日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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13話:ロウリア王捕獲作戦Ⅲ

 王都ジン・ハーク 王城4階 王の間

 

「第1会議室、制圧されました。敵は現在2階大広間に向かって進行中。大広間東側広場で第3近衛隊と交戦中です」

 

「第3近衛隊消失いたしました。それと、パタジン将軍とは依然、連絡が取れません」

 

 王の間で警護に就くランドのもとに、侵入してきた敵歩兵の鬼神の如き強さが報告され続けていた。

 王の間の隅に設置された魔力通信機の前では通信員が絶望的な顔を浮かべており、それはランドも同じであった。

 

「クソっ…! パタジンの奴はどうしたんだ? 跳ね橋なんかを上げおって…これでは増援が城内に入れないではないか…」

 

 それでも彼が来ない増援を今か今かと待ち続けるのは、パタジンが死亡したことを全くもって知らないからである。

 

「2階大広間が制圧されました。敵は3階大臣会議室に向かって進軍中。第2近衛隊が対応予定です」

 

「敵は魔杖のような物を持ち、これが火を噴くと味方が倒れます。そして、敵の中には魔人もいると報告がありました」

 

「噂の魔人か…!」

 

 日本の兵士には、魔人がいるらしい。

 ロウリア王国内ではそういう噂が広まっており、その噂は軍の上官もある程度は耳にしていた。

 ちなみにこれに関しては、日本の諜報機関はノータッチである。

 

「ええ。虫の触覚のような物を額から生やし、人間とは思えないほどの怪力。そして防御力が報告されています」

 

「防御力ゥ?」

 

「はい。鎧を来ていないのに、剣による攻撃も、魔法も全く効かなかったようです」

 

「何だそれは? 私はおとぎ話でも聞かされているのか?」

 

「いえ、たった今入った報告です。怪力の話も聞きますか?」

 

「そうしてくれ」

 

 ランドは若干ワクワクしていた。

 彼は言わずと知れたロウリア王国最強の魔法剣士。その血がこれから出会う強敵を相手に沸いていたのだ。

 

「えっとですね…報告によると、素手のくせに重装歩兵が盾ごと体を真っ二つにされたようです」

 

「はあ?」

 

 全くもって想像がつかなかった。

 そんなのは、もはや怪力なんて話ではない。

 

「あ、第2近衛隊も…全滅したようです」

 

「第1近衛隊が謁見の間の前で接敵します!」

 

 なんて速い進軍速度だ! とランドは舌を巻く。

 鎧を来ていないとなると、敵は進軍速度を重視しているらしいが、いくら何でも異常だ。

 

 すでに水の詰まった革袋(人間)が破裂するような音が聞こえ、乾いた連続音が耳に入る。

 

「第1近衛隊…ダメです。全滅しました。謁見の間は敵の制圧下に入ったようです」

 

「いよいよか…」

 

 次はここ、王の間に敵が侵入してくるはずだ。

 あの精鋭である第1近衛隊もあっさりとやられ、このままでは王の身に危険が迫ることとなる。

 

 彼は思考を巡らせた。

 

「第零近衛隊は全員、柱の裏に隠れろ! 私が指示するまで出るな!」

 

 彼はパタジンが送ったはずの援軍の到着まで、時間を稼ぐことにしたのだ。

 そして保険としてメイド2人を呼びつけ、謁見の間と王の間を繋ぐ扉から5mほど離れた位置に並んで立つように指示した。

 

「さあ…いつでも来い! 日本軍!」

 

 


 

 

 第1空挺団の中野中隊長は障害を排除し、目標である4階の王の間へと()()()()()()()を走っていた。

 その先頭とはもちろん、被手術兵のことである。

 

黒大蟻(クロオオアリ)

 特にこれと言った特徴もない、ただの(モブ)

 しかしモブのモブ()とは言え、手術ベースとしては平均以上の筋力と防御力を持ち合わせた優秀さと、検体の採取も非常に容易な事から、量産化に向いている。

 

「先陣を切るのは俺だと思っていた…」

 

「私語を慎め橋本隊員。我々は任務中なのだぞ」

 

 だが、あまりにもアッサリと終わる戦闘に、彼自身も気が緩みかけていたのは事実であった。

 今まで現れたロウリア兵は特に脅威ではなく、魔法を使う兵との戦闘では、目の前の被手術兵が大いに腕を振るっていた(物理的に)からだ。

 

(しかし、我々第1空挺団よりも軽装とは言え、この進軍速度に着いて来るとは…SATも大したものだな)

 

 警察官はもっと体力のないものと思っていた彼にとって、警視庁特殊部隊SATの体力は少し意外だった。

 それと、被手術兵の力も。

 

(目の前のこいつは…何も言及しないでおこう。間違いなく、俺達では勝てん)

 

 その異常な怪力に、彼らはトラウマになるレベルで舌を巻いていたのだ。

 特に、盾を持った敵兵がその中身をぶちまけたのは一生忘れなさそうである。

 

「ふぅ…!」

 

 中野は意識を目の前の扉に戻した。やはり被手術兵を先頭に、銃を構え、同僚に合図を出して扉を開けさせる。

 

「──ッ!!」

 

 銃口の先には震えるメイドが2人立っており、彼女達は扉が勢い良く開いたことに驚いたのか、顔は悲愴に染まり、床が濡れていた。

 

「やあ皆さん、よくぞいらっしゃいました。近衛大隊長のランドと申します……。私と少しお話でもしませんか?」

 

 薄暗い王の間の奥から、声が聞こえる。そこには銀の鎧に身を包む、銀髪をなびかせた男が立っていた。

 

「お前と話をしている暇はない。敵意がないなら、すぐに武器を捨てて投降しろ」

 

「心外ですねぇ…せっかく対話の時間を設けているのに…。ねえ、戦いは愚かだと思いませんか?」

 

 チラッとメイドを見る彼の目が、何かを企んでいるように見え、隊員達は一斉にメイドに銃口を向けた。

 彼女達が戦闘員には見えないが、もし武器を隠し持っていて、これが演技だとしたら…? 

 

「伏せろ! 伏せないと敵とみなす!」

 

 しかしランドだけでなく、メイド達もその場を動こうとはしなかった。

 中野は彼女達も纏めて障害として排除するのか、隊員達の安全を守るのかというジレンマに悩まされていた。

 しかし、それは意外と早く解決することとなる。

 

「中野さん、彼女達は戦闘員ではありません。()()で分かるんです」

 

 そう言ったのは、SAT小隊長の青木であった。

 

「ああ…。そういえばあなたも、被手術兵でしたね」

 

「私は兵士ではありませんよ。同じ公務員ですが、あくまで一般人です」

 

『ドーベルマン』

 言わずと知れた、警察、軍用犬の代表格。体は細身だが全体的に筋肉質で俊敏性、走破性に優れる。飼い主に対しては非常に従順であり、強い忠誠心と忍耐力を持つ。

 その特徴はなんと言ってもやはり、人より遥かに優れた犬の嗅覚であり、とある研究では犬は人間の感情を匂いで読み取ると言った結果が出ている。

 

 彼もまた2人のメイドの、心からの恐怖を感じ取っており、それと同時に数が合わないほどのオッサン達の加齢臭をも感知していた。

 

「ランドさん、柱の裏にも隠れていますね? 24…いや、25人も」

 

「これは驚いた! まさか数まで言い当てられるとは…!」

 

「ええ、プンプン臭ってますよ? あなたの()()も」

 

「…これは仕方がないな──」

 

 ランドは手の内に隠していた、煙幕用の魔法陣を発動させた。

 彼は王の剣であり、王の盾、ロウリア王国最強の魔法剣士である。

 

 真っ白な煙が王の間を覆い尽くし、視界は急激に悪くなった。

 

「全員突撃せよ!!!」

 

 剣士達は煙に紛れ、第1空挺団とSATの混成部隊に襲いかかる。

 ランドも立ち上がり、中野に斬りかかった。

 

 しかし、彼は魔人の存在を完全に忘れていた。

 

ドゴォン!!! 

 

 ランドは体がバラバラになりそうなほどの衝撃に吹っ飛ばされ、壁に激突した。

 

「な…なぜ見えて…い…る…?」

 

 蟻は目が見えているかと聞かれれば、ほとんど見えていないというのがほぼ全ての種に当てはまる。

 それでも彼らが道に迷わずに巣に帰れたり、真っ暗闇()の中で歩けるのは、嗅覚が優れているからだと言われている。

 

 彼は半分人間なので、視力は人間のままに、嗅覚は蟻のものを有していたのだ。

 

「見えねぇよ。でもSATのオッサンが言った通り、お前からは()()の臭いがプンプンするな」

 

(オッサン…)

 

(こいつ目上の人をオッサン呼ばわりしたぞ…)

 

(俺のワキガもバレてんのかな…)

 

「こ、これが…日本の…魔人か…!」

 

 ランドは気を失い、マシンガンの音が鳴り響く王の間の隅で、床に倒れ伏した。

 

 


 

 

 王の控え室

 

 

 服従と言って良いほどの、屈辱的なまでの条件を飲んだ末に受けた列強、パーパルディア皇国の支援。

 そして列強式兵隊教育を6年もの歳月をかけて施し、実現したロデニウス大陸を統一するための軍隊。

 資材も国力のギリギリまで投じ、数十年先まで借金をしてようやく作った軍隊で、念には念を入れ、石橋を叩いて渡るかのごとく、軍事力に差をつけた。

 

 しかし…

 

「圧倒的勝利で勝つはずが…どうしてこんな事に?!」

 

 最初はクワ・トイネとクイラの、農民と貧民の弱小国を相手にするつもりだった。

 そしてしばらくして参戦してきた日本という国も、彼らと同じ弱小国だと思っていた。

 

 そんな事はなかった! 

 

 ワイバーンのいない蛮族の国? とんでもない!

 ワイバーンなんか目ではない魔人と飛行機械が居るのだぞ?! 

 

 国交を結ぶために訪れた日本の使者を、もっと丁重に扱っておけば良かったと彼は後悔する。

 彼の国のデタラメな強さを前に、ロウリア王国軍は1人の戦果も上げられずに敗退したのだ! 

 とてつもない戦力比ではないか?! 文明国の列強を相手にしても、ここまで酷い結果にはならなかっただろう! 

 

「…もう…どうしようもないではないか…」

 

 私がいる部屋の前でも戦闘が行われている。近衛隊の悲鳴が聞こえた。

 

 扉を蹴破る音とともに、緑色の斑模様の、奇妙な軍勢が雪崩込んできた。

 その中に、紺色の服を基調とした兵と……魔王か、魔人のような見た目の人間(?)が交じっていた。

 

「貴様らは…魔帝軍か何かか?」

 

 ハーク・ロウリア34世は全てを諦めたように尋ねた。

 

「魔帝軍というのは存じ上げませんが…日本国警視庁の青木といいます。ハーク・ロウリア34世ですね? あなたはクワ・トイネ公国のギムにおいて、大量虐殺を指示した罪で逮捕状が出ています」

 

 そしてロウリア王の両手に手錠がかけられ、戦争は日本及びクワ・トイネ公国、クイラ王国の勝利によって終結した。

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