
グレンはそれだけ言うと、スタスタと歩いていった。
「グレン先生、どうしたんだろ?最後、なんか変だったけど……」
考えても分からないので「まあいいや」と考えるのを止めるのであった。
「昨日はすまんかった」
教室中は驚愕に包まれていた。
何故なら、
……字面にすると当たり前のことような気がするが。
「俺は魔術が大嫌いだけど、それは人それぞれというか……とにかくすまんかった!」
そして。嫌々ではなく自身の非を認めながらである。
やはり、当たり前のことであるが、グレンがしたとなると話は変わってくる。
グレンはそれだけ言うと、教壇の元へ行き、備え付けの椅子に座りながら目を閉じ、じっとしていた。
ざわざわと教室中がさわがしくなる中、グレンはそのまま身動き一つ取らなかった。
そして、始業のベルが鳴るとカッと目を開き、声を上げる。
「それじゃあ、授業を始める」
まさかの言葉に誰もが言葉を失う。
そんな中、グレンは授業で使う教科書をペラペラとめくっていく。その顔はどんどん苦いものになっていき、最後までいくとそのまま開いている窓の方へ向き
「そぉい!
その教科書を投げ捨てた。
そして、こう言葉を発した。
「さて、授業を始める前に一つ、お前らに言っておきたいことがある」
グレンは続ける。
「お前らって本当に馬鹿だよな」
その言葉に、生徒が騒ぎ立つ。
「【ショック・ボルト】程度の一節詠唱も出来ない三流魔術師に言われたくないね」
「まあ、それを言われちゃあ耳が痛い」
すっとぼけた表情をしたが、すぐに笑みを浮かべ言う。
「だが、今【ショック・ボルト】
そう言いながら、グレンは黒板に文字を書いていく。
《雷精よ・紫電の衝撃以て・打ち倒せ》
「さて、これが【ショック・ボルト】の基本詠唱だ。センスのあるやつは《雷精の紫電よ》の一節詠唱ができるが……それじゃあ問題な」
《雷精よ・紫電の・衝撃以て・打ち倒せ》
「三節が四節になったらどうなる?」
沈黙が教室を支配していた。誰も答えることが出来ないのである。正確にはどう答えたらいいのか分からない、のかもしれない。
「おいおい、まさか全滅か?」
グレンの煽るような言葉に負けじと生徒が「まともに起動しない」「何らかの形で失敗する」と反論する。
が、グレンが聞きたい答えではないと一蹴する。
「もういい。答えは……右に曲がる、だ」
そして、グレンが四節で詠唱すると、言った通りに右に曲がった。
さらに、グレンは続ける。
今度は五節にすると、射程が三分の一に落ちる。
三節に戻し、一部を消すと、威力がすごく落ちる。
全てグレンの言う通りになった。誰も何も言えない。悔しいが自分たちには見えない何かが、この男には見えているのだから。
「お前らはなんでこんな変な言葉を口にして、魔術が使えるかわかってんのか?」
グレンは真面目な顔で続けていく。
「術式が世界の法則に介入するとして、何故言葉の羅列が世界の法則に介入出来るんだよ?人が作ったものだぞ?まあ、おかしいと思ったことはねーんだろうな、普通は。だって、それがこの世界の当たり前だからな」
そして、教室を見渡しながらこう言った。
「つーわけで、今日はお前らに術式構造と呪文のド基礎を教えてやる。興味無いやつは寝てな」
主人公ステータス
〔知識〕Rank.1_平均的
〔勇気〕Rank.1_なくもない
〔魅力〕Rank.1_人並み
〔優しさ〕Rank.1_それなり
〔伝達力〕Rank.1_そこそこ
コミュ無し