日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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15話:フェン沖海戦

 パーパルディア皇国監察軍東洋艦隊

 

 

「竜騎士隊との通信が途絶しました」

 

「なッ…?!」

 

 一同に衝撃が走った。

 通信途絶とは部隊の全滅を意味し、20騎ものワイバーンロードが通信をする間もなく撃墜されたと言うことになるのだから。

 

「嘘だろ…?! 第3文明圏にワイバーンロードを超える航空戦力は存在しないぞ…?」

 

 これはプライドの塊であるパ皇の驕りとかでは無く、事実なのだ。

 文明圏内国家に存在するワイバーンロードは、そのほとんどは皇国が輸出したものであり、文明圏外国家には一切輸出していなかったからである。

 

 不可解な事態が起きている現状に、ポクトアール提督は嘆きたくなった。

 

 しかし嫌な予感がするからと言って、第3外務局長カイオスの命令には抗えない。ここで帰ったら、皇国の懲罰軍が懲罰せずに帰ったという事実が広まり、祖国の威信に傷がつくからである。

 

 彼には、現地に向かうという選択肢以外が残されていないのだった。

 

「全速前進、フェン王国に各国武官の前で懲罰を加えるぞ」

 

「「ははっ!」」

 

 その後、懲罰艦隊はフェン王国の水軍と戦闘、これを殲滅する。

 しかし、ポクトアール提督はそれでも違和感を感じていた。

 

「一体…何がいるのだと言うのだ…」

 

 違和感の正体を求め、懲罰艦隊は東へと進む。

 

 


 

 

 日は傾き、彼はフェン王国から西に約100kmの海上で水平線を睨んでいた。

 空は快晴であり、比較的乾いた潮風が彼の不安を一拭する…はずだった。

 

「なんだあれは?!」

 

「艦影と思われるものを発見! こちらに接近してきます!」

 

 城のように大きい灰色の、恐らく船だと思われるその物体は、彼らの常識とは掛け離れた船速を叩き出していた。

 

「提督、どうしますか?」

 

「…」

 

 艦隊と並走しながらも近付くその巨大艦は、少なくともパーパルディア皇国のものではない。

 彼の船はフェン王国方面から来たのだから、フェンの関係国所属艦に違いないと彼は判断する。

 ならば、立場上やることは1つだ。

 

「射程圏内まで入ってきやがったな阿呆が! 魔導砲、撃てぇぇぇ!!!」

 

 22隻もの戦列艦から放たれた無数の砲弾が、海上自衛隊の護衛艦『みょうこう』に襲いかかる。

 フェン王国の水軍を赤子の手をひねるが如くあっさりと葬ったこの艦隊ならば、正体不明の巨大艦にも勝てるだろうと彼は踏んだのである。

 

「4発命中!」

 

「はっはー! 見たか炸裂砲弾の威力を! 文明圏外国にはこんな代物ないだろう!?」

 

 しかし『みょうこう』はビクともしていない。

 この時代は、どんなに重装甲化しても1発当たれば撃沈or大破の対艦ミサイルだけが脅威という訳ではないからだ。

 戦闘艦を戦闘不能にするための手段としては、数百機もの無人機による飽和攻撃、被手術兵の移乗攻撃、電子的な妨害が出来ない「ただの鉄の塊」を超遠距離から超高速で飛ばしてくる電磁加速砲、その他もろもろが上げられる。

 

 特にドローンと被手術兵による攻撃は厄介で、これら2つは迎撃をし損ねる可能性が特に高いため、その対応策として、「ある程度の重装甲化」がこの時代の戦闘艦には主流となっている。

 その理由として、ドローンは生産性を重視しているため、そこまで威力が高くないのと、被手術兵も濃密な対空迎撃網をすり抜けて移乗して来るタイプは機動力に特化しているため、地上での戦闘能力は低いからである。

 他にもエンジンのさらなる高出力化が進み、機動力を落とさずとも装甲を厚くできる余裕が出来たのもあった。

 

 そのため地球史で見れば中世程度の大砲など、恐るるに足りないのだ! 

 

「敵艦加速、魔導砲の射程圏外に高速で離脱していきます」

 

「ファッ…?! なんて速さだ! 早く追いかけろ!」

 

 攻撃態勢のまま、『風神の涙』による最大戦速で彼らは敵艦に進路を向ける…が、追いつけない。

 

「敵艦に追いつけません。敵、さらに遠ざかります」

 

「ちっ、舐めやがって…もういい。灰色の巨大艦に対する監視を厳とし──」

 

 ボウッ

 

 突如、マスト付近に火の手が上がった。

 

「ッ?! 火災だ! 消火急げ!」

 

 木造船は火災に弱い。

 特に帆やロープは非常に燃えやすく、すぐさま鎮火しないと、そこから他の場所に引火して大惨事になり得る。

 

「提督! 他の艦にも火災が発生しております! 発生源は全てマストからです!」

 

「なんだとッ?!」

 

 そんな緊急事態に見舞われながらも、優秀な船員達は消火作業を続ける。

 幸いなことに火災が発生したのはマストだったため、被害は帆を数枚失った程度に済んだ。

 

 しかし『みょうこう』の艦長、海原はそれくらいで彼らを許すほど冷静ではなかった。

 

「ふっふっふ…うちの嫁に手を出したこと、後悔させてやるよ…!」

 

 帆を新たに張り替えた直後から、再び発生する火災。

 それにより被害はじわりじわりと拡大し、負傷者が増えていく。

 何より、消火にあたっていた者達の疲労度合いは凄まじかった。

 

「こんくらいでは終わらんぞ? さあ次いってみよう!」

 

 またまた同じ場所(マスト)から火災が発生する。

 船員達は必死に消火活動に従事するも、終わりのない作業に精神的にも体力的にも限界を迎えていた。

 何よりの問題は、帆のストックである。

 

「提督! このままでは帆が無くなり、航行不能になります!」

 

「分かっている!! だが、マストが消失しても航行不能になるぞ!?」

 

 Q.船なら最悪、オールで漕げば良いではないか? 

 

 A.いいえ、それは無理です。

 

 同じ船とは言っても、大きさが違い過ぎるのだ。種類にもよるが、文明圏外の船ならばオールでも大丈夫である。

 しかしパ皇の戦列艦はそんな事を想定しておらず、仮にそれを実践しようとしても、その巨体をずっと人力で動かすのは不可能。

 つまり、このまま火災が続けば彼らは航行不能となり、広大な海を彷徨う事となるのだ。

 

 とても熱いはずなのに、彼らの背中を冷や汗が流れる。

 

「提督、敵艦から何か飛んできます!」

 

「は?」

 

 彼は一瞬、砲弾か何かが飛来しているものだと思っていた。

 しかし、現実は彼の予想をはるかに大きく超えていた。

 

「なんだあれは…光翼人か…?!」

 

 それは背中から透明な薄い羽が4本生えているため、彼らが知っている光翼人の見た目とは程遠かったが、光翼人だとしか考えられなかったのだ。

 

「攻撃しますか?」

 

「ばかッ! やめろ! 恐らくあの巨大艦からの使者だ! ポクトアールの名において攻撃を禁ずる!」

 

 すでに帆を張り替える度に発生していた謎の火災は止まっていた。

 恐らく、さっきまでの攻撃(?)はあの灰色の船が行っていたのだろう。

 

 先程までは粒ほどの大きさだった光翼人は、艦隊上空まで接近し、高度を落とした。

 

「ここらに降りてくるぞ! お前ら場所を開けろ!」

 

 スタッと甲板に降りた彼は、空の色に混ざるような見た目の服を着ていた。

 

「はじめまして。私は日本国海上自衛隊所属、蜻蛉(あきつ)星矢(せいや)と申します。単刀直入に言いますが、この艦隊の責任者を出せ?」

 

 ポクトアール提督は意を決する。

 

「私がパーパルディア皇国監察軍東洋艦隊の提督ポクトアールだ。日本国と言ったな? 用件を聞こう」

 

「貴方ですか、敵でもない我々に攻撃した馬鹿は。うちの艦長、嫁を傷付けられたとご立腹でしたよ?」

 

「文明圏外の国に攻撃をして何が悪い? そもそも貴様らはフェン王国の関係国であろう?」

 

「は?」

 

「は?」

 

 まず日本の言い分はこうである。

 我々は怪しい船団に航行目的を聞こうと接近しただけ。なのに、いきなり殴られた(無傷)。

 

 そしてパーパルディア皇国の言い分は──

 文明圏外の蛮国の船に警告無しで攻撃して何が悪い? 我々は第3文明圏最強のパ皇だぞ? 文句があるなら言ってみろ? 

 

 である。

 

「まあ命令されてないから貴方達を殺すのはまた今度にして、とりあえず艦長の言葉を伝えます。『撤退せよ。さもなくば、今度は船体に火災を発生させるぞ』」

 

「──ッ!!」

 

 やはり先程の攻撃は、日本国のものと見てよさそうである。

 マストだけに火災を発生させる魔法など聞いたことが無いが、所詮は蛮族の国。我々の船を沈める方法は他に無いと見た。

 

 しかしこれ以上は帆を焼失する訳にもいかず、ポクトアールは涙を飲んで日本の命令に従った。

 

「…ちっ、了解した。撤退しよう」

 

「賢明な判断です。攻撃に関する謝罪は後ほど聞かせてもらいますよ」

 

「ぐっ…!!」

 

 自分達が我々の命運を握っているからと言って、何と傲慢で不愉快な蛮族だ! 

 と彼は叫びたいのを堪え、光翼人もどきを見送る。

 その顔は憤怒の色に染まっていた。

 

 後に『フェン沖海戦』と呼ばれるこの戦いの後、日本にやって来る時代がかった船が増えた。

 そのほぼ全ては文明圏外国と呼ばれる中小国であり、フェン王国の軍祭で護衛艦の活躍(?)を見た各国の武官がその情報を上に伝えた結果であった。

 

 この時代の日本は近海の哨戒をほぼ全て無人機に任せていたため(地球ではほとんど全ての国がそうであったが)、海上保安庁は大忙し…という訳でも無かったが、外務省は空前絶後の激務にみまわれる。

 しかし、今までは日本側から現地に出向き、現地を調査してから国交を申し込んでいたが、今回は大使達が詳細な資料を携えていたためにその手間がはぶけ、日本は次々と国交を結ぶことができた。

 

 彼らはいずれも非常に友好的で礼儀正しく、中にはいきなり安全保障を求める国もあったが、概ね国交締結に支障はなかった。

 日本と国交を結んだ国は22ヶ国に増え、やがて通商が始まった。

 

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