個性『レユニオン』な転生少女   作:なめろう

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THE・難産パート4。
2日かかったぜコイツゥ。


第23話 妨害を跳ね除けましょう!

「こんな夜更けにいきなり訪問してくるなんて、常識知らずねぇ」

 

「楽しそうな事してるじゃねえかよ、俺らも混ぜろよ、なぁ……?」

 

 死穢八斎會本邸。

 地下1Fでエンデヴァーらが足止めを受け、地下2Fでルミリオンが苦戦する中。

 地下3Fではジェントルらが二人の敵と相対していた。

 

 片一方は2mある巨体で有り余る筋肉をこれでもかと誇示する、片目に(あざ)のある金髪の男。

 そしてもう片一方は赤い長髪にサングラスをかけた、布に包まれた巨大な鉄棒を抱える長身の男性であった。

 

「――『血狂い』に『マグネ』! 敵連合のヴィランよ皆!」

 

「私達の事を知ってるの? 物知りねえお嬢ちゃん」

 

 サングラス越しでも分かるねっとりとした視線をラブラバに向けるマグネ。

 そんなラブラバをかばうかのようにジェントルが前に出た。

 この作戦、自分が言い出した事ながらヤクザのみならず、見た目からして危ない相手と大立ち回りすることになるとは思ってもいなかったジェントル、その彼の額から汗が流れ出る。

 

「お、よく見ればコイツ動画の奴じゃねえか!」

 

「まあ本当! 貴方の動画見せて貰ったわ、ヤクザ相手によく頑張ったわねジェントルさん、すっごく面白かったわ!」

 

「……視聴頂き誠に感謝しよう。普段ならファンサービスの一つでも披露するところだが、我々は先を急いでいるのでね。申し訳ないのだがそこをどいてくれるかね?」

 

「ばぁかが、ようぅぅぅやっく面白い事にありつけたんだ! だぁれが逃がすかよ!」

 

「残念だけど、私達もお仕事なのよね。折角だからここでやられる所を撮影するのはどうかしらん!?」

 

「ぬおっ!?」

 

「ジェントル!?」

 

 マグネ――本名、引石(ひきいし)健磁(けんじ)が包んでいた布袋を取り外し、両端に『S』『N』と書かれた巨大磁石を向けて、ジェントルを引き寄せる! マグネの個性『磁石』は狙った相手に、男性であればS極、女性であればN極を付与する物。ジェントルは見えない誰かに引っ張られているかのように急速に磁石へと引き寄せられていく!

 

「ハッハァ! それじゃあこっちも始めちまおうかァ! 『くらすれ』とかいう野郎はどこにいやがる!? トガをぶっ飛ばしたっていう実力、是非とも俺にも楽しませてくれよ!」

 

「だって。クラウンスレイヤー、ご指名よ」

「……暑苦しい」

 

 (みなぎ)るばかりの戦意をたぎらせ、Wとクラウンスレイヤーの両名に大股で近寄っていくマスキュラー。その巨体は歩く度に大きく膨らんでいく。

 よく見れば彼の肌はそれぞれが意思を持っているかのように、筋繊維が内部からどんどん盛り上がっているように見えた。

 彼の個性は『筋肉増強』。自らの筋繊維を増幅したり、体の内外に纏う事で筋力を増強するブースト系の個性であり、その力は他の増強系とも一線を画すものであった。

 

「はぁ!? くらすれってガキかよ! ――まあいいや、ヤろうぜ! 今まで暇だった分全力でなぁ!」

 

「断る」

 

 狭い通路に収まりきらない程肥大化した丸太のような腕が、地下壁を削りながらクラウンスレイヤーに差し迫る。しかしマスキュラーが感じる筈の肉を殴る感触は訪れず、代わりに地面が弾け飛ぶばかり。

 

「――ッたァ!?」

 

「……」

 

 直後、彼の右肩に激痛が走る。

 マスキュラーは反射的に振り返りざまに左腕を振るい、またも壁が削れながら弾け飛ぶが、背後に感じた気配の持ち主に届く事はない。

 右肩を押さえ、振り返った先には血染めのナイフを構えたクラウンスレイヤーが涼しげにそこに佇んでいた。

 

「あーってて、いいね。容赦なくて好きだぜ……! 予想以上に速くて楽しめそうじゃねえか……! こいつぁ本気出さなきゃ不味いなァ……!」

 

「わざわざ手加減しようとしてくれたの、お優しいのね」

 

 傷つけられたというのに獰猛に笑うマスキュラー。そこに先の一撃を余裕を持って避けていたWが、どこからともなく小型ナイフを数本投擲していた! マスキュラーは声に気付いてとっさに片腕を掲げ、筋肉を肥大化させて分厚い筋繊維の盾を作り上げ、それを防いでいた。

 

「おぉっと! 二人相手だっていうなら尚更だな! 後で遊んでやるからお前は待ってろ、待ってろよな!?」

 

「後でと言わず今遊んでくれればいいのよ」

 

「楽しみはとっておきてえんだよ! すぐに潰しちまったら――つまんねえだろォ!?」

 

 筋繊維の盾でナイフ攻撃を防いだマスキュラーに近寄ったWが、流れるような動きで膝裏を蹴り上げる。華奢な身でありながら鞭のようにしなる蹴りは、マスキュラーをして驚く物ではあったが、誰よりも肉弾戦に慣れているのは彼である。

 蹴りのお返しだと言わんばかりに右脚を巨大化させ、フローリングの床ごと吹き飛ばす強大な一撃をWに見舞い、Wは舌打ちしながら逃げる他ない。

 

「っとぉ、悪いなクラスレぇ、今から俺が本気で遊んでやるからな。本気の義眼をつけた俺はもっと強いぞォ」

 

 傷を負っても心底嬉しそうに話すマスキュラーは、自らのポケットを探り出す。

 彼はとあるヒーローと戦って目を失ってから、その時の気分で様々な義眼をつける習慣があった。義眼を変えたことで能力が向上することはないが、お気に入りの義眼をつけると心なし戦いやすくなる。故に、彼女らの強さに敬意を示して本気の時しか使用しない義眼をつけようとしたのだが――目の前に居たはずのクラスレは、そこに居ない事に気付いた。

 

「あぁん……?」

 

 それどころかいつまで経ってもポケットから義眼を探れない。

 まるで指先が固まってしまったかのような、というよりいきなり指先の感覚が途絶したような……?

 

「あ、が、いっつ、何……!? な、なんだこれ!!? ん、んだよコレはよぉぉ!!」

 

 異変に気付き、マスキュラーは驚愕してしまう。

 掲げた右腕、その先端にあるべき筈の右手がない。鋭利な刃物で消し飛ばされた右腕からは鮮血が溢れ出しており、遅れて全身に走った激痛に叫びだす。

 

「急いでる、と言っただろう」

 

「ッ!? くそ、ガキがぁぁぁッ!!」

 

 消し飛ばされた右手の先から筋繊維を形成させ、急ぎ血を塞ぐマスキュラー。彼は当然のように激昂(げっこう)し、無事な左手で目の前の自分より遥かに背の低い少女を殴り潰そうとしたが――彼女を見ていた筈の視界が何故か天井を見る羽目になっていた。

 

「こっちの事、無視しないで欲しいんだけど?」

 

「が、ぐっ」

 

 発火したかのように自身の顎が熱くなったかと思えば、ぐらり、と体が揺らぐ。意思に反して両足が震えているのが分かる。

 崩れ落ちそうになったマスキュラーが視線を下にさげれば、いつの間にか懐にWが潜りこんでいたのが見えた、どうやら顎をいい角度で蹴られたようだ。

 

「あとこれ、プレゼントよ――クランスレイヤー、退きなさい」

 

「何が……ッ」

 

 プレゼントだ、といい掛けてマスキュラーは口をつぐむ羽目になる。

 濃縮された時の中で彼がそこで見たのは、Wが金属のピンを口に咥え、嗜虐的な目でコチラを見つめる姿。そして、筋繊維で盛り上がった左肩、その隙間に表面が凸凹した物がねじ込まれているという光景。コレは、この物体はなんだ……!?

 

「――~~~~~ッ!!?」

 

 直後、左肩を起点として強い衝撃が全身を襲い、マスキュラーの意識は途切れた。

 

 

 

 § § §

 

 

 

 一方でマグネに引き寄せられていたジェントル。彼も最初は面食らったが、咄嗟に自らの個性を発動。

 引き寄せの勢いを乗せて鉄塊で殴るつもりのマグネ、だが鉄塊その物に弾性を付与させた事で本来の硬さからグミのような硬さに変更、自身への衝撃を大部分軽減していた。

 

「やだもう、こんなにフニャフニャに」

 

「このような鈍器で人を殴るのは紳士的ではないね……!」

 

 しかし磁力付与で引き寄せられ続けているのは変わらない。

 超至近距離でにらみ合う二人、先に仕掛けたのはやはりマグネ。

 その長い足でジェントルの腹部に膝をめりこませようと考えていたが、第六感からか行為をやめてその場を飛び跳ねる。するとマグネの居た場所に禍々しい黒い縄が何条も通り過ぎた

 

「やぁやぁ、僕らも混ぜてくれないかいおじさん」

 

「こんな鉄火場に子供!? 一足早く大人体験したかったのかしらね!」

 

 声の主はメンバーの中でラブラバの次に小柄なメフィストの物であったが、下手人はサルカズ術師だ。

 黒い縄の正体が何かは分からないがひと目でそれがヤバい物であると見越したマグネ。かろうじて攻撃を避けることが出来たが、さらなる脅威が待ち受けているとは気付いていなかった。

 

「きゃんっ」

 

 通路の壁を蹴り、横合いから不意に斬りかかったヴェンデッタの攻撃、マグネはそれを掲げた巨大磁石で何とか防ぎ、接触した金属から火花が派手に散る。

 

「やだもう、本当に形勢不利ね! マス君がどうしてもっていうからついてきたけど、すっごく後悔してるわ!」

 

「おいおいがっかりさせないでくれよ、僕ら相手に自信満々で絡んだ挙げ句それかい? 敵連合なんて大層な名前してるけどやっぱり大したことないのかねぇ!?」

 

「しかも口の悪い子ね……そういう生意気な子は教育してあげないと……!」

 

 何もせずにただ大口を叩いて煽るメフィストに苛立ちを隠せぬマグネ。(もっともメフィストには回復技能と防御手段しかないため仕方がないのだが)

 斬り結んだヴェンデッタの剣を力で押し返していたマグネがヴェンデッタに磁性を付与すると、巨大磁石のS極側を向けて磁力で反発! ヴェンデッタは強力な磁性によって数m程吹き飛ばされる羽目になる。その吹き飛ばした先には――サルカズ術師!

 

「!」

「ぐっ」

 

「ピンボールみたいに弾けなさい!」

 

 二人が衝突した直後、サルカズ術師にも磁性を付与すれば、()しくも男性同士であった二人の兵士はお互いの磁性によって反発! それぞれ両側の壁に衝突してしまう。

 

「ちょっと形勢が悪すぎるから、一旦引かせて貰うわね――人質を貰って!」

 

「わぁっ!?」

 

「ラブラバ!」

 

 そして、事態を見守っていた非戦闘員のラブラバが狙われた。

 同じく磁性を付与されたラブラバがマグネに引き寄せられそうになると、ジェントルが咄嗟に彼女を抱き寄せて防ごうとするが、共に移動する羽目になってしまう。

 

「もう邪魔よ! 今は貴方は必要ないの!」

 

 流石に二人も人質に取るつもりはないのか、マグネはラブラバを庇うジェントル相手に、長い足で攻撃しようとするのだが――

 

 

 突如背後で広がった爆音がそれを許さなかった。

 

 

 耳鳴りを引き起こす程の爆発音はマグネのみならずジェントルラブラバすらも一瞬前後不覚にさせ、マグネは蹴りを外し、ジェントルらは引き寄せられるがまま吹き飛んでマグネにぶつかり、3人でもつれあう。

 

「あ、つ、つつつ……!」

「じぇ、ジェントル……」

「も、もぉなによ一体……!」

 

 動転するマグネだが、その中で一番回復が早かったのはマグネであった。彼女は覆いかぶさったジェントルを吹き飛ばして状況を確認しようとして――その首元に剣を突きつけられている事に気付く。

 

「……」

 

「あら」

 

 見上げた先には先程吹き飛ばした筈のヴェンデッタがおり、ふと周りを見渡せば、同じく倒れ込んだマスキュラーの姿と、ナイフをぶら下げた少女、手榴弾を手元で(もてあそ)ぶ少女、杖を持った術師に、耳を押さえる白髪の子供が見えた。

 

「……ここはあえて決死の覚悟で逆転を狙うべきなのかしらね? 剣士さん」

 

「首と胴体がおさらばしたいなら好きにしろ」

 

「残念」

 

 諦念の表情で返事をしたマグネはその直後、後頭部を襲った一撃で昏倒。

 彼もまたマスキュラーと同じく意識を闇へと沈めたのだった。

 

 

 

「思わぬ強敵だったわね……」

 

「マグネはともかく、マスキュラーは協力プレイをしたがらなかったのが幸いだったが……」

 

 気絶したマグネを見下ろすジェントルとラブラバ。その背後ではメフィストがWに食ってかかっていた。

 

「――キミさぁ、こんな狭い通路で爆発攻撃とかさぁ、もうちょっと常識を学んでくれないかな常識を!」

 

「仕方ないじゃないの、私の攻撃手段は限られてるんだから」

 

「せめて事前に伝えるとかしてくれないかな!? キミのお陰で耳が痛くて仕方がない!」

 

「伝えたら相手が気付いちゃうじゃないの、我慢しなさいな。男の子でしょアンタ」

 

 Wは決して悪びれる事なくメフィストの追求をのらりくらりと躱し続けているが、普段から目つきの悪いクラウンスレイヤーもまたWを冷ややかな目で見ている事から、彼女もまた同感のようだ。

 

「ま、まあまあ。お陰でラブラバの危機を救えたし、マグネ君を倒すことも出来たんだ、今は先に進もうではないか諸君」

 

「ほらジェントルもそう言ってるわよ。少しは大人になりなさい」

 

「~~ッ、後で覚えていろよ……ったく」

 

 メフィストが手を掲げ、メンバーに向けてふぅっと息を飛ばすと白い霧のような物が周りに撒き散らされる。

 それは回復の息吹。

 面々がマグネから受けたダメージは大きくはないが、だとしても感じていた痛みがみるみるうちに回復していくのはジェントルらにとって驚愕であった。

 

「……凄い。もう痛くないわ」

 

「そうだねラブラバ、私も驚いている……この様な技術があるとは」

 

「本当はこんな微細な傷だったら我慢してっていうけどね、もっと大怪我をしても治せる自信はあるよ」

 

「……それよりも早く追うぞ。こいつらが襲ってきたって事は、治崎の奴は先に居る筈だ」

 

「クラウンスレイヤー」

 

「……はぁ。人使いが荒い」

 

 面々は一息をつくと、先行してクラウンスレイヤーが通路の奥へと消えていく。

 ヒーロー等が今も尚侵攻中の今、ここで立ち止まっている暇はない。

 ジェントルらも気絶した敵連合らをその場に放置し、後を追うのだった。

 




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《レユニオン図鑑》
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