ストライク・ザ・ブレイヴ   作:黒丸助

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夏音さんの口調が難しい………




episode 04

古城たちと別れた零樹は近くのペットショップにて用事を済ませると、路地裏に入ると足下に転移魔法陣を展開し、“ある場所”の近くへ転移する。

 

その場所とは、彩海学園の裏手にある丘の上。緑の木々に覆われた小さな公園の奥にある廃墟となった灰色の教会こそ零樹の目的地なのである。

中へ入った零樹はカバンから先程ペットショップにて購入した猫缶、キャットフードを取り出し声を大にして、呼びかける。

 

「おーいオマエら〜飯持って来てやったぞー」

「「「「ニ゛ャ————ッ!!」」」」

 

すると何処からともなく、まだ幼い小さな子猫が十数匹が一斉に零樹目掛けて飛びかかってきた。しかも、彼の足下に置いてある猫缶などの餌を見向きもせずに。その結果、零樹は数秒と待たずに頭、肩、腰……などと言った身体中が猫まみれとなり、身動きが取れなくなる。

 

「はぁ……お前ら何で餌より俺に飛びかかるんだよ」

「みんな、零樹さんがとっても大好きだからでした」

 

零樹が猫たちの対応に困っていると、後方から聞き覚えのある柔らかな声が聴こえてきた。零樹が振り返ると、そこには彩海学園中等部の制服の着ている彼女がいた。銀色の髪が風で靡かせ、いつもと変わらない那月とは違う暖かみを感じさせる笑みを浮かべながら、零樹のそばへと歩み寄る。

 

「こんな死んだ目した奴によく懐くな、コイツらも」

「零樹さんがとっても優しい人だと皆んながわかっているからでした」

 

彼女の名前は叶瀬夏音。この廃墟と化した教会で、多くの子猫たちの面倒を零樹とともに見ている。

 

「そうか?」

「はい。零樹さんは何も言わず、この子達のお世話を手伝ってくれていますでした」

 

優しいと言われて心底不思議そうにする零樹にクスクスと柔和な笑みで微笑みつつも、彼の隣に腰を下ろす。

 

「とりあえず、コイツらの貰い手は早く見つけてやらないとな」

「はい、この子達にも早く新しい家族を見つけてあげたいですから」

 

「ホント、夏音は将来いいシスターになれるな」

 

そして、

近くにいる子猫の頭を撫でた後、餌を与えながら夏音の優しさ大袈裟かもしれないが、感心すると彼女は頬を赤く染めつつ改めて零樹に深々と頭を下げる。

 

「ありがとうございました、零樹さん」

「………………礼を言うのは俺の方だけどな」

 

子猫たちに餌を与え終えた後、夏音と僅かばかりの談笑を交えて零樹は帰るのであった。

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 

 

 

日が沈み、星々の輝きが僅かに見える空の下。

零樹は隣にいるフリル付きの傘をクルクルと回す那月と共に、夜の街を歩いていた。何故、2人が揃って歩いているのには理由がある。

まず、数分前の零樹は家で新聞を読んでいると、那月が教師として街へ見回りに行く際に、

『お前が1人で寛いているのを思う腹が立つ。来い』

と言う理不尽な理由で無理矢理同行させられることとなったのだ。

そして、見回りをしていると夜遊びをする生徒、カップルで出歩く生徒がどんどん見つかり、那月によって説教されている。深夜に相手が教師とは言え、完全に見た目が中学生くらいの幼女に説教される者達の心中は如何にと下らないこと考えていると眼前に日傘の先端が迫ってきたので慌てて避ける。

 

「おいこら教師!いくら死んだ目とは言え、日傘で突き刺そうとするのはヤメんしゃい」

「黙れ!お前が余計な事を考えているのが悪いのだ!それに、この程度では攻撃なぞで傷つくほどヤワな存在ではないだろ」

 

フン!と顔を背け、ドスドスと歩いていく那月を零樹はそういう仕草が子供っぽい所は昔と変わっていないなと懐かしげに思いながら後を追う。

やがて2人は暫く歩いていると、ゲーセンのクレーンゲームの所に見たことあるパーカーの少年とギターケースを背負っている少女を見つけてしまう。

この後ろ姿は古城と雪菜しか一致する人物はいないため本人たちであることを零樹は理解する。そして、隣を見てみると那月も分かったのか、ニヤリと面白そうに見ている。その顔は完全に意地の悪い魔女である。実際に本当に意地の悪い魔女ではあるのだが。

 

「おい、そこの二人。彩海学園の生徒だな。こんな時間まで何をしている?」

 

那月の言葉により、二人は硬直した。

そんな古城たちを面白そうに見る那月と呆れ半分、怒り半分の零樹。

 

「そこの男。どっかで見たことあるような後ろ姿だが、フードを脱いでこっちを向いてもらおうか」

 

二人とっては公開処刑に等しい事態に黙っている。ガラスケース越しに冷や汗をかく古城と目が合うが、零樹はハイライトのない瞳で中指を立てる。これにより古城は背筋が凍る様な寒気を感じる。

 

「どうしたんだ?意地でも振り向かないというのなら、私にも考えがあるぞ。ふっ、ヤレ零樹」

「メンドクサイなぁ〜♪」

 

口では嫌々言いながらも利き腕である右腕を嬉しそうにブンブンと振りながら、2人へ近づいていくと、

 

「「(ウキウキしていらっしゃる!?)」」

 

ズン、と鈍い震動が人工島全体を揺るがす。その後、一瞬遅れて爆発音が続く。

 

「なんだ!?」

「この感じは……魔力!?」

 

那月と零樹が爆発現場から強烈な魔力の波動を感じ取ったことで、そちらに気を引きつけられた時、

 

「姫柊、走れ!」

「え、あ……はい!」

 

古城と雪菜が常人とは比べ物にならない速さで走っていく。

 

「あ、待て、おまえら!逃げるなぁ!!」

「角に小指ぶつけて死ね!古城!!」

「ふざけんなぁぁ!!」

 

那月の制止の声を無視して爆発音は今も尚、響いている現場に走り去っていく。

 

「厄介な事になってるな。那月、悪いけど俺は先に現場に行くぞ」

「分かった。気を付けろよ!」

 

那月の許可をもらうと、零樹は懐から市販の物より厚めなスマートフォンを取り出し、特殊なコマンド打ち込むと、

 

BUILD(ビルド) CHANGE(チェンジ)

 

なんとスマートフォンがバイクへ変形した。

 

 

「いや〜我ながら、こんな物を作れる自分の才能が怖いなぁ〜」

「さっさと行けぇ!!」

 

割と非常事態にも関わらず、零樹は那月にシバキ倒されてからスマートフォン型バイク『マシンビルダー』に乗って現場に急行するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、

爆発音が響く倉庫街に雪菜は走っていた。

ナニカと戦闘する眷獣である巨大な漆黒の妖鳥の姿が彼女の目の前に浮かび上がる。そして、それを操っているであろう長身の吸血鬼がビルの屋上で操っているのを発見した。

 

「あれは……っ!?」

 

闇を切り裂いて、伸びた閃光に気付いた雪菜は困惑の声を出す。

雪菜の目には、虹のような色に輝く、半透明の巨大な腕が鳥の翼を根元からひきちぎる光景が入る。驚愕によって硬直する雪菜を置いて、実体を保てなくなった鳥の魔力の塊を虹色の腕はさらに攻撃する。

 

「魔力を……喰ってる!?」

 

鳥の魔力を喰らったことで虹色の腕は、その輝きを増していく異様な光景に雪菜は戦慄するしかなかった。倒した眷獣の魔力を喰らうという特異なチカラ———雪菜が知る限り、そんな眷獣は聞いたことがない。そして、その宿主を見てさらに驚愕を露わにする。その虹色の腕の形をした眷獣の宿主は、雪菜よりも小柄な少女。素肌にケープコートを纏った藍色の髪の娘である。

 

「吸血鬼……じゃない!? そんな……どうして、人工生命体(ホムンクルス)が眷獣を!?」

 

呆然と立ち尽くす雪菜の背後で、ドッ、と重いなにかが投げ落ちる音がする。

驚いて後ろを見るとそこには、重傷を負って倒れた長身の吸血鬼の姿だった。肩口から深々と切り裂かれ、吸血鬼でなければ即死のような傷を負っている。しかし、いくら吸血鬼であれも重症な状態であることには変わらない。

 

「ふむ。目撃者ですか。想定外でしたね」

 

聞こえた男の低い声に、雪菜がハッと顔を上げる。するそこには、身長百九十センチを超える巨躯の男がいた。男の右手に掲げた半月斧(バルディッシュ)の刃と、装甲強化服の上にまとった法衣が、鮮血で紅く濡れていることから長身の吸血鬼の男性を襲った犯人であると断定する。

 

「戦闘をやめてください」

 

雪菜が、法衣の男を睨んで警告する。

そんな雪菜の警告に対して男は、そんな彼女を蔑むように眺めつつ、

 

「若いですね。この国の攻魔師ですか……見たところ魔族の仲間ではないようですが」

 

値踏みするような表情で淡々と言う。

目の前にいる男の身体から滲み出る殺意を雪菜は感じ、重心を低くし雪霞狼を構える。

 

「行動不能の魔族に対する虐殺行為は、攻魔特別措置法違反です」

「魔族におもねる背教者たちが定めた法に、この私が従う道理があるとでも?」

 

問答無用とでも言いたげに男は巨大な斧を振り上げる。

 

「くっ、雪霞狼!!」

 

構えていた槍を払いながら雪菜は疾走り、負傷し倒れ伏している吸血鬼めがけて振り下ろされる戦斧をギリギリ受け止める。

 

「ほう……!」

 

戦斧を弾き飛ばされた男は、巨体からは想像できない敏捷さで後方に飛び退き、雪菜に向き直る。

 

「なんと、その槍、七式突撃降魔械槍(シュネーヴァルツァー)ですか!? "神格振動波駆動術式"を刻印した獅子王機関の秘密兵器!よもやこのような場で目にする機会があろうとは!」

 

雪菜の持つ雪霞狼の正体を見抜いた男は口元に歓喜の笑みを浮かべ、眼帯のような片眼鏡が紅く発光を繰り返す。

 

「いいでしょう、獅子王機関の剣巫ならば相手にとって不足なし。娘よ、ロタリンギア殲教師、ルードルフ・オイスタッハが手合わせを願います。この魔族の命、見事救ってみなさい!」

「ロタリンギアの殲教師!? なぜ西欧教会の祓魔師が、吸血鬼狩りを!?」

 

「我に答える義務なし!」

 

男の巨体が、大地を蹴り猛然と加速し、振り下ろされる戦斧が雪菜を襲う。それを完全に見切って紙一重ですり抜ける。そして反撃として、旋回した雪菜の槍が、オイスタッハの右腕へと伸びる。

しかし、回避不可能と悟っていたオイスタッハは慌てることなく鎧で覆われた左腕で受け止めてみせる。

これにより、魔力を帯びた武器と鎧の激突によって青白い閃光が撒き散らされる。

 

「ぬううん!」

 

数瞬の衝突によって左腕の装甲が砕け散り、その隙に雪菜が距離を稼ぐ。

 

「我が聖別装甲の防護結界を一撃で打ち破りますか!さすがは"七式突撃降魔械槍(シュネーヴァルツァー)"、実に興味深い術式です。素晴らしい!」

 

破壊されたことで肌が剥き出しとなっている左腕でを眺めながら、オイスタッハが満足そうに舌なめずりをする。彼はここで倒さなければならない、と剣巫としての直感が雪菜に告げる。

 

「獅子の神子たる高神の剣巫が願い奉る。破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威を持ちて我に悪神百鬼を討たせ給え!!」

 

「む……これは……」

 

雪菜の体内に練り上げられる呪力を、七式突撃降魔械槍(シュネーヴァルツァー)で増幅する。直後、雪菜はオイスタッハに猛然と攻撃を仕掛ける。

 

「ぬお……!」

 

閃光のように放たれた剣巫の槍を、殲教師の戦斧が受け止める。だが、増幅された槍の威力に数メートル近く後退する。凄まじい過負荷によってオイスタッハの各部の関節が火花を散らす中でも、雪菜の攻撃は終わらない。至近距離からの嵐のような連撃にオイスタッハは防戦一方となる。

 

単純な速さだけでなく人間である雪菜は、霊視によって一瞬先の未来を視ることで、誰よりも早く動くことができる。

 

「ふむ、なんというパワー……それにこの速度!これが獅子王機関の剣巫ですか!」

 

雪霞狼の攻撃を受け止めきれずに、半月斧がひび割れ、音を立てて砕け散る。

その瞬間、雪菜は人間であるオイスタッハに攻撃を加えることを迷いを見せ、連撃を躊躇する。その決定的な雪菜の隙を冷徹なオイスタッハは見逃さない。

 

「いいでしょう、獅子王機関の秘呪、確かに見せてもらいました。やりなさい、アスタルテ!」

 

強化鎧の筋力を全開にし、オイスタッハは全力で背後へと跳躍する。すると、入れ代わるように雪菜の前に飛び出してきたのは、ケープコートを羽織った藍色の髪の少女———アスタルテだ。

 

命令受託(アクセプト)執行せよ(エクスキュート)、"薔薇の指先(ロドダクテュロス)"」

 

アスタルテのコートを突き破って現れたのは、虹色の輝きを発する巨大な腕。それは先ほどと同じ虹色の輝きを放ちながら雪菜へ襲いかかる。だが、雪菜は雪霞狼でこれを迎撃する。

 

「ぐっ!」

「ああ……っ!」

 

かろうじて未来視によって先読みをした雪菜が激突に勝利する。"薔薇の指先(ロドダクテュロス)"と呼ばれる巨大な腕の形をした眷獣を、銀の槍が引き裂く。その結果、眷獣のダメージを受けたアスタルテが弱々しく苦悶に息を吐く。

 

「あああああああああ———っ!」

 

アスタルテの絶叫と同時に背中を引き裂くもう一本の腕が現れる。

眷獣が二体というわけではなく、本来左右一対で一体の眷獣である。しかし、新たに現れた腕は、独立した別の生き物のように頭上に襲う。

 

「しまっ!?」

 

雪霞狼の穂先は、眷獣の右腕に突き刺さったままであるため、もし一瞬でも雪菜が力を抜けば、手負いの右腕に雪菜は潰される。そして、この状況では雪菜は、左腕の強撃から逃れることは不可能。

 

迫りくる死を雪菜は覚悟する。

 

ただ最後に一瞬だけ、見知った少年の姿が雪菜の脳裏によぎる。

ほんの数日出会ったばかりの気怠そうな顔をした少年の面影が。

自分が死ねば、きっと彼は悲しむだろう。

だから死にたくない、と雪菜は思ってしまった。

 

そう思った自分自身に雪菜はひどく驚き、

 

そして、

 

「姫柊ィーーーーーーー!」

 

思いがけないほど、

近い距離からその少年の声が耳に入ってくる。

 

少年—————第四真祖、暁古城の声が。






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