日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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24話:ニシノミヤコ非戦闘員退避作戦Ⅰ

 フェン王国 ニシノミヤコ

 

 

『5人ほど処刑しろ!』

 

 魔信機から女性の声が流れる。

 それを合図に剣が振り下ろされ、1列に並べられた、1番左の男の首が落とされた。

 配偶者らしき女性が悲鳴をあげ、滂沱の涙を流す。

 

 皇国軍の陸将ベルトランはそれをただ見つめていた。

 

「例え蛮族と言えど…この光景は気分の良いものではないな…」

 

 しかし上司のさらに上の人間、皇族であるレミールの命令に逆らうわけにはいかない。

 自分だけでなく、自分の家族や親族の命を守るためだと自分に言い聞かせ、彼は処刑を行わせた。

 

 しかし5人目の首が落とされた瞬間、彼は微かな違和感を覚える。

 

「ん…?」

 

 それは処刑人も同様であった。なぜか断面からの出血が異様に少ないのである。

 

「てやる…」

 

「ヒッ?!」

 

 処刑人が腰を抜かす。

 足元のカゴから微かに声が聞こえてきたからだ。

 

 周りにいた兵士達もゴクリと唾を飲む。

 魔法が存在するこの世界では、オカルトは十分以上に通用するのだ。

 

「…てやる! …してやる! ……殺してやる!!!!」

 

「「うわぁあッ?!」」

 

 5つのうちの1つの首が、喋った。

 断面からは肉のようなものがボコボコと膨らんでおり、それは徐々に大きくなっていく。

 

「な…なんだっ?!」

 

「ひ……ヒィッ!!!」

 

 それを目にした兵士達はパニックになり、統率が乱れる。

 まるで見たことのない光景にベルトランも焦り、腰を抜かした。

 

 首から出た肉塊はさらに大きくなり、ついにはカゴから立ち上がるようになる。

 人間の上半身だけの化け物が腕で這い、処刑台からボトッと落ちた。

 兵士達は「未知の何か」に剣を抜くことが出来ず、地に尻をつけたまま恐怖する。

 

『おいっ! 何があった! 誰か応答しろ!』

 

 魔信機から状況説明をもとめる声が流れるが、誰も何も言えなかった。

 声を発しようとしても、喉から掠れた声が出るだけなのである。

 

 ついに肉塊は完全な人間の形に戻り、傍に落ちていた剣を拾った。

 

『おい! 栄えある皇国軍が何をしている! 相手は1人だぞ?! 早く処分しろ!』

 

 レミールの金切り声が流れる。

 

 そうだ、俺達は栄えある皇国の尖兵。

 相手が『古の魔法帝国』であろうと負けることは許されない。

 

「う…うぉぉおおお!!」

 

 相手の力量は完全に未知数。

 しかし、ここで引いてしまっては皇国の恥。

 ここで倒れようとも、後に委ねることはできる。

 

 何人かの兵士が気を奮い立たせて剣を抜き、吶喊の声を上げて敵に向かって行った。

 

 ──ブシュウ!! 

 

 剣が刺さる。

 それは謎の男の腹を貫通し、引き抜かれた。

 

「…はぁっ! どうだ! 化け物め!」

 

 しかし、『化け物』は倒れない。

 それどころか穴はいつの間にか塞がれ、剣が振るわれる。

 

 剣術は素人同然。彼の剣を容易く捌いた皇国兵は再び剣で滅多打ちにする。

 全身の骨は折れ、内臓もいくつか損傷…完全に戦闘不能のはず。

 

 ──なのに、何故か立ち上がる!! 

 

「うわぁあああ?!!!」

 

 もはや人間とは思えない生命力に、いくらか落ち着きを取り戻した兵達も恐怖に囚われる。全身が血塗れのそれはいくら攻撃しても死なないのだ。

 

 

『プラナリア』

 日本原産『波渦虫(ナミウズムシ)』。脳も目も内臓も持つ多細胞生物とは思えない驚異の再生能力を有し、最低限の材料さえあれば身体を1から再生(つく)れる。

 

 

『M.O.手術』が普及した現在、日本では一般人も手術を受けれるようになっている。

 当然その費用は非常に高いが、一定の基準を満たしていれば、国から金銭的な支援を受けられるようになっていた。

「職業上の理由で必要な場合」と「従来の医療では完全な回復が厳しい場合」である。

 自衛隊や警察、消防などの体を使う仕事はほとんどの場合前者に当てはまるが、それ以外の人間で手術を受けている人はほとんどが後者であった。

 

 そして後者でよく用いられるのは「再生機能」を持ち、かつ「生物的に安全(人畜無害)」であること。

 異常な再生能力と、低い戦闘能力の『プラナリア』は打って付けであった。

 

「…手術しといて良かったぁ!」

 

 首を斬られたのにも関わらず、体調は万全。

 人道的な問題で残った(身体)は仕込まれていた薬剤で機能を停止(死んだ)してしまったが、第2の身体は再生したてのせいか、まるで若い頃に戻ったように軽かった。

 

(でも、ここからどうやって生き残ろう…。まだ何百人も捕まってるし、絶海の孤島から泳いで日本まで行くのは無理があるし…)

 

 目の前の兵士に勝つにはデスルーラ(ゾンビアタック)を何回もしなければならなさそうだが、パッと見た感じそれを100回以上こなさなければならないのは確実。

 そもそも捕縛されてしまったら『プラナリア』の再生力も意味がないのだ。

 

(やべぇ…生き返ったは良いけど、生き残る手段がない。奇跡でも起きねぇかな…)

 

 幸い今は腰を抜かして怯えてくれているが、いつ気を取り直して襲いかかって来るかも分からない。

 かと言って自分だけ逃げる訳にもいかない。

 あの日本政府のことだし、助け舟は来ないんじゃないか…? 

 

 しかし、神風は吹いた。

 

 ──バビュウ!!! 

 

 強烈な風と共に、迷彩柄の服を着た自衛隊員達が彼の周りに降り立つ。

 それだけでなく、捕まっている日本国民全員の縄が切られた。

 

「お待たせしました! 『水空陸機動団』、国外における非戦闘員退避活動を開始します!」

 

 腕の部分が鳥の翼となった約30人の自衛隊員達。

 彼らは事前に体内に仕込んでおいた薬のスイッチを作動させ、更なる変身を遂げる。

 

「「天異変態(てんいへんたい)…!!」」

 

C.B.技術(キマイラ・ブラッド・オペレーション)

 日本のみが保有する最新技術。『バグズ手術』『M.O.手術』を受けた人間が万能変身薬と共に『とある細菌』と『別の手術成功者のDNA』を服用することで、別人の手術ベースとなった生物の能力を3分程使用する事ができる。

 

 

『水空陸機動団』

 自衛隊に不足する離島の奪還能力を補うために設営された『水陸機動団』に「飛翔が可能な被手術兵」という即応小隊を加えた部隊。

 即応性とステルス性に優れた被手術兵が追加されたため部隊の即応性は上がったものの、空を飛べる手術ベースのほとんどは地面に足を着けた戦闘には弱く、その弱点を補うために『C.B.技術』が使用される。

 

「自衛隊だ! 自衛隊が来てくれた!!」

 

「助けて! 頑張って!!!」

 

「ガンバレ自衛隊! お願いだ! 勝ってくれ!!」

 

 超短時間で敵地に強襲降下をし、降下をしてからも高い戦闘力を有する小隊。

 それがこの30人である。

 

「応援ありがとう!! 必ず助けます!!」

 

 彼らは捕まった日本人達に敬礼をしてから、戦闘を開始する。

 

「クソっ! 日本国の魔人が来やがったか! 総員戦闘開始! 竜母にも通信を入れろ!」

 

 陸将ベルトランが指令を出し、パーパルディア皇国皇軍陸戦部隊が武器を構える。

 陸戦隊の数は約2800人。全員が魔導銃を持っており、32頭ものリントヴルムにたった数十人そこらの日本軍が勝てるわけが無い。

 沖合には艦隊総司令官シウス将軍が率いる200隻を超える戦列艦と9隻の竜母による大艦隊が待っている。

 ワイバーンロードの数も240騎、絶対に覆ることのない戦力差だ。

 

「いくら化け物どもが来ようとも…地上でも海上でも、勝つのは我々パーパルディア皇国だ!」

 

 


 

 

 同時刻──

 パーパルディア皇国 皇都エストシラント パラディス城 とある一室

 

 

「なッ…何が起こっている…?」

 

 レミールは震えていた。

 その顔には憤怒の色が浮かび、鋭い眼光で朝田を睨みつける。

 

「さあ…私には分かりかねます」

 

 石の仮面を貼り付けたような顔で喋る朝田。

 その顔には少しも「してやった」という色が浮いていなかった。

 

「嘘をつけ! 私には分かるぞ…お前ら…何かしたのだなッ?! 答えろ!!!」

 

「いいえ。()()は何もしていません」

 

 すでに水晶の板に映像は流れておらず、向こうで何かあったらしいのは明白であった。

 

(自衛隊がやってくれたな…。無能な我々の尻拭いを)

 

「おっと、レミールさん。日本国政府の言葉を伝えます。『その要求を飲むことはできない』です」

 

「…ッ!!!」

 

 画面の向こうで何が起こっているのか分からないが、十中八九日本軍が来たのだろう。

 皇国軍が負けるとは思えないが、自分が何も知らないのに、目の前の蛮族は何かを知っている。

 その事実にレミールは激昴し、机を叩いた。

 

「おのれ…! おのれおのれおのれおのれおのれぇッ!!!」

 

「…」

 

 しかしここが外交の場であることを思い出し、レミールは気を取り直す。

 一旦深呼吸をしてから、彼女は落ち着いた声で話した。

 

「…言っておくが、皇国軍は強い。貴様ら蛮族の軍がいくら来ようと皇国は負けぬ。ニシノミヤコで捕らえられた日本人の死は避けられぬが…フェン王国の首都アマノキにはいったい何人の日本人がいるかな?」

 

「それは…避けたいものですねぇ?」

 

「…アマノキが落ちるまでに、我々の要求を飲むか飲まないか、貴様らに判断する時間をやろう。アマノキにいる日本人だけでなく、日本国自身の運命も決することになるだろうがな」

 

「分かりました。その時に本国の「正式な」返事をお伝えします」

 

「はっ…! お前たちの命は預けておいてやる。とっとと帰って、今度は我らに平伏しに来るがいい」

 

 会談は決裂という最悪の形となって終わった。

 

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