ストライク・ザ・ブレイヴ   作:黒丸助

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episode 02

遠くから古城と雪菜の動向を観察している零樹は、缶コーヒーを片手に飲んでいると、事態が悪い方向で一変する。

 

「チッ!あのナンパども余計な騒ぎを起こすなよ」

 

苛立ちを隠せない零樹の言う通り、彼の視線の先では姫柊雪菜がとある2人組にナンパに遭い、何があったかは詳しくは見えなかったが彼女の怒りを買うこととをしたナンパの内の1人は吹き飛ばされた。そして、雪菜に殴られたもう1人の吸血鬼の男は怒り、自らの眷獣を呼び出す。流石に事が大事になったため零樹は2人の仲裁へ入るべく、足下に魔法陣を展開する。

 

場所は変わり、古城たちのいる道路では第一真祖の血族である通称“D種”の男が激しく揺らめく焔でできた馬を召喚する。

 

灼蹄(シャクテイ)!その女をやっちまえ!」

雪霞狼(せっかろう)!」

「(まさか、あの槍は獅子王機関の秘奧兵器の内の一つ七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)か!?ったく、面倒なものを持たせたな!)……斬!!」

 

そして、2人の間に割って入った零樹は手に持った黒い刀を抜き放ち、そのまま焔の馬を真っ二つに斬り裂いてみせた。

 

「しゃ、灼蹄!?」

「なっ!?」

 

槍を持った少女とD種の吸血鬼が目の前で起こった現象に唖然とし、驚愕を露わにする。それは急に割り込んで来た見知らぬ少年(零樹)が一太刀で眷獣を消しとばしたのだ。

 

「攻魔官だ。神妙にお縄につけ」

 

攻魔官と聞いてホスト被れの男は顔色を変え、必死に言い訳を始める。

 

「ま、待ってくれ正当防衛だ!先に仕掛けたのはそのガキだっ!!」

「なっ!?」

 

吸血鬼は少女に指を差し、少女は自分に罪を擦り付けるような発言に目を見開く。しかし、雪菜は改めて考え直してみると自分の方から攻撃をしたのは確かなことであるため少々バツが悪そうな顔になっていく。

 

「ある程度は見ていたが、お前たちの方がこの子にちょっかい出したのは事実だ。加えて、眷獣まで出されると言い訳は効かない。それに攻魔師であるとは言え、女子中学生相手に眷獣を使うのは明確な過剰防衛だ」

「だ、だがよ……」

 

それでもなおいい訳をしようとする男に零樹は面倒くさそうな顔で鞘にしまった刀で気絶させ、そのままもう1人の仲間である獣人の男の足を掴み引きずりながら、その場を後にしようとする。

 

「あと、そこの中学生。槍をしまえ、この程度の吸血鬼相手にソレは明らかに過剰防衛だ」

「うぅっ……す、すみません」

 

零樹の言葉を聴いて、流石に反省したのか雪菜は申し訳なさそうに頭を下げる。そんな雪菜に何を思ったのか、零樹はポンポンと頭を数回撫でる。

 

「気にするな。ちゃんと見えてはいなかったが、アイツらが殴られる原因を作ったのも事実だ。それとそこの馬鹿、ちょっと来い」

「馬鹿とはひでぇな。後、何処で見てたんだよ!」

 

零樹の掛け声と共に、雪菜達の仲裁に入ろうとしていたのかすぐ近くに来ていた古城がこちらに歩み寄る。咄嗟に雪菜は古城を見て顔を強張らせ、近くの車の上まで飛び上がり距離を取る。このことから、零樹は雪菜が自分自身が古城に対する生き餌であるという事実を知らないことを理解する。

 

「俺はこいつらを持って行くから。この子のことは任せたぞ」

「任されたくないが、わーったよ」

 

古城の返事を聞き、零樹は気絶している二人を引き摺ってその場を立ち去った。ちなみに引き摺られたことで2人の顔は地面との摩擦によって色々酷いことになったのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナンデオマエダケガイキノコッタンダ!!』

 

 

……お前たちを殺したからだ

 

 

『ナンデワタシタチハシナナケレバならなかった!!』

 

 

……お前たちは死ぬ必要なんてなかった

 

 

『オマエガシネ!!』『クルシメ!!』

『地獄へオチロ!!』『苦シンデシネ!!』

 

 

……あぁ、苦しみ続けてやるよ

 

 

……俺が世界に殺される(・・・・・・・・・)その日まで(・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

時は流れて次の日の朝。

 

アナログ式の目覚まし時計によって零樹は目を覚まし、カーテンの隙間から射し込む日光を忌々しげに睨む。

 

吸血鬼になった(・・・・・・・)際とは言え、この太陽のキツさは慣れないものだな」

 

誰に言うまでもなく、独り言を呟きつつ着替えを済ませ、学校への支度を整えた後、零樹は朝食の準備に取り掛かる。今回の朝食のメニューは塩鮭に味噌汁とご飯という超絶和風である。また、零樹は妙なこだわりがあるためか、簡易のレトルトではなく味噌を溶かすところからやるという徹底振りでもある。

 

「こんなところだな……それにしても、最悪の吸血鬼である俺の趣味が料理とは……ふふっ、アイツらが見たら幻滅……いや呪いに来るか……まぁ、いっそ呪い殺してくれた方が楽になれるんだがな」

「ふん!呪われても貴様は死なんだろ」

 

怒気が僅かに含まれる言葉が背後から聴こえたので、振り返るとそこには、フリルまみれのドレスを着ている幼女(自称26歳)———南宮 那月がいた。

 

「おはよう、那月。で、連続魔族襲撃犯の正体は掴めたのか?」

「おはよう、零樹。露骨に話を逸らしたな。まぁいい、事件に関してはそこ辺りのカメラを潰している上に目撃者もゼロ、被害者は全員意識不明の重体ときた。犯人が何を目的として、こんなバカなことをしているのかは不明だ」

 

机に座りながら、那月は持って来ていた新聞を広げて零樹が作る朝食を待つ。

 

「なるほどね。なんなら、俺が囮にでも「それ以上バカなことを口走れば、お前も監獄へ放り込むぞ」…分かった分かった。そんな目で睨むなよ」

「貴様の死んだ魚の様な眼には常に、己を虐げようとする馬鹿な自己嫌悪が渦巻いているからな。無茶をしかねん」

 

あいも変わらず、自らを無下にする零樹の言動を遮る様に那月は、彼にとっての脅し文句を言い放つ。そして、那月の言葉から感じとれる怒気の中にある優しさを分かっているのか、カラカラとした乾いた笑みを浮かべる零樹は、何事もないかの様にできた朝食を並べていく。

 

「ハハ、心配してくれるのか?相変わらず優しいな、那月ちゃん」

「黙れ居候。お前の自己嫌悪はいつ聴いても下らん。そんなことを言う暇があるのなら、授業をサボるな。お前が時折サボる際で保護者である私まで、ウザい目を向けられているのだぞ」

 

「気分が乗らないんだよ、気分が。それなら、教会のネコどもと戯れていた方がまだ楽だからな」

「ハッ!ネコではなく、叶瀬目的だろ。噂になってるぞ。高等部の死んだ目のサボり魔が中等部の聖女と逢引しているということがな」

 

那月は鼻で笑いながら、零樹が淹れた紅茶を片手に飲む。

 

「俺が誰かに恋するとでも?冗談も、その見た目だけにしてくれ」

「黙れ、蛇遣い。力を封印したお前が何をしようが勝手だが、この島に引き籠るのなら、せいぜい他の真祖、獅子王機関の馬鹿どもに干渉されないようにダラダラと普通に生きるんだな」

 

そう言って並べ終えられた食事を手に取り、那月と零樹は同時に「いただきます」と合掌し、朝食を食べるのであった。

言い忘れていたが、那月と零樹は10年近くの付き合いでもあるため、歳が離れているとは言え2人の間には遠慮というものがない。そのせいもあってか、学校では唯一ちゃん付けを怒られない生徒である零樹と那月はデキているのではという噂が今でも浮上している。しかし、本人たちは全くそう言う気はなく、単なる家族として接している。また、那月の見た目は完全に中学生か小学生にしか見えないため、何も知らない人たちが零樹と並んで歩いていると、同じ黒髪に接し方の近さも相まって兄妹か下手をすれば親子に見えるという始末となる。そのため歳上である那月は零樹と自分が兄妹と言われた時は怒っていたが、親子と言われた時の怒りは凄まじく、危うく黄金の守護者を呼び出し掛けたほどであった。

そして、那月は零樹や古城が通う彩海学園の教師でもあり、零樹同様に国家攻魔官の資格を持っている。加えて、彼女のおかげで、零樹は吸血鬼であるということを隠し学校に通ったり、この地に留まっている(引き籠る)ことが出来ているので、その見返りに攻魔官の仕事を無償で手伝わされているのだ。

 

 

「それから、獅子王機関の連中は本気で古城を懐柔するつもりのようだぞ。ご丁寧に"秘奥武装"の“神格振動波駆動術式”も付きときた」

「チッ、面倒なモノを面倒なヤツにぶつけにきたものだ」

 

那月は顔を忌々しげに顰めながら、箸を進めていく。

 

零樹の言う『秘奥武装』とは獅子王機関が作り出した武器であり、高度な金属精錬技術などが必要な為、数が少ないものである。雪菜が持っていたのは、魔力を無効化する術式である"神格振動波駆動術式"が組み込まれた槍である。これは吸血鬼を含む魔族に真価を発揮するため、言うなれば魔族殺しの槍とも言える。

そして、攻魔官と獅子王機関は商売敵のような関係であるため仲がそこまでよろしくなく、零樹と獅子王機関との因縁を知っている那月は敵意までは抱いていないが、彼女たちの組織をそこまで好印象に見てはいない。

 

「……お前が言っても無駄なのは知っているが、あまり無茶な真似をして正体がバレるなよ。とは言っても、真祖の連中には此処に引き籠っていることは気付かれているようだがな」

「だろうね。この島にいるのはバレているとは思うけど、今の所問題を起こしていないから見過ごされているのかも知れないな。今の俺ってば、力の大半を封印していることだし」

 

カラカラとした笑みを浮かべる零樹は特殊な吸血鬼であり、その存在は第四真祖ほど公には認知されてはいない。そして、身を隠すために13体もいた自らの眷獣をたった一体を除いて封印状態にして、眠らせている。

 

「それにしても……アイツから第四真祖の力を受け取った古城と一緒にいると、波乱万丈な日々が待ち受けている予感しかしないよ」

「止めてくれ。お前がそう言うと本当になりかねない。いや、もうすでに始まっているのかもな……お前の目の前で、暁が先代から力を譲り受けた日から」

 

そんな呟きに那月はこめかみを押さえ疲れたような顔をする。すでに雪菜が監視役として派遣されている上に連続魔族襲撃事件という実例があるため、本当に巻き込まれる形で現実化しかねない。

 

「はぁ、お前も自分の身の振り方を考えておけよ。姫柊雪菜がこの島に来た以上、連中は何かしらの形でお前に接触してくるはずだからな」

「了解……ったく、あのババァどもは本当に俺に対する嫌がらせ行為は、あの変態蛇野郎と同じだな」

 

「ふふふっ、確かにな。お前に対する執着はどちらも似たようなものだからな」

「はぁ、めんどくせぇ〜サボりてぇ〜」

 

零樹も元は古城同様に人間であったが、吸血鬼の中では比較的平和を望んでいる方だが、妙な所でお節介な所もあるため首を突っ込み兼ねないことを予感する。

 

「きちんと授業を受けろ。保護者である私に余計な迷惑ごとを持って来させるな」

「へ〜い」

 

そう言って、先に食べ終わった那月は学園へと向かい、洗い物を済ませた零樹は古城と一緒に通学する為、暫くしてから家を出るのであった。






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