日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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遅れた分を取り返すように筆が進みました。
今日の昼にもあげる予定です。


12話:ロウリア王捕獲作戦Ⅱ

 王都ジン・ハーク 北側城門

 

 

 ロウリア王国の技術を結集して作られた北側正面城門は、その強度に定評がある。

 しかし圧倒的な技術差を前には、そんなものはハリボテ(ウドの大木)に等しい。

 

 ヒュルル…という音が聞こえてきたかと思うと、いきなり爆発が起こり、城門は完全に瓦礫となった。

 そして、砂煙から姿を現すのは異形の者達。

 それを目の前にした兵士達は何を思っただろうか。

 

「化け物…!!!」

 

「まるで百鬼夜行に遭ったようだった。」と、後に日本でインタビューをされた生き残りはそう語る。

 

『本国派遣隊の全隊員に告ぐ。一般人に被害が出ない程度に…』

 

 骨伝導イヤホンから伝えられた指令は、シンプルであった。

 

『──暴れろ!!』

 

 この世界線の日本では、通称「バグズ手術」もしくは「M.O.手術(モザイクオーガン・オペレーション)」と呼ばれる、生物としての人間の機能を大幅に向上する手術が一般化されていた。

 その概要は、ヒトがヒト以外の生物の能力を獲得できること。

 例えば翼を持つ生物を「手術ベース」にすれば空を飛べ、再生能力を持つ生物をベースにすれば失った体の部位を再生することができるという夢のような話だ。

 

 だが、当然肉体への負担は大きく、当初は手術成功率も3割ほどであったため、一般人はこれを受けられず、火星で異常進化を経た害虫(テラフォーマーズ)と戦う者にしか手術は許されていなかった。

 

 しかし、それはもう過去の話。

 火星での戦いは終わり、そこで得た戦利品(エイリアンエンジンウイルス)は手術の成功率をほぼ100%まで高めることを可能にした。

 そして技術の発展で真っ先に変わるのは、軍である。

 

「これ使えばヤベぇ兵士量産出来んじゃん!」

 

 真っ先に目を付けたのは、中国であった。

 

 人権がない国は、モルモットが多い。

 そしてそのモルモットは、全て虎となった。

 

 小銃が効かない兵士、戦車の装甲をも紙のように破壊する兵士、戦闘機に追い付いて素手で破壊する兵士。

 戦力としての利点だけでなく、超高額な手術費用さえ無視すれば、後は変身薬の代金だけで何百億もする兵器がゴミとなる。

 戦争時における敵国への経済的な打撃を考えれば、可能性は無限大だ。

 

 人民解放軍は変わった。なら、我々は? 

 中国に続いたのは、アメリカ合衆国、ロシア連邦、欧州各国、そして日本であった。

 

「第四次世界大戦では、石と棍棒が主な兵器となる。」と、アインシュタインは言った。

 彼の予言は、ある程度当たった事となる。

 

 人類は気付いたのだ。

 長距離ならミサイルで、近距離ならばむしろ、「石と棍棒」の方が良い。

 

「「了解!!!」」

 

 本国特別派遣隊。被手術兵の実戦経験が第7師団ばかりに偏るのは不味いと上が考え、各地の部隊から人員が集められ、特別に編成された増援部隊である。

 その全員が手術を受けており、彼らは自衛隊内でも一騎当千の強さを誇る猛者だ。

 

 今回はその1部を紹介しよう。

 

『アフリカゾウ』

 現生する陸棲動物では最大種の像。その圧倒的な強さと凶暴性の前には、百獣の王でさえ近付くのを躊躇する。

 大昔には兵器として飼育されていたこともあり、この生物の突進を前に逃げない人間などいない。

 

「どけぇ!! チビどもぉ!!!」

 

 彼が腕を振るうだけで兵士だった物が宙を舞い、それらが味方に被害を出して落下する。

 まるで巨人のような体躯。人間相手には有効な武器が全く効かない分厚い皮膚。それを振り回す重機のようなパワー。

 まるで異界の魔物。最大最強の「陸の王者」である。

 

「何だあれは…! リントヴルムか…?!」

 

「いや…巨人だ…!」

 

 巨人を先頭にした軍隊は、まだまだ続く。

 我真っ先にと飛び出したのは、2匹の羽が生えた蟲であった。

 

大雀蜂(オオスズメバチ)

 日本最大、かつ最強と悪名高い昆虫。世界最大の殺人蜂とも呼ばれており、攻撃性が非常に高い獰猛な蟲である。

 その戦闘能力も卓越したものがあり、セイヨウミツバチの巣に単騎特攻をし、数万匹を虐殺したという記録も残っている。

 

「巨人の次は魔人かよ! どうなってんだ?! クソっ!」

 

「もうダメだ! おしまいだぁ!!」

 

 騎士を鉄鎧ごと引き裂く怪力、猛毒の滴る毒針、そして戦車の装甲のような硬い外骨格。おまけに異常な攻撃性。

 それは職務を全うしているのではなく、ただ本能のままに人を、敵を、生物を破壊する。

 

 そして似たような奴がもう1匹。

 

『アフリカナイズドミツバチ』

 通称「キラービー(殺人蜂)」。こちらも非常に凶暴な種であり、その異常性は人工的に生み出された失敗作とも言われるほど。

 ミツバチの仲間にしては運動性能、毒性が高く、縄張り意識が強い。

 そして非常に短気な性格であるため、僅か0.5秒で対象を敵と決めつけ、1度敵と認識したら巣から何km離れていようと対象を追いかけ、攻撃を続ける。

 

「こいつら空を飛ぶぞ! 気を付けろ!」

 

「なんだと?! 日本に魔法は無かったはずだぞ?!」

 

「噂じゃあワイバーンすらいないらしいぞ!」

 

「そりゃあいないだろ…こんなヤバい奴らがいるんだから…」

 

 空を飛ぶ魔人の数は続々と増え、ヴヴヴと不快な音が王都上空を乱舞する。

 この前来た奴らと違うのは、今度は地上の兵士を積極的に狙って来るということだ。

 

 ワイバーンには不可能な飛び方で、ワイバーンとは異質の攻撃で、空の魔人達は兵士の命を刈り取る。

 しかし、その更に高空にいる物体の存在には誰1人として気が付かなかった。

 

 


 

 

「…陽動は成功したようだな」

 

 漆黒の闇の中、王都上空をヘリコプターが音もなく飛翔する。現代に生きる者であれば、音をほとんど出さない回転翼機など見たことがないだろう。

 

 その秘密は『音力発電』である。

 音というのは空気の振動であり、振動というエネルギーが発生している以上それを変換させることさえできれば発電させることも可能なのだ。

 それに真っ先に目を付けたのは、またも中国である。

 

「これ使えば音の少ないヘリ作り放題やん!」

 

 空気の振動というエネルギーを、電力に変換する。

 そうすれば音も減り、ロスとして出た分が電気として再利用可能という理屈であった。

 

 結果、第一空挺団及びSAT混成部隊を乗せたヘリコプターは、王城広場に着くまで誰1人にも気付かれなかったのである。

 その場にいた兵士達を除いて…。

 

「地上に武装勢力を確認! 制圧射撃を開始する!」

 

 発砲炎が光り、曳光弾がハーク城を守る第7、第8近衛隊に降り注ぐ。

 地上で動く者はいなくなると、滞空するヘリからロープが降ろされた。

 

「降下! 降下! 降下!」

 

 鍛え上げられた精鋭達は、その仕事迅速たるや、王宮広場をあっさりと制圧後、王城の図面に従い、王がいるであろう場所へと駆けた。

 

 


 

 

「空から軍を送り込んで来やがったのか…!!」

 

 パタジンも司令室から敵兵が王城に降下する様子を目撃していた。

 この世界で主要な航空戦力であるワイバーンは基本的に重たい物が運べず、乗せられる人員はせいぜい2名である。そして高価な竜騎士を歩兵として扱うと言った運用方法はなく、空から歩兵を送り込むという作戦自体が発想になかったのだ。

 

 しばらくしないうちに、廊下からドタドタと誰かが走って来る音が聞こえてきた。

 

「ランド近衛大隊長より援軍の要請が入っています! 敵は王を直接狙ってきたものと思われます!」

 

「くそ…! 城門の破壊も全て陽動だったと言うのか?!」

 

 しかしパタジンは、報告をしに来たのが一般の兵士ではないことに気付く。

 

「──…ミミネル?! なぜここに?! 前線で指揮を執っているはずじゃ…」

 

 扉の前に立っているのは、三大将軍の1人、ミミネルであった。

 

「…まあ良い! 通信員! 北門に兵を半数残し、残りは王城に侵入して来た敵に差し向けよ!」

 

「了解! こちら司令室、緊急…」

 

 ──パシュ! 

 

 突如、指令を出そうとしていた通信員が倒れる。

 まるで一瞬で全身の力が抜けたように椅子から転げ落ちた彼は、頭に穴が空いており、出血していた。

 

「…は?! おい、どうした?!」

 

 しかしパタジンの介抱も虚しく、似たような現象は続く。

 

 パシュ! パシュ! 

 

 まるで死神の鎌に魂を抜き取られたような不可視の攻撃。

 彼は最初、報告にあったような日本の攻撃を疑ったが、近くにそれらしき影はない。

 

「くっ…! ミミネル、走ってどこか別の魔信機から指令を出してくれ。ここの魔信機は呪われているようだ」

 

「…」

 

 魔法がある世界であれば、呪いという言葉が平然と出てくるのも無理はなかろう。

 しかし、ミミネルは何も言わず、じっと立っているだけであった。

 

「ミミネル…?」

 

「ぷ……ぶふぉ! 呪いですか…?!」

 

 彼は思わず吹き出し、ケラケラと腹を抱えて笑った。

 まるで列強の人間が、蛮族を見るような目で。

 

「ミミネル…どうしたのだ?」

 

「いえね、明らかに私がやった事なのに…呪いって! ひぃ〜お腹痛い!(笑)」

 

 ミミネルの手にはサイレンサー付きの拳銃がしっかりと握り締められていた。

 しかし、パタジンは先程の不可解な現象がそれの仕業であるとは思いもしなかったのである。

 彼は列強であるパーパルディア皇国の長い、音が大きく、白い煙を吐き出す魔導銃は知っていたが、音をほとんど出さない極小の銃など知らなかったのだ。

 

「ミミネ………いや、誰だお前は?」

 

「ああ…ようやく本題に入れそうですね? パタジン将軍♡」

 

 扉を閉め、鍵をかけると、彼は続けた。

 

「冥土の土産に教えてあげましょう。私は日本の諜報員なのですよ」

 

「???!」

 

 当然、彼は困惑した。

 ミミネルとは昔から親交があり、彼が売国奴になるような気は微塵も感じられなかったのだ。

 それが…日本国の諜報員?! 

 

「私達からするとですね、ロウリア王…いえ、武装勢力の長の捕獲にあたり、王城内に敵が大勢いるのは都合が悪いのです」

 

 テヘッと舌を出して笑う彼…いや口調から判断すると彼女に、パタジンは困惑しつつも、全てを悟った。

 様々な陣地から報告のあった、中身の無い変死体。それは目の前にいるこいつの仕業だと。

 同時に、自分が踊らされていた事にも気付く。

 

「まさか…ビーズルに兵力を集結させようと提案したのは…!」

 

「はい! 我々の負担を少なくするために、厄介払いをしておきました♪」

 

「じゃあ騎兵隊をいきなり単騎特攻させたのも…!」

 

「ええ! 回り込まれて本隊との挟撃とかされたら厄介だったので」

 

「夜目が効くカルシオ達を無謀な夜襲に導いたのも…!」

 

 

「「上空からの接近を悟られないためか…! (です♪)」」

 

 

 完全にしてやられた。

 スパイが紛れ込んでいる可能性は模索したが、まさか将軍に成り済ますなんて…!! 

 

 何よりも、彼は目の前の人物に友人知人を殺された事が許せなかった。

 

「後ですね、今あなたに指令とかを出されたりするのは色々と面倒なので、あなたを排除しに来ましたぁ!」

 

「…してやる」

 

「ん?」

 

「てめぇ殺してやらぁぁぁああああッ!!!!」

 

 剣が抜かれ、怒号が司令室に響く。

 将軍とは言え、彼も一流の軍人。その剣技は軍内部でも1位2位を争う。

 

 しかし、彼も1人の人間であった。

 

「や、やめ…てくれ…! パタ…ジン…!」

 

「ッ?!」

 

 いきなり苦しみ始めるミミネル。その姿はまるで、何かに抗っているようであり、彼は攻撃しようとする手を止めてしまった。

 

「おい、ミミネル? ミミネルなのか? お前…まだ、生きてるのか…?」

 

「あ、ああ…! 俺だ! ミミネルだ!」

 

「ああ…ミミネル! 頑張れ! 悪魔なんかに惑わされるなあッ!!」

 

「はいドーン☆」

 

「ああッ?!」

 

 パタジンは足に激痛を感じ、倒れ込んだ。

 鉄の鎧を貫通した銃弾は彼の鍛え上げられた体をいとも容易く破壊し、彼は動けずにいた。

 

「な…?! ミミネル?!」

 

「なに言ってんすか将軍、そんな映画みたいなのある訳ないじゃないすか。演技ですよ? え、ん、ぎ」

 

「ぬぅう…!!!! 貴様ッ!!! 貴様ァアアッ!!!!」

 

「じゃ、お疲れ様でした☆」

 

 ──パシュッ! 

 

 パタジンは眉間を貫かれ、永遠に意識を失った。

 

 


 

 

 暗い一室に血の臭いが立ち込める中、彼女は脱皮する。

 そして魔信機でいくつかの矛盾した指令を出した後、頭蓋骨の内部に埋め込まれた極小の通信機のスイッチを入れ、彼女は空に向かって話しかけた。

 

「こちらパラサイト、司令室の制圧を完了。城の跳ね橋も上げています。敵はもう城内に入れません」

 

 凄惨な現場の中、にこやかに話しかけるその顔はまるで一仕事を終えた子供のようであった。

 

「はい…はい……了解しました。撤退します」

 

 彼女は獅子身中の虫。

 百獣の王の体内に寄生し、王を内部から死に至らしめる寄生虫である。

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