日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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51話:日本国緊急閣僚会議

 中央暦1642年7月15日──

 日本国 東京 首都官邸

 

 

 異世界に転移してからとはいうものの、何度目か分からないほど開かれている緊急閣僚会議。

 あまりにも頻繁に開かれているため、彼らの感覚も「緊急」に麻痺してきていた。

 

「それでは会議を開始します」

 

 だが緊急とは言え、今回の会議は日本国にとって目下的、直接的な害はないので、全員が冷静であった。

 

「先日、神聖ミリシアル帝国から『中央世界と第2文明圏で連合艦隊を作り、世界に宣戦布告をしたグラ・バルカス帝国をムー大陸レイフォル沖合から駆逐する。具体的な戦闘に入る時期は約6ヶ月後。ついては日本国も参戦可能か』という問い合わせの書簡が届きました」

 

 ようするに参戦依頼だ。だが執務室が騒然とするのも無理はなかった。

 よほど戦力に自信がなければ、6ヶ月という短い準備期間で本格的な武力衝突は決定できないからだ。

 

「カルトアルパス沖での海戦に勝ったから高を括っているのか、それとも艦隊が全滅したのを忘れているのか?」

 

「プライドの問題でしょう。世界最強のネームを傷付けられたからには、何としてでも汚名返上がしたいのでしょう。前世の隣国と同じですよ」

 

「なるほど、つまりはパーパルディア皇国と同類って事で良いんだな?」

 

 純粋に戦争に勝つのが目的なら、もう少し準備期間をかけても良さそうなものである。

 しかし大多数が戦ったら絶対に勝てると心の底から思い込んでおり、おまけに一刻も早く勝って名誉を回復したいと思っているのならば話は別だ。

 それこそ過去のパ皇のように、勝ち(生き)急いでしまうのである。

 

「で、現実問題『6ヶ月後』に護衛艦隊は間に合うのか?」

 

「移動に1ヶ月かかると仮定しても間に合いますね。だいぶ余裕を持たせてますが…編制はAIを使えば数時間で終わりますし、燃料や弾薬、物資の積み込みも数日で終わります」

 

「ミリシアルは1ヶ月以内の回答を求めているが、それでも護衛艦隊群の派遣は可能という事だな?」

 

「ええ、様々なコストを鑑みても十分可能です。ただ…」

 

「…ああ、それは分かっている。何度も言わなくていい」

 

 それはここにいる者なら何度も考えた事である。

 

「『戦果を上げすぎる事による対外関係の悪化』だろう? 今でこそ無いが、第3文明圏から『日本国脅威論』が出たのもそれが原因だろうな」

 

 そう、軍事力が国の地位や発言力に直結するこの世界ならではの問題だ。

 いや、それは旧世界でも同じなのだが、この世界は特にそれが顕著なのだ。

 

「つまり、我々が強すぎると」

 

「そうだ。木造船ならともかく、相手は第二次世界大戦レベルの相手なのだぞ。700年前の敵とは言え、砲弾や爆弾が直撃でもしてみろ! 装甲の薄い現代艦では大損害は免れん! 派遣した人員の安全を考える以上、我々は戦闘になったら()()で敵を(ほふ)らねばならないのだ!」

 

「で、全力を出したら敵は全滅。今度は味方からの心証が悪化する、と」

 

「そうだ! 安全第一を謳って日本国単独で敵を殲滅してしまったら、どうなる?! 世界連合の意味がなくなるな! そうしたら味方から何と思われるだろうなぁ? 『日本国は強欲だなぁ…。待てよ? グラ・バルカス帝国が存続している内は良いけど、その後に国益を脅かすのは日本国ではないか?』だろうよ!」

 

 ゲームに例えてみれば分かりやすい。

 例えば強力なラスボスとその配下が徘徊するダンジョンに、数人の仲間で潜入するとする。

 だが、仲間の1人がそこにいるモンスターを全て倒してしまったら? 

 

 当然、他の仲間はおもしろくない。おまけに、モンスターをたった1人で殲滅した奴は新参者ときた。

 しかもそれだけでなく、そのダンジョン攻略が国の威信をかけたものだったら? 

 少なくとも戦果を独り占めにした奴への心証は悪化するはずだ。

 

 更に言えば、これは2()()()なのである。

 

「じゃあ世界連合とは最初から別に行動して、彼らが撤退する時に殿として…」

 

「2度目は通用しないだろう、規模が規模だ。カルトアルパスのように『敵を退けたぞ! やったー!』では済まないのではないか?」

 

「少なくとも『日本国は敵を疲弊させるための捨て駒として世界連合を利用したのではないか?』と疑われるだろうな」

 

「じゃあ形だけでも参加して、ミサイルを撃ち尽くしたら撤退する、と言うのは…」

 

「それで世界連合が勝てれば良いな。負けたら日本国だけが損害無しで撤退したことになるが」

 

 外務省は世界との歩調もなるべく合わせてたいと考えていたが、日本国は他国との技術差があり過ぎるため、足並みを揃えるというのがそもそも難しい。

 虎とライオンならともかく、象と蟻では歩調は絶対に合わないのだ。

 

 それを言ったら帆船と内燃機関で動く艦が混合している世界連合もそうなのだが、日本は別格過ぎるのである。

 

「ちなみにミリシアルもこれが性急であるということは十分に理解しています。今回はあくまで中央世界と第2文明圏のみで対応可能とも言っていますし、『地理的に遠いこともあり、出なかったからと言って日本国が不利益を被る事はない』との1文も添えられています」

 

 なら、日本国が取る選択肢は1つとなる。

 

「では、日本国は『地理的に遠いため、今回のような性急な作戦には対応しきれない』と言う事で参加を断ろう。もちろん方便だが、仕方あるまい」

 

「異議なし」

 

「異議なし」

 

 日本国の方針は決まった。

 もちろん、神聖ミリシアル帝国とムーがいるからと言って、世界連合がグラ・バルカス帝国に勝てるとは思っていない。

 参加するという方針を取っていれば助かる命も大勢あっただろうが、世知辛い世の中である。

 

「そういえばムー国戦艦の改修案はどうなんだ? これも政治的な物件だろう?」

 

 もちろんその戦艦とは、先の海戦で大破した『ラ・カサミ』の事である。

 これのどこが政治的な理由かと言うと、西の守りとしてムーの面子を立てる必要があるからだ。安直に日本の兵器を受け渡しても、日本の兵器だけが脅威と見られるのは好ましくない。

 ムー自体が侮れない相手であると敵に認識させなければ、抑止力として機能しないのだ。

 

 そのための『ラ・カサミ』改修案である。

 これを日本国が改修してムーに返せば「日本の技術がムーに渡された」と世界は見るだろう。そして改修後に『ラ・カサミ』が戦果を上げてくれれば、ムーの評価はより磐石のものとなり、それが第2文明圏安定化のプロセスとなる。

 

「ああ、それを第二次世界大戦程度の技術力を持つ敵に対し、優位性を持って戦えるようにする…だったか? 修理して改修するより1から造り上げた方が安上がりなのだがな…」

 

「なんなら『ラ・カサミ』と称して『むさし』でも送り付けちゃいますか。第二次世界大戦程度の技術力を持つ相手でも十二分に戦えますよ。維持費がバカになりませんから厄介払いには丁度いい」

 

 執務室に笑い声が起きる。

 しばらくすると防衛大臣が挙手をした。

 

「それについては防衛省が説明いたします。近々、ムー国に対して技術流出防止法の一部が緩和されるのはご存知の通りでしょう。それを踏まえた改修案はすでに完成しております。ですが、物理的な問題で世界連合との合流は間に合いません」

 

 物理的な問題なら、それは仕方ないなと皆が納得する。

 しかし改修案に目を通して気付いたのは、換装する兵器は全てが骨董品なのであった。

 

「これは…『10式戦車』に『155mm自走榴弾砲』? いつの物だ?」

 

「21世紀初頭ですね。他にも『CIWS』や骨董品の『中距離多目的誘導弾』やレーダーやらも載せる予定です。多少の改造はしますが」

 

「よくそんな物が残っていたな。600年前の物じゃないか」

 

「設計図が残っていただけです。戦車なんて基本構造はほとんど変わりませんので、AIに任せたら数週間で製造できますよ」

 

「なるほど。他には…対潜能力も付与するのか!それでもムーまでの道中で沈められるのは怖いな。護衛艦隊群も随伴させるか。反対のある者は挙手してくれ」

 

 特に反対意見もなく、閣僚らは頷く。

 本会議において、日本国政府は世界連合の参加を拒否する事と、戦艦『ラ・カサミ』をムーへ送り届ける名目で、1個護衛艦隊群及び補給艦を護衛任務に就ける事に決定した。

 特に後者は先日の『しきしま』のように中途半端な戦力を送っては日本人の生命を危険に晒す事がないようにと、入念に準備が進められた。

 

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