日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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30話:エストシラント北側基地懐柔作戦

 陸軍基地を発った皇都防衛隊所属、第18竜騎士団第2飛行隊のワイバーンオーバーロード20騎は皇都のやや南方空域を警戒飛行中である。

 そんな中、先頭を飛行するデリウス隊長は何か嫌な予感を感じていた。

 

「なあプカレート、下の民衆は何だと思う?」

 

『さあ…何かから逃げているようにも見えますが…』

 

「となると…海軍基地で何かあったのか?」

 

『そんな馬鹿な』

 

 皇国の軍上層部は士気の悪化を恐れて海軍消滅の情報を下っ端には伝えていなかったのだ。

 

『隊長! なんか来ます!』

 

 突然隊員が叫び、彼が指をさした方向を全員が見る。

 彼らは南の空に、綺麗な絵画に付いた汚れのような斑点を確認した。

 約数十の斑点は徐々に大きくなる。

 

「あれは…なん──」

 

 ──シュバァァァ!!! 

 

 第18竜騎士団第2飛行隊は飛行物体が何なのかを理解する間もなく、全騎が同時に撃墜される。

 航空自衛隊の『全方位飛行型 無人戦闘機』20機が照射したレーザーはワイバーンの頭部を正確に焼き、容易く絶命してみせた。

 

ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!! 

 

 ──ブチャアッ!!! 

 

 列強となったあと、1度として本土が戦場となったことはなかったパーパルディア皇国。

 その首都であるエストシラント全域に20騎のワイバーンオーバーロードと、それに乗っていたと思しき竜騎士20人が降ってくる。

 竜騎士達は落下死するまでは生きていたらしく、おぞましい断末魔が皇都に響いた。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ひっ…! ひぃぃぃ!!」

 

 円盤が恐ろしい速さで北に向かって飛翔していく。

 住民達が正体不明の存在に怯える中、今度は翼に日の丸が描かれ、炎を2本噴き出す飛行機械が北へと向かうのが見えた。

 

「あれは…日本国か?」

 

「何が文明圏外の蛮国だよ…。まるで魔帝じゃないか!」

 

 


 

 

 皇都北側 皇都防衛隊 陸軍基地

 

 

 装飾が施された豪華な石造りの建物の1階で、女性魔信技術士のパイは魔力探知レーダーを確認していた。

 軍船に搭載されている対空魔信感知器よりも大型かつ広範囲を索敵できるレーダーで、これは対空のみならず対地用としても機能する。

 

「ん…?」

 

 表示の変化に気付く。

 綺麗な隊列を組んで飛行していたワイバーン部隊が突如消失したのだ。

 

「撃…墜…?!」

 

 彼女は魔信機を手に取り、送話器に向かって叫んだ。

 

「緊急事態発生! 皇都南方空域を警戒中の第18竜騎士団第2飛行隊20騎が消失! 魔力探知レーダーに敵影なし! 飛行機械と思われます!」

 

 ──ウゥゥゥゥゥ────ッッ!!! 

 

 基地全体に警戒報知器の音が鳴り響き、基地内が慌ただしくなる。

 しばらくすると陸将メイガの命令によって第3飛行隊が緊急発進のために滑走路に集まった。

 

 すでに彼らはジグザグに整列して滑走を開始している。

 

 しかし、彼らが大空へ飛び立つことはなかった。

 

「あっ?!」

 

 先頭のワイバーンオーバーロードが転び、後続の騎がそれに突っ込んだのだ。

 さらに後続のワイバーンも急には止まれず、玉突き事故のように先頭集団へ突っ込んでいく。

 乗っていた竜騎士はワイバーンに押し潰されるか前方へと吹っ飛び、負傷した。

 

「陸将! 敵飛行機械のハラスメント(嫌がらせ)攻撃により全飛竜隊、離陸不可です!」

 

 彼が窓から空を見ると、大量の円盤のような飛行物体が乱舞していた。

 

「他基地に上空支援要請だ! 兵達にも武装をさせろ! 対空陣地を構築するぞ!」

 

 メイガは吼える。

 しかし、それらは全て無意味となった。

 

「陸将! 円盤が離れていきます!」

 

「なぬっ?!」

 

 先程まで基地上空を押さえていた円盤は消えていた。

 ワイバーンを離陸させるなら今がチャンス…なのに、何故か猛烈に嫌な予感がする。

 

 ──ゴォォォォ………

 

「なにか…後ろからもっとヤバいのが来ているのではないか…?」

 

 微かに聞こえる獣の咆哮のような音。

 それは徐々に大きくなっていた。

 

「あっ?! 先程とは形状の違う飛行機械が何かを落としました!」

 

 翼に日の丸が描かれた、円盤状ではない飛行物体。それらが落としたのは、白い傘がついた何か。

 大量に降ってきたうちの1つが地面に接触したかしなかったか、次の瞬間。

 

 猛烈な風圧、コンマ1秒もしないうちに、全身を覆う火炎。

 急激な気圧の変化による内臓破裂、酸欠と一酸化炭素中毒と呼吸困難が同時に起こり、メイガとその他の兵士達は窒息、意識を失い、死亡した。

 

 

『改良型気化爆弾』

 アメリカが持っていた燃料気化爆弾を日本が独自に改良し、加害範囲を更に広くした爆弾。

 同兵器作動時に発生する巨大な火球は人間を爆風で圧死させたり、急性無気肺と一酸化炭素中毒と酸素分圧の低下による合併症によって窒息死させる。

(核兵器のそれと比べると)小さめのキノコ雲が発生するため、配備当時はマスコミや野党にめっちゃ追及された。

 

 

 日本の有人戦闘機から投下された数発の『改良型気化爆弾』は皇都防衛隊の基地の滑走路とワイバーンが待機する竜舎付近だけを壊滅させる。

 しかし空軍機能を喪失しても、基地はまだまだ生きていた。

 

「報告急げ!」

 

『リントヴルムに被害無し! ワイバーンオーバーロードも5頭だけ被害を免れました!』

 

『滑走路1部使用可能! 残存飛竜隊を離陸させます!』

 

『爆弾投下地点に生存者はいません! メイガ陸将の死亡が確認されました!』

 

 滑走路の1部が使用可能となっているのは、日本側のミスであった。

 彼らは転移するまで、いかんせん実戦経験がなかったため、この爆弾1発で滑走路を破壊出来るだろうと考えていたのだ。

 

 しかしそれは間違いであった。

 

 この気化爆弾は威力が非常に高いという訳ではなく、ただ広範囲の生物を殺傷できるというだけで、木造の滑走路は1部が燃えたか吹き飛んだものの、埋め込まれた魔石は無事であり、表面が焦げただけで済んだ部分は使用可能だったのだ。

 

「飛竜隊の離陸を急げ! 恐らく第二波が来るぞ!」

 

 しかし先程の円盤が戻って来たため、生き残ったワイバーンは翼を広げる間もなく絶命した。

 これにより、彼らは皇都上空の制空権を完全に消失したのであった。

 

 


 

 

 皇都エストシラント

 

 

「おい! 見ろ!」

 

 興奮した皇国民が北を指さす。

 皇都を守る力の半分が存在していたはずの場所には火を含んだキノコ雲がいくつも立っており、突然訪れた皇国の危機に誰もが絶句する。

 

 それを嘲笑うかのように、再び飛行機械数機が皇都上空に侵入してきた。

 

「で…デカい…!」

 

 さっきまでの物とは比べ物にならないほどの大きさの飛行機械が数機、V字に並んで飛ぶ。

 超高速の機体を見たあとなので、上空から侵入してくるその飛行速度はひどくゆっくりに見えた。

 

「飛竜隊はどうしたんだ…?! まさか全滅…?」

 

 そのまさかである。

 パーパルディア皇国の皇都防衛隊には、空からの侵攻を防ぐ手段はもはや残っていなかったのだ。

 

 皇国民は自らを破滅に導く行軍を、ただ見つめる他なかった。

 

 


 

 

 皇都防衛隊 陸軍基地

 

 

 陸軍基地では破壊された基地機能を少しでも復旧させるべく、基地内の兵や工作斑、魔導斑を総動員して作業に取り掛かっていた。

 もはや彼らにやれることはないが、地上からの侵攻がないとも限らないので、勝手に帰ることもできないのだ。

 

「な…! また来たぞ!」

 

 基地にいる多くの者が空を見上げる。

 今度の飛行機械は数が多く、大きさもさっきの物とは桁違いであった。

 

「ん…? なんか()いてるぞ?」

 

 まるで白い粉のような…大きめの雪のような…。

 それらは地面に、肩に、頭に積もり、基地を白く染める。

 

「なんだこれは…」

 

「雪…ではないな。なんか羽毛みたいにフワフワしてるぞ…?」

 

 

『改良型ゾンビ蟻キノコ(zombie ant fungi)胞子』

 日本の切り札的『非殺傷性生物兵器』。当初この胞子はテラフォーマーのみに効くと思われていたが、人間にも効果があることが判明。

 非殺傷かつ敵をほぼ無条件で懐柔できる兵器として改良に改良を重ねられ、さらに広範囲に、さらに複雑な行動を命令できるようになった。

 

 

「あ…ッ?! あがッ!!」

 

「う…うぐッ!」

 

 胞子に触れた、もしくは吸い込んだ者達が急に苦しみ出す。

 彼らはバタバタと倒れていき、数分もすると基地内に立っている者はいなくなった。

 

『敵無力化に成功、これより降下する』

 

()第一空挺団の被手術兵数人が基地に落下傘降下をする。その手にはパッと見、銃のような形の万能変身薬が握られていた。

 

『これより従属化作業を始める。人為変態はじめ』

 

 

『ゾンビ蟻キノコ』

 本来は蟻に寄生しゾンビ化させる昆虫寄生菌。

 これに寄生されると全身の筋肉が菌に感染し、行動を制御される。

 脳に寄生される訳ではないので、寄生された生物は死ぬまで意識があると言われているが、それだと非人道的であるため寄生された人間は意識を失うように改良された。

 

 

 突如、立ち上がるパーパルディア皇国皇都防衛隊。

 彼らは首の背面から小さなキノコを生やしており、目は虚ろだった。

 

『こちらフンギ(fungi)1、敵とのリンクを確認。敵の従属化完了』

 

『フンギ2、敵の従属化完了』

 

『こちらフンギ3、リントヴルムの従属に苦戦。応援を要請する』

 

『了解。フンギ4、5は3がいる位置に向かえ』

 

 少し大きめのタッチパネルを手に、お互いに連絡を取り合う隊員達。

 彼らは空中から投下された物資を敵に回収させ、その中に入っていた大量の首輪のようなものを敵に装着させた後、さらに投下された電波塔を建てさせた。

 敵が装着した首輪はここからの電波を受信し、遠く離れた位置の敵にも命令を出すことを可能とする。

 

「情報統合処理端末と全個体のリンクを確認、リントヴルムの従属化も完了。こちらは首輪がはめられないので直接操作する」

 

『了解、作戦成功を祈る』

 

 通信を切ると、上空で待機していた機体は全て撤収する。

 

「さあ…作戦を続けるぞ」

 

 以後、戦争が終わるまで皇都防衛隊約20万人は日本の奴隷として動くこととなる。

 その数は陸海空を合わせた現役の自衛隊員の総数に届きそうな程の人数であった。

 

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