ストライク・ザ・ブレイヴ   作:黒丸助

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お久しぶりでございます。
この話を完成させるだけで、1年もかかってしまいました。
できる限り、もっとペースを上げていきたいと考えています。

それでは、みなさん今年もこんな私ですがよろしくお願いします。




episode 05

 

先代の光導の顕主(ゾディアス・ノート)から直接血を与えられた第二世代の吸血鬼———長老(ワイズマン)のデルエスと零樹の監視者を名乗る霧葉の登場によって、ヴァトラーと零樹の一触即発だった空気は形だけだが沈静化した。しかし、いつも以上に死んだ瞳をした零樹は眉間に皺を寄せ、険しい表情を浮かべたままだった。それは、霧葉の豊満な胸を腕に押し付けられても一切変わらなかった。

そんな零樹から殺意がこもった視線を心地良さそうに背中で受け止めながらヴァトラーは、古城たちを個室へと招き入れる。豪華な装飾が施された内装の中央のテーブルを囲うように腰を下ろす。勝手に霧葉に腕を組まれている零樹はヴァトラーから一番離れた席に座りつつも日本刀はいつでも抜ける位置に置いている。

 

「いやはや、あの気性の荒い獅子を最初に飼い慣らすとは驚きましたよ、暁古城。貴方は実に面白いネタを作ってくれますから創作者の身としては、大変有り難いですよ」

「な、なぁアンタ…さっき自分のことを先代の光導の顕主(ゾディアス・ノート)から血を貰ったって言ってたけど……どう言う意味なんだ?」

 

誰よりも先に嬉々悠々で話すデルエスは紅茶を淹れたカップを片手に持ちつつ、自身に怪訝な表情を浮かべる古城の質問に答える。

 

「簡単な話ですよ。そこにいる夜叉神零樹は貴方と同じでかつては人間だったのです。ネタバレは好みではないので詳細を省きますが彼は、とある儀式で光導の顕主(ゾディアス・ノート)を継承した。なので、私は先ほども言った通り、彼より前……つまり先代の光導の顕主(ゾディアス・ノート)だった方から血を貰って吸血鬼になっただけです」

「(いずれは知る事になるから今更か……)」

「「な゛っ?!」」

「……そうか…やっぱり零樹は、人間だったんだな」

「あら、意外ね。気づいていたの?」

 

当人である零樹は無言で静観を貫いているが、獅子王機関の紗矢華と雪菜は驚愕を露わにする。雪菜達に対して、古城は何処かで心当たりがあったのか特に騒ぐ事なくデルエスの言葉に合点がいった様子だった。そんな古城の様子に今度は霧葉が何処か拍子抜けした様な表情を浮かべる。

 

「なんでなのかは、わかんねぇけど。俺は…ずっと前…から、知っていたような…気がする…」

「そんなまさか、夜叉神先輩まで、人間から真祖クラスの吸血鬼になるなんて!?……それに何故そんな儀式が…ッ?!教えてください!!なぜ、そんなっ?!」

「雪菜、一旦落ち着きなさい」

「言った筈です。私は、ネタバレは嫌いなので、コレ以上は教えません。と言うか、コレ以上バラすと私が解体(バラ)されそうですので」

「珍しいな、お前が素直だなんて。この愉快犯が」

「零樹、しつこいわよ」

 

「うるさい。命令するな、腹黒ストーカー」

「国家公認だからノーカンよ。空隙の魔女さんじゃ私みたいに厳しめに手綱を握ってくれなさそうだから、コレくらいがちょうど良いのよ」

 

霧葉からの問いかけに古城は、まるで頭の中で靄がかかっている感覚ではあるものの、その言葉に確信に近いものを持っていた。しかし、古城はソレが何故なのかは自分でもよく分かってはいなかった。古城の様子に気にする余裕がない雪菜は、机から身を乗り出しかけながらもデルエスに詰め寄ろうとするが、直ぐに平静を取り戻した紗矢華によって止められる。そんな3人を尻目に霧葉と零樹は、痴話喧嘩をはじめている。

 

「はぁぁ、お前と話していると、ほんと疲れる。ヴァトラー、さっさと本題入ろう。お前がここに来た理由は、俺や古城を呼び出した理由と関係しているんだろ」

「やれやれ、ボクとしては愛しいキミの昔話をストラウス卿から聞きたかったんだケド。妓崎嬢が側にいるから、コレ以上君に挑発行為(愛の呼び掛け)した所であまり靡かなそうだから、今回は言う通りにするヨ」

 

降参したかの様に両手を上げながらでも、陰湿な物言いは変わらないヴァトラーに青筋を立てる零樹は、無言で霧葉に軽く頬を抓られた。

 

「なぁに、ちょっとした根回しってやつだよ。この魔族特区が第四真祖の領地だというなら、まずは挨拶をしとこうと思ってネ。愛しの零樹は、領地を持たない流浪の身だけど、もしかしたら、うっかり迷惑をかけるかもしれないからねェ」

「迷惑ってなんだ?」

 

決して聞き捨てならない言葉が聞いた古城がヴァトラーに聞き返す。

 

「クリストフ・ガルドシュという男は知っているかい?」

「いや? 誰だ?」

 

「戦王領域出身の元軍人で、欧州では少しばかり名が知れたテロリストさ。獣人達を中心とした“黒死皇派”という過激派グループの幹部でね。三年ほど前にプラハ国立劇場占拠事件では、民間人に400人以上の死傷者を出した凶悪犯だよ」

「なっ?!」

「おやおや、真実を隠すのはいけませんよ、アルデアル公。ご安心を暁古城、通りすがりのとある方のおかげで、民間人には死者は出ていませんよ。民間人には」

「テロリストの方は、かなりの人数が死亡したのは太史局でも把握しているわ。何処かの誰かさんが、関わってるから」

 

ヴァトラーが意図的に、伝え忘れていた事実をデルエスと霧葉が伝えた事で、古城、雪菜、紗矢華は眼を見開いた。彼等が言っている“通りすがり”は、誰の事を表しているのか、直ぐに理解したから。

そして、3人の脳裏に、ある疑問が浮上する。

夜叉神零樹とは、一体何者であるのか。

 

「マァ、あの時はトップには逃げられたんだよね〜。あの頃の零樹は、今ほど細かい力の操作とか、周りへの配慮とかが無かったからネ」

「そうだな。あの時の俺はただ怒りを手当たり次第ぶつけたかっただけだからな。この世界に対して」

 

ヴァトラーによる悪気満載の暴露された零樹は、何処か遠い何処かを懐かしむの様にも感じ取れるが、その瞳には暗い感情が入り乱れていた。

 

「零樹が取り逃したトップは僕が殺したとは言え、少々厄介な特技を持った獣人の爺さんだったけどネ。だから、黒死皇派の残党たちが、新たな指導者としてガルドシュを雇ったんだ。テロリストとして、圧倒的な実力を持つ彼をね」

 

結論として、絃神島にヴァトラーが在中している限り、黒死皇派の残党は元トップの仇討ちの為、ヴァトラーに攻撃を仕掛けるかもしれない可能性が大いにあるということ。

 

「ちょっと待て。 あんたが絃神島に来た理由に、そのガルドシュって男が関係してるのか?」

「察しがよくて助かるよ、古城。そのとおりだよ。ガルドシュが、黒死皇派の部下たちを連れて、この島に潜入したという情報があってネ。実は、そのガルドシュが真祖にも匹敵する“とある兵器”を手に入れたらしんダヨ」

 

まいったね…といけしゃあいけしゃあと語るヴァトラーを古城は席こら立ち上がり険しい表情で睨む。

 

「おい、その兵器とやらを、ソイツはこの絃神島で使う気じゃないよな」

「サァ、どうだろうネ。ここは第四真祖(キミ)の領地だから、そんなことはしないつもりではいるけど……僕が襲われたら、反撃しても仕方ないよネェ?」

 

おちゃらけた態度で語るヴァトラーに古城は詰め寄ろうとしたが、背後から途轍もない寒気を感じ取り咄嗟に飛び退いた。

ソレを出したのは、他でもない

光導の顕主(ゾディアス・ノート)と呼ばれている夜叉神零樹だった。

そして、零樹は感情を消した表情で絶対零度を想起されるほどに冷たい声で言った。

 

「頭の中が闘争しかない貴様が、正式な外交使節使ってここに来たのは、我が身のために正当防衛の大義名分を使い、黒死皇派と……いや真祖を殺しうると謳われる兵器との、戦い。己の退屈凌ぎの為に、この島を荒らすつもりか?」

「ふははは、相変わらず僕の心情を言い当てるのが上手いネェ。嬉しいよ、愛しいキミが、僕がやろうとしてることを理解してくれるなんて」

 

「…貴様…本当に無に還りたいようだな」

 

再び零樹は影から漆黒の蛇を不完全ながら召喚すると、狂気の笑みを浮かべるヴァトラーも金色の蛇を同様に不完全ながら召喚する。

 

二人の体からは魔力が漏れだし、またしても一触触発となった。

古城は2人を止めるために魔力を活性化させ、瞳を真紅に変え、体の周りから黄金の稲妻を起こす。

3人の吸血鬼の闘いがいつ始まっても可笑しくない状況で、一人の少女が冷たく澄んだ声で献言した。

 

「恐れながら、アルデアル公の心配には及ばないと思います」

「……たしか君は、古城の監査役で獅子王機関の剣巫だったね。それはなぜだい?」

 

「ここの首領は第四真祖。ここの火の粉を払うのは領主の務め。なので、アルデアル公と夜叉神先輩は、大人しくしててください」

「ひ、姫柊!?」

「ほおう」

「おやおや、中々度胸がありますね。コレも血筋ですかねぇ〜」

「黙れ、デルエス。その口にお前の両足を折りたたんで突っ込むぞ」

 

古城は驚きの声を上げ、ヴァトラーとデルエスは興味深そうに雪菜を見る。だが、デルエスの言葉の一部に異常に反応した零樹は、刀を手に取りいつでも斬りかかれる様子だ。

 

「じゃあ僕の代わりに古城がガルドシュを捕まえてくれるのかな?」

「いえ、先輩にそんな事はさせません。私が捕らえます」

「ちょっ!?雪菜、何を言っているの?!」

「そうだぞ、姫柊!!何でお前がそんな危険な事を!」

 

「先輩たちは黙っていてください!」

「「ッ!」」

 

あまり声を荒げる事のない雪菜からの迫力に押され、古城と幼い頃から親しい紗矢華は口をつぐんでしまうが、

 

「いいや黙るのはお前の方だ、雪菜」

 

先程までデルエスにキレていた零樹は割って入った。

 

「な、何故ですか!私が黒死皇派の残党を捕まえるの方が一番被害が最小限です」

「馬鹿か。未熟者のお前が動けば、監視対象である第四真祖が動くのは明白だ。ソレに、またオイスタッハの時の様な事をしたいのか?」

 

さっきまでとは打って変わり、零樹は冷徹ではあるが冷静な推測を厳しい言葉と共にかけた。前回の事件の際に、古城が自分を庇い、一度死んだ時の光景を脳裏に思い出すが、雪菜は尚も食い下がらなかった。

 

「…っ!し、しかし」

「お前のするべきことは、第四真祖の監視だけだ。はっきり言ってやる、邪魔だから余計な事はするな」

 

決定的とも言える拒絶の言葉を零樹から貰った雪菜は何も言い返せる事はできず、顔を俯かせる。雪菜に駆け寄る古城は零樹の言い方に問い詰めたかったが、有無を言わせぬ気迫を放つ零樹に何も言う事はできなかった。

 

「なら、零樹に任せようかな」

「コレは中々よい余興になりそうですね」

 

 

ヴァトラーとデルエスの挑発的な言葉にいちいち反応する気を失せたのか、零樹はそのまま刀を腰に下げたまま部屋を退出した。

そして、彼の監査役である霧葉はわざとらしい溜め息を吐いて、その後に続く。

 

「アルデアル公、ストラウス卿…零樹を煽るのも程程にして下さいね。フォローする私も大変なんですからね」

 

こうして、ヴァトラーが開いた夜会はお開きとなった。

零樹が拒絶の言葉をかけても雪菜達は、本人達の意志に関係なく、戦いの渦へと呑み込まれていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるビルの屋上にて零樹は先程の冷たげな表情とは打って変わり、何かを堪える様な表情を浮かべている。

 

「随分と冷たいわね。10年ぶりに再開できたのに」

「…………アレくらい言わないと聞かないからな。生真面目な所はソックリだ」

 

零樹が今どんな心情でいるのか理解している霧葉は、遠慮なく彼が言って欲しくない言葉をかける。

 

「かなり傷ついていた様子だったけどね。どうしてこうも、1番目ってのは妙な所で意地っ張りというか、傲慢なのかしら」

(ほむら)の奴は、傲慢でも意地っ張りでもない。誰よりも優しく誠実な男なだけだ。まぁ、俺なんかよりお前の方がよっぽど知っているから、今更か」

 

零樹が焔と言う名を出した途端、霧葉は夜会の時から浮かべていた薄ら笑みを消すと、厳しい眼差しと共に神聖さを纏った三叉の聖槍の切っ先を彼の背に向けた。

 

「そうね、何せ私と兄さんは血を分けた家族だったんだから。貴方に殺される“あの時まで(・・・・・)”」

 









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