日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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次回から「自衛隊無双」が始まるので、区切りが良いと思って今回は短くなっています。


3話:動乱前夜

 日本という国と国交を結んでから、クワ・トイネ公国には歴史上、最も変化のあっただろう1ヶ月が経とうとしていた。

 日本からの食料の買い付け量はとてつもない規模であったが、そこは大地の神に祝福されたクワ・トイネ公国。家畜さえも上手い飯を食えるという国の食糧生産量は日本国の1億を越える人口すらも支えることが可能だった。

 

 そしてクイラ王国。

 ここは元々作物の育たない貧しい国であったが、日本国の調査によれば地下資源の宝庫らしく、日本の技術供与を受けて採掘を開始していた。

 

 莫大な量の食料と、地下資源。これらを輸入する代わりに、日本はインフラを輸出する。

 両国には都市間を結ぶ継ぎ目のない道路、そして鉄道と呼ばれる大規模運輸機能、さらに大規模な港湾施設が築かれようとしていた。

 

「う〜ん…日本ではこれでさえも800年も前の骨董品なのか…」

 

 現地の技術者は唸りを上げて走る蒸気機関車を前に、ボヤいた。自分達だけでは800年かかろうと、これを造れる自信がなかったのだ。

 

「ですが、これで我が国の流通は各段に良くなりますよ。これからクワ・トイネは今までとは比較にならないくらいの発展を遂げるでしょうね」

 

 一方で、経済部の人間は顔を輝かせた。

 他にも日本から入ってくる便利な物は、第3文明圏の外に位置する両国の生活様式を根底から変えるようなものばかりであったからだ。

 

「余らせていた資源と引き換えにするには十分すぎる対価ですね」

 

「…日本という国は明らかに3大文明圏を超えている。我が国の生活水準も文明圏内国以上になるかもしれないぞ」

 

 次々と売れる商品、それと引き換えに入ってくるのは豊かさ。

 クワ・トイネ公国とクイラ王国の住人は一気に親日ムードへと傾き、日本もバブル期を越えると言われる好景気を迎え始めた。

 

「しかし…彼らが平和主義で助かりましたよ。彼らの技術で覇を唱えられたらと思うと…ゾッとしますね」

 

「そうだな。しかし、武器を輸出してくれないのは残念だ。彼らの武器があればロウリア王国軍も屁でもないのだがな」

 

「ああ、例の魔人化の武器ですかね?」

 

「そう、それだ」

 

 日本の兵士は魔人化出来る。

 とある軍船の船長が伝えたこの情報は、曲がりに曲がって結果的に、魔人化の武器という誤情報となり、両国の人間に広まっていたのだった。

 

 


 

 

 クワ・トイネ公国 日本大使館

 

 

 クワ・トイネの朝は早い。

 どれだけ生活が豊かになろうが、彼らは農家である。日の出と共に寝覚め、朝早くから外に出て作業をする。

 それでも車や工場、航空機がないため、日本の都会では考えられないほど寝起きが良い。

 

「…今日は忙しくなりそうだ」

 

 田中大使のそんな予言は、すぐに的中した。

 職員が彼の部屋の扉をドンドンドンと叩き、寝るにはうってつけの静かな大使館がにわかに騒がしくなった。

 

「おはようございます。朝早くからどうしたのですか?」

 

「それが…クワ・トイネの外交担当者が、火急の要件があるとアポなしで訪ねてこられました」

 

 それを聞いた田中は早急に洗面、着替えを済ませ、朝食も取らずに応接室の扉を開いた。

 室内にはクワ・トイネ公国の外務局員のヤゴウが焦燥の顔で待っていた。やはり何かがあったのだろう。

 

「お久しぶりですヤゴウさん。火急の要件とは何でしょうか」

 

「田中殿、早朝の急な訪問、無礼をお許し下さい。お伝えすべき事態が発生いたしました」

 

 なぜこうも自分の嫌な予感は当たるのか、田中は自分で自分を呪いつつ、立ち上がって深々と頭を下げるヤゴウを制した。

 

「我が国の西側にロウリア王国があるのはすでにご存知かと思います。情報を精査した結果、そのロウリア王国が我が国に侵略してくることがほぼ確実となりました」

 

「せ…戦争ですか?!」

 

 田中は絶句した。戦闘が始まり、クワ・トイネからの輸入が途絶えた場合、1年以内に何百万人もの餓死者が出る恐れがあるのだ。

 

 ロウリア王国はロデニウス大陸では最大の武力を持っていることを日本は事前に知っている。

 そして、もしロウリア王国とクワ・トイネ、クイラ王国が戦争になった場合、2国が勝つのは不可能だとも知っていた。

 

「援軍があると助かるのですが…」

 

 田中の顔を窺うように、ヤゴウはちらりと上目で見上げた。

 その脳裏には、日本国に使節団として派遣されたときに見た、大地を掛ける鉄の象、大空を飛翔する鉄竜の姿が浮かんでいたのだった。

 

 日本国の援軍さえ来てくれれば、この戦いで国が消滅することを避けられると判断したのである。

 

「残念ながら、軍事的支援は…」

 

 田中は歯痒い思いをしながら、最も言いたくない言葉を捻り出した。

 

「──出来ませんッ!!」

 

 もちろん、ヤゴウは訪日した際に憲法九条の存在を聞いている。ダメ元で尋ねたものの、彼は分かってはいてもガックリと項垂(うなだ)れた。

 

「では残念ですが、食料輸出は困難になるでしょう」

 

 憲法を守って万単位の餓死者を出すか、憲法を『超拡大解釈』して、国民及び友好国を救うのか。

 日本大使館への食料輸出に関する勧告後、日本国政府は3週間という異例のスピードで、約700年前の大戦後初の海外派兵を決定することとなった。

 

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