日本国召喚×テラフォーマーズ   作:BOMBデライオン

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近いうちに投稿すると言ったな…




あれは嘘だ


61話:絶対防衛線アルーⅠ

中央歴1643年6月5日(木)

気温:明け方は寒かった

天気:晴れ 犬の形の雲が1つ

場所:アルー防衛陣地、最前線の壕内

 

朝食は腐りかけのジャガイモとほぼ水のスープ。不味かった…

 

 今日の天気は晴れ。やや雲が多い空に、時々爆弾の嵐。砲弾は(あられ)のように降り注ぎ、敵飛行機械の機銃の雨が戦友の頭を貫く。

 

 汚い字で申し訳ないが、寒さで手がかじかんでいるので許してほしい。

 

 まあとにかく、これがアルー戦線の日常だ。

 事の顛末は…これを読んでいる人なら分かるだろう。

 3日前にグラ・バルカス帝国の軍隊が俺が今いる場所、アルーに攻めてきたんだ。

 

 ハッキリ言おう、奴らは強い。

 ムー陸軍が世界に誇る連射銃(地球で言うWW1時代の設置するタイプの機関銃)も対魔獣砲(地球で言う対戦車砲。ムーでは敵が使役する魔獣に対しての使用を想定していたため、この名称が付けられた)も敵の装甲を持つ戦闘車──戦車と呼ぶらしい──には焼け石に水ほどの効果も無かったのだ! 

 

 小銃弾はおろか対魔獣砲弾をも弾く装甲、その速力は不整地でも人が走る程度に速く、攻撃力も高い。そんな怪物の突撃を止める方法を我々は知らない。

 一応、地雷──対歩兵地雷を改造した即席の物であるため威力不足──や深めの落とし穴──労力の割に成功率は低い──で対抗している兵士もいるが、どちらも足止めになれば御の字だ。

 

 我々の決死の抵抗も虚しく、敵戦車は味方陣地を次々と突破、撹乱し、それに付随した敵歩兵──驚くべきことに敵は一人一人が携行式の連射銃を持っているため、単発銃しかないムー兵はほぼ打ち負けるのだ──が周囲のムー兵を圧倒し、掃討後に橋頭堡を築く。

 橋頭堡は周囲の防御が固められ、それが時間を経て陣地と姿を変えた頃には、空軍と砲兵が機能していないムー陸軍にとっては難攻不落の要塞と化す。

 そして陣地確立後、敵砲兵が前進し、前線に取り残されたムー兵が射爆されるのだ。

 取り残されたムー兵には後退の道しか残されておらず、彼らは降り注ぐ砲弾と戦車による電撃的な速度の包囲殲滅に怯えながら撤退する他ない。

 

 地上は劣勢、一方で空はどうだろうか? 

 

 列強であるムーの最新鋭戦闘機『マリン』も敵の飛行機械には遠く及ばず、最悪な事に制空権は〝常に〟敵の手中にある。ムー空軍結成以来の大事件だ。

 それがどのくらい最悪かと言うと、ムーの陣地上空で敵偵察機がアクロバット飛行をする始末だ。練度が高いため見てて飽きないのが腹立つが、あのカトンボを一刻も早く対空班に叩き落としてもらいたい所だ。

 

 …そういえば、こちらの対空陣地はほとんど壊滅しているんだった。

 それも仕方がない。対空兵器の発砲炎は遠くからでも非常によく目立つため、一度でも位置を特定されたら直後に嵐のような砲弾が襲いかかってくるのだ。

 発砲しなかったのと、日本国から購入した非常に精巧な偽装ネットにより僅かに生き残った対空陣地も、今は敵の反撃を恐れて沈黙しているため、俺達ムー陸軍は常に上空の敵に見られることとなる。これでは立って歩くだけでも良い的だ。

 

 夏までには帰れると言ったやつは誰だ? 

 確かに白い骨片になったら帰れるだろうな! 生きて帰れるとは言ってないってオチか!? 

 

 敵航空機による補給路への攻撃と、元々のインフラの悪さが相まって補給は大幅に遅れており──まあ補給を受けるはずの兵士はほとんどが補給を受ける前に戦死するため、そこまで深刻な問題は発生していない──戦闘物資は味方だった物から拝借できるので量には困っていないが、食糧はかなり不足気味だ。

 補給が追いつかないのに増援の兵士が次から次へと到着するため、食糧不足は時間を経る毎に深刻になるだろう。

 まあ、その頃まで自分が生きていられるとは思えないが。 

 

 そうこうしているうちに、古参兵から定期便と呼ばれる敵の砲撃が始まり、俺は生き残りたい一心で仲間の死体の影でうずくまった。

 

 

近くに着弾した

 

 

 

怖い

 

 

 ようやく砲撃が終わった。

 

 もし降伏できたら、どれだけ楽だろうかとふと思う。

 だが戦地に立つ兵士である以上、国防の任を投げ出す訳にはいかない。俺の後ろには家族と恋人が住む国があるのだ。

 

 もう会う事は叶わないかもしれないが…

 

 目の前で航空機から落とされた爆弾が炸裂した。

 ついに俺の番だ、この特有の地響きは戦車が近くにいることを示している。

 てきがもう目のまえまで来ている。

 

 となりにいた味方がうたれた、もう逃げる気力もない

 

 

さいごにかぞくとシオンに伝えのあいおーはぶ(文字が乱れているため読解不能)

 

 

『名も無き兵士の手記より』

 

 



 

 

 同刻──

 日本国首相官邸

 

 

「さて、ムー政府から極秘裏に接触があったとの事ですが…」

 

 防衛大臣が切り出す。

 その場にいる全員が如何(いかん)ともし難い表情を浮かべた。

 

「単刀直入に言いましょう。ムー政府からの依頼により、自衛隊の海外派遣が決定いたしました」

 

 日本という国が異世界に転移してから早数年。

 ロウリア王国の侵攻による『クワ・トイネ食料危機』『クイラ地下資源危機』を始め、パーパルディアによる『ニシノミヤコの悲劇』、グラ・バルカスの『世界会議の戦い』等など、これまで多くの苦難があった。

 

 そのような日本国を翻弄する異世界の荒波から、これまでも、これからも国民の衣食住を守り抜くであろう自衛隊がヒーローのように扱われるのは当然の道理である。

 幾度にも及んだ自衛隊の海外派遣。それもこれも全ては日本国民の自衛隊に対する厚い信頼の上で成り立ってきた。

 

 しかし──

 

「リスクが大きすぎる…! いくら友好国のためとは言え、国民の同意も得ずに自衛隊を送り出すなど…!」

 

 そう、送り出す隊員の数が少数とは言え、今回の自衛隊海外派遣は極秘任務であり、ムー人だけでなく日本人も(主に日本人経由での情報漏洩防止のため)情報を隠匿される対象なのだ。

 もし万が一海外派遣の隠匿が公になった場合、自衛隊が創設以来800年も培ってきた信頼は一気に汚泥へと叩き落とされるだろう。

 

 だが、意外にもこの問題は歴史に精通した大臣の一言で解決する事となった。

 

「なら、ムー派遣部隊には一旦自衛隊を辞職してもらって、一般人になってもらうのはどうでしょう?」

 

 ()案である。

 ちなみにこの手法だが、前例が全くない訳でもない。例を上げるならば、1900年代半ばに起こった朝鮮戦争が妥当だろう。

 

 当時、北朝鮮に加勢した中国人民解放軍は全員が法的には一般人、つまり義勇兵として扱われ、中国は韓国や米国を始めとする国際社会を敵に回すことなく、実質的に戦争に正規兵を差し向ける事に成功したのだ。

 

 今回の日本の件については、たまたま集まった数十人の一般人集団が、たまたま国外に赴き、たまたまそこで戦闘に巻き込まれた(巻き込まれたについては拡大解釈が適用される)ため、外にも中にも法的には何も問題はない。

 そもそもこの世界に国際法なる物は存在しないのだ。

 

 斯くして、()()()()ムーに滞在していた元自衛隊員達は、ムー国における活動を開始する事となった。

 

 


 

 

 中央歴1643年6月6日──

 グラ・バルカス帝国陸軍 第8軍団傘下第1師団 前線指揮壕

 

 

 その日もこちら側に多少の損害は出たが、別段変わった事など特に無かった。

 敵は今まで通り、こちらの機甲師団に対しては落とし穴や地雷で対抗し、航空機相手には発砲せず、非常に精巧な偽装ネット──あまりにも偽装能力が高いため、ムーのではなく、ミリシアルの魔法技術による物だろう──でやり過ごしていた。

 強いて言うなら、死体の振りをしてこちらの兵を油断させ、背後から奇襲を仕掛けられる事案が相次いで発生したくらいだ。

 それでも初日と変わらず敵の抵抗は常軌を逸した激しさを見せ、泥沼のようなゲリラ戦術で我が軍の侵攻速度は当初の予定より大幅に遅れた。

 

 だが、それも今日か明日で終わるだろう。

 攻略目標であるアルーの町は目と鼻の先にあり、そこもすでに我が砲兵の火砲管制圏内だ。

 

 戦術上、今のアルーを占領する意味はないが、それでムー国の戦意が折れてくれれば後の作業がずっとやりやすくなるかもしれない。

 少なくとも、そう信じたい。

 

「……それにしても敵が多いな!!」

 

 倒しても倒しても、敵兵が無限に湧いて出てくるのだ。

 前線の優秀な頭は死んだのか、そもそも元から存在しなかったのか、ムー陸軍にろくな戦術がないのが唯一の救いだが、余りにも数が多すぎる。

 

 捕虜に対して行った尋問では、恐ろしいことにまだ何万人もの後続が続いている事を聞き出せた。

 敵の上層部は何をとち狂ったのか、師団単位の戦力を束にして逐次投入し、人海戦術で数十年の技術差を埋めようとしているのだ! 

 

 質で大幅に勝っているためこれまで何とか優勢を保ってこられたが、単純な数の暴力がこれ程までに恐ろしいとは思わなかった。

 寝ても覚めても人の波の相手をしなければならないため、兵らの疲労は相当なものになっているだろう。そろそろ休憩時間が欲しいものだが…

 

「師団長、戦域全体で急に敵が後退しました。この戦いが始まってから初の出来事に兵らは戸惑っております」

 

「後退だと? 攻撃をしていないのにか?」

 

「はい、こちらを誘引してからの反転攻勢の可能性も考えましたが…どうも動きが妙なんです。こんなの、素人が見ても罠だと判断します。意図が明らか過ぎるのです」

 

「確かに…この動きはどう見ても罠だな」

 

 おまけに絶望的な戦況に嫌気が差したのか、単純に夜が近いからなのかは定かではないが、現在どの地域でも敵の動きは比較的落ち着いている。

 敵の急な統制の取れた動きに、グラ・バルカス帝国軍の将兵らは皆が警戒を強めていた。

 

「ガオグゲル軍団長は何と?」

 

「このまま敵を半包囲下に追い込み、明日の明け方に総攻撃を仕掛けるとの通信が入りました」

 

「…そうか」

 

 この戦いが始まってから、帝国軍は常に優勢を保ってきた。

 敵の苛烈な抵抗でこちらにも少なくない被害が出ているが、彼我の損害比は目も当てられない惨状になっているだろう。

 遠い異国の地で、弾薬制限下でよくここまで戦ってくれたものだ。

 

 だが、それもついに明日で終わる。

 アルーさえ攻略できれば、この戦闘も終わるのだ。

 

「わかった、進軍して敵を半包囲下に追い込むぞ。だが警戒を怠るな」

 

「了解しました」

 

 こうしてグラ・バルカス陸軍は後退した敵を追うように駒を進め、日没までにアルーの町を半分包囲するような形までムー軍を取り囲んだ。

 その間、一度の発砲もゲリラ的戦闘も起きず、帝国軍は一滴の血を流さずに先程までムー軍のいた陣地を獲得した。

 

「罠にしては奇妙だ。この大規模後退に意味はあるのか?」

 

「こちらを油断させておいて夜襲に持ち込む気かもしれません。夜なら空襲と砲撃の精度も大幅に落ち込みます」

 

「うむ、各員敵の動きに警戒するように!」

 

 だが、その日に夜襲は無かった。

 今までは仮眠する事すら許されない頻度で夜襲が来ていたのにも関わらず、不気味なことにその日の夜だけは一度も戦闘が起きなかったのだ! 

 

「嵐の前の静けさというやつか…? 不気味だな…」

 

 アルー近郊に、久しぶりに静かな夜が訪れた。

 砲撃跡で草木一本まで吹き飛ばされた泥濘の園。発砲する音も虫の音色すら聞こえず、耳が痛くなるような静寂さと死臭だけがこの空間に充満していた。

 

「…補佐官、幹部将校を集めろ。仮眠していたら叩き起こせ」

 

「はっ!」

 

 敵のあまりにも急な消極的行動。

 これは次の日に大規模作戦が行われる事を予知するのに十分な判断材料であるが…隠す気のない罠に警戒こそすれ、困惑しない人間はいないだろう。

 

 僅かに残った記録媒体によると、各前線司令部では夜通し作戦会議が行われたという。

 だが彼らの奮闘も虚しく、戦況の変化は太陽が登るよりも早く、その姿を現し始めた。

 

「師団長! 大規模な通信障害発生! 前線と連絡が取れません!!」

 

「電気系統も機能しません! 誰か! ロウソクを持ってこい!」

 

「なっ──」

 

 まず最初に発生したのは、司令部一帯で発生した全ての電子機器、電気系統の故障。

 電線に過剰な電流が流れ、全ての通信系統がシャットダウンしたのだ。

 そして──

 

「前線から口頭伝達! 『ムー軍の一斉攻勢を確認。急ぎ防衛陣地を築き、防御戦闘を行う』です! すでに各地で戦闘が発生しており、我が軍やや劣勢!」

 

「な…! わ、我々が戦っている相手はムーではないのか!?」

 

 偶然か、それとも必然か。

 いや、間違いなくこの瞬間を狙った攻撃だ。

 

 この未知の現象発生時、付近で飛行していた『アンタレス』は全機が墜落したのは目視で確認した。恐らく、司令部と同じように電気系統が故障したのだろう。

 問題はその直後だ。

 こちらが制空権を喪失した直後に飛来した敵航空機によって、現在制空権を完全に奪われているのだ。これが計画的反抗でないと誰が言えようか。

 そして無線も使用不能となり、目視圏外から間接射撃を行っていた砲兵は完全に機能不全に陥った。

 

 制空権を奪われ、支援砲撃もなく、頭を切り離された胴体は各々が最善の選択肢を選んで敵の迎撃を行うも、昨日と打って変わって状況は完全に逆転。

 グラ・バルカス陸軍は空から機銃と砲弾に襲われ、陸からは人海戦術による人の波に翻弄される事となる。

 

 しかし、これはムー陸軍と自衛隊の連合軍による反撃の第1段階に過ぎなかった。

 

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