ストライク・ザ・ブレイヴ   作:黒丸助

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前回では分かり難かったかも知れませんが、今の零樹の性格は電王に登場するジークと同じ筋金入りのオレ様王子にしてKY。加えて、零樹の外見はテイルズオブゼスティリアのカムイを元ネタにしています。検索した後に姿を想像して読めば更に楽しくなる筈です。


episode 09

side:古城

 

「降臨、満を持して……」

 

ありのままの事実を話す。オイスタッハのオッさんを止めるために眷獣を解き放った零樹は、突然自分の眷獣と融合した。するとだ…………なんかキャラが違いすぎる別人が出てきてしまった。俺は………どうすればいいんだろう。

 

「久方ぶりの融合は中々心躍るものであるなぁ…」

「いや、誰だよ!!お前、キャラが違いすぎんだろ!?」

「あのぉ夜叉神先輩……です…よね?」

 

水色の髪をした零樹?。メンドクサイから水零樹がこんな状況にもかかわらず、自分の細剣(レイピア)を悠々と眺めていたため思わず突っ込んでしまった俺は間違いではない………筈。

 

「当然だ。眷獣の力の真価を発揮するには、この姿になる必要があったのだ。どうだ、美しいだろう」

「……………やりなさい、アスタルテ」

「……命令受諾(アクセプト)執行せよ(エクスキュート)、"薔薇の指先(ロドダクテュロス)"」

 

ってぇぇぇ突っ込んでる間に固まってたオッさん達が攻撃を再開してきた!!

 

「逃げろ!水色の零樹!!」

「逃げる?馬鹿なことを言うな、古城(クソ虫)よ。この私を倒そうなど片腹痛いわ!!」

 

なんで露骨に俺を罵る理由がわからなかったが、頭上から迫って来ていた虹色に輝く右腕をノーモーションで細い刀身を持つ細剣(レイピア)で止めてみせた。止められた攻撃にオイスタッハのオッさんは驚きを露わにしていたが、そんなことなどお構いなしと言わんばかりに、足下から大量の水を出した。

 

水神の霊槍(アクア・スライハル)!!」

 

すると、さっきまで滑らか水が激流へと変わるだけでなく、巨大な槍状へと変化し、アスタルテの眷獣をいとも簡単に押し返した。

 

 

side:out

 

 

零樹が操る激流によってアスタルテは眷獣諸共壁際まで押し返されてしまう。加えて、例え水とは言え、凄まじい激流による衝撃によっては眷獣の中いるアスタルテはダメージを負う。そして、自分の変身によって未だに固まっている2人に零樹は怒号を飛ばす。

 

「貴様達はいつまで惚けている気か。自らの筋を通すと称したのは貴様達だ。ならば、己が役目を果たせ!」

「お、おう!行くぞ、姫柊!」

「はい!行きましょう、先輩!」

 

零樹の言葉によって自分のやるべきことを再確認した古城と雪菜はそれぞれ走り出す。

 

「獅子の神子(みこ)たる高神(たかがみ)剣巫(けんなぎ)が願い奉る」

 

敵を討ち倒す剣士であるかのように、または己が信仰する神に祈る巫女のように銀色の槍と共に、雪菜は優雅に、そして美しく舞う。

 

「破魔の曙光(しょこう)雪霞(せっか)の神狼、鋼の神威(しんい)をもちて、我に悪神百鬼を討たせ給え!」

 

閃光のようにかける雪菜は粛々とした祝詞を口にすると、携える槍が輝き始める。

 

「ぬ、いかん!」

 

雪菜の狙いに気付いたオイスタッハは、無防備な雪菜目掛けて戦斧を投げようとするが、古城の放った雷球が襲いかかって来たことで一瞬動きが停止する。そのできた隙を雪菜は見逃さず、零樹が相対している虹色の眷獣へと駆け出し続ける。アスタルテが宿す虹色の眷獣と雪菜が持つ雪霞狼に刻印しているのは同じ神格震動波駆動術式だが、巨大な眷獣の全身を覆うアスタルテが『面』とするのなら、切っ先の一点に集約している雪菜の槍は正に『点』である。そのため、この二つの力がぶつかり合えば、軍配が上がるのがどちらであるのかは最早明白。そのことに気づいたオイスタッハは雪菜を止めようとしたのだが、それは古城によって阻止された。しかし、圧倒的な質量を持つアスタルテの動きを停止させなければ、雪菜も軍配も危うくなるのも事実である。

 

「さて、動きを止めるとするか…………」

 

雪菜がアスタルテの眷獣へ、銀の槍を突き立てるためのお膳立てをするべく零樹は、先程産み出した激流の水を虹色の眷獣の身体を覆い隠す。本来なら、瞬く間に魔力によって生成された零樹の水はアスタルテの眷獣の能力によって、喰われるのだが、アスタルテ自身が消耗していることもあって吸収するスピードが遅れていた。

そして、零樹は仕上げと言わんばかりに指揮棒のように自らの眷獣である蒼き細剣(レイピア)を振るう。すると、先程までただの水が、一瞬にして氷と化し、虹色の眷獣を巨大な氷の巨像へと変えた。

 

「最期を華やからに飾るがいい、獅子の神子(みこ)よ!」

「はい!雪霞狼!!」

 

銀の槍によって貫かれた虹色の眷獣は、この世界に顕現するための魔力を無力化され、消滅した。これにより、意識を失った藍色の長い髪の少女————アスタルテは虚空から落ちてきたのだが、真下にいる零樹が優しく受け止める。

 

「アスタルテ……ッ!」

 

アスタルテが零樹と雪菜によって破れた事により、オイスタッハは動揺してしまった。

その一瞬の隙を突いて、

 

「終わりだ、オッサン!」

 

古城の雷撃を纏った拳を受けて、オイスタッハは数メートル先まで吹き飛ばされた後、要石たる“聖人の右腕”へと手を伸ばすのだが、ついに力尽き、意識を失うのであった。彼の双眸からは、宿願を果たせなかった悔しさの涙が流れるのであった。

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

まるで先ほどまでの戦いがなかったかのように、古城達のいるキーストーンゲート最下層には、恐ろしいくらいの静寂が訪れていた。

ゲート最下層は零樹のおかげで無事であり、戦闘が終わったのと同時に壁に展開していた氷を解除した。因みに、既に零樹は変身を解いているため、いつもの死んだ目になっている。

一旦アスタルテを床に寝かせ、気を失っているオイスタッハの腕に自前の手錠をかけていると、雪菜と古城が先程の零樹のキャラの変容ぷりに物申したい様子である。

 

「「……………………」」

「おい、言っておくけど、あの姿はアクア・エリシオンの際で性格に変容があったからだぞ!!断じて、俺が厨二病化したとかじゃないからな!!」

 

「と言われましても………」

「あんなナルシスト感満載のお前見せられてもなぁ……」

「とにかく、アレは眷獣と融合した影響で性格が変わるんだよ!!」

 

中々信じ難い光景でもあり、キャラの壊れっぷりでもあったため古城と雪菜は互いに見合わせながら、言葉を濁す。このままでは不味いと思った零樹は、一旦2人から逃げるように、自分の上着を布団のようにかけて寝かせたアスタルテを見る。彼女は吸血鬼ではなく、自らの寿命を削り、眷獣を使役していた。このままだと彼女は数日と保たない。

 

「……ここで見捨てるのも後味が悪いな」

 

零樹は眠っているアスタルテを抱き起こし、吸血衝動を起こす。零樹は、元は古城と同様に人間であったが、それなりの年月を過ごして来た吸血鬼である。そのため別に性的興奮でなくとも自分の意思で出来るようになる。とある"旧き世代"は変態かつ変態であり変態の戦闘狂でもあるため、戦闘になると血が高ぶると衝動を起こす。

そして、アスタルテの剥き出しの首筋に牙を突き立てた。零樹は彼女の体液を一定量吸い上げ、唇を離した。

 

「や、夜叉神先輩……いったい、なにをやっているんですか?」

 

一通り見ていた雪菜が冷たい口調で零樹に聞く。一際低い声色に疑問を持ったが、取り敢えず教える事にする。

 

「あー簡単に言えば、この子の眷獣をオレの支配下に置いて、眷獣が俺の生命力を喰えば、この子の寿命も延びるだろうと思ってな。初めてやったが、上手くいったようだ」

「つまり、彼女を救うために血を吸った、ということですか」

 

雪菜の言葉には冷たい軽蔑と失望がこもっている。なぜ、雪菜がそのようになっているのか判らずにいる零樹は古城を見るが、古城は零樹を哀れむように見ている。

 

「そうですか、そうですか。気絶している年下の少女に興奮したというわけですね。そうですか……先輩はやっぱりロリコンなんですね」

 

「はっ?いやいやいや、待て待て待て!それは違うぞ!?俺は自由に吸血衝動になることが可能だから別に興奮なんてしてない!変態の古城と違って、俺は吸血鬼の力をコントロールしてるんだからな!だから、この子には、そう言った邪な感情なんて抱いていないんだ!!」

 

その後、約一時間で何とか誤解を解き、雪菜の説得を成功させることが出来た。

また、雪菜に冷淡な視線を受けた零樹は家に帰った後、小1時間は部屋から出て来なかった上に、眷獣を解き放っただけでなく眷獣融合(ブレイヴ)まで使ったことを察知した那月に説教されて、また小1時間は部屋に引き篭もったのは余談である。

 

 

 

 

 

**************

 

 

「熱い……焼ける。焦げる。灰になる……つか、追々試ってなんだ。あのチビッ子担任、絶対俺のことを痛ぶって遊んでやがるだろ」

「まぁ確かに遊んでいるのも入っていると思うが、俺からすれば、お前と姫柊にもう事件には関わるなと言ったのにそれを無視して行動したからじゃないか?」

 

実際、零樹に古城たちを監視するように命令をしたのは那月だ。また、零樹の忠告を受けても、古城が勝手に行動するのは判っていたため、恐らくは腹いせなんだろう、と零樹は予測する。

そして、現在、零樹と古城は学生食堂の少々陽当たりがいいテラス席に座っている。古城は日差しと課題の多さによって机に突っ伏し、零樹は席に座って再三那月の言われた通り古城が、しっかり課題をやっているか監視している。

古城は零樹の正論にうっ、と呻き声を出しながら、机に置かれている問題集を見た。

 

「それに浅葱が教えてくれるんだから今のうちにしっかりやれ。あいつは成績は優秀なんだから」

「浅葱は成績はいいが天才肌なのかどうか知らないが、教え方がな……。つーか姫柊の方が教え方は上手かったな」

 

「はぁ、お前中等部の女子の教わるとか……高等部の威厳をどうした」

 

零樹は古城の情けない言動を聴いて、冷ややかな視線を送る。

 

「ならお前が教えてくれよ」

「那月ちゃんに釘刺されているから、NO」

 

助けを求める古城に言われるが、事前に那月に教えるなと釘を刺されているため教える事は出来ない。と言うか、言われなくても人の忠告を無視した古城に、教える気は0である。

少々機嫌が悪い零樹は那月と同じような仕草で優雅に紅茶を飲む。そもそも零樹に紅茶の飲み方を教えたのは他でもない那月であるため仕草が成るのは当然である。また、零樹はストレートを、那月はブランデーを入れるというそれぞれの違いも存在する。

 

「試験勉強ですか、暁先輩……?そこの公式間違っていますよ」

 

古城がその声に反応して顔を上げると、そこには雪菜が中等部の制服を着て立っていた。ついでにギターケースを背負っていた。どうやら、先日の戦闘で折れ欠けていた雪霞狼(せっかろう)が帰ってきたのだろう。

 

「姫柊、ギターケースを背負っているということは雪霞狼が修理されたのか?」

「はい。昨日、戻ってきました。てっきり、暁先輩の監視役から外れると思っていたのですけど……」

 

雪菜の言葉を聞いて、内心にある苛立ちを隠しつつ自分の想像が間違っていなかったことを理解する。

 

「……クソったれが」

 

やはり、古城の監視役に剣巫(けんなぎ)として、未熟な雪菜が選ばれた理由が、古城の監視だけではなかった。獅子王機関にとって、最も重要なのが雪菜を古城の側に置き、第四真祖を制御することだ。これにより、雪菜は古城の伴侶か贄となる為に送られた可能性が大いに浮上する。その事実に零樹は、果てしない怒りを感じつつも、2人にそんな自分を見せないようにするべく、もう一度紅茶を飲む。

そして、古城の真の監視役は別にいる。それが誰なのか分からないが、案外近くに居ることも理解する。

 

「どうしたんですか、夜叉神先輩?」

「ん?いや、気にするな。考え事だ」

 

そう言ってこっちを見てくる雪菜に返した。少々気持ちが落ち着き始めていた零樹は偶然、植え込みの方に目を向けると、そこにいる面白い人物を見つける。

 

そして、明らかに悪そうな笑みを浮かべ始めた零樹は、この場を混沌(カオス)または修羅場にするべく、若干引き気味の雪菜にあることを訊く。

 

「そういえば姫柊。検査キットを使って体の方の異常はどうだった?」

「はい、検査キットで調べましたけど、陰性でした。月齢を計算して、比較的安全な日だって分かっていましたし」

 

零樹の問いに少々恥かしそうに雪菜は律儀に応える。そんな雪菜を見て、古城は安堵の息を吐く。

 

「そうか……悪いな。姫柊にも痛い思いをさせて」

「だ、大丈夫です。あの時は、私の方からしてほしいと誘ったわけですし……少し血が出ただけで、先輩に吸われた痕も、もう消えかけているし」

 

古城と姫柊が会話しているとき、零樹は嗤っている。

その表情は、あくどい顔であり、なにか企んでいる表情であり、大量の課題を渡す時の那月にそっくりなほどに。

 

「………なぁ零樹、お前のその顔を見てしまった俺は不安と恐怖しか、感じないんだが」

「……すいません、夜叉神先輩。私も先輩と同意見です」

 

そんな2人の言葉など無視して、唐突に嗤っている零樹は声を上げる。

 

「よぉ、久しぶりだな。凪沙?」

「え……」

 

零樹が挨拶したところからゾンビのように立ち上がり、こっちにユラユラと歩いてくるのは、雪菜と同じ中等部の制服に長い黒髪を結い上げた、活発そうな雰囲気の少女———暁 凪沙であった。

古城とは似ても似つかない妹の彼女がそこにはいた。

 

「久しぶりだね、零樹くん。また、お料理とかで、色々話したいけど……その前に————」

 

そう言って、ハイライトのない瞳で古城の方を見る。

 

「……古城くんが、雪菜ちゃんのナニを吸ったって?」

 

低く怒りを圧し殺したような声で、凪沙がたずねる。

 

「さっき購買部で浅葱ちゃんに会って、古城君が試験勉強して、その付き添いに零樹くんがいるっていうから、励ましてあげようと思ってきたんだけど。そしたら二人が、聞き捨てならない話をしてるみたいだったし。その話、もう少し詳しく聞かせて欲しいなぁ〜なんてぇ!!」

 

暁凪沙が、攻撃的かつ危険な笑顔を兄である古城に向けている上に、彼女の唇の端が痙攣している。完全に、誤解している凪沙は怒りが頂点に達している。

 

「ま、待て、凪沙。おまえは多分なにか誤解をしていると思う。なあ、姫柊」

 

古城が必死に妹を制止しようと試み、助け舟として、その隣にいる雪菜も首を縦に振る。

 

「ふーん、誤解? どこが誤解なのかな? 古城君が雪菜ちゃんの初めてを奪って痛い思いをさせておまけに体調を気遣っちゃったりしてるはなしのどこにどう誤解する要因が……?」

「だから、そのおまえの想像がもうなにもかも全部誤解なんだが……」

 

古城が真実を話せないため途方に暮れたような表情をしていたのだが、あくどい笑みをしている零樹が核弾頭を投下する。

 

「事実だろ。古城は姫柊の初めて(の吸血行動)を後先考えないで、痛い思いをさせてまで奪ったんだろ?それで、体調を気遣って安全かどうか調べたんだからな」

「ちょ、テメェ!?」

「夜叉神先輩!?」

 

「……そう、やっぱり!」

 

零樹の言っている事は真実だが一部だけ抜けていて、誤解を招く羽目になっている。そんな零樹を二人は睨むが、他人の不幸は蜜の味と言わんばかりの笑みを浮かべている。それは、もう真っ黒なまでに輝いていた。

 

「そ、それよりも、浅葱に会ったんだろ。あいつは、どこに行ったんだ?」

 

古城は慌てて話題を変えるが、それはこの場に置いて更なる修羅場への狼煙となる。

 

「浅葱ちゃんなら、さっきからずっとあたしと一緒に古城くんの話を聞いていたけど?」

「え?」

「さっき……から…?」

 

凪沙が先程まで居た植え込みから、ゆらりとゾンビのように浅葱が出てきた。そして、彼女の雰囲はまさしく復讐の女神を思わせるような冷たい怒りの炎が灯っていた。そんな浅葱を見届けた零樹は、その場からそそくさと気配を消しつて離れていく。その結果、古城を中心としたその場所は、零樹の読み通り修羅場と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………雪菜に手を出したんだ。それぐらいの報復は、俺から受けても文句は無しだぞ。古城(クソダチ)

 

誰にも聞こえない声量で呟くように、零樹は後ろから聴こえる言い合いを心地よく聴きつつも、何故か寂しげな表情をしていた。

 




これにて右腕編は終了です。しかし、次回は番外編をやりつつ眷獣紹介を行いますので。
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