個性『レユニオン』な転生少女   作:なめろう

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【悲報】主人公、ようやく活躍する【ほぼ何もしてない】
本当は二話分割にしようとしましたが、進展しなさすぎなんで一話にまとめました。


第27話 手加減抜きでやっちゃいましょう!

『こちら第6班。B地点は依然敵なし。どうぞ――』

「捕まえた組員の移送急げ! 拘束具を忘れるな!」

「近隣住民への避難勧告は何処まで進んでいる?」

「この3丁目はあと2軒を残して完了しています、その2軒についてですが――」

「護送車両と救急車が10分後に追加で到着します!」

『第3班から本部へ――聞こえているか。こちらに数名の組員を確認、無効化している』

 

「さぁ急げ急げ、この作戦は時間が命だぞ。ヒーローらとの連携を密にして迅速に進め!」

 

 塚内警部は部下の玉川三茶と共に死穢八斎會本邸、その庭で慌ただしく行き来する警察やヒーロー等に叱咤を飛ばしていた。

 

 無線越しにひっきりなしに飛んでくる報告を纏め、適格な指示を出し続ける事。それは今回のような大規模な作戦では特に必須である行為。

 塚内は様々なヴィランと相手取ってきたその経験を、司令塔として遺憾なく発揮していた。

 

 今回の『指定敵団体死穢八斎會本部突入作戦』の発案者。それは勿論塚内であった。

 塚内はジェントルからの挑発めいたメールを受け取った後、迅速に所轄の警察に作戦を立案。

 敵は指定敵団体最大手の一つ、死穢八斎會である。数はあればあるほど良く、都内どころか県外、いや全国のヒーローに協力を要請する必要があった。

 

 しかし、当のジェントルの襲撃まで2日間しか時間の猶予がないのである。

 

 奴の指摘通り死穢八斎會の首魁である治崎廻は早くしないと取り逃がすかもしれないと聞かされればその日程に合わせる他なく。

 塚内や警察官は作戦に必須であるヴィラン退治の専門家、ヒーローを大至急でかき集めねばならなかった。

 

 ほとんどの職員らが不眠不休で言伝やHN(ヒーローネットワーク)で協力要請を取りつけていく中、塚内もまた協力要請するヒーローとしてオールマイトへの要請を考えていた。が、結局の所要請が下りることはなかった。

 塚内はオールマイトの弱体化を知る人物の一人である。彼には療養して欲しいという思いからNo.1ではなくNo.2のエンデヴァーに要請。そして更に『保須市襲撃事件』においても大きな活躍をしたオールマイトの師匠、グラントリノにも同じく要請を出していた。

 

 一時期は時間が足りなさすぎて十分な数が集められないのではという懸念もあったが、蓋を空けて見ればどうだ。二日間で要請に応じてくれたヒーローの数、50を過ぎて76名!

 エンデヴァーを筆頭にサー・ナイトアイや、エッジショットと言った有名ヒーローから、ロックロック、センチピート、イレイザーと言った少しマイナーヒーローまでがこの作戦に力を貸してくれたのだ。 

 塚内はヒーローらに深く感謝するとともに、何としてでもこの作戦を成功させようと意気込んだ。

 

 そうしてこうして作戦開始までこぎつけた今回である。

 作戦目的は奇しくもジェントルらが立案した『首魁、治崎廻及び幹部の逮捕。及び囚われている少女の救出』。相手の意表を突くという観点からスピードが何よりも肝であるこの作戦を、急ごしらえで集めた参加者全員が全員与えられた役割をこなして上手く動いてくれている。

 

『初動は静かに、後は派手に』

 

 作戦決行前に参加者にこう語ったのは塚内だったが、いささかヒーローも警察もはりきりすぎてるきらいがある。エンデヴァーなど我先に戦いの狼煙(のろし)を上げたので塚内も一瞬焦ってしまったが、今では順調に地下への侵攻を進めている。恐らくは不意打ちが効を為したのだろう。

 侵攻作戦で最もネックだった入中常居の進行妨害も、つい先程彼を捕えたとの報告が入って来ている。作戦は一つの山を越えたと塚内は確信していた。

 

「しかし安心している場合じゃないな……そちらはどうですか。ナイトアイ」

 

『現在地下2Fまで侵攻中、酒木泥泥及び身元不明の犯罪者を一人確保。データベースに無い奴だ。組織外のメンバーである可能性が高い』

 

「治崎に、人質の少女は?」

 

『確認出来ていません。恐らくは地下3Fに居る可能性が高いです』

 

「了解。地上もまもなく制圧が終わる予定です。終わり次第すぐに人員をそちらに寄越しますので、引き続き頼みます」

 

 塚内がヒーローらと共に編成したのは6班までなる警察官とヒーローの混成部隊。

 主要突入部隊である第1班~第3班までは実績あるメジャーヒーローを多く編成。残りの班は本邸周辺の取り逃がしを抑える為にその他ヒーローを配置している。特に第1班に関してはトップヒーローばかりを編成し、最も治崎らが居る可能性が高い地下への侵攻を任せていた。

 

 幸いにも作戦は塚内の予想通りに事を進めている。

 何事も問題がなければこのまま作戦を成功させる事も夢ではないだろう。

 

「それにしても警部、ジェントルの奴らが見当たらないのが気になりますね」

 

「……」

 

 塚内が唯一持つ懸念は、それ(ジェントル)であった。

 あれだけ堂々と宣言しておいて彼らの姿を見たという報告は、未だ来ていない。

 今の所彼らは動画上でも正しく約束事を守るタイプであるように思えていたため、既に侵入していると考えていたのだったが……よもや、警察は利用されるだけ利用されただけであろうか?

 

「まだ分からん。もしや地下3Fに侵入済みという可能性もある」

 

「既に地下3Fに……ですか。連日の報道や我々の追求で警戒心の高い本邸にどうやって」

 

「一番可能性として高いのは内通者だが、果たしてな……むっ?」

 

 会話中、不意に足元が揺れてバランスを崩しそうになる塚内。

 すわ、何事かと思えば庭の木々や建物のガラスも同様に振動を続けており、他警察官やヒーローらも同じ目にあったのか、一様に周りを見回している。

 まるで地震でも起きたのかと思わせるほどの地鳴。その振動は更に大きくなっていくのが分かり、とうとう立つ事が出来なくなった塚内と玉川が咄嗟に近くの松の木に掴まった所で、それは起きた。

 

「な、なにが……あぁッ!」

 

「ッ、これは……!」

 

 本邸の一部が突如、崩壊したのだ。

 丁度塚内から見て本邸奥で瓦礫が空を舞い、土煙がもうもうと巻き起こり、3Fまでなる邸宅ががらがらと崩れてゆくのが見える!

 

『ちっ、聞こえるか塚内警部。よく分からんが地下3Fで何かが起きた! 地上まで巻き込んでねえか!?』

 

 そして驚愕する塚内に内線が飛んできており、彼はすぐに我を取り戻して無線に応える。雑音こそひどかったが声の主は恐らくグラントリノだろう。 

 

「今まさしく驚いているところだ! 地上の建造物の一部が崩壊しているのが見えている!」

 

『地上部分まで崩しやがったか……本邸から全メンバーの退避を指示してくれ! こいつぁ建物ごと崩れる可能性も大いにあるぞ!』

 

「分かった! ――邸内の人員に即座に退避命令を出せ! けが人も急いで担ぎ出せ、いいな!?」

 

「はい!」

 

 塚内は手短に彼と会話をするとすぐさま指示を飛ばす。

 原因は不明だが、まずはその前に行動をしなければ無為に命が失われてしまう。それだけは避けねばならなかった。

 

(大規模すぎる破壊行為、これは治崎が起こしたのか? それにしても破壊の規模が大きすぎる、奴の個性でもこれだけの破壊行為が行えるのか――それとも苦し紛れに爆弾でも仕掛けておいたのか? 分からん。分からんが非常に嫌な予感がする……)

 

 深夜の住宅街に立て続けに響く崩壊の音に怒号。

 本邸からわっと溢れるようにしてヒーローや警察官、それに捕えられた組員らが逃げ出す光景が広がっている。

 

 塚内はその光景を見守りながらも握りしめた無線機からの応答を待ち続ける。

 はたして鬼が出るか蛇が出るか……分からないがどちらにしてもロクでもない事が待ち受けているのだと塚内は確信していた。その証拠に、どうだ!?

 

GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARRR―――!!!!

 

「……!」

 

「これは……!」

 

 何だこの不吉な声は、何だこの正気を(いっ)した叫び声は!

 

 崩壊した邸内、恐らくはその地下からなのだろう。正体不明の何かから発せられたその声が、現場に居たヒーローと警察の心を鷲掴んだ。

 作戦の成功を信じてやまなかった塚内の内心で、不安がどんどんと溢れあがっていく。

 第二の応援を呼ぶべきなのか、それとも全員で避難をすべきなのか――急速に移ろう展開にどうすればよいと考えていた――その時だった。彼が空に何かを見たのは。

 

「……?」

 

 宵闇に溶け込む黒い影が一瞬月を(さえぎ)り、壊れかけた邸宅の屋上に着地した。

 それに気付いているのは塚内一人のようで、誰一人として彼女に注目していない。

 ヒーローのいずれかが救援に入ろうとしているのか? それとも外部組織からの八斎會への応援なのか? 更なる展開に心乱されてたまるものかと、彼は玉川が持っていた双眼鏡を奪い取り、その正体を確認した。

 

 それは美しい麗人だった。

 長大な剣を背負い、頭部に小さな角の生えた銀髪の女性。

 彼女は右手にまたも美しい少女を抱えており、その少女もまた同じ銀髪――しかして顔は青白く、服の至る所を血で染め、苦しそうにしているのが見て取れた。

 

 彼女らは姉妹なのだろうか。

 しかしてどうしてこんな所に、一体何の用で。

 

 塚内が少女らの正体を測りかねていると、ふと双眼鏡越しに麗人が振り向き――そして塚内と視線が合わせられる。

 

 塚内はその瞬間、まさしく心臓を鷲掴みされたかのような錯覚を覚えた。

 

 背中からぶわ、っと冷や汗が溢れ、全身の毛穴が逆立つ。

 心臓はばくばくと今までにない心拍数を刻み、吐息が荒くなるのが分かる。

 月光に照らされた少女の瞳が宵闇の中で紅く輝き、美しい。

 しかしてその瞳の奥にあるのは『死』であると塚内は確信していた。

 本能が悲鳴を上げている。彼女と絶対に関わるなと叫んでいる。

 こんなにも遠く離れているというのに、まるで首筋に剣を突きつけられたかのような気がして、塚内は身動き一つ取る事すら出来なかった。

 

 そんな塚内の恐怖は彼女が急に興味を無くしたかのように視線を逸らした事で終わりを告げる。

 彼女はその後深く刻まれた本邸の崩壊痕に少女を抱えたまま飛び降りていったのだった。

 

「塚内警部、一体どうしたというのですか!?」

 

「……ッ! ……はぁッ、はぁッ……!」

 

 塚内は玉川に話しかけられてようやく呼吸を忘れていた事を悟る。

 あれは、なんだったんだ。あんなヒーロー、いやヴィランも見た事がない。

 あそこまで純粋な殺意を持つ危険な存在がどうしたってこんな場所に来るのか……!? と考えを言葉にすることも出来ずに動揺し、そしてかろうじて言葉をつむぐ。

 

「玉川……ッ、全メンバーに通達だ。()()()()()()()()()()に気を付けろ、と」

 

「はぁ? 銀髪の女性って……」

 

 まるで長距離マラソンをした直後であるかのように息づく塚内に、玉川は怪訝な顔をする。

 銀髪の女性とは一体誰なのか? そしてどうしてそこまで怯えた表情をするのか、そう問い(ただ)そうとしたのだが、

 

 

GGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGAHHHHH―――!!??

 

 

 不吉な声が再度住宅街を木霊し、警察とヒーローらは地下で起こっているであろう光景を想像して恐怖する他なかった。

 

 

 

 § § §

 

 

 

 地面を蹴る。街路樹を蹴る。電柱を蹴る。屋根を蹴る――

 目まぐるしく変わる景色の中、私はタルラの体にしがみつきながらジェットコースターでは絶対に味わえないスリルを存分に堪能していた。

 

 猛スピードで落下する時のひゅっとする感覚と、一気に高所へと舞い上がる押しつぶされる感触がひっきりなしにくるため、今も続く腹部のキリキリした痛みと合わせて最悪の気分だ。正直吐いてないのが奇跡とも言える。

 

 だが文句なんて言ってもいられない。

 仲間のピンチなんだ、ここで助けずに居たら私はきっと後悔する。

 あの二人を失うなんて事、今更考えられないから。

 

 ……でも正直な話をすれば、出来るなら早く着いて欲しい。

 口の中から溢れそうになる血を根性で飲み干すのももう限界だ。

 

「もうすぐ着く」

 

 そう考えていたらタルラの方から伝えてくれた。

 顔に出てましたかね……。

 

 そして彼女の宣言通り、ものの数十秒もしないうちに今やてんやわんやになっている死穢八斎會本邸、その屋上に私達は着地していた。

 

 ……本当に凄い崩壊している。あの立派な邸宅が半分くらい崩れ落ちてるし。地下まで筒抜けになっている穴が見える。

 警察官やヒーローらも崩れそうな本邸から逃げ出しているのか、わぁわぁと庭でわやくちゃになっているのが見える。どれだけ暴走したんだオーバーホール……変な薬を打ったって言ったけど個性暴走薬なんかでこんな風になるのか……?

 なにはともあれ猶予なんてなさそうだ、早く二人を助けないと……タルラ? 何見てるの?

 

 

「……いや、何でもない。掴まっていろ」

 

 うん。

 

 と頷いた直後、私達は地上3Fから地下まで真っ逆さまに落ちていた。

 急速に変わる景色。崩壊して建物の断面からは何人かのヒーロー達の姿が見える。

 中には私と目があって驚いている人も居た。そりゃ驚くよね、子供連れで現場の最深部に行くんだからさ。

 

 そして落下の最中で――今回の元凶であるソイツの姿を見た。

 

 歪に巨大化した、最早人の姿を保てていないオーバーホールの姿を。

 

 顔は巨大なペストマスクとなっており、目は白濁。

 胴体はでっぷりと肥えているかのように肥大しており、肌は赤黒く脈動している。そしてその胴体や背中からは少なくとも30本以上はありそうな程のこれまた赤黒くて長い腕が生えており、それが今も尚階下で戦うヒーローやレユニオンに触手のように伸びて襲いかかっていた。

 

 気持ちが悪い、そして明らかに個性暴走薬なんかのせいじゃない。

 

 オーバーホールは確かに原作でも化け物じみた巨大化をしていたが、あれは理性あっての行動だ。組員を取り込んで自分の体を作り変えた結果の話。奴は今も尚周りのものを取り込んで巨大化し続けている。瓦礫でも、気絶した組員でも、それこそ何でもだ!

 個性暴走薬は個性因子を一時的に暴走させる薬のため一見辻褄は合うように見えるが、あそこまで歪に、そして意識を失うほどのような副作用は起きないハズだった。

 

「……アーツか。確かにな」

 

 そして一番の違和感は――タルラさんが言うようにオーバーホールがアーツとしか思えない物を使っているという事!

 その長い腕の何本からかビームのように白い光線が飛び交っているのだ。もはや化け物というか怪獣というべきか。何というか無理ゲー臭が漂い過ぎている。

 

「タルラ……アイツをやっつけて」

 

 でも。私は立ち向かわなければいけない。

 仲間を救うためなら、どんな敵相手にだって臆さない、その覚悟はとうに決めた。

 タルラが正直どれだけの実力を持っているかは分からない。原作でもぱっとしか出ていないし性能も周知されていないけど、私の知る限り最強の駒は、タルラだ。

 

 『生ける怪物』と評されるまでの実力を、アイツにぶつけて欲しい。

 

「無論だ、指導者よ」

 

 それは、タルラさんがコチラを一瞥すらせずにそう答えたと同時の事だった。

 気付けば私達は地面に着地し、タルラさんは背中の長い剣をひゅるり、と上段に構えていた。

 

 どういう攻撃をするのだろう。と私は彼女を見上げながら伺っていたのだが、勘違いしていた。彼女の攻撃はもう、()()()()()()()()()()()

 

GGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGAHHHHH―――!!??

 

 あの歪な巨体の右肩から左腹部にかけて、大きな斬撃の痕が走っていた。

 範囲内にあった触手も半ばから断ち切られ、ぼとぼとと嫌な音を立てて落ちていく。

 

 すご……斬撃を飛ばしたの?

 あの一瞬のモーションであそこまで広範囲の……!?

 

 さしもの攻撃に、その場に居合わせている面々は驚いており、そして登場した我々を見て更に目を見開いていた。

 

「リュニ君……!」

「リュニちゃん!」

 

「何だアイツらは……!」

「またガキが増えやがったのか?! って銭湯の時の!」

「……」

 

 あぁ。ジェントル達はまだ生きていた……! 良かった……!

 でもジェントルは右肩と腹部を真っ赤に染めていて顔色も悪い……クソ。オーバーホールめ。

 私はタルラにジェントルの下まで移動してもらい、二人と顔を合わせる。

 

「何故ここへ来たリュニ君……キミはここに来ては……!?」

「そうよ、それに……っ、!? ……どうしたのその血は、リュニちゃん貴方までどうして怪我を……!?」

 

「私のことはいいの……ッ! 今はそれよりも二人が心配。それに壊理ちゃんは……?」

 

「っ、すまない。壊理君はアイツの中にまだ囚われていて……」

 

 囚われ……囚われて!? 取り込まれてではなく!?

 オーバーホールがあの子の体を材料にしてるなら最早救済は不可能だけど、いや。もしもそうだとしたらあの子の危機状況で個性が発動して、構成前に戻される可能性が……でもそうなってない!? あーもう訳がわからん!

 

「げほっ……クラウンスレイヤー、あの子がどこに居るのかは大体分かる……!?」

 

「無茶を言ってくれる……! だが探してみよう、30秒くれ」

 

 怒っているのか引っ切り無しにコチラに向かって攻撃してくるオーバーホールの触手をタルラが片手の剣だけで難なく切り刻んで防いでいる中、私もクラスレちゃんに命令を出して探させる。

 

 あの化け物の内部に居るというのならお手上げだが……!

 

「待て。少女の行方なら俺らも手伝うぞ」

 

「ヒーローの本分だ、むしろ我々に任せて欲しい所だがね」

 

 気付けば、グラントリノとナイトアイも話を聞いていたのか参戦していてくれるようだ。

 ありがたい、特にナイトアイが居るなら未来予知を使ってどうにかこうにか予測出来るんじゃないかと思っていた所だ。

 

 アイツの未来なんてもう無いも同然だが、ぶったぎった破片から情報を収集してくれれば……!

 

「――!? ……っ、分かった。壊理君の場所は、背中だ。奴の背中の中央部分!」

 

「タルラ!」

 

 と叫んだ時には私の体が急速にブレ、私とタルラはオーバーホールの背後を陣取っていた。

 スピードのせいか、鉱石病のせいか。私の口からけぽ、とまた赤い血が漏れ出たのが分かる。

 

「――シッ!」

 

 絶叫が三度、オーバーホールの巨大な(くちばし)から溢れ出す。

 見えない斬撃が再度見舞われた結果、奴の背中の大部分が削ぎ落とされていた。

 

 その切り落とされた部分にクラウンスレイヤーやグラントリノ、ナイトアイらが殺到。

 何とかして彼女が居ないかを探してゆき――そして、「彼女を見つけたぞ! 保護する!」とグラントリノがぐったりした壊理ちゃんを抱えているのを見て、私は安心した。

 OK、そうなったらもう後は醜い怪物だけだ。私も出し惜しみはしないからな……!

 

「ジェントル、ラブラバ……二人は下がっていて……! メフィスト、早く二人を治療して!」

 

「はいはい」

「リュニ君、だがキミだけにやらせるのは……!」

「そうよそれに、リュニちゃんも辛そうにして……まさか個性の副作用が……!?」

 

「……あいつを倒せるのは多分、今この中じゃ私だけだと思っている……だから私がやらなきゃ駄目なの……!」

 

 二人の制止を聞かずに私は初めて個性を全力で使う決意をする。

 あいつの、オーバーホールの力は破格だ。触れて分解、再構成。如何にダメージを与えても、与えられた部分を再構成すれば元通り。そしてそれだけでなくて今やビームも撃てる。どんなチート化け物だ。

 原作では壊理の個性で構成前に戻されてやられていたけど、今はそんな彼女に頼ることも出来ない。

 

 ならどうするか?

 

 そんなの決まっている――圧倒的火力で、ぶち潰すしかない。

 

 私はクラウンスレイヤーとWを消すと、代わりに別の兵士を召喚する。

 怪鳥Mk2×40、射撃兵×30、射撃隊長×2 砲兵×10、砲兵隊長×5!

 脳内で思い浮かんだこの状況にぴったり合った兵士たちを大量召喚。

 所狭しと至る所に現れた彼らにヒーローもジェントルたちも驚いているが知るか、知るもんか。アークナイツらしい大軍団だ。覚悟しろよクソッタレ!

 

 

「死にたくなければ、ここから逃げ出せ――ッ!」

 

 そして轟音のオーケストラが幕を開けた――!

 

 空中、地上と分け隔てなく飛び交う鉛玉が、砲弾が、あの醜いあんちくしょうめがけて殺到する。

 激しいマズルフラッシュが記者会見をしているように激しく周りで明滅し、火薬の臭いが瞬く間に周りに広がっていく。

 ヒーローもその殺意溢れた攻撃に驚いているのか退避を余儀なくされ、そして指向性の火力を向けられたオーバーホールと言えば、最早叫んでいてもそれをかき消すほどの轟音で潰され、再生した傍から弾丸や炸薬弾で体をずたずたにされてろくな反撃も出来ていない。

 

 そこに更にタルラの斬撃が飛んでいくのだ、この攻撃を耐えられる相手なんていないだろう。

 

 しかし敵もまたしぶとい。

 苦し紛れの触手が周りをうねり、そして飛び交い、ドローンが十数体、更に他兵士が約十人程度犠牲になった。

 

 そしてその駒が犠牲になるたびに、私の体調がより悪化していくのが分かった。

 腹部は痛いを通り越して熱い。頭はひっきりなしに鐘が鳴らされているかのように痛い。

 朦朧とする意識の中で、どうにかこうにか倒れてなるものかと歯を食いしばるんだけど、ふと見てみれば自分の腕にまで鉱石が出来ていた。

 

 もしかしなくても、鉱石病拡大は私の召喚した駒がやられる事で起こるらしい。

 

 あぁ畜生。早く、早くオーバーホールぶっ倒れろ。

 私が石になっちまうまでねばるつもりか? ねばり続ける悪役なんて今どき受けねえぞ。

 

 数秒が数十分のように濃縮された世界の中で、私は目を閉じてひたすら痛みに耐え続けて行き。

 そしてとうとう。自身を襲う衝撃と共に何か鈍い音がしたと思ったら、騒々しい音がすべて止んでいた。

 

「……GHA、GABA――」

 

「……」

 

 目を空けてみれば、私とタルラは肥大化したオーバーホールの頭部に立っているようだった。

 見てみれば頭部にはタルラの剣が深々と突き刺さっており、鮮血が周りに撒き散らされている。

 

 オーバーホールはついに抵抗する意思を無くしたようだった。

 奴の全身はぼろり、ぼろりと次々に崩壊していくのが分かる。

 

 あぁ……終わった、終わったぞ。

 ようやく終わったんだ。

 私達の平和を脅かす相手を仕留める事が出来た。

 はぁぁ……本当に良かった……これでまた、私もジェントルたちも平和に暮らせるよね。

 

 ひっきりなしに痛みを感じる中でもようやく一息つけて、私はふとみんなを振り返って――

 

「……キミ、は」

「……リュニ、ちゃん」

 

「……」

「……」

 

「……なんという」

 

 その時、初めてみんなから恐怖の目線を向けられている事に気付いたのだった。

 

 




タルラさんは攻撃方法不明なんで独自解釈です。
ゆるしてくだしあ。

感想・評価お待ちしております。


《レユニオン図鑑》
・『射撃兵』:
 遠距離攻撃を主体とするレユニオン兵士。
 遠く離れた敵への攻撃は出来るものの、その攻撃力は低く。
 また近接攻撃の技術は低い。

・『射撃隊長』:
 レユニオンに参加するベテラン遠距離戦闘兵。
 仮面や服装が統一されており、鹵獲あるいは非合法な手段で入手した武装を用いて身分を隠しながら行動する。
 射撃兵よりちょっとだけ強くてちょっとだけタフ。

・『砲兵』:
 レユニオンに参加する遠距離戦闘兵。
 鹵獲した軍用源石発射装置を装備し、範囲爆撃をしてくる。割と鬱陶しい。
 タガの外れたリュニはそれが源石を使った攻撃である事に気付いていない。

・『砲兵隊長』:
 レユニオンに参加するベテラン遠距離戦闘兵。
 鹵獲した軍用源石発射装置を装備し、範囲爆撃をしてくる。大分鬱陶しい。
 タガの外れたリュニはそれが源石を使った攻撃である事に気付いていない。
 

視点の切り替えの頻度は適切でしたか?

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