日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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32話:デュロ工場地帯爆撃作戦

 パーパルディア皇国東部 工業都市デュロ

 

 

 パーパルディア皇国の工業力の要とも言える巨大工業都市デュロ。

 沿岸部には工場が密集しており、その西側には工業区画を守るように皇国三大基地の1つ、デュロ防衛隊陸軍基地が構えている。

 この基地にはワイバーンオーバーロードも多数配備されていた。

 

 その皇都防衛隊にも引けを取らない戦力を束ねるのが基地司令のストリームであった。

 

「これより定例幹部会を始める」

 

 基地内の司令部棟の会議室では装備品、人事、様々な運用状況と今後についての議論がされていた。

 

「諸君も知っての通り先週6日早朝、エストシラント海軍基地と皇都防衛隊が日本軍の襲撃を受けた。海軍は監察軍の艦隊も含めて全滅。皇都防衛隊も心に深い傷を負い、戦力にならないと聞いている」

 

 会議室にいる者達は寝耳に水とでも言わんばかりにざわめき始める。

 

「敵は本当に日本なのか?! そんなことが出来るのは、ムーかミリシアルくらいだろう…?」

 

「まさか本土上陸を許したのか?! 皇都に地上軍が上陸してきたのなら、ここを警戒している場合ではないぞ!」

 

 しかし現実は非情だ。

 

「敵は日本国で間違いない。現在本土への上陸は確認されていないが、敵は飛行機械による地上攻撃のみで皇都防衛隊と海軍本部を壊滅させたと報告が入っている」

 

 彼は一呼吸を置いてから、続けた。

 

「敵の航空戦力は……強いぞ」

 

 確かに報告書の情報が全て本当だとしたら、強いなんてレベルの話ではない。

 曰く、日本国の飛行機械はワイバーンの数十倍の速さで飛ぶとか。

 曰く、飛行機械の攻撃は長射程かつ不可視であり、何の前触れもなくワイバーン()()が死ぬとか。

 

「しかし不思議なのは、彼の国は非常に強力な航空戦力と、そこから投下される高威力爆弾を保有しているのにも関わらず、街やパラディス城への攻撃をいっさいしなかったことです」

 

「確かに皇国と日本が逆の立場だったら、街も城も全て破壊し尽くすだろうな」

 

 それは間違いない。

 

「日本国はフェンで国民が処刑されて激怒したらしいぞ。それから察するに、日本は強い力を持っているが、無駄に命を奪うのを忌避しているのではなかろうか?」

 

「なるほど、それなら基地だけを攻撃した説明がつく」

 

 実際、彼らのこの推理はほぼ完璧に近かった。

 日本は敵国であろうと民間から死者を出すことを良しとしないため、無差別爆撃などしないのだ。

 

「そう考えると…日本の狙いは我が国の戦争継続能力を壊滅させ、『否が応でも講話か降伏をさせる』ではないか?」

 

「戦争継続能力か…となると次の目標は皇国の心臓部、デュロで間違いないな」

 

 参加者達は息を飲み込んだ。

 あの報告書に書かれていた、幻想じみた飛行機械が来るのだ! ここ、デュロに! 

 

「となると…ミ帝から輸入した『あれ』も実戦投入しなければならなさそうですね」

 

「そうだな。あれは研究用だが工場が破壊されたら元も子もな──」

 

 ──ウゥゥゥゥ────!!! 

 

「「──ッ!!!」」

 

 突如、基地に非常事態を知らせる警戒音が鳴り響いた。

 

「会議中失礼します! 沖を哨戒中の竜騎士が撃墜されました! 魔導レーダーに反応はないため、例の飛行機械だと思われます!」

 

「早いな、もう来てしまったか…」

 

 魔信器を掴み取ってからの、ストリームの判断は早かった。

 

「デュロ陸軍基地全域、防御態勢に移行せよ! 対空戦闘用意! ここが落ちたら工場を守る者がいなくなるぞ! 総員一層奮起せよ!」

 

 基地内で兵士達が武装を始め、備え付けの対空魔導砲が空を向く。

 牽引式魔導砲も引っ張りだされ、飛竜隊は続々と離陸していった。

 

 


 

 

 工業都市デュロ 上空

 

 

 緊急出撃の命を受けた第11竜騎士団第1飛行隊隊長はジンスは絶望していた。皇国が列強になってからは、本土で戦闘など起こらなかったからである。

 彼らは軍の花形である飛竜隊なのだが、実戦経験はなく記念すべき初陣が列強相手に連勝を続けているような化け物だ。

 

「ひっ…!」

 

 彼は前方から超高速で向かってくる飛行物体を発見した。

 それが敵からの攻撃であると本能的に理解した彼は、部下の隊員達に対して叫ぶ。

 

「避けろぉぉぉ────!!!」

 

 指示を出しつつ、自分も急降下を開始する。

 次の瞬間、例の飛行物体が目の前を()ぎった。

 

「ギッ!!」

 

「グェッ!!」

 

 ジンスは自分と併進して飛行していた隊員と同様に、全身の水分を瞬時に沸騰させられ、即死した。

 

 

『空対空 電磁パルス弾搭載ミサイル』

 対無人戦闘機、テラフォーマーを念頭に置いて開発された空対空ミサイル。

 電磁パルスを発生させる装置が搭載されており、それを起動させながら飛翔するため、1度に複数の目標を撃墜することが可能。最後は無力化されていない目標を探し、普通のミサイルと同じように突っ込んで爆発する。

 

 

「隊長がやられた!!」

 

「に…逃げろ!!」

 

 しかし生き残った者達も回避をする間もなく愛騎ごと全身を沸騰させられた。

 

「ああ゛ッ!!」

 

「ゲッ!!」

 

 とんでもない挙動で飛び回る「あれ」に近付くと死ぬ。

 それを本能的に理解したワイバーン達は騎士の命令を無視してバラバラに逃げ始める。

 

 しかしAI(心のない死神)は彼らを逃がさない。

 

「追ってくる…!! ちくしょぉぉぉ!!!!」

 

 不気味な炸裂音が町にこだまし、第11竜騎士団第1飛行隊は全滅。

 後から到着した飛竜隊も全てが似たような兵器に撃墜され、デュロ防衛隊は空戦能力を完全に喪失した。

 

 


 

 

「あれは…魔帝の兵器か…?」

 

 ストリームは地上で震えていた。

 ワイバーン達をボタボタと落としていったそれは、まるで御伽噺(おとぎばなし)に出てくる『誘導魔光弾』のようだったのだ。

 

「司令、まだ本格的な攻撃があるでしょう。本番はこれからです」

 

 若手幹部が発言したそれをストリームも理解していた。

 敵はまだ制空戦闘を行っただけ。いや、あれは戦闘ではなく、一方的な虐殺だった。

 しかし、本当の虐殺はこれから起こるのだ。

 

『東の空から敵機襲来!! 日の丸を確認しました! 日本軍です!』

 

 東の空から来ている矢じりのような形状の飛行機械。

 それは猛烈な速度でデュロ上空を飛翔し、咆哮のような音を響かせる。

 

「いかん! あれは先遣隊だ! これから本隊が来るぞ! 対空魔光砲の使用を許可する! 何としてでも敵の攻撃を阻止しろ!」

 

 対空魔光砲とは、誰もが認める世界最強の国家、神聖ミリシアル帝国で採用されている対空兵器である。

 皇国はミ帝の技術に少しでも追い付くため、そして仮想敵国でもある彼の国の兵器の性能を探るために秘密裏にこれを輸入し、研究していたのだ。

 

 すでに本隊と思しき鉄竜の群れが東の空に現れており、悩んでいられる時間はない。

 検証用でたったの1門しかないが、技術者達はしぶしぶ対空魔光砲を倉庫から引っ張り出した。

 しかし…

 

「おい、魔力充填はまだ終わらないのか?」

 

 人間が5人くらい楽に入りそうな鉄の筐体6つと、モニターとして並ぶ魔導圧計、水晶版を眺め、開発主任は忌々しそうに呟いた。

 

「神聖ミリシアル帝国の技師に聞いたところ、『魔力充填はすぐに終わる』と言っていましたが…我が国の魔導エンジンの出力と制御技術がまだまだ未熟ということでしょう」

 

「こんな燃費の悪いものを当たり前に運用できる帝国は、さすが魔導力学で世界最先端を走るだけのことはありますね」

 

「そんな悠長なことを言っている場合か! 早くあの鉄竜の群れを落とさないと、二度とこいつの研究が出来ないんだぞ!!」

 

 日本の爆撃機はすでに目視でもハッキリと見える位置まで接近しており、皇国の技師達は焦る。

 

「エネルギー充填…完了しました! 呪文自動詠唱開始します!」

 

「詠唱完了! 連射モード切り替え完了! 対空魔光砲、発射準備完了です!」

 

「撃て! 撃ちまくれ!!」

 

 空に向かって突き出た筒から光の弾が超高速で、連続して上空に発射される。

 それは地上から空へ向かって描かれた光の線のようであった。

 

 


 

 

 同時刻──

 日本国 とある自衛隊基地

 

 

「爆撃機は?」

 

「順調に飛んでいます」

 

 ゲームのコントローラーを手に持った隊員達が各々の機体を操作する。しかし、これはゲームではない。

 一見平和な光景だが、画面を隔てた向こう側は本物の戦場だ。

 

「まさかこんな旧式の哨戒機を無人に改造した挙句、爆装するなんて…さすがで(狂ってま)すね」

 

「魔改造は日本の十八番(おはこ)だからな」

 

 

『BQP-5』

 異世界諸国の技術水準が日本に対し大幅に劣っていることが判明し、技術格差による最新兵器の非効率化が問題視され、生み出された兵器。

 パ皇戦前に防衛省は「航空機の多目的運用に関する構想」を立案していた。その一環として倉庫でホコリを被っていた「P-5C」の爆装案が進められ、同時に無人化もされたのだ。

 愛称「BQP(バーベキューパーティー)

 

 

「爆撃なんてAIに任せれば良いでしょうに…なんでわざわざ人間にやらせるんですか?」

 

「アメリカならまだしも、日本のAIは爆撃なんかしたことがないからだよ。誤って民間人に被害が出たらシャレにならんしな」

 

「まあ…」

 

「ほら、そろそろ爆撃地点だぞ。集中しろ」

 

「はい」

 

 ズラリと並んだ、彼と同じように画面にかじりつく隊員達。

 彼らの胸中は穏やかではない…という訳でもなかった。

 

(これから俺は人を殺すのか…。ちっともそんな感じがしないな…)

 

 


 

 

 爆撃機の左後方に位置する『有人戦闘機』を操る樋口3等空佐は地上を警戒していた。

 眼下に広がる工場地区。その一角でフラッシュを確認する。

 

「──!! 地上に対空兵器を確認! 各機、警戒!」

 

 彼が無線機に叫ぶと同時に、前方を飛行していた『BQP-5』の翼を光弾がかすめ、いくつかはエンジンに着弾し、火を噴き上げた。

 

「あーあ。操縦してたやつは怒られるんだろうな〜」

 

 そんな無駄口を叩きつつ、彼は敵対空兵器を攻撃するために機体を下に向ける。

 曳光弾を交えて発射された猛烈な鋼鉄の嵐に見舞われた地上は穴だらけとなり、粉々になったミリシアル製の対空兵器は爆発を起こした。

 

 


 

 

『対空魔光砲、沈黙!』

 

『敵飛行機械、間もなく基地上空へ到達します!』

 

 悲鳴のような報告が次々に司令室に入る。

 ストリームは真っ青な顔で窓から空を見上げた。

 

「あッ…!」

 

 すでに基地上空へ到達した敵騎は黒い何かを投下し始めていた。

 

「総員退避! 退避──!!!」

 

 しかし次の瞬間、司令室は爆弾の直撃を受けて消滅し、ストリームもそれに巻き込まれて死亡する。

 頭を失った軍勢は命令が届かないうちに右往左往し始め、こちらも爆撃を受けて吹き飛ぶ。

 

 その日、デュロの工場とデュロ防衛隊の大規模陸軍基地はエストシラント海軍基地と同様に壊滅した。

 皇国の陸軍の約3分の1が消え去った瞬間であった。

 

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