日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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59話時点での各国の状況

ムー:カルトアルパスの海戦では勝ったけど戦果は無し。無駄に死者出して世論がヤバい。バルチスタ沖海戦ではボッコボコに負けて国内の世論がヤヴァイ。
アカン!このままじゃ列強としての外聞がヤバいから単身でグラ帝に勝って汚名返上や!(なお戦力差)

神聖ミリシアル帝国:俺様ナンバーワン!

グラ・バルカス帝国:戦闘には勝ったが油断はできん。もっと強くならねば。

日本:戦後こちらにヘイトが向かないようにせなアカンな!まあそんな縛りをしてても戦争に勝つのは余裕や!



59話:終わりの始まり

 日本国 東京都 首相官邸 総理執務室

 

 

 日本国籍の自動車運搬船『DRIVE NEW WORLD』がグラ・バルカス帝国軍の潜水空母による襲撃を受けた日の夕方頃。

 東京都にある首相官邸には全閣僚とその関係省庁の幹部が集められ、世界情勢に関する緊急対策会議が開かれていた。

 

「──以上がバルチスタ沖海戦での双方の被害状況となります。この資料は我が国の人工衛星による海戦の観測映像を分析したものでありますので、間違いはないと断言できます」

 

 防衛大臣による海戦の概要説明が終了する。

 その場にいる皆が世界連合艦隊の被った損害の大きさ、それに対するグラ・バルカス帝国の被害の少なさに顔を真っ青にしていた。

 

「これは…! グラ・バルカス帝国の圧勝ではないか…」

 

 誰かが震えるような声で呟く。

 

「実際にその通りであります。世界連合はまさしく完敗したのであります」

 

 防衛大臣の補足により、会議の場に冷ややかが空気が流れ始めた。

 

 現在この場にいる人達の中で最も軍事に詳しい防衛大臣がハッキリと「完敗」と言うのだから、全くその通りなのだろう。

 世界連合は戦闘でも、国内外へのアピール合戦(世論誘導)でも文字通り完全に敗北したのである。

 

「これは…不味い事になるな……」

 

 この世界は西暦で言えば20世紀前半水準、武力が正義を語る世界だ。

 そんな世界で最先進国とされていた神聖ミリシアル帝国や、それに次ぐムーが新参の国に負けたという事実が世界に与える影響は計り知れない。

 戦闘でボロ負けし、世界最強のプライドと看板を粉々に打ち砕かれた国を見限る国がこれからはいつ現れてもおかしくないのだ。

 

「──とは言え、まだ致命傷ではありません。これからムーが勝てば良いのですから」

 

 青ざめたままの彼らを前に、防衛大臣はお構い無しにニヤリと笑う。

 

 彼のその発言に、会議に参加している人々が驚いたのは言うまでもない。

 すでに神聖ミリシアル帝国とムーの(それと有象無象を足した)連合軍がたった1国を相手に負けているのだ。

 軍事に関しては素人の彼らでも、ムーが単独でグラ・バルカス帝国に勝つのは不可能であると容易に想像できよう。

 

「はっはっは! まさしくその通りですな防衛大臣!」

 

 防衛大臣の発言に応答するように笑い、鷹揚に話し始めたのは外務大臣であった。

 皆の視線が外務大臣に集まる。

 

「防衛大臣の言う通りです。ムーが単身でグラ・バルカス帝国軍の撃退に成功したら……それはもう、悲劇が一転して喜劇となり、世界を照らす希望の光となります。

 かつて敗北続きだった連合軍の心に火を灯した『ダンケルクの戦い』のように」

 

「なんだと…?!」

 

 彼らが最初に感じたのは戸惑いと不安。

 そして大いに募った焦燥感がそれらの感情を急速に怒りへと変容させ、彼らは立ち上がった。

 

 会議の場に怒号が飛ぶ。

 

「防衛大臣ともあろう御方が! ムーとグラ帝の戦力差を理解していないとは何とも滑稽な話だな?!」

 

「ムーが単身で勝つのは不可能だと我々も知っているぞ!」

 

「自衛隊の援助も無しにアルーの街が守れるもんですか! まさか今更海外派遣が怖いとか言うのではありませんね?!」

 

 その場にいる防衛省、外務省以外の人間が激昂するのも無理もない。

 軍事に疎い彼らとて、グラ・バルカス帝国軍が相手では、ムーが世界の希望となるのは力不足であると知っていたのだ。

 

 おまけに、ムーは今の日本にとってはかけがえのない友好国だ。

 もし彼の国がグラ・バルカス帝国の手に落ちれば、安全保障上の問題だけでなく、経済的な危機が津波のように押し寄せて来るだろう。

 

 彼らはそれも知っていたからこそ、罵詈雑言や野次を飛ばしているのだった。

 建前上は友好国を助け出すため、本音は自国と間接的な自分の利益を保持するために。

 

「…私がいつ、自衛隊はムーへの援助をしないと言いましたか?」

 

 防衛大臣はにべもなく言い放った。

 

「「え?」」

 

 罵倒の嵐は一瞬で止まり、一同は再び困惑する。

 

「……ということはつまり、自衛隊はムーへの軍事的支援に前向きであると?」

 

「はい、必要とあらば何時(いつ)でもムーへの援助を開始する事ができます」

 

 防衛大臣は素っ気なく答える。

 

「ししし…しかし! 外務省によると、ムー政府は日本の援助は必要ないとおっしゃって…!」

 

 防衛大臣のフォローを入れるように答えたのは外務大臣であった。

 

「防衛省の方々、そして自衛隊の方々はムー政府から援助要請が入った時のために準備をしているのです。万が一という事もあるのでね」

 

「そ、そうですか…」

 

 具体的には分からないが、この行為にもそれなりの理由があるのだろう。

 これ以上何を言っても意味がないとわかり、先程まで野次を飛ばしていた人々は大人しく席に戻った。

 

「では、これから自衛隊の国外派遣があると考えてよろしいのですね?」

 

「はい、ムー政府から要請があればですがね」

 

「要請が入ると踏んでおられるので?」

 

「ええ、まあ」

 

 来るかもわからない支援要請を準備して待つ。

 一見すれば骨折り損かもしれないが、防衛大臣の堂々とした態度に一同はそう言う事ならば、と納得した。

 

「しかし、今のムーの世論では大規模な援軍は好ましくないのでは?」

 

「それは防衛省も重々承知しております。ですので、自衛隊が本格的に介入するにはまず、ムーが単独でグラ・バルカス軍に勝つ必要があります。

 しかし、ムー単独では勝てないと皆さんも知っておいででしょう。そこで我が自衛隊の出番です」

 

 彼は続ける。

 

「ようはムーがほぼ単独で勝ったとアピール出来れば良いのです。そのため、自衛隊のムー陸軍支援部隊には小隊規模(約30〜50人)しか送りません。

 この人数なら日本の力が目立ちませんし、現場以外にはムーがほぼ独力で防衛を成し遂げたと見られるでしょう」

 

 なるほど、確かにこれなら今のムーの世論でも大丈夫そうだ。

 しかし小隊規模という少数の援軍で圧倒的劣勢の戦況を覆せるものなのだろうか? 

 

「防衛大臣、その小隊と言うのはもしや…」

 

 ある人物が尋ねる。

 答えはほとんど予想できていたが──

 

「──ええ、かつて魔王を倒した『被手術兵』部隊です」

 

 


 

 

 後刻──

 グラ・バルカス帝国領 レイフォル地区 東側 バルクルス基地

 

 

 ムー国の国境の町アルーから西側約30kmに位置するグラ・バルカス帝国陸軍の最前線基地バルクルス。

 そこでは空に砲口を突き付けるように砲兵隊が並び、戦車のエンジンが足踏みをするように低く唸っていた。

 上空では陸軍航空隊が旋回し、兵士達はいつでも戦闘を開始できるように完全装備状態で待機をしている。

 

「ボーグ君、帝国陸軍は強い」

 

 物々しい雰囲気を発しながらも、整然と並ぶ精鋭陸軍第8軍団。

 そんな壮観な光景を眺めながら、旅団長のガオグゲルは部下の第4師団長ボーグに話しかけた。

 

「はっ、その通りであります!」

 

「その中でも君の第4師団は飛び抜けて強い。君たちにかかる期待は大きいぞ」

 

「ははっ! 我が第4師団は帝国最新鋭の戦車を主体とした完全に機械化された機甲師団であります! 未だ前時代的な塹壕戦術に頼るムー軍など、容易く蹴散らしてみせましょう!」

 

 ボーグは意気揚々と答えた。

 

 グラ・バルカス帝国軍は皇帝陛下の御旗の元に戦うため、士気は極めて高い。

 例え世界を敵に回す事になっても、百万の敵を前にしようとも彼らは恐れず、陛下の御意志ならばと狂喜として死地へと突き進む。

 

 しかし──

 

「ダメだぞボーグ君、どんな蛮族が相手でも油断だけはするなよ。そのような気の緩みが陛下の命に直結すると思いなさい」

 

「は、はい…! 失礼いたしました!」

 

 この世界のグラ・バルカス帝国は非常に冷静であった。

 陸軍にとってライバルとも言える海軍の、しかも最新鋭の戦艦を含む艦隊が負けたのだから、彼らも少なくとも油断はしていなかった。

 

「どんな前時代的な相手でも、我々は臆さず油断せず心を込めて殲滅する。それに今回の相手はムーだ。負けるつもりなど毛頭ないが、厳しい戦いになるかもしれない。

 何度も言うが油断だけはするなよ」

 

「ははっ!」

 

 情報によると、ムーは第一攻略目標であるアルーの町付近に軍を集結させているらしい。

 敵の激しい抵抗が予想されるため、ガオグゲルは少しだけ不安だったが、頼もしく敬礼する部下の姿に彼はニコッと笑った。

 

「……時にボーグ君、君の師団では兵にストレスがたまっていないか?」

 

「…はい?」

 

 ボーグは質問の意味が分からず、素っ頓狂な声で聞き返す。

 

「ボーグ君、今回のムー侵攻作戦では、こちらにも少なからず犠牲者が出るだろう。それは兵達の精神衛生上よろしくない」

 

 ガオグゲルはゲスのような表情を浮かべた。

 

「なので、私は君たちが敵国人をどう扱おうが、全く咎めるつもりはない」

 

「……はっ?!」

 

 ガオグゲル軍団長の発言が理解出来ず、ボーグ師団長は石像のように固まった。

 

 だってそんなことは戦時国際法で──

 

「ここには前世界のような戦時国際法など存在しない。勝った暁には兵士たちの好きなようにさせたまえよボーグ君」

 

「──なるほど、そういうことですかあ!」

 

 それを聞いたボーグの顔がにやけた。

 

 ずっと忘れていたが、この世界に戦時国際法などない。

 占領治下では何をしても法律上は何も問題がない事になる。

 例え掠奪をしようとも暴行を加えようとも罪に問われないのだ。

 

「その前に一仕事終わらせるぞ。さあ、偉大なる祖国の地を敵の(むくろ)で埋め尽くそうではないか」

 

 ガオグゲルが手を叩き、臨戦状態の兵士たちはより一層気を引き締めた。

 

「……攻撃開始!」

 

「て──っ!!!」

 

 ガオグゲルの合図とともに、砲兵隊に号令がかけられる。

 一斉射によって放たれた無数の砲弾は弧を描くように飛翔し、ムー陸軍が居座る防衛陣地へと降り注いだ。

 

 この日、グラ・バルカス帝国はアルーの街に砲撃を開始、侵攻を開始させた。

 それはムーにとって、地獄の陸戦が幕をあげた瞬間であった。

 




ダンケルクの戦い
第二次世界大戦における戦闘の一つで、史上最大の撤退戦と言われている。
ドイツ軍の進撃により追い詰められたフランス軍を救うため、イギリスが輸送船の他に小型艇、駆逐艦、民間船など全てを動員して、40万人の将兵を英本土に脱出(撤退)させた作戦。
勝敗だけを見れば英仏軍の敗北だが、人的資源の保全と『戦意の維持(ここ重要)』という意味では大きな成功を収めた作戦であり、後の戦争の推移に大きな影響を与えた戦闘と言っても過言ではない。
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