個性『レユニオン』な転生少女   作:なめろう

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ノヴァさんに抱きついて凍死したい人生だった。


第13話 贈り物をしましょう!

 おはヒロアカ! 転生少女リュニちゃんだよ!

 

 ジェントルさん達が死穢八斎會に宣戦布告すると決断して早3日が経ちました。

 彼らが超速で動画を作り上げていくのを傍目で見る生活を過ごしていたのですが、何かこう、凄いですね。何が凄いって二人の動画作成への熱意ですよ。

 プランをねったり、台本用意したり、ロケ地選定したりとか、動画投稿者の本気ってこういう物なんだ……って感嘆しちゃいました。

 

 その中でもラブラバちゃんがね、凄いのよ。

 

 ジェントルさんへのアドバイスは元より、お手製のゴツそうなノートパソコンを目にも留まらぬタイピングで集めた情報精査をしたり、台本用意したり、何かプログラミングしたりと凄腕ハッカー感をまざまざと見せつけられた感じ。

 

 二人共余念という物を感じさせず始終慌ただしく作業するのをご飯食べたりごろごろしながら眺めて、改めて二人の覚悟が真に迫ってるんだなぁって思いましまた。(小並感)

 まあこれからやることはほとんど犯罪なんですけどね! 

 私も犯罪者だからもう全部許しちゃう!

 

 しかしてこの二人の熱意なら死穢八斎會へのちょっかいも上手く行くのかも……と漠然(ばくぜん)とした期待をお菓子食べながら思ったんだけど……でもやっぱり幹部の人らは真っ当に強いと思うわけなんです。

 だから戦力とか全然余裕で貸しますよ? ジェントルさん。

 

「いや、大丈夫さリュニ君。キミにはもう対価を支払って貰った。後はこちらの問題だ」

 

「そうよリュニちゃん。これは私とジェントルの使命……貴方を巻き込む訳にはいかないわ」

 

 志は凄い立派だと思うけど、真面目に心配なんだよなぁ。

 若頭の治崎の個性『オーバーホール』とか本気でチート級だし、部下の人達も大概やばい個性持ちだからなぁ。鉄砲玉……なんだっけ? まあ何かがいるし。少なくともその人達が出てきたら撤退はした方が良さそう。

 

「死穢八斎會が有名になったのは、トップが傑出しているだけでなく部下も粒ぞろいであるからこそ。あの組は……かなり武闘派だよ? 真正面からぶつかるのは得策じゃない……」

 

「……組の構成員リストはラブラバに調べて貰ったが、確かに粒ぞろいだったね。どれもこれも一級品のヴィランだ」

 

「そうね、だから私達も真っ当に立ち向かうって真似はしないつもり。あくまであの人達の取引を邪魔する事に全力を尽くすの」

 

 曰く、手に入れたメモリーカードには取引場所、取引相手のリストが入っていたため、今後どういった場所で違法な取引が行われるかは把握出来てるとの事。

 それで取引に先回りして邪魔して、物だけ奪ってしまうのが二人の目的らしい。勿論、動画を取りながらね。うん、それなら……いいのかも?

 

「無論、我々にとっても大きな賭けとはなるだろうが万全は期するつもりだ。心配ありがとうリュニ君。私達は必ずやり遂げるよ!」

 

 満面の笑みで私に答えてくれたジェントルはちょっと頼もしい感じがしたけど……ごめん、やっぱりひっそり援軍は送っておくね。何があるか分からないからさ。

 何事もなければ別に手出しはさせないからセーフ。セーフだよね。

 

 

 ――と思ってたのがつい半日前なんだけど、結論言えば増援送っといてよかったです。

 

 

 二人の活躍を現地に派遣した兵士の報告越しに見守っていた私。

 まさかの活瓶、あのでっかくて接触すると活力を奪うっていう個性の人が待っているのに驚き、それに挑戦すると言い出したジェントルに驚き、そしてそれを倒した根性に驚いた。

 

 おぉーやるぅ。口先だけじゃなくて本気で覚悟決めたんや、格好いいぜジェントル!

 ……って感心するのも束の間、すぐに兵士から異常があるとの報告が。

 

 喜びを分かち合ってた二人、なんと突如その場にへたりこんでしまい、逆にボロボロになった活瓶が代わりにむくりと起き上がったのだ。

 えぇー、結構な高所からメテオスマッシュ決めたんだよね!? なんでピンピンしてるん?! と思ったらどうやら触れずとも周りから活力を奪い取っている事が分かった。

 

 あっ、個性暴走薬(トリガー)のせいか!

 

 これは不味い! って事で待機させていた鎮圧部隊を出動。

 今回出動させたのはフロストノヴァさんという、名前からして凍らせるのが得意なお方。恐らくこの人がいれば秒で鎮圧出来るでしょうと思ってたんですが、出動を命じて20秒後くらいで本当に鎮圧完了の言葉が戻ってきた。やべぇノヴァさんつえー。こえー。

 

「みんな無事?」

 

『無事だ。活力を奪われて立つのも億劫そうだが命に別状はないだろう』

 

「……ちなみに、活瓶さんも無事?」

 

『……全身が瞬間冷凍されているから無事だ、動く気配もない』

 

 それって本当に無事なんですかねぇ……仮死状態って言わない?

 まあでもこれにて本当に鎮圧が出来たからね、後はジェントルさん達の判断に……いや、そうだ。折角だからジェントルさんに提案してみよう。電話で。

 

 あ、すみません邪魔してしまって。戦闘お疲れさまでした。

 いえいえ無事だったなら何よりですよー。

 それよりも今倒した活瓶さんとその取引材料についてご相談が……。

 

 

 § § §

 

 

「――ここで何をやっている! 止まれ!」

 

玉川(たまかわ)三茶(さんさ)――猫そのものの頭部をした、警部である塚内(つかうち)直正(なおまさ)の部下は、大胆にも警察署に乗り込んできた不審な大型トラック、その運転手に向けて拳銃をかざしていた。

 作業用トラックの後部に、シートに包まれた何か大きな物が積まれているようだが、あれは一体……?

 

「こちらに敵対の意思はない。ただ君達警察に贈り物があってね」

 

「お前……ジェントル・クリミナルか。何を狙っているか分からんが、わざわざ自首しにきたのか」

 

 玉川は彼が何者か知っていた。

 以前から警察内で要注意人物としてあげられていた軽犯罪者。

 彼らは自らの虚栄心がためにちっぽけな正義を振りかざし、自ら犯罪という道に進んだ悪人であり、そしてつい数時間前、彼らが死穢八斎會に宣戦布告まがいの動画を挙げたという事も耳に入っていた。

 

「とんでもない。私の偉業はまさに始まったばかりだ……それよりも先に荷物を下ろしていいかな?」

 

「荷物だと、お前から受け取るような荷物は……っ!?」

 

 運転席越しに投げかけられたトランクが玉川のすぐ隣に落ちる。

 乱雑に落ちたトランクは偶然にもその場で開き、中にみっしり詰められた薬が街灯の明かりに照らされきらめいた。

 

「『トリガー』、と言えば分かるかね。死穢八斎會の部下が取引をしていたものだが……拝借したはいいものの、我々には使い道がなくてね。寄付しにきたのだ」

 

「……」

 

 玉川は困惑した。モノの真偽が測りかねたのもそうだが、何よりも意図が見えないからだ。拳銃をジェントルへと構えながらも、その場を動けずに沈黙をするしかない。

 

「あとはもっと大きな贈り物でね。後ろに積んでおいた。鉄砲玉八斎衆の一人『活瓶力也』とその部下だ、冷凍しておいたからお早めに解凍願う」

 

「……おい、中を確かめろ!」

 

 玉川の声とともに同じく包囲していた部下が積み荷のフードを取り払えば、確かにそこには氷漬けの活瓶力也と、部下や取引をしようとしたチンピラが乱雑かつ氷漬けで積まれていた。

 これには玉川も驚いた。あの活瓶を捕まえたのか、一体どうやって? しかしここまで雄弁な証拠を見せられたのならば、恐らく薬の方も本当なのだろう。

 

「何が目的だ」

 

「おや、ご存知ではないのかな。我々はつい数時間前に意思表明を……」

 

「知っているが、そういう事じゃない。今まで(こす)い犯罪を繰り返していたお前が、どういう心変わりだと聞いているんだ」

 

「こす……ジェントルになんて事を言うの!」

 

 助手席にいたラブラバがビデオカメラを構えながら抗議をするのを(なだ)めながら、ジェントルは語る。

 

「心機一転したのさ。今まで紳士的ではない者に制裁を与えるといいつつ、身近で手の届きそうな相手ばかりを選んでいた。これは、あまりにも紳士的ではない振る舞いだ」

 

「……それで今度は闇社会に手を出そうと? 自殺行為だぞ」

 

「言っただろう。我々の躍進はまだ始まったばかりだと……それに、勝算の無い勝負に手を出す程、我々は馬鹿ではないさ「ジェントル!」っとぉ!?」

 

 ジェントルの会話は唐突にそのトラックのボンネットに飛んできた影によって中断されてしまう。

 結構な衝撃を以ってボンネットをフロントガラスごと破壊したその人物は、大きな兎耳をつけたヒーロー、兎山ルミ――通称『ミルコ』だった。

 彼女は犯罪者の引き渡し作業をするために偶然この警察署に寄っており、騒ぎを聞きつけてこうして推参したのだった!

 

「オイオイオイ、よりによって警察署内で立てこもりかぁ!? 度胸ある奴だなお前はぁ!」

 

「くっ、流石にこれは聞いてないな……! ラブラバ!」

 

「えぇ!」

 

「はっ、逃がすと思ってんのかよ!」

 

 踵を高く挙げて運転席ごと潰そうとしたミルコに対して個性を使用してトラックに弾性を付与。潰すどころか逆にミルコが吹き飛ばされた隙に、ラブラバとジェントルは素早くトラックから脱出、まるでその場にトランポリンがあるかのように空高く舞い上がった!

 

「では、犯罪者と違法薬、そしてお金は確かに渡した! 慎重に保管してくれたまえ!」

 

「待ちやがれテメェッ!」

 

 高らかな笑い声とともに軽快に夜の街へと消えていく二人と、それを追う一匹。

 玉川はその三人をぽかんと見送る事しか出来なかった。

 

「『勝算のない勝負に手を出す程、我々は馬鹿ではないさ』、か」

 

「! 警部」

 

 そんな彼の背後から現れたのは、上司である塚内(つかうち)直正(なおまさ)

 塚内は地面に投げ出されたトランク、その中の薬の一つを取り出すとまじまじと眺め始める。

 

「直ちに成分分析を。恐らくは偽物ではないと思うが……きな臭いな」

 

「きな臭い……それは、奴らがですか?」

 

 別の警官に薬を手渡した塚内はあぁ、と頷く。

 

「もともと逃走技術に長けていて、情報戦にも強いというのは分かっていたが、それだけだ。大した被害でもない以上本腰を入れてこなかったが……これは警戒ランクを引き上げる必要があるな」

 

「しかし……彼らは死穢八斎會を敵と見定めたと言っています。彼らは我々に貢献を――」

 

()()()()()()玉川、あの二人は決して義賊なんかじゃない、ただの犯罪者だ」

 

「……」

 

「そしてよく考えろ。チンケな犯罪を繰り返していたあの二人が急に大物を狙い始めた意図を。それもだ、その相手は今まさに世間を騒がす死穢八斎會だぞ」

 

「……!」

 

 玉川は目が覚める思いだった。

 系列店の連続襲撃事件、つい先日のカーチェイス事件、そして今回――その全てに死穢八斎會が関わっていた。それが意味を成すことは一つだ。

 

「もしかして、裏で何者かが手を引いている可能性が……?」

 

「あの二人組が今までの騒ぎを起こしているという可能性もなくはないが、それよりも俺はあの二人が死穢八斎會を邪魔だと考えた組織によって体の良い駒に使われている、と考えたほうが自然に思える」

 

「……」

 

「全てはこれからだぞ玉川。騒ぎは更に拡大する……くれぐれも気を緩めるな」

 

 表情をより一層険しくさせる塚内に、玉川は何か不安めいた未来を覚えずに居られなかった。




ミルコさんも好きだよ!!
感想・評価お待ちしております。


《レユニオン図鑑》
・フロストノヴァ:レユニオンの幹部の一人。
 圧倒的な能力で真っ向から相手をねじ伏せる、レユニオン屈指の術師。
 少数精鋭部隊、通称「スノーデビル」を率いる全身真っ白で見た目から分かる強キャラ。
 その名の如く、氷のように冷たい人。

視点の切り替えの頻度は適切でしたか?

  • 丁度いい感じ
  • 少し切り替えが多いのでは?
  • 切り替え過ぎ
  • むしろ主人公目線だけでいい¥
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