どうかお許しください。
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日本国海上自衛隊第4護衛隊群は、第4護衛隊と第8護衛隊からなる。
そのうち第8護衛隊は
「艦長、グラ・バルカス帝国空母から艦載機が飛び始めました。発艦目的は
「そうか…」
20世紀と28世紀の技術はもはや比べようがない程の差がある。
言うなれば、グラ・バルカス帝国海軍は大艦巨砲主義という「時代遅れの武具」で「未来兵器」という恐るべき怪物に立ち向かうドン・キホーテだ。
まだ起こってすらいない戦闘の結果は誰の目にも明らかで、それ故に敵が哀れであった。
「旗艦『かが』より入電、敵艦隊攻撃が決定されました。対水上戦闘用意!」
数十年前に起こった『
それから時が経ち、再び日本国民が平和を謳歌し始めるようになった頃、異世界転移という前代未聞の大事件が起こり、新世界で起きた数々の事件によって日本人は再び目覚めた。
戦わなければ勝てない。
戦って勝つことによってのみ、
新しい世界は未熟であるが故に、この
これを忘れてしまっているがために「武器などいらない!」「自衛隊なんていらない!」と叫ぶ「平和を愛する人々(
日本人は4人の尊い犠牲を対価に、太古の時代から続く真理を思い出したのだ。
「とは言え…圧倒的過ぎる勝利は思うところがあるな。相手が『
アラームが鳴り響くCIC。
衣川はそっと目を閉じ、これから逝くことになる
そして彼はゆっくりと目を見開き、冷たく、無機質な表情で指示を出した。
「対水上戦闘用意!!」
「了解ッ! CIC指示の目標、グラ・バルカス帝国軍!! 『
「各部対水上戦闘用意よし! ……艦長、指示を」
「…うむ」
衣川は一息置いてから、続けた。
「『
『──攻撃を開始シマス』
無機質な合成音声が艦内に響くと同時に、『
すぐさま艦中央部から小さな煙が吹き上がり、斜めに設置された対艦ミサイル発射筒から最新の対艦誘導弾が飛翔した。
煙の量は非常に少なく、見栄えに劣る。
数秒も経たないうちに破壊の槍は音速の壁を超え、哀れなグラ・バルカス艦隊へと向かって行った。
『763式艦対艦誘導弾』
日本が開発、配備した純国産の大型艦対艦誘導弾。
大きさの割に炸薬量は少ないが、防御力が高く、レーザー等による迎撃は困難。そのためミサイルでの迎撃が必須となる。
重量はかなりあるものの、極超音速で敵艦の装甲を貫き、大損害を与える。
レーダー上に艦対艦誘導弾が連続して飛翔する様子が映し出され、1発で戦艦をも
──この時点で、勝敗はすでに決していた。
艦隊司令メイナードは空母『シェアト』艦橋から前方を睨む。
青白く、気分の悪そうなその顔は、いつにも増して険しかった。
「……敵はまだ見つからないのか?!」
両腕を組み、苛立ちを隠しきれていない様子で彼は聞く。
「はい……算出した位置の
誤解のないように言うと、彼らは日本国とのやり取りの最中に、発信源の割り出しには成功していた。
彼らが困っているのは、発信源が1つではなかったこと。
それらは帝国艦隊から5kmも離れていない地点だったり、中には何千キロと離れているものさえあった。
「あの短いやり取りの最中に敵がこんな距離を移動していたとは考えにくい。そんなのは帝国空軍で最速の戦闘機を以てしても不可能だ。あるか無いかは別として、どれか1つが正解だと考えるしかないな」
「常識的な距離以外の物は索敵範囲から除外していますが……それでも索敵する地点は3桁を超えそうです。我々の常識の範囲外に敵がいる可能性はありますが…」
「…日本国め、いったい何をしやがった?!」
臨時的に艦の各部から多くの計算要員が集まり、彼らは利き手の外側を真っ黒にしながら、計算用紙とにらめっこを続ける。
海図に刺されるピンの数が増え続ける横で、計算用紙の量が一向に減らない様子は哀れでさえもあった。
そんな中、メイナードはそこから少し離れた場所で手を組み、ただ1人、熟考を続けていた。
「電子…戦? …レーダーの照射による電波妨害…無線による遠隔からの操縦…」
顔色の悪さでは軍内部で1位2位を争うであろう彼が、尚も険しい顔でブツブツと呟いている様子はおどろおどろしくもあった。
しかし、大抵そのような時間は長くは続かない。
突如、彼の青白い顔は何と形容すべきか見たことのない色に染まり、周囲の人間を驚かせた。
「敵は…日本国は……我々の遥か上を行っている…?」
「し…、司令?」
一応だが、グラ・バルカス帝国にも電子戦のような概念は存在している。
しかし帝国が過去に経験したそれらは、現代の地球で行われているような本格的なものではなく、せいぜいレーダーの照射等による電波妨害によって、敵間で行われる通信の妨害程度のものであった。
そのような前例しか無いがために、中にはその重要性に薄々勘づいている者もいた──メイナード司令もその1人であった──が、帝国軍人で電子戦をハッキリと「電子戦」という言葉に変え、輪郭を見い出せた者はいなかったのだ。
だが今回の日本国による一方的な電子戦が、彼が長年培った経験と知識で作り上げた、いわばメイナードだけの軍事ドクトリンの有効性を証明する。
彼は帝国軍人の誰もが見つけ出せなかった、一欠片のピースを手にし、完成することのなかった、しなかったであろうパズルを完全に手にすることができたのだ。
「まずい…」
瞬間、メイナード司令の周囲から音が消える。
世界の全ての色が白黒へと変わり、彼は狼狽えた。
日本国は帝国が経験していない戦争をも経験している…!?
完成したパズルを手に、理性と勘と呼ぶべきものの両方が同時に警鐘を鳴らす。
それは旧世界では連戦連勝、唯一無二の強さを誇っていた帝国軍の軍人が、経験したことのない感覚であった。
「まずい…! まずいぞ!」
彼の思考を要約し、言葉にすると、こうだ。
(日本国の行動は、彼らが我々の常識の範囲内の敵なら自らの位置を敵に知らせるような愚行だ。だが、我々は敵の位置を発見できていない。つまり──)
「敵は我々の常識が通用しない強さである事が危惧される!! 総員、直ちに戦闘配置!!!」
「司令!? それはいったいどういう…」
「うるさい急げ! 貴様、日本国の艦の写真を見たことがあるか!?」
「ハッ!? 日本国艦の写真でありますか? あの小口径砲しか積んでいない…?」
「そうそれだ! よくよく考えてみろ! 仮に、仮にだぞ。『グレートアトラスター』が連戦で疲弊していたとしても…どんな痛手を負っていたとしても、あんな小口径砲を前に降伏するか!?」
「…………いいえ」
メイナード司令の言う事は理解できる。
先のカルトアルパス沖海戦でグラ・バルカス帝国海軍の東征艦隊は敗北し、『グレートアトラスター』は日本国の戦利品となった。
だがこれを受けてグラ・バルカス帝国の人々、特に軍事に詳しく、写真で日本国の艦を見たことがある者は誰もがおかしいと思ったのだ。
日本国の戦利品になったということは、日本国艦隊が多大な戦果を上げたということ。つまり東征艦隊は日本国にやられたのだ。
先程メイナード司令と通信をした日本軍の者は「我々が沈めた」と言っていたが、駆逐艦ならともかく、それなりの装甲がある巡洋艦や空母、自身の砲弾に耐えられるよう設計されている戦艦があんな小口径砲なんかに沈められるのだろうか?
スパイによると旗艦『ベテルギウス』は何とか撃沈は免れたものの、大損害を受けて戦闘後に鹵獲され、『グレートアトラスター』もある程度の損害を受けた後、日本国の降伏勧告に応じたらしい。
だが、あんな豆鉄砲でそんなことが可能なのか?
しかし、あまりにも入ってくる情報が少ないため、グラ・バルカス帝国ではこの議題はすぐさま忘れ去られ、負けたという現実だけが議論の対象となっていた。
「失礼ながら、司令は何を言いたいので?」
「私が言いたいのは…! 様々な可能性を検討すべきだ! あの小口径砲は欺瞞…真の刃を隠すためのカモフラージュに過ぎず、日本軍はあの『グレートアトラスター』ですら太刀打ちできない兵器を隠し持っているかもしれないのだ!」
「そんなバカな」と、今までのグラ・バルカス帝国軍だったらその可能性を一蹴していただろう。
だが、今回ばかりはそれを匂わせるような事情があるのだ。敵が魅せた『自身の位置情報の隠蔽、もしくは欺瞞』である。
通信相手がずっと同じ人物だったのは周知の事実。
敵が複数の発信源から通信を送っていた可能性も否定はできないが、それを行おうものならば、膨大な人員と資源の浪費に他ならないため、考えにくい。
なにより、この説を否定する1番の理由がある。
敵からの通信はノイズがほとんどなく、音声は全く途切れていなかったのだ。
「なんとしてでもこの情報を伝えなければ! 急ぎ打電を!」
「司令、その……先程から無線が使えません。これも日本軍の仕業でしょうか…?」
メイナードはしばらく絶句した後、ますます狼狽えた。
「いかん! なんとしてでも誰かが帰ってこの説を説かなければ祖国が滅びてしまう! 航続距離が1番長い機を用意しろ! 急げえッ!!」
「ははは………。司令、冗談が御上手ですね…?」
その瞬間であった。
『監視台から報告! 一時の方角から飛し──』
────カッ!!!
刹那、メイナード司令は光に包まれ、肉片となって深い海の底へと沈んで行った。
グラ・バルカス帝国海軍の本国艦隊、第52増強地方隊は全艦が轟沈。偵察に上がった複数の戦闘機を除き、部隊は文字通り消滅。
後にムー近海で救助された戦闘機乗りの1人はこう証言したと言う。
「26隻全ての艦において
兵器紹介
『763式艦対艦誘導弾』
日本が開発、配備した純国産の大型艦対艦誘導弾。
日進月歩の軍事の世界で、自衛隊が従来配備していた対艦誘導弾では『高出力レーザー照射機』『マイクロ波照射機』『
従来の対艦誘導弾は敵艦の迎撃装備によって容易に迎撃された──主に燃料等の引火物の引火や、誘導装置等の電子部品の破壊、本体への直接的な打撃などの手段が挙げられる──ため、この新型誘導弾には直接的な打撃以外の手段による迎撃を困難にする合金製の装甲が追加されている。そのため、この新型誘導弾に狙われた艦は大口径砲もしくは迎撃ミサイルを用いての対空迎撃を強要される。
それだけでなく、本ミサイルは極超音速で様々なルート(蛇行、理由のない急上昇、急降下、障害物の迂回等)を飛ぶため(これらは内蔵されている人工知能がルートを決定していると言われている)、不十分な装備での迎撃は
大きさの割に炸薬量は少なく、どちらかと言えば物理的なエネルギーによる破壊が目的とされている。
他国にも似たような誘導弾はあるが、そのどれもが超が付くほどの精密機械であるため、高性能なまま量産が可能なのは日本国を含めて指で数えられる程しかいない。
ようするに「ぼくがかんがえたさいきょうのみさいる」