日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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47話:戦勝国の戦後処理

 翌日──

 神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス 帝国文化館

 

 

『これより先進9()()()会議を再開いたします』

 

 議長席が並ぶ舞台を中心として同心円状に席が設えられた場内に、会議の再開を告げるアナウンスが流れる。

 今回話し合うことはもちろん、グラ・バルカス帝国の今後についてと、鹵獲した敵艦の分配である。

 

 鹵獲された艦は2隻。『グレードアトラスター』と、巨大波で多大な損傷を受けながらも、何とか沈没を免れていた東征艦隊旗艦『ベテルギウス』である。

 ちなみに『グレードアトラスター』の全乗組員約3400人は身柄を拘束され、艦は無人のままカルトアルパスに停泊している。

 だが『ベテルギウス』はあまりにも損傷が酷いため、生き残った数百人は退艦、海上を漂流中に救助され、カルトアルパス沖に放置されていた。

 

『ではまず、今海戦で最も活躍した日本国からどうぞ』

 

 世界最強国家であるミリシアルや、列強ムー、エモール王国を差し置いて、新参でしかも文明圏外国である日本が発言する。

 それを快く思わない者もいたが、実際にグラ・バルカス帝国を一蹴してみせたのは日本国であるため、誰も不快感を口にすることは出来なかった。

 

「我が国としましては調査用に『グレードアトラスター』があれば十分と考えます。残りの1隻につきましては、当事国同士で話し合ってください」

 

 甲板は壊滅的な状況であるが、艦自体は無傷であるため、どの国も『グレードアトラスター』を欲している。

 

 しかしどの国も反対することはできない。

 日本国は平和主義だが、逆らおうものなら何をされるか(だいたい予想はつくが)分からないからだ。

 

 だが、残りのもう1隻が欲しいかと言われると、そうでもない。

『ベテルギウス』は、今や海に浮かぶだけの鉄クズと化しており、どれだけの旨みが残っているかさえ不明だからだ。

 むしろ、あんなスクラップを押し付けられても困るという国が大多数であった。

 

「我が国は内陸国であるため、艦船は必要ない」

 

 最初に声を上げたのはエモール王国。

 それを機に、続々と意見を表明する中小国達。

 

「我が国は機械文明には疎く…」

 

「技術差があまりにも開き過ぎているので…」

 

 だが、スクラップであろうと『ベテルギウス』を欲している国もいた。

 ムーとミリシアルである。

 最終的に『ベテルギウス』の所有権は神聖ミリシアル帝国とムーのどちらかに絞られた。

 

 機械文明であるムーからすると、鉄クズであろうと「戦艦(技術)」は喉から手が出るほど欲しい。

 片やミリシアルからすると、強大な敵を討ち取ったという象徴として「敵戦艦(見せしめ)」を欲していた。

 

 お互い1歩も譲らないまま、時間だけが過ぎていく。

 だが、それも長くは続かなった。

 

「2国だけで話し合っても結論が出ないようなので、ここは1つ、他国の意見も聞いてみたらどうでしょう」

 

 それを聞き、ミリシアルの面々は戦慄する。

 すでに世界最強のネームブランドには亀裂が入っており、彼らはこれ以上の「敗北」は何としてでも避けたかったのだ。

 

 そこで持ち出された多数決(のようなもの)の話。

 

 敵の戦艦は機械文明の物であるため、調査(所有)をさせるなら間違いなくミリシアルではなくムーである。

 だがこの多数決でムーに負けた場合、詳細をよく知らない人々は、神聖ミリシアル帝国ではなくムーが選ばれた。つまりムーの方が強い? と勘違いする恐れもあった。

 

 だが彼らは、世界最強の看板を支える重鎮達。

 追い詰められたら騒ぐだけの無能とは違い、彼らは頭をフル回転させ、最も国益に適う手段を模索する。

 

「そうだ! ここは1つ、ミリシアルとムーが共同所有をするというのはどうだろうか?」

 

 ミリシアルの目的を薄々感じ取っていたムーだけでなく、普段のミ帝なら絶対にしないような提案に、参加国は驚愕する。

 だが、話を続けるミリシアルの提案に筋は通っていた。

 

「『ベテルギウス』は沈没寸前であり、ムーまで曳航させるのは難しい。なら1番近く、そして技術レベルが高いミリシアルが所有、調査をするべきだが…あいにく我が国は機械文明の技術には疎く、ムーほど恩恵は得られないだろう。そこで、あの艦はミリシアル領の浅瀬に曳航、浅瀬に座礁させ、我が国とムーが共同で所有をすることを提案する」

 

 ムーの目的は所有ではなく調査、願わくば艦を所有すること。

 そしてミリシアルの目的は艦を所有、願わくば調査をし、その技術を吸収すること。

 お互いが1歩も引かなければ、話は平行線を辿っていただろう。

 

 だがこの提案ならお互いが納得できるし、当事者同士の話なので、他国も異論を唱えられない。

 何より解析が完了し、修復が出来た暁には強力な固定砲台が手に入るのだ。

 

「分かりました。そういう事なら、それで手を打ちましょう」

 

 ムー側も沈没寸前の艦を自国まで曳航できるとは考えておらず、調査さえ出来るならばとこの案に賛成する。

 

『では次の議題に参ります──』

 

 


 

 

「や〜っと終わりましたね。近藤さん」

 

 近藤の部下である井上が伸びをしながら彼に話しかける。

 先進9ヶ国会議は特に難なく終わり、彼らは帰国の途についた。

 

「そうだな。だけどまさか、3700人(グレードアトラスターだけでなくベテルギウスの乗務員も含む)もの捕虜を押し付けられるとは思わなかった」

 

「まあ、その数ならロウリアとパ皇戦の収容所で事足りるでしょうし、中には外交官もいるらしいので、日本の力を知ってもらうには良い機会でしょう」

 

 捕虜の中には先進11ヶ国会議で世界に宣戦布告を行った外交官、シエリアも含まれていた。

 彼女が言うには、彼女を含めて数人は軍人ではなくただの外交官であるため、日本国の法律と常識に照らし合わせた場合、彼女らは本国に送り返されるだろう。

 

 どちらにしろ送り返すのは決定事項であるが。

 グラ・バルカス帝国に日本の本当の姿を知ってもらうには好都合であるからだ。

 

「瀬戸さん、お疲れ様でした。まさか本当に勝てるなんて思いませんでしたよ」

 

「おう! 約束、忘れてねーだろうな?」

 

「もちろん覚えてますとも。じゃ、帰りの護衛もよろしくお願いします」

 

「ドーンと任せとけ!」

 

 

【フォーク海峡海戦】

グラ・バルカス帝国東征艦隊

『グレードアトラスター』:中破、拿捕される

『ベテルギウス』:大破、拿捕される

 その他:全艦沈没

 

世界連合

 ミリシアル艦隊:全艦轟沈

 ムー:『ラ・カサミ』大破、巡洋艦2隻中破、その他(空母は含めない)全艦轟沈

 エモール王国:風竜18騎撃墜

 その他の国:ミリシアルとムーの艦が優先的に狙われたため、半分は損傷軽微で生還。それ以外は轟沈。

 

 結果:防衛が成功したため、世界連合の勝利。

 

 


 

 

 中央暦1642年5月12日──

 ムー 首都オタハイト 海軍本部会議室

 

 

 魔法ではなく、科学の明かりが灯る首都の省庁区画に国会議事堂に次いで重厚な建物が2つ存在していた。陸軍本部と、海軍本部だ。

 その海軍本部の上位階級しか入れない会議室において、カルトアルパスでの海戦の緊急報告会が開かれた。

 

 会議には海軍の主要幹部、外務省幹部、情報通信部情報分析課の技術士官マイラス、そして戦場をその目で見た参考人として『ラ・カサミ』副艦長シットラスも参加している。

 

「それでは、これより緊急会議を開催します」

 

 進行役が会議の開始を宣言し、続けた。

 

「皆さんご存知の通り、先日、神聖ミリシアル帝国カルトアルパスにおいて先進11ヶ国会議が開催されました。事の発端は初日の会議中、新興国グラ・バルカス帝国が全世界に対して従属を呼びかけ、後日、その呼びかけに応じなかった場合の実演として、カルトアルパスへ攻撃を()()()()()しました」

 

 この海戦は結果だけ見れば世界連合の勝ちだが、各国、しかも世界の強国の最新鋭艦隊が受けた損害は決して無視できないものであり、その圧倒的強さを世界に知らしめることに成功したという点ではグラ・バルカス帝国の勝ちでもあった。

 特にミリシアルとムーの艦隊が受けた被害は甚大で、彼らの無力さを浮き彫りにさせることに成功したという点でも、グラ・バルカス帝国はその目的の半分を完了させたも同然である。

 

 おまけに彼の国は第2文明圏全域にも宣戦布告しており、突如として現れた国家存亡の危機に、軍幹部は頭を悩ませた。

 それとは別に、友好国ではあるがその脅威は決して無視できないと言う点で日本国もまた、彼らの頭痛の種となっていた。

 

「次に戦闘推移について説明をします。先手に回ったのはグラ・バルカス帝国で、彼の国は飛行機械を200機発艦させたと報告されています。ですが、これらは世界連合が接近を確認する間もなく、日本国の巡洋艦に全て撃墜されたと()()()()()

 

「「……?!?!」」

 

 会議室に動揺が広がる。

 

「待て待て待て! どうやって200機もの航空機をそんな短時間で撃墜できるのだ?!」

 

「詳細は不明ですが、後日、ミリシアルがその海域で敵飛行機械らしき残骸とその搭乗員と思われる焼死体、水死体を発見したようなので、嘘ではないのは確かです」

 

 会議室にさらなる動揺が広がっていく。

 それはさておき、進行役は続ける。

 

「そして日本国が敵航空機を撃滅させた後、皆さんご存知の通り彼の国は『日本国科学呪文式賛美歌』を詠唱し、敵艦隊に隕石を降らせました。この攻撃(?)により、敵の戦闘可能艦はレイフォルを単艦で滅ぼした『グレードアトラスター』のみとなったようです」

 

 一旦は冷静に話を聞いていた彼らだが、この報告が事実であると知り、彼らは騒がずにはいられなかった。

 それも当然、彼らの常識からすれば、人間が隕石を降らせるなど有り得ないからだ。

 いったいどれほどの魔力量が必要かも分からない。

 

「それは魔法か? 日本国に魔法はないと聞いたが?」

 

「詳細は不明ですが、日本国の外務担当がハッキリと日本国に魔法はないと証言しておりますので、科学の産物だと思われます」

 

「じゃあその科学呪文、賛美歌とやらは何だね?」

 

 待っていました! と言わんばかりに、情報分析課のマイラスは立ち上がり、参加者の疑問に答えた。

 

「それは恐らくは情報漏洩を免れるためのブラフかと。情報分析課は日本版『(しもべ)の星』である人工衛星を落下させたのではないかと睨んでおります。打ち上げる事が出来るならば、落とすことも可能かと」

 

「なるほど…! 人工隕石か!」

 

 実現に何十年、何百年かかるかはさておき、これならば我が国も真似できそうだ、と参加者達の顔が明るくなる。

 

「続けます。日本国が天災攻撃(隕石落下)を行った後、『グレードアトラスター』と、日本の艦を除く世界連合艦隊が衝突いたしました。各国の損害に関してはお手元の資料をご確認ください」

 

 彼らはチラッとムーの損害のページだけを見て、顔を暗くした。

 我が国の最新鋭の艦隊がこれ程までに痛手を負っていたとは信じられず、最初聞いた時は何かの間違いだろうと思ったのだ。

 だが『グレードアトラスター』がミリシアルの艦を優先的に狙っていたため、これでもまだ被害が少ない方である事に、彼らは気付かない。

 

「そして世界連合と『グレードアトラスター』の砲戦が終わった後、何かしらのエネルギーを回復し、再び動けるようになった日本国の巡洋艦が殿(しんがり)となり、『グレードアトラスター』との一騎打ちに挑みました」

 

 そして会議進行役は一息おいてから、続けた。

 

「結果は日本国の圧勝。驚くべきことに、彼の国はミリシアルの魔導艦隊が勝てなかった相手を1つの被害も受けずに降伏させたのです」

 

 にわかには信じ難い。

 だが、真実なのだから信じない訳にもいかない。

 

「…日本国はどのように『生ける伝説(グレードアトラスター)』を降伏させたのだ?」

 

「詳細は不明ですが、捕虜は皆一様に『化け物』が艦内に侵入した。応戦した陸戦隊が奴らに全滅させられた。降伏しないなら魚雷で沈めると脅された…と証言しております。魚雷とは海中を進む爆弾みたいな兵器だそうです」

 

「…その『化け物』とは通称『魔人』と呼ばれる日本国の軍人か?」

 

「詳細は不明ですが、そうだと思われます」

 

「艦内に侵入して100人も殺害…? そんなことが可能なのか…?」

 

「魚雷か…。我々もそれについての調査が必要だな…」

 

 その後、様々な意見や情報が飛び交い、会議が終わるのは明け方となった。

 この会議で決められたことは多岐に渡るが、特に陸軍と海軍の上部組織である統括軍本部では、対グラ・バルカス帝国について、日本国と綿密に連携を取っていくという方針が定められた。

 

 その目的はグ帝との戦争に勝つためでもあるが、非常に強い味方から技術を吸収するという目的もある。

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