規格外な教祖様と究極の自由人も異世界から来るそうですよ? 作:凡人EX
最初は唯斗視点で進みます。
俺こと唯斗は現在、上空4000m程の高さから落下していた。
……誰に話してんだろ俺。いや、そんなことはどうでもいいか。
宇宙遊泳からたちまち重力に引っ張られることで地味に内蔵がダメージを受け吐血したが、まあ問題ない。
俺の場合、たとえ潰れてもその程度ならすぐ治る。
問題なのは、
「「「「ど……何処だここ!?」」」」
見渡す限り、今いるのが完全無欠の異世界である事だ。
他の3人も同じ感想を抱いたらしい。
周りを見れば、可哀想なぐらい叫んでいる猫を抱く少女、高らかに笑う金髪ボーイ、Theお嬢様、穏やかに微笑む真っ白な少年。
……待て、白いヤツ落ち着き過ぎだろう。てか何、なんの感想も無しかよお前。
猫もむっちゃ泣いてるし。カワイソス(笑)。
まあそんなことより、その先には世界の果てらしきものが見える。
(こんなわかりやすく異世界って感じの場所……来たことないな)
次に安堵した。ここならきっと楽しめると。
そして何より……
「クハハハハハ!! 上空数千mからの紐なしバンジーか!! こいつぁおもしれぇ!! やった覚えがねぇや!! 初めての経験だ!!」
などと笑っているうちに、膜のような何かに何度かぶつかって着水。盛大に水を飲んだ。圧迫感が凄かったです。
湖から上がったところで、Theお嬢様と金髪ボーイがそれぞれ罵詈雑言を吐き捨てている。
真っ白な少年は三毛猫を引っ掴んで上がってきた。救出したらしい。飼い主の少女に猫を手渡していた。
放っておかれるのも寂しいので2人の罵詈雑言に付き合う。
「し、信じられないわ! まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「……。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「溶岩までならいけるな。それ以上は試したことが無い」
「……貴方達、身勝手ね」
「「フン」」
「まあまあ、そう怒りなさんなお二人さん。責任は全て俺達を呼んだ奴にあるんだ」
「……それもそうね」
剣呑な雰囲気にならずに済んだ。いや、良かった良かった。
……しっかしまあ。
「此処……どこだろう?」
「台詞取られた……いや、本当に何処だろうなここ」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
「世界の果ては僕らも確認できたよ。ということは、僕らは古代インド人の想像した世界にいるのかな?」
「誰かの頭の中の世界に来ちまったってか? 勘弁してくれ、そいつが死んだら俺たちゃどうなるんだよ」
「死んじゃうんじゃないかい? アッハハ、それもまた一興だ」
……やだ、何こいつ怖い。
そんな会話をしていると金髪ボーイがこう言ってきた。
「まあ、まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずはオマエって呼び方を訂正して。────私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「……春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。次にマントを羽織った如何にも自由人そうなそこの貴方は?」
「風鞍唯斗、奇行種族の1人だ。宜しくな!」
「……よろしく風鞍君。次に白髪で何とも楽しげなそこの貴方は?」
「ああ、僕らは暁神夜。何の変哲もないちょっとした教祖だ。よろしくね」
「ええ、よろしく暁君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「見たまんま、野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義、と三拍子揃ったダメ人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう、 取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「あ、それいいな。俺にもよこせ。そっちのイチャついてる2人は?」
「じゃあ、私も」
「貰えるなら是非にも。十六夜君の取り扱いには苦労しそうだしね」
「だそうだぜ十六夜。こいつらが背中合わせで寛いでる事には突っ込まない方向でいいんだな?」
「ハハッ、OK。今度全員分作っといてやるから覚悟しとけよ? あと、俺はノーコメントだ。誰も違和感持たないぐらいだからな」
「此処での定位置がもう決まったみたいね。座り心地はどう? 春日部さん」
「神夜の背中、持たれ心地が凄く凄い。侮れない」
「出会ったばっかりの女の子にここまで近づかれるのは何度かあったからね」
……リア充自慢かコノヤロウ。
異世界に放り出され、唯斗を緩衝材にして早速なかなかに打ち解けた5人。
具体的には耀の発言により全員が友達になり、唯斗がどこからか取り出したクッションに座って談笑するぐらいには打ち解けた。
そしてそれを草葉の陰から見つめるウサ耳がいた。
(仲良くなるのは良い事なのですが……見るからに問題児ばかりですねえ……まともそうなのは暁さんぐらいでしょうか)
などとウサ耳が考えていると、5人の話題が切り替わる。
「ところで、呼び出されてしばらく経ったがなんで誰も来ねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「…………。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」
「何言ってやがる。俺は内心新世界への好奇心で荒れ狂ってるぜ?」
「平静を保てること自体が普通じゃないとも思うね」
(全くです)
5人が口々に罵詈雑言を浴びせている様を見ると怖気づきそうになってしまう。
が、そうも言っていられない。
これ以上5人が不満を噴出する前に出ていこうと、ウサ耳こと黒ウサギは腹を括……
「────仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れているやつにでも話を聞くか?」
る前に飛び跳ねる。心臓を掴まれる思いとはまさにこの事であろう。5人の視線が黒ウサギに集まる。
「あら、十六夜君も気づいていたのね」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ? 3人も気づいていたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「君達が気づいていたなら、僕らが気づかないわけがないさ」
「ウサ耳の違和感パネェもん」
「……へえ? 面白いなお前ら」
軽薄そうに笑う十六夜。その目は笑っていない。5人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠った冷ややかな視線を黒ウサギに向ける。
……それ以上に神夜が怖い。心からの楽しげな目はそのままに殺気をぶつけてくる。黒ウサギは冷や汗を流すばかりで動けない。
と、おもむろに唯斗が立ち上がった。
「しゃあねえ。出てこねぇみてーだし、こっちに来てもらおうか」
「ふむ、面白い案だが、どうするつもりだい? 下手に近寄れば逃げると思うけど」
神夜の疑問を聞いた唯斗は、再びどこからか何かを取り出す。
手榴弾だ。安全ピンを抜き、野球のフォームで振りかぶる。
「こうすんだ……よっ!!」
唯斗がぶん投げた手榴弾は音速を超えて黒ウサギの所へ。
その直後、爆発音と悲鳴が響き、ベシャッという音と共に黒ウサギが地面に叩きつけられた。
「うぅ……」
「お、生きてーら。割と殺す威力のモン使ったんだが、やっぱ異世界ともなるとバニーガールも頑丈なのかね?」
「こ、殺すつもりだったんですか!?」
復活して勢いよく立ち上がる黒ウサギ。しかし、5人の口撃は終わらない。
「問答無用に湖に放り出した挙句放置したお前が悪い」
「うっ。だ、だからってやりすぎでございますよー!!」
「妙な膜が無かったら僕達今頃死んでたと思うんだけどね?」
「……うぅ」
「まあ、俺たちの怒りがこの程度で終わると思うなよ?」
「ま、まだ収まらないと?」
「確かに死にかけた分はさっきのでおあいこよ。でも理不尽に呼び出された分はまだよ?」
「服をびしょ濡れにされた分も」
唯斗、神夜、十六夜、飛鳥、耀の順に責め立てる問題児達と、罪悪感を感じている黒ウサギ。
「……わかりました。黒ウサギにできることならなんでも」
その言葉にニヤリと笑う問題児達。しまった、と後悔するも遅い。
「唯斗、まずは羽交い締めにするんだ!」
「ラジャー!」
「えっ」
神夜の指示で素早く黒ウサギの背後に回り、羽交い締めにする。
「耀、飛鳥、2人で両手両足を拘束!」
「ええ!」
「任せて」
「えっ、えっ?」
右手右足を耀が、左手左足を飛鳥が体を使って捕まえる。
「最後だ十六夜、全力でウサ耳を引っ張る!」
「よしきた!」
この後、2度目の悲鳴が上がった事は言うまでもない。
息のあった連携。問題児達は止まらない。
神夜の一人称がおかしいと思った方、まだその時ではない。