個性『レユニオン』な転生少女 作:なめろう
昼下がりは昼食を求めて歩き回るOLやサラリーマンでごった返す都内の某繁華街。
賑やかでない日が見当たらないその通りは今、普段以上の喧騒に包まれていた。
「――テメェコラ仮面野郎共、待ちやがれボケがァ!」
「こちらシンリンカムイ、暴走車両を発見! 現在追跡中! 市民の皆様方はどうか退避を!!」
『状況を報告せよ』
「こちら行動隊、東公園前を北に走行中――敵はヤクザの車が2台、ヒーローも追走中。どうぞ」
レユニオンらが乗る大型の黒いバンを先頭に、後続にヤクザの乗るセダンが追随。更に繁華街の屋根越しに追跡するヒーローがそれを追いかけるというカオス状態。
民衆の戸惑いもあわせれば、今や繁華街は大混乱状態に陥っていた。
「兄貴、やっぱりヒーローに見つかっちまってますよぉ!」
「うるせえ慌てんなカズゥ! ヒーローがなんだ、組の面子を守るためにあいつらを沈めてやらなきゃ漢じゃねえってんだ! マサ!」
「うぃっす兄貴、やっちまいますわ!」
ヤクザの車の一台から一人の男が窓から乗りだしたと思えば、その片腕が個性によって砲台へと変わる。そして腕の砲台に鉄球のような物を詰めたと思えば――それが勢いよく黒のバンに発射された!
「……! 敵の攻撃あり。繰り返す敵の攻撃あり。後部トランク部分損傷。人員と物資にダメージなし」
『規定ポイントCまで移動しろ。それまでの交戦は許可出来ない』
「了解」
ヤクザの攻撃でバンの後部ドアが一部破損するも、レユニオンらに動揺はない。
あくまで淡々と指示に従う姿は軍人そのものの様であった。
「組同士の抗争か……!? 雄英襲撃やらヒーロー殺しやらでピリピリしてるこの時期に、なんてはた迷惑な……! ええい、止まれ! これ以上暴走を繰り返すなら実力行使も辞さないぞ!」
「やっかましいわ! クソヒーローが! こちとら面子がかかっとんじゃい面子が!」
「悪党め、何がメンツだ! これ以上市民の皆様の平和を乱す行為は――
樹木を生成する反動で従来以上のスピードで駆け抜けていたシンリンカムイ、彼らはバンへの攻撃を繰り返すヤクザに対してとうとう個性を行使! スピードを乗せて一気に両腕の樹木を伸ばすと――!
「ど、あ、あぁぁああーっ!?」
「おいカズ、こりゃどないなっとんのじゃ!?」
「あぁ、兄貴ィーーっ!?」
瞬く間にヤクザの車二台が急速成長した樹木に巻き付かれて空中に巻き上げられ、行動不能に陥る! またそれだけでなく、伸びた樹木はレユニオンらの大型バンの後部に絡みついて強制的に車を停止させたではないか!
一挙に3台の車を同時に鎮圧出来る能力は流石は実力派ヒーローといった所だろうか。
「おぉぉー!」「さ、流石シンリンカムイ!」
「素敵よーっ!」
「ありがとう皆さん、ありがとう! でもまだ下がっていてください! 今は動けなくしただけですので!」
黒いバンを運転する兵士は執拗にアクセルを吹かして何とか脱出しようとするが、頑丈に絡め取られた樹木を引きちぎるには至らない。埒があかないと判断したか兵士は本部に判断を尋ねだす。
「規定ポイントまで後500mの所で車が強制停止した! 敵の樹木を操る個性のせいだ、このままだとヒーローに捕まるぞ!」
『――本部了解、交戦を許可する。ただし可能な限り死傷者を出さぬよう努めろ。こちらからは応援を寄越す』
「了解。"ブッチャー"出番だ、タイミングを合わせて扉と木を吹き飛ばせ。3、2、1ッ!」
まさしくシンリンカムイが動けなくした車に近寄り、内部の人員を無力化する寸前、不測の事態を想定して車内にあらかじめ待機していた兵士が、後部扉ごと樹木を吹き飛ばした!
「キャァッ!」
「うわっ、なんだなんだ……!?」
「なっ――!?」
シンリンカムイと住民らは見た。
開け放たれた後部席から覗く、一般人から逸脱した体格で筋骨隆々の巨漢を。
黒く無機質な仮面をつけたはちきれんばかりの筋肉の持ち主は、抱えていた巨大斧も相まってまるで処刑人のようなイメージを周りに植え付けた。
ブッチャーと呼ばれた男は観衆らの驚きを尻目に未だ車をその場に縫いつけ続ける樹木に対して、巨大斧を掲げると――一撃で巨木を断ち切った!
「拘束を外した」
「よし、発進するぞ、捕まれ!」
「――しまっ、待て!」
再度タイヤが悲鳴をあげ、拘束から逃れたバンが急速に飛び出そうとする!
勿論それを阻止しようとしたシンリンカムイであったが、処刑人の左右から顔を覗かせた別の兵士が持つ武器を見て即座に自身の前に硬質な樹木の盾を展開!
直後、連続した火薬の音と共に複数の鉛玉がその盾に炸裂し、バンは防戦一方のシンリンカムイを置いて離れていった!
「こんな街中で発砲なんて正気か!? 皆さんお怪我はないですか!?」
「応援に来たぞ、大丈夫か!?」
「応援助かります! 相手は銃を装備しています。あなた達にはこのヤクザの確保と警察への連絡をお願いします!」
シンリンカムイの中では既に黒いバンの集団の危険性は最大レベルまで上がっていた。
あの異様な巨漢といい、銃器といい、その連携といい、放置することなど到底できない。
もはや一刻も早く捕まえなければどんな被害をもたらすか分かったものではない!
逃走を続ける車は交差点をほぼ直角にカーブし、郊外の方へ進んでいく。
彼らの進路を辿るに、どうやら港の方へと移動しているように思えた。
これはおそらく高跳びの前触れ! そう狙いを読んだシンリンカムイは依然として追跡をする!
そして応援に来た近隣ヒーローもまた彼に続き、更に通報を受けて合流してきた警察達もその後を追う形となれば、街を揺るがす大チェイスへと発展してしまうのだった!
「警察の皆さんお願いします! 港への道を封鎖してください! あいつらを追い込みます!」
『了解だ、北方面の道は全て塞ぐ』
「! 進路を左に取った……川べりも注意してください!」
「任せろ、川付近にヒーローを待機させておく!」
警察と他ヒーローらの連携により逃げ道が封じられていくレユニオンの車。
とうとう彼らは港方面を諦めたのか、車とヒーローを引き連れながら300m程のトンネルに突入! 既に捕縛まで秒読みとなった今、彼らはトンネルを抜けた所で暴走車の確保を進めようとしたのだが――、
「「「!?」」」
――トンネルを抜けたタイミングで、大量のドローンが待ち構えているとは思いもしていなかった!
「くぅっ、み、皆さん回避を――ッ!?」
物騒な事に機関銃をぶら下げている大量のドローンは彼らの嫌な予感に応えるように銃弾の雨を撒き散らした。
さしもの破壊の嵐にヒーローに警察達は退避を余儀なくされ、トンネル出口近辺は車両が玉突き事故を起こし、物によっては爆発し、悲鳴と怒号が飛び交う戦場へと変貌していた!
『――行動隊へ、脱出は可能か』
「こちら行動隊。応援は功を成した、このまま規定ポイントへ移動する」
『了解』
妨害に成功した黒いバンは、混乱するヒーロー等を尻目にまんまと逃走に成功するのだった。
§ § §
『緊急速報です。現在都内、東町周辺で複数の車両が暴走。警察の制止を振り切って逃走を続けているとの事です。尚、現場にはヒーロー、シンリンカムイが事態の収束を図るために――』
「……」
「……」
「……」
お、おはヒロアカ……転生少女リュニちゃんだよ……。
えっとね、今はジェントルさんの家で仲良くTVを見ています。
リュニちゃんね、本当はね、こんなニュースじゃなくてアニメが見たいんだけどね、なんとなくね、このニュースが他人事じゃないように思えてしまってね、全く目が離せないの。どうしてだろう。(血涙)
「指導者よ。このままでは彼らは捕まる、応援を寄越す必要がある」
「……うん。えっと、待ってね。私まだちょっとだけ現実を受け止め切れないの」
ただ引っ越ししようとしただけで何でこうなるんですか……!
いや、不運だったってのは分かる。分かるんだけどね。
ヤクザに追われるだけだったらまだしもヒーローまで釣れるのは草も生えないよ……!
「あ、あわわわあわわぁ……」
「……りゅ、リュリュリュニ君、ど、どどどうするつもりだい?」
ラブラバちゃんはジェントルに抱きついてバイブレーションしてるし、ジェントルに至っては紅茶零しながら飲むっていう器用な真似をしている始末。
うんうん。身内が全国指名手配された気分って存外辛いよね。すっごくわかる。――分かりたくなかったわ畜生!
「さ、最悪……その、個性で消せば暴走は止まる事は出来ますが……! その代わり荷物は諦める形に……」
「……そ、そう、そうよねリュニちゃん。街の人に迷惑をかけるのもアレだものね! 荷物の事は残念だったけど、私もジェントルもお金が無いことがないからある程度補填は……!」
「あ。あぁ、そうだな! うん、市井に被害を出すのは義賊たる私も許容しかねる事だしな!」
よ、よーし三人の意見も一致した! そうだよ、このままこの家にあの車が来たらジェントル達の全国デビューの道は早まるけど、その生涯は私含めてきっと豚箱生活だからダメだよね!
とりあえずあの暴走車に関してはどこかで停めて貰って個性で中の人消しちゃおう! ……私につながる証拠品とか残ってないよね? まあ残ってても仕方ないかぁ、くぅぅぅ、畜生っ!
「良いのか? この程度のイレギュラーは指導者の力があれば平和的に
「……ば、挽回? 出来るの?」
「あぁ。我々もただの烏合の衆ではない、今回の移送作戦についてもプランは用意している」
たかが引っ越しのつもりだったのに気付いたら移送作戦になってる……!
た、確かにヤーさんから徴収したお金とか色々な物も運ぶから作戦にふさわしいかもだけど……。
「そこでだ指導者。ドローンの"怪鳥Mk2"を用意して欲しい。数は10体あればいい」
「え? ど、ドローン……まあそれくらいならいいけど」
ドローンだけで本当に挽回可能なのかな……。そいそい、そそい。
居間に一気に物々しいドローンを召喚していきますよー。うわー近くで見るとドローンって本当でっかいよね。
そして暴徒君は私に感謝の言葉を入れると召喚されたそれらを庭に運び始めた。
「!? りゅ、リュニちゃん……まさか貴方、生物だけじゃなくてこんな機械も出せるの!?」
え、あ。そうなんですそうなんです。
一応レユニオンという組織に所属している物なら何でも出せるんで。
「……うぅむ、何という唸らせてくれる個性! 私の個性の常識はもう
自分でもそう思うよ、この個性ってマジでヤバすぎだって事。
訓練してないでコレだから訓練したら一体どうなる事なのやら……。
……あれ? そう言えば暴徒君ドローンは? え、もう全部飛ばした? 早い……。
「……大型ドローンで一体どうするつもりなのかしら」
「ふむ。そこは私も気になる所だね……よもや
そもそも大丈夫だよね暴徒君? 何の気なしに私ドローン提供しちゃったけど、あのドローンってメッチャ銃ついてるよね。人殺しちゃダメっていったよね? 人殺しちゃダメっていったよね????
「あまり心配するな。平和的な解決をするよう目指すのは約束する」
そう云うとヘッドセット越し何事か命令を出し始める暴徒君。
……まあ、今までもちゃんと命令聞いてくれたもんね。
私は個性の持ち主だし、彼らを信じる事もときには必要かも。うん、きっと私の知らない何か素晴らしい手で解決して、
『――続報です! 警察及びヒーローに負傷者が出ているとの事です! 国道28号まで追跡し、成宮トンネルを抜けた直後、謎の大量ドローンに銃撃され、逃走車両の追跡は断念せざるを得なかったようです! 現場周辺は警察車両同士が玉突き事故を起こし、ヒーロー達が救援に追われる様子が――』
解決、して――
「……あぁ。あぁ、そうか。よくやった。ではポイントまで移動しろ。――聞いたか指導者、逃走に成功した」
「……」
「……」
「逃走車両は途中で乗り捨て、別の車両に乗って30分後にこの家に到着する予定だ。これで荷物を失う事なく奴らをまく事が出来――」
私はとりあえず無言で暴徒君を消す事にしました。
そうしないと色々と持たないような気がしたので。
「…………えっと」
「……」
「……」
「……わ、私達……い、一連託生……ですよね?」
「……」
「……」
この場で出来る私の精一杯のスマイル。
ソレに対してジェントルさんとラブラバさんが見せてくれた魂の抜けきった表情は……しばらく忘れられそうになかった。
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《レユニオン図鑑》
・『ブッチャー』:
全身を白い作務衣で包み、巨大な鈍器で攻撃を仕掛けてくる。外観と作戦遂行時の様子から人々に恐怖を与え、「ブッチャー」の異名を持つことになった。
サルカズ大剣士よりちょっと弱い。おっきな力持ちさん。
・『怪鳥Mk2』
速射性に優れた小型機銃と、遠隔操作ユニットが積まれており、
防具を装備している戦闘員への被害は多大なものにはならないが、一般人にとっては脅威をもたらす。そこそこ高性能なドローン。
尚今回このドローンの操作をしているのは暴徒君。
一人で10個のドローン操作とかバリ有能すぎない?
視点の切り替えの頻度は適切でしたか?
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丁度いい感じ
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少し切り替えが多いのでは?
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切り替え過ぎ
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むしろ主人公目線だけでいい¥