個性『レユニオン』な転生少女 作:なめろう
大人数が動いてると書きづらいったらありゃしないですね!
「この組はもうおしまいだ……」
ほんの少しだけ欠けた月が見下ろす静かな夜。
死穢八斎會本部、誰一人居ない立派な日本庭園にて。男は庭石に腰掛けて頭の中で思っても決して口に出さなかったその言葉を遠慮なく吐き出していた。
男はこの組では比較的古株にあたるヒラの組員であった。
小さな頃からヤンチャ気質な彼は、自身の個性『
生まれてからずっと
とは言え良く言えばアウトロー、悪く言えば行き当たりばったりがすぎる彼である。要職につける程の仕事ぶりを発揮出来る才能がない事も相まって、現在は本部長である入中の
自らの立ち位置に不満はなくもないが、同業では最大手である八斎會の一員であるという事は彼の自信にも繋がっていた。
誰かを虐げるという最も得意な行為でそこそこの金が入るのであれば文句もなく、彼は今後の人生も組でこうして過ごしていけるのだと信じて疑わなかった。
――しかし、彼の信頼おける組はある日を切っ掛けに傾き始めた。
「あぁ!? オレらのシマで店が潰されてるだぁ……!?」
つい先月、系列店が何者かに襲撃されて半壊したという話が舞い込んだ。
男はその話を聞いて怒りをあらわにした。
この他でもない死穢八斎會組の店を狙って襲撃するなど、殺されても文句は言えない程命知らずの挑発であるからだ。
昔から仲の悪かった鹿羽組あるいは戸愚呂組の仕業なのかと疑っていたものの、組の結論は最近台頭しだした敵連合とか言う半グレの集まりであると断定。それは統率の取れてない野郎共が組のモノとも知らずに店を攻撃したのだろうという見解からだった。
その時点で男は馬鹿な奴め、と敵連合を
なにせ死穢八斎會は同業の中でも最大手の一つ。例え店が数店潰されようと、組そのものを揺るがすには余りにも力不足だという確信があったからだ。
きっと組の誰かきっちり型にハメて、店を潰した以上に報復して終わりだろう。
早期の終息を見越して男は代わり映えのない日々を過ごしていたのだが、
「聞いたか? 例の集団、まだ店を潰し回ってるらしいぞ」
「用心棒を用意したっていうのに全く刃が立たなかったらしい」
「……」
襲撃は止まらない。
短期間の間に5店舗。10店舗、最終的に12店舗潰されたという話が飛び込んでくると、男はおや、と思い始める。
ここまで来れば相手は死穢八斎會の店だと分かりきってる筈。にしてはあまりにも行動が速く、そして
そして直後。そんな男の不安を煽るかのように起きたのがニュースにもなった『カーチェイス事件』である。
白昼堂々組員と例の集団が警察車両らと共にカーチェイスをして、組員は捕まったが例の集団を取り逃がしたこの件。ニュースにもなったという事で男も何気なくそれを見ていたのだが、例の相手が大量のドローンからの機銃掃射で警察車両とヒーローを追い払ったシーンを目にして、飲んでいたビールを吹き出す羽目になった。
町中で容赦なくぶっ放す事といい、大量のドローンを用意出来るといい、この犯罪集団。明らかにイカれている。
こんな奴らに目をつけられるなんて、一体全体我々は何をしたっていうんだ? という思いを男を含む他の組員のほとんどが抱くのも無理はない話だった。
そんな立て続けの不幸で慌ただしくなった八斎會だったが、組への試練はそれでも終わらない。
今度は何が起こったかと思えば、ジェントル・ラブラバが動画上で組の不正を暴き出すとのたまい始めたのだ。しかも実際に取引現場が二人組に襲われ、鉄砲玉八斎衆の一人である活瓶が捕えられたという動画まで晒される始末。
男は最早あいた口が塞がらないし、他の組員も呆然としていた。
短気で神経質な入中などは当然発狂して周りに当たり散らしていたし、さしもの若頭もキレて机を消し飛ばした、なんて噂も流れているくらいだった。
そこからはもう、まさしく急転直下である。
動画が広まり、ニュースにもなってしまえばもう組が打てる手などないも同然。
警察やヒーローらによる厳しすぎる追求が毎日行われるわ、同業からは舐められるわ、世間は今まで以上に冷ややかな目で見始めるわで組織はズタボロ。また、死穢八斎會というブランドも無に等しくなっていた。
しかしながらジェントルらは追撃の手を緩めず彼らの悪事を小出しにし、じわじわと追い詰めてくるのだ。組としてはたまったものじゃない。
見違えるほど収入が減り。
組員は毎日毎日逮捕あるいは収監され。
おちおち外を出歩くことすら出来なくなり。
上に打開策を聞いても『今はぐっとこらえろ。辛抱だ』の一点張りでアテにならず。
何故か以前いがみあっていた敵連合が屋敷内を我がモノ顔で
結果として組員の士気はだだ下がりになっていた。
かろうじて不祥事のあった店舗や組員らをトカゲの尻尾切りよろしく『組とは無関係である』と言い張り続けて、本部への家宅捜査を逃れているものの……最早それも限界だろう。
若頭が本部から逃げ出す算段を進めているという話が噂される中、他の組員も如何にしてこの組織から抜けるのか、という話でもちきりになっていた。
誰もがこの組が崩壊まで秒読みであると悟っている。
故に男も着々と身支度を進めており、敷地の庭で月を眺めながらタバコを吹かし、これから先どのようにして過ごそうかと考えていたのだが、
「……あ? なんだ?」
男はふと月夜にそぐわぬ赤い光が空でまたたいているの発見してしまう。
流れ星にしては大きすぎるそれは、男が見ている間にどんどんと大きくなっていく。
なんだなんだと目を凝らすと、その赤い光を人型の何かが纏っているのが分かるが――やがてはっきりと視認できる程近づいて来て、男はそれがニュースでよく見るとある人物なのではと思い至り、途端に悲鳴が漏れ出始める。
「お、お、あ、あぁ……あぁぁ……!」
ずん、と芝生に降り立つと同時に、周りに火の粉を撒き散らすその存在。
鍛え上げられた肉体を全身スーツで包み込み、更にそのスーツの上から燃えたぎる炎を纏った男。それは――
「――貴様、死穢八斎會の組員だな? ジェントルはまだ来てないのか?」
――No.2ヒーロー・エンデヴァー。
勇猛苛烈かつ厳格なその男が今、男の前に立ち塞がっていた。
「……はひ、な、なな、なにがっ、お、オレらの組に、にゃにゃ、にゃにがっ!?」
全身から滝のような冷や汗を流し始めた男は激しく動揺しながら、威圧感凄まじいヒーローへと威嚇しようとするが、怯えきってしまったのか言葉らしい言葉も出せずに震えるばかり。
エンデヴァーもそんな目の前の男を観察し続けていたが、やがて興味を無くしたかのように視線を移し、男を通り過ぎて玄関へと向かう。
「ま、まま、まて、待てコラァっ、こんな深夜に一体、なな、何用だコラァ!?」
「……」
裏声で怒鳴り散らす男に対するエンデヴァーの反応は――無視。何も恐れるものはないと言わんばかりに、ずかずかと立派な玄関に近づいていく。
流石にソレを見て黙っていられる程、男も臆病ではない。男は背中を向けたエンデヴァーに対して自らの個性、葉操を発動。敷地内に生えた松の葉を操り、ハリセンボンのように針だらけにさせようとしたのだが、
「っと、大人しくしろってんだ!」
「ぉぶっ!?」
どこからともなく小さな黒い影が男の前に現れ、その腹部を思い切り殴り。かと思えば前のめりになった所を
その小柄な男の正体はヒーロー・グラントリノ。
かつては大成前のオールマイトを徹底的にシゴきあげ、トラウマを植え付けたという年老いて尚実力派のヒーローである。
そしてエンデヴァーとグラントリノの登場を皮切りに、屋敷を守っていた巨大な和風の門が外側から半ば無理矢理開かれる!
「――突入っ、突入ーッ!!」
「第一班、第二班はこちらに続け。第三班から第六班までは指定ポイントで待機。逃走する敵を見逃すな!」
「組員の拘束、そして囚われている少女の救出を最優先にしろ! 進め! 進めぇーっ!」
「我々はエンデヴァー及びナイトアイに続け! 周辺の監視を決して怠るなよ! いいか!?」
門から一気に屋敷内になだれ込むのは警察らとヒーローの混成集団!
今まで音一つしなかった筈の本部周辺がやにわに騒がしくなり、門からの侵入だけでなく屋敷を囲う巨大な弊を飛び越えるようにして様々なヒーローらが次々と本部へ飛び込んでいく!
「
「ご老人。悠長な事をしてる暇があったらさっさと治崎を捕まえるのが先決だ、分かるだろう……早くしないとジェントルの奴に手柄を取られるぞ」
「余り奴に固執しすぎるな、我々は我々に出来ることを……ってオイ!」
扉の前で
エンデヴァーはそんなグラントリノを
「進むぞ! 死穢八斎會という組織を今日で存続不可能にさせるんだ!」
「……やれやれ。血の気が多い」
そして、エンデヴァーは一足先に建物内に飛び込み、グラントリノやナイトアイ、ルミリオン、ロックロックや、バブルガールと言った多種多様なヒーローらも警察共に一様に侵入!
まさかの深夜の襲撃である、部屋で呑気に夢を見ている組員も多く、かろうじて騒ぎに気付いて起きたとしてもロクな抵抗も出来ずにヒーローや警察官によって次々と確保されていく。
そんな中、エンデヴァーやナイトアイと言った実力派ヒーローは雑魚には目も向けず、とある場所めがけて一目散に移動していた。
「地下への進入路……ここか」
「よぉし、第一班は突入! 第二班はこのまま1階から3階までを制圧だ!」
事前情報通り壁に仕組まれた隠し階段を見つけると、第一班、エンデヴァー、ナイトアイ、イレイザー、グラントリノ、ルミリオンといった実力派ヒーローらは、躊躇することなく地下へと侵入。狭い階段を抜けて目標目指して一直線へと進んでいく。
今の所ジェントルらがリークしたMAPに書いてある通りである。
彼の情報が正しければ人身売買や違法薬物の証拠も地下に全て隠され、囚われている少女も地下にいる筈。ヒーローらはその情報を信じて最短かつ無駄なく行動を進めていく。
しかしようやく階段を降りきり、地下に彼らが足を踏み入れたと同時に。
屋敷全体を揺るがす程の大きな衝撃と音が地下に広がった。
「サー。何ですかねこの音?」
「分からんが、寝坊助どもがようやく起き始めたのかもしれんな」
「気をつけろ。入中常衣が壁を操っている可能性もある、イレイザー。決して警戒を怠るな」
「……分かりました」
ヒーローは地下から響く、まるで爆発めいた音に第一班は警戒を深めるも、決して動揺することなく先へと進んでいくのだった。
警察とヒーローの協力により実行された『死穢八斎會本部突入作戦』。
後に数ヶ月に渡って人々の記憶に残り続けるであろうその事件は、今まさに始まろうとしていた!
貴重な意見色々とありがとうございます!!
描いてる途中で気付けなかった様々な問題点は今後も参考にさせていただき、可能な限り取り入れさせていただきます…!(既に方向性がかなり固まっているため、大きく変えることは難しいかもですが)
こんな問題点だらけの作品ではありますが、引き続きお付き合い頂ければ幸いです。
感想・評価お待ちしております。
《レユニオン図鑑》
・早めのGWを頂いております。
視点の切り替えの頻度は適切でしたか?
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丁度いい感じ
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少し切り替えが多いのでは?
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切り替え過ぎ
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むしろ主人公目線だけでいい¥