日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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諸事情により、スマホを触れない日々が続いていました。
大変長らくお待たせしたことをここに謝罪いたします。
m(_ _)m


11話:ロウリア王捕獲作戦Ⅰ

 ロウリア王国 王都ジン・ハーク 早朝

 

 

 ロウリア王国王都防衛騎士団の管轄である城壁監視塔は現在、24時間体勢で監視員を増員している。

 先日の攻撃により緊急体制となった監視塔で、監視員マルパネウスとその同僚は自分の職務を全うしていた。

 

「今日は視界が悪いな…」

 

 その日の朝は霧が発生しており、監視員からしてみれば最悪のコンディションだ。

 近々、敵が攻めてくるという噂も広がっているため、気は抜けない。

 

「…ん? なんだあれ?」

 

「さあ…動物じゃないか?」

 

 角ばった体を持ち、長い角を生やしている。今までに見たことのない魔物の群れだ。

 しかし、様子がおかしい。

 

「なんか…こっち来てないか?」

 

 それだけではない。

 その魔物は整然と並んで隊列を組んでおり、何よりも速度が異常なのだ。

 

「まさか…敵か?!」

 

「分からん。何かの攻城兵器かもしれんし、一応報告しておこう」

 

 マルパネウスは魔信のスイッチを押し込み、叫んだ。

 

『第17監視塔より王都防衛本部。北側4kmに正体不明の物体を確認。繰り返す──』

 

 報告を受けた通信員は止まりかけていた脳をある程度覚醒させ、返答した。

 

「正体不明では分からない。具体的に説明せよ」

 

『えーとめっちゃ足の速い破城槌…──ザザザ』

 

「あれ?」

 

 

ドォーン…

 

 突如、遠くで何かが爆発する音が通信員の耳に入った。

 

「──?!!! 第17監視塔応答せよ! 聞こえるか?! 応答せよ!」

 

 返事はなく、聞こえてくるのはノイズだけ。

 

「17監視塔が攻撃を受けた! 警鐘鳴らせ!」

 

 すぐさま鐘の音が鳴らされ、全兵士に緊急出動命令が出される。

 街では慌てて家を飛び出した人々がパニックを起こし、すでに負傷者も出ていた。

 

 

 

「状況は!」

 

 王都防衛騎士団将軍パタジンは、先程の爆発音を聞くなり一瞬で覚醒し、すでに鎧に身を包み、出勤していた。

 

「はっ! 今のところ第17監視塔が足の速い破城槌に攻撃を受けたと報告が入っております。城壁に損害はありませんが、敵は不明です」

 

「まさか日本軍か…? ビーズルを無視して来たとは…!」

 

 パタジンが作戦室の扉を開くと、すでに先日の面子…1部はビーズルへ向かっていたが、が集結していた。

 誰もが怒りと不安を顕にしている。

 この前の会議で練りに練った計画書が、効果を発揮する間もなくゴミとなったからだ。

 

 

ドォーン…

 

 再び鳴り響く轟音。

 しばらくして聞こえてくるドタドタと廊下を走る音は、良くない知らせだと誰もが分かりきっていた。

 

「報告します! 敵の2回目の攻撃により、第1城壁の1部が崩れ落ちました!」

 

 王都ジン・ハークは外側から順に第1、第2、第3という3重の城壁に囲まれている城塞都市である。

 その1つが崩壊、つまり機能を停止したという報告は、彼らの耳には命のカウントダウンのようにも聞こえた。

 

「敵は?」

 

「たった今、監視塔の1つが日の丸の旗を確認しました! 日本軍です!」

 

 最悪のタイミングで来てしまったか…。

 まさか敵がビーズルを無視して来るとは思わず、かなりの戦力が不在なのだ。

 

「現在投入可能な兵力は?」

 

「歩兵まだ非常招集中で、当直の即応騎兵400騎でしたら、今すぐにでも出陣可能です」

 

 パタジンは悩んだ。個別に戦力を投入するか、少し待ってから一気に戦力を投入するかを。

 前者は各個撃破される可能性が高く、リスクが大きい。

 しかし後者の選択肢をとれるほど、時間が余っているようにも思えなかった。

 

「パタジン将軍、ここは機動力の高い騎兵を使い、敵の強さを測りましょう。決戦の前に敵の攻撃方法や、その威力を見て弱点を探るのです」

 

 またも発言したのは、三大将軍の1人であるミミネルであった。

 

「そうだな…よし、例の騎兵隊を出陣させよ。いくら騎兵とは言えたったの400騎だ。無理はするな。ある程度戦ったら離脱するように伝えろ。軍師には壁上で彼らの戦いを目に焼き付けさせろ! 彼らの命を無駄にするな!」

 

「ははっ!!」

 

 


 

 

「隊長、騎馬隊を確認しました。時速50km、装備は鉄鎧です」

 

()()()()だな。前時代的な装備と戦闘ドクトリンとは言え、迂回されて本隊との挟撃に来られたら厄介だ。敵さんがバカで助かったよ」

 

「これである程度の脅威をノーリスクで排除出来ますね」

 

「ああ、撃て」

 

 陸上自衛隊の斉射により、ロウリア王国王都防衛隊第32騎士団は300騎以上の人員を損失、実質的に壊滅。

 その後、遅れてやって来た歩兵、重装歩兵、弓兵、騎兵、魔導師による一斉攻撃も似たような結果となった。

 

「隊長、我々は本当に戦争をやっているのでしょうか? あまりにも呆気なさすぎます」

 

「人間が人間を効率的に殺すために創られた武器を使っているからな。そういうもんだろ」

 

「それはそうと、上から言われてた本国派遣隊の実戦訓練はどうします? このままでは彼ら、何も出来ずに帰国することになりますよ?」

 

「それは考えてあるから心配するな。俺達は夜までここに居座るだけで良い。あと焚き火の用意をしとけ、一芝居うつぞ」

 

「はあ…?」

 

 


 

 

 同日 夜

 

 

「日本軍はまだ攻めてこないな。いつ王都に再攻撃を仕掛けてくるのだろうか」

 

 とは言ってたパタジンであったが、もう来て欲しくないと言うのが本音であった。

 それに答えたのは、やはり三大将軍のミミネル。

 どういうわけか、彼は今までの戦争以上に意見具申をしてきているのだった。

 まるで人が変わったように。

 

「あれほどの魔力投射をしたのです。意外と消耗しているのかもしれません」

 

「と考えると…今が好機か?」

 

 パタジンはカマをかけることにしてみた。

 この空前絶後の損害を見た上で、「今が好機だ」とでも答えたら彼がスパイである可能性が高まる。

 

「…いえ、あくまで可能性の話をしてみただけです。もしこれが真実でしたら好機かもしれませんが」

 

「…そうだな」

 

 考え過ぎだったか…。

 恐らく、亡国の危機に瀕して愛国心が高まっただけだろう。

 

「もしくは、ただ単純に休んでいるのかもしれません。敵からしてみれば、我々がこれ以上出撃しても損害を増やすだけで無意味に見えるのでしょう」

 

「…そこに付け込むのか!」

 

 なるほど。今日の敵は大勝しているため、もうこれ以上の出撃はないと踏んで、宴をしている可能性すらある。

 さすがは三大将軍のミミネルだ、と彼は心の中で彼を見直した。

 

「ええ、今回はカルシオ将軍に()ってもらいましょう。彼の率いる王都防衛騎士団第3騎兵隊は夜目の効く者が多く、夜の闇に紛れての奇襲には打って付けです」

 

 そして彼は会議室のカーテンを開き、続けた。

 

「おまけに敵の陣地を見て下さい。不用心にも火を炊いております! 気が緩んだのでしょう! もう今夜しかございません!」

 

 それを見た彼らに、ふつふつと怒りが込み上げてくる。

 同胞を殺された悲しみが大きな炎となって燃え上がり、会議室を怨恨が冷たく包む。

 

「何としても敵に一矢報いたい…ッ!!!」と言うのが彼らの総意であった。

 

「…カルシオ、分かっておるな?」

 

「ははっ!! 我らが同胞の魂は刃となり、敵に突き刺さるでしょう!」

 

「良い心掛けだ。他の者も出撃の準備を整えろ。カルシオが敵の撹乱に成功した後、全兵力を以て敵を殲滅するぞ!」

 

 夜も深くなり、ほとんどの者が眠りにつく中、知将カルシオとその配下2000名の騎兵は静かに出陣する。

 そしてその後方には王都中から掻き集めた兵士が今か今かと吉報を待ち続け、仲間の無念を晴らすための戦意を滾らせていた。

 

 


 

 

「また報告通りですか? 隊長」

 

「ああ、()()()()()()だ。壁で隠れて見えないが、あの後ろには本隊も待ち構えているらしい。作戦を決行するには最高の状況だな」

 

 隊員達は暗視スコープを駆使し、敵が進軍する様子を事細かに把握していた。

 世代に世代を重ね、改良が繰り返されて来た現代の暗視装置は手術を受けていない一般の隊員達にも、新月の夜が真昼のように見える目を与えていた。

 

「敵の注意をこちらに釘付けにするぞ、照明弾用意。奇襲部隊を殲滅した後、城門を破壊して本国派遣隊を突撃させろ。俺達はその後に続く」

 

「了解しました」

 

 


 

 

 漆黒の闇をカルシオ達は進軍する。

 夜目が効く者を中心に集められたこの部隊は、報復攻撃の先陣を切る栄誉を授かったと皆が喜んでいたが、カルシオはただ1人、背中に冷や汗をかいていた。

 

 何故か妙に見られている気がするのだ。

 

 そんな彼の不安は的中し、突如、夜の闇は打ち払われる。

 上空に太陽が出現したのだ。

 

「なッ…?! い、いかん! 逃げろ!」

 

 彼が命令を叫んだ直後、敵陣から無数の光弾が飛来し、部隊を襲った。

 軽い矢なら簡単に弾く鉄の鎧が、紙のように破られ、兵士が倒れ込む。

 

『パタジン将軍、聞こえますか?! 奇襲は失ぱ──ザザザー…』

 

 カルシオの率いた2000人もの兵士はあっという間に全滅し、司令室から戦場を眺めていたパタジンとその仲間は、もう切れる手札が無いことに気が付き、絶望する。

 後はもう、ビーズルからの増援を待つしか無いのだ。

 

 しかし、時間は彼らの味方ではなかった。

 

 突如、城門付近に爆煙が上り、白い壁のようなものが王都に広まる。

 その壁が彼のいる一室に到達すると、轟音が鳴り響いた。

 

「将軍! 城門が破壊されました! 日本軍がなだれ込んで来ます!」

 

 全員が戦慄する。敵はこの夜で全てを終わらせるつもりなのだ。

 しかし…

 

「すでに城門付近には総戦力が集結している。焦るな、我々は最後の一兵まで戦うぞ。お前達も前線に行って指揮を執れ」

 

「ははっ!!」

 

 パタジンと通信員以外は馬を駆け、友軍の元へと向かった。

 この行動を含め、彼らの全てが日本の手の上で踊らされているだけと一体誰が予想しようか。

 

 彼らは走る。

 誘蛾灯(太陽)に惹かれる虫のように。

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