日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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34話:四面日本歌

 1640年8月22日──

 パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇宮パラディス城 大会議室

 

 

 このところ毎日開かれる緊急御前会議の進行に、カイオスは焦りを感じていた。

 会議室で雁首を並べているだけの馬鹿どもは皇軍が被った大損害と日本国の異常な強さに目を瞑り、彼の国に対して徹底抗戦する姿勢を示している。

 この馬鹿どもも皇国のトップだけあって無能ばかりではなく、相手がそこそこ強ければ最低でも講和を考えるくらいの事は考えるだろう。

 しかし彼らは第3文明圏最強のプライドに傷を付けられ、すでに正気ではないのだ。

 

「──であり、デュロの兵器生産規模を拡大し、さらに属領からの徴兵も行い、軍の人員を確保します。そして今までの皇国主力軍の3倍の量の大船団を作り出し、日本を火の海にする方向性で行きたいと思います」

 

 アルデの軍再編計画も、日本がそれまで何もしてこない事を前提としており、机上の空論に過ぎない。

 彼らが有効な手段が何も無いことに気付き、早々に講和を考えていれば皇国もここまでこっ酷くやられる事はなかっただろう。

 

(「会議は踊る、されど進まず」だったか…。革命を起こすには好都合だが…)

 

「会議中失礼します! デュロが日本軍の攻撃を受けて壊滅しました!」

 

 ノックもせずに大会議室に入ってきた軍部の士官。

 彼の口から発せられた言葉に、会議室がザワつく。

 

「な……何…だと? 詳細を申せ!!」

 

「はっ! 民家に被害はありませんが、工場及び、デュロ西側の陸軍基地も壊滅したとの報告が入っております!」

 

 彼は続ける。

 

「そして日本国本土特別攻撃隊も上陸には成功したものの一般の老人1人を相手に敗北し、アデム以外は全員拘束されたとのことです!」

 

「なんだって?!」

 

 皇都防衛隊を無力化させたあとに、継戦能力を的確に破壊する判断力。そして奇襲すら成功しそうにない、徹底した防衛力。

 

「まさか日本国は一般人ですらも皇国兵数十人よりも強いと言うのか…!?」

 

 全員の頭に伝承にある魔王軍の姿が浮かぶ。

 その報告から想像するに、日本国本土は『人外魔境』なのだろう。

 

「かっ…会議中失礼します!」

 

「ええい! 今度はなんだ!!」

 

 今度入ってきたのは軍部ではなく、統治機構の幹部だった。

 

「は…はっ! 全ての属領で反乱が起こりました! 属領反乱軍はアルタラス王国、フェン王国、トーパ王国、マール王国、リーム王国、アワン王国、シオス王国、マオ王国を含めた『80ヶ国連合』を名乗り、我が皇国に宣戦布告してきています!」

 

 統治機構長のパーラス、軍部最高司令官アルデはそこまで聞いて、気を失って倒れた。

 

 第3文明圏のほぼ全ての国VSパーパルディア皇国

 

 普段の皇国ならば、多少の被害を被るが、問題なく対処できる状況である。

 しかし属領はともかく、属領以外の国々は日本国が鹵獲した皇国の軍船でかなり強化されている。アルタラス王国に至っては最新鋭の竜母を数十騎のワイバーンオーバーロードごと獲得しており、海軍がいない今の皇国では制海権の獲得は不可能に近い。

 

 陸上では量、質ともに何とか勝てているが、国の心臓部であるデュロが機能しなくなったとなれば、補給は絶望的だ。

 

「この連合はアルタラス王国のルミエス女王が魔信で呼びかけたものであります! しかもロデニウス大陸各国も食料や資源の輸出を停止いたしました! 第3文明圏のほぼ全てが我々の敵であります!」

 

 パーパルディア皇国は「恐怖」で他国を支配し、富を吸い上げ続けてきた。

 しかし恐怖を与えるための、象徴たる「力」が日本国によって打ち砕かれてしまった。

 

 恐怖支配の脆弱性が最悪の形(四面楚歌)となって返ってくる。

 

「お…おのれぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 ルディアス皇帝は怒りの言葉を吐き出すことしか出来ず、もはやまともな判断が出来るような状況ではない。

 

「もういい! 遅かれ早かれ第3文明圏の統一はするつもりだったのだ! これを機に我々は世界最強へと成り上がろうぞ!」

 

 皇国のトップが出した結論は日本を含む全ての国の殲滅だった。

 

 


 

 

 翌日──

 パーパルディア皇国 臨時皇都防衛隊 仮設基地

 

 

 皇都防衛隊陸軍が日本の攻撃によって使い物にならなくなってしまったため、各属領から引き上げてきた属領統治軍は皇都防衛隊基地の隣に仮の基地を建てている。

 しかし彼らは属領の治安維持の命を受け、撤収する準備をしていた。

 

「はあ…せっかく皇都に来れたのに、また辺境防衛かよ」

 

「噂では上層部は相手の戦力をろくに調べもせずに戦いを挑んだらしいぞ。それでボッコボコにやられたのに、まだ徹底抗戦の意志を見せているらしい」

 

 一般兵の間ではそのような噂が流れていた。

 

「ところでよ、お前は第3外務局長のカイオスを知っているか?」

 

「まあ、名前だけなら」

 

「そのカイオスが無能な上層部に取って代わろうとしているそうだ。すでに十兵長も彼の傘下に加わっている。お前も祖国のために立ち上がらないか?」

 

「え?」

 

 すでに軍内部では保身やプライドのために徹底抗戦を示した上層部への不満が募っており、1部では決起を企てているカイオスの傘下に入る者が増えていた。

 

「カイオスは日本との接点を持っていて、皇国が形だけでも残るように交渉しているそうだ。言っておくが革命派は俺と十兵長だけじゃあない。あの壁の向こうの20万人もそうだ」

 

「マジかよ…。そりゃあ選択肢はあってないようなもんだな」

 

「で、どうする?」

 

「もちろん俺も加わる。これ以上戦争が続いたら、どうなるかくらい分かっているからな」

 

 決起の日まで、あと少し。

 

 


 

 

 日本国 東京拘置所

 

 

 レクマイアは日本の新聞を読み続けてきたことで、ある程度は日本語が読めるようになっていた。

 その日の新聞はパーパルディア皇国の特集記事が中面見開きで掲載されており、各国政府が発表した最新の内容を交えて記載されていた。

 

「大変だ…!」

 

 新聞を読み進めるレクマイアの顔は次第にけわしくなり、汗が吹き出す。

 

「どうしたんだレクマイア?」

 

 彼の隣には『ニシノミヤコ非戦闘員退避作戦』で捕虜となった戦列艦『ロプーレ』の乗組員のライタールの姿があった。

 

「ふー……ふー……ライタール、心して聞けよ…」

 

「おう」

 

「日本はまずアルタラス島を攻撃し、進駐していた皇国軍を全滅させ、アルタラス王国を独立させたらしい」

 

「おう」

 

「そしてアルタラス王国を落とした日本は在アルタラスのムーの空港を基地に改修し、ここを使用して皇国本土へ攻撃を行ったようだ」

 

「おう」

 

「そして…皇国海軍も全滅。1隻も残っていないらしい」

 

「まあ予想通りだよな。『ロプーレ』も竜母艦隊も無傷で引き渡されたんだから」

 

「ああ、海軍本部も攻撃を受けて壊滅したらしい。そして皇都防衛隊基地、デュロ工場地帯も飛行機械の爆撃で瓦礫の山だ」

 

「げッ…」

 

「そして…」

 

「まだあるのかよ」

 

 ライタールはしかめっ面をしてみせた。

 

「皇国の属領全てと、第3文明圏内、圏外国の国々が『80ヶ国連合』を組んで宣戦布告を行ったらしい。おまけにロデニウス大陸の各国も食料や物資の輸出を停止したとよ」

 

「詰んだな」

 

「お前もそう思うか?」

 

「当たり前だろ。ただでさえ日本国にボッコボコにされてるのに、それに第3文明圏のほぼ全ての国が足されたら、もう勝ち目はねぇよ」

 

 2人はここから祖国の未来を憂うことしか出来ない。

 それが何よりも悲しく、悔しかった。

 

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