単刀直入に記そう。我がグラ・バルカス帝国が新世界でも世界制覇を志すにあたり、最も警戒すべき国は「ムー」でも「神聖ミリシアル帝国」でも「
理由は言わずもがな、彼の国と我が国の軍事技術の隔たりは、多く見積もって50年以上、少なく見積もっても20年近くの差があるからだ。これをわかりやすく感覚的に説明するには、グラ・バルカス帝国軍とムー軍の技術差が妥当であろう。日本国と我が国の技術差はその程度離れているのである。
だが、たかが数十年と侮るなかれ。その僅か数十年の差が帝国海軍の最新鋭戦艦『グレードアトラスター』を旗艦とした帝国艦隊をを冷たい海の底へと沈めたのだ。
我が国が世界制覇を完遂するには、まずはこの国の技術力に否が応でも追いつかなくてはならないのである。そのためにも、我が国と現在戦争状態にある日本国を含めた世界各国と停戦し─もちろん時間稼ぎである─その期間中に日本国に大打撃を与えうる戦略的秘密兵器の製造を完遂するべきとの旨を、皇帝陛下に意見具申をするべきであると将官は愚考する。
概要は以下の通りである。
第1段階『
外交部主導で世界各国と停戦協定を結ぶ。もちろんこれは一筋縄では成功し得ないため、第一に最も交渉がやりやすいであろう日本国と停戦協定を結び、以後は日本国に仲裁人となってもらう。
また、いきなり停戦を提言すると敵国に何かあるのではと勘繰られてしまうため、停戦前に「皇太子殿下を殺害した日本国への懲罰攻撃」を大義名分にし、主に旧式の艦艇による大艦隊を日本国へ向けて出撃させる。この懲罰艦隊が日本海軍を食い破り、日本本土への攻撃を成功させれば儲けものであるが、高い確率で懲罰艦隊は壊滅すると予測する。大艦隊が壊滅に追い込まれれば、我が帝国が停戦を提言しても何ら不思議ではない。
もちろん懲罰艦隊の人員は「イシュタム艦隊」と似た編成がなされる。我々は彼らの戦訓を後の対日本戦の試金石とする。
そして懲罰艦隊が壊滅した直後に、日本国との停戦交渉に入る。彼らは十中八九「第2文明圏からの撤退、及び他国との即時停戦」を条件にしてくると予測されているため、後者はすぐにでもするつもりであるとの旨を伝える。
日本国は「国際法に乗っ取った世界平和及び紛争の平和的解決」を国是としているため、前者は「利害関係があるため、今すぐは難しい。各国との和平交渉が叶った後にゆっくりと調整したい」等と伝えれば停戦交渉は上手く進むであろう。
また、日本国の仲裁があったとしても我が国との停戦交渉が難航する国もあるだろうと予想されている。今作戦の最優先目標は〝実質的な不戦状態〟であるため、それさえ達成できれば無理に条約を締結する必要はない。交渉が難航し、長期化しても、実質的な不戦状態を生み出せれば目標達成である。
なお、程度にもよるが、我が国が何からの形で不利益を被るような内容での不戦状態は原則認められない。
第2段階『象牙の塔作戦』
今作戦は第1段階と並行して進められる作戦である。象牙の塔という言葉の通り、現在建設中の地下極秘施設に帝国中から集めた頭脳明晰かつ愛国心溢れる科学者や技術者に新兵器の研究開発に専念してもらう。
最も重点的に研究がなされる兵器は下記の通りである。
・原子核分裂連鎖爆弾/弾頭
ウランやプルトニウムなどの元素の原子核が起こす核分裂反応を使用した超高威力爆弾。
この兵器は帝国技術開発部により数年前から遅まきながらも進められていた研究だが、例の「ナグアノレポート」による触発のおかげで、すでに実験段階に迫りつつある。後の課題は小型化と実用化だけであると言っても過言ではない。
・各種誘導弾
わかりやすいように言うと「飛行爆弾」もしくは「航空魚雷」である。
無誘導のロケット弾は我が国にも存在するが、それらの長射程化と高威力化。そして弾頭を替えられる事により汎用性も確保し、おまけに誘導装置も取り付けて精度を高めるのが最終的な目標である。
また、上述の「核爆弾」を弾頭に切り替える事により誕生する「核誘導弾」は戦術的にも戦略的にも大きな軍事的優位性を生み出すと見られている。
・超長距離核誘導弾
上記の2つの兵器が完遂されて初めて生まれる究極兵器である。超威力の核爆弾を積み、何万kmと離れた敵国を攻撃する。
・ジェット戦闘機
ジェットエンジンを積んだ戦闘機である。その制空性能は従来のレシプロ戦闘機と比べて段違いに高く、これにより我が軍の制空権はより強固なものになると予想されている。
・新型潜水艦
航続距離や速力だけでなく、各種設備内装の改善や高い隠蔽性能の獲得を目指す。これと並行して誘導魚雷の開発もなされる。
これに核ミサイルを搭載し、敵国近海から核攻撃を行う構想も現在検討中。
・人工衛星による地上監体制
誘導弾の技術が高まれば、人工衛星を宇宙空間に送ること自体は比較的容易であろうとの見方がされている。だが宇宙空間は全く未知の分野であるため、これの実用化には更に長い年月が必要。
第3段階『天ノ破城槌作戦』
上述の「超長距離核誘導弾」を数十発同時、それを複数回繰り返す事による日本国本土に対しての戦略的奇襲作戦。
数本では比較的容易に迎撃される可能性を踏まえての、数十発一斉発射、波状攻撃である。幾度にも渡る核攻撃で日本国のあらゆる分野に大打撃を与え、その後に士気が大幅に下がった日本軍の残存戦力を一気に叩き、本土を占領するのが望ましいと思われる。
第4段階『夜明けの帝国作戦』
先日のアルー攻防戦における帝国軍の敗北とその後に起こったバルクルス基地陥落は、ムーが単独で成し得たのではなく、日本国による大規模な軍事的支援があったからだと見られている。
日本国さえ降伏させてしまえば、新世界の住人に「第二文明圏」と呼ばれる大陸付近の平定は容易い。神聖ミリシアル帝国も、日本がいなければ金魚のいなくなった金魚の糞に等しい。その後の「第三文明圏」と呼ばれる東側諸国も我が帝国の手によれば征服するのは非常に容易である。
今はまだ空想段階に過ぎないが、これらの作戦を総称して『グラ・バルカス世界帝国化作戦』と名付ける。