個性『レユニオン』な転生少女   作:なめろう

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第28話 脱出しましょう!

「……キミ、は」

「……リュニ、ちゃん」

 

「……」

「……」

 

「……なんという」

 

 オーバーホールを倒した私を待っていたのは祝福の言葉でも労いの声でもない、恐怖と警戒の目。

 でも私はどうしてそんな目を向けられなければいけないのか分からず、困惑するしかなかった。

 

「……どうしたのみんな?」

 

「……ッ」

 

 今まで出したレユニオンらをタルラ以外全てしまって、よろめきながらも彼らに向けて一歩進めば彼らの警戒心が沸き立つ感じを覚える。もう一歩進めば、更に。

 

 何で、そんな目をするの。

 だって頑張ったんだよ? 二人を助けようとして、全力でさ。

 なのに、ヒーローはともかく、ジェントルもラブラバも……どうしてそんな化け物を見るような目で私を見るのさ。おかしいじゃないか。

 

「待て、ソレ以上進むな」

 

 ……エンデヴァー。何さ、何か文句があるの?

 

「……これは貴様の個性なのか? この先程まで居た大量の人間も、ドローンも」

 

「……」

 

「先月起こったカーチェイス事件の首謀者、あれも貴様の個性による物だと考えていいのか?」

 

「待ってくれたまえエンデヴァー! あれは私が……!」

 

「ジェントル・クリミナル! 今私が話しているのはそこの少女だ。貴様ではない!」

 

 派手に攻撃したせいで廃墟みたいになった地下。

 周りでは至る所で炎が燃え立っており、それっぽい問いかけと相まってまるで映画のクライマックスシーンのようだ。

 まあ非常に残念な事に正義は向こう、悪は私なんだけれども。

 

「答えろ。さもなくば――」

 

「おい待てエンデヴァー、あの嬢ちゃんは」

 

「黙っていろグラントリノ! 見ただろうアイツの個性を。あの破壊を撒き散らす規格外の力を!」

 

 おいおい、それを、アンタが言うの?

 私もアンタも同じ人を殺せる個性じゃないか、だって言うのに酷くない?

 ただちょっと利便性が高すぎて、少しばかり犯罪を起こしやすいだけ。それだけなのに。

 

「お嬢ちゃん、いや。確かリュニと言っていたか。詳しい話を聞かせて貰いたい――同行を願えるかな?」

 

 気付けばナイトアイも、イレイザーも。コチラに向かってゆっくりと歩み寄っている。

 涙が出るほどありがたい事に臨戦態勢でだ、抵抗をするなら容赦はしないって事なのかな? まったくもって笑えない。

 

「……お願い私達を見逃して。治崎は倒したら後は何もしない。それなら文句はない筈でしょう?」

 

「駄目だ。治崎を倒したからこそ問題だ。一連の事件も含めて事情を聴取する必要がある」

 

「……ッ」

 

「おっと、動くなよ。ジェントルにラブラバ。君達も同じだ」

 

 私達がここで彼らに同行したら聴取だけじゃきっと済まない。

 ジェントル・ラブラバは捕まり。私もどこかの施設行き、あるいは研究対象として生涯を病院性活か? ……そんなの駄目だ。認められない。

 私にとっての平和の条件は、ジェントル達と一緒に平和に暮す事。

 そうしないとここまで頑張って来た意味が全部全部なくなる……!

 そうだ、私は覚悟を決めたと言ったじゃないか。ならば自分の目的のために――悪の道に染まる事を、恐れるな!

 

「消えッ!?」

 

「イレイザー! 上だ!」

 

 彼我の距離が3mを切った所で、後ろにいたタルラが私を抱えて彼の視界の範囲外へと移動させ。移動と同時にクラウンスレイヤーを召喚。

 彼女は迎撃しようとするナイトアイの攻撃を空中で避けると、私の個性を抹消させようとしていたイレイザーを組み伏せ、そのナイフを首筋に当てる。

 

「貴様、無駄な抵抗を!」

 

「無駄な抵抗をしないほうがいいのは、そっちだ……!」

 

 そして再度、唐突に周りに展開させた大量の射撃兵に、ヒーロー達を狙わせた。

 30を超える鈍色の銃口はエンデヴァー、グラントリノ、ナイトアイにぴたりと合わさっており、奴らの顔がより一層険しくなった。

 

「くっ……!」

「嬢ちゃん……」

 

「……リュニちゃん」

「リュニ君」

 

「……ジェントル、ラブラバ。二人共逃げよう? もう壊理ちゃんは救った、後はここから逃げるだけ」

 

 怖がらなくても大丈夫。怖いヒーローはもう無効化した。

 こんな場所からは離れて、またみんなで平和に……。

 

「指導者よ。見ろ」

 

「……え?」

 

 タルラ? 急になんだっていうの?

 何を見ろっていうんだ、もうこんな場所で見る物なんて……ッ!? 

 

「おいおい、今度は何だ……!?」

 

「奴の、オーバーホールの体が石化して……」

 

 ソレを見て私の息が止まった。

 最早原型を留めていないオーバーホールの亡骸、その全域に()()()()()()()()()()()()()からだ。

 びしり、べきりと体を食らうようにして増えていく鉱石は異様の一言。

 この場に居る人のうちほとんどは何が起こっているのか分かっていないが、私だけは(おぼろ)気に事態を把握していた。

 

 あれは、もしや、もしかして――……!?

 

「オーバーホールはまだ生きているのか!?」

「それにしてもどうしてこんな石に」

 

――その石に近づいちゃ駄目だッ!

 

 私は鉱石の発生する治崎の亡骸に対して新たに召喚した兵士、凶悪火炎瓶暴徒を数体召喚させて、火炎瓶を一斉に投擲させた。

 瓶が破裂して広がる大量の炎。それが今も尚鉱石化の進む奴の体を燃やし尽くしていく。

 

「何をするんだ!?」

 

「いいから動かないで! 絶対に、絶対にその石に近寄らないで……!」

 

 周りの動揺を無視して私は燃やし続ける。

 鉱石病の末期ステージであり、感染源となった奴の体を。

 そして焼き続けると共に私はある事に気付いてしまう――いや、気付いてしまった。

 

 治崎の死骸から黒色の鉱石が発生する理由。

 治崎がアーツのような攻撃を使えるようになった理由。

 

 その原因は奴が謎の薬を打ってからだとWは言っていた。

 

 そう、謎の薬だ。

 

 そんな薬、たった一つしか思い当たる節はない。

 

 ()()

 

 例の病院で助けられた時、検査と称して、体液を採取していたじゃないか。

 

 おそらく私の体液の特性に気付いて、誰かが薬にしていたんだ!

 

 この世界で唯一鉱石病に感染しているのは私なんだ、発生源は私以外ありえない!

 

「……ッ」

 

 涙が滲み出てくる。馬鹿すぎて、本当に泣きたくなる。

 

 あぁくそ。くそっ、くそがっ! なんて私は愚かなんだ! なんて私は救いようのないクズなんだ! 失敗した。私は、私は甘すぎた!

 何が感染源を広げないようにしようだ。

 何が静かに暮らしたいだ。

 そんなのもう、初動でミスっている!

 私の軽率な行動が、結果としてこの世界をメチャクチャにし始めている……!

 

「……はぁっ、はぁっ、げほっ、げほっ!」

 

「リュニちゃん!」

 

「くっ、分かった! 石には触れない、だが嬢ちゃんの体が心配だ! 早く病院に……!」

 

「うるさい……! うるさいうるさいうるさいっ……!」

 

 ジェントル達と平和に暮らしたいなんて、土台無理な話だった!

 私がこの世界で選ぶ道なんて一つしかなかったんだ!

 この鉱石病を広げさせないように、誰にも会わず、誰にも触れず――自ら焼死を選ぶ以外で、この世界は平和にならなかったんだ!

 

 こんな何もかも歪めてしまう私は、この世界には不要だったんだ――!

 

「リュニ君……君が何を心配しているのかは分からない、だが」

 

「――ジェントル、ラブラバ。教えて、治崎が使っていた薬は、一つしかなかった?」

 

「薬って……」

 

「早く答えてッ!」

 

「いや、私が見て居た限り奴はケースから取り出していたようだった。恐らくはここのどこかに転がっている筈……」

 

 もしも量産が出来ていたとしたら、本当に不味い事になる。

 この膨大な瓦礫の山の中、ケースを探す時間も正直ない上、あの病院へ行って、私のありとあらゆる痕跡を全て抹消しないと駄目だ……あぁぁもう!

 

「貴様、あの石の正体はなんだ!? 貴様が探す薬とは何の事を言っている!?」

 

「――鉱石病と呼ばれる、致死率100%の感染症。その元凶だ。それは緩やかに体内を侵食し、感染者の体を鉱石へと作り変えていく」

 

 タルラ……。

 

「指導者――リュニと我々も全員が感染者だ。感染者は最終的に()()()()()()()のように全身を鉱石へと変貌させ新たな感染源となる」

 

「ッ、ではその薬というのは」

 

「……恐らくは感染者の体液、私も知らなかったけど、感染者の体液は、大幅に個性を強化するみたいだね」

 

 どういう理屈かは知らないけど、それはもう治崎がこうなっちゃうくらいに効果てきめんなんだろう。

 ただし摂取した結果暴走してしまって意識まで失っちゃうと。そんなの薬どころか、ただの毒だ。最終的に感染症を撒き散らすなんてさ。

 

「分かった? だから私達に近づかないで。この病気は一度でもかかったら絶対に治らない」

 

「しかし、そんな病気は一度も聞いた事が」

 

「この腕を見れば分かる? 私の全身も今まさに鉱石になりかけてるの」

 

 私の右腕に歪に生えた3cm大の鉱石を見せてヒーロー共を黙らせる。

 そうだ。そういう顔になるだろうね。

 ヒーローだって救えない相手は居る。

 そしてこの世界に脚を踏み入れた直後から、私は救う対象じゃあなかったんだ。

 

「――ねえヒーローさん。一生のお願いです。もしもケースや変な薬がこの邸宅で見つかったら絶対に破棄して。跡形もなく壊して、そして燃やし尽くして」

 

「……」

「……」

 

「その約束が守られない限り、私はあなた達に敵対し続けるから」

 

 この世界に私というイレギュラーは不要だった。

 その痕跡を全て探し出して消すのが、私の新しい目的――いや、(つぐな)いだ。

 鉱石病について研究なんてさせてあげないし、利用なんて絶対にさせるものか……!

 

「ジェントル、ラブラバ」

 

「……分かった。ラブラバ、帰ろう」

「えぇ……」

 

「待て……貴様らァッ!」

 

 ジェントル達に離脱を促し、一足先に彼らがこの場を離れるのを待ってから私もまたタルラに抱えて貰って離脱をする。

 後ろで騒ぐエンデヴァー達の声もそして崩壊した八斎會本邸も急速に遠ざかっていった。

 

 

 

 

 風吹き荒れる景色の中で、私はタルラに精一杯掴まって考えていた。

 

 これからやる事。これからしなければならない事。

 そしてこの世界で私という悪が残してしまった、爪痕の事。

 罪悪感が今更私の全身を重苦しくさせ、体調の悪さと相まって意識を失わずにいるのに精一杯だ。

 

 私は必死に脳内で謝罪を繰り返す。

 許される訳もないのに許しを求めて、相手も定めずひたすらにごめんなさいと。

 みじめでちっぽけな一人の転生者、その軽率な行動がもたらしたバタフライ・エフェクトに恐怖して。許しを乞うように何度も謝り続けた。

 

 

 そして……大きく咳き込んで自らの衣服が真っ赤に染まったのを見て、とうとう私は意識を飛ばしてしまうのだった。

 

 

 

 




次で多分死穢八斎會編ラストです。

感想・評価お待ちしております。

《レユニオン図鑑》
・『凶悪火炎瓶暴徒』:
 どこからやってきたのか不明な者達。
 通常の火炎瓶暴徒よりも手口が狡猾。
 簡素なマスクで身分を隠し、火炎瓶を携帯している。
 目標範囲に破壊をもたらし、粗末な装備で暴れまわっている。
 これは源石由来じゃないので安心してください。

視点の切り替えの頻度は適切でしたか?

  • 丁度いい感じ
  • 少し切り替えが多いのでは?
  • 切り替え過ぎ
  • むしろ主人公目線だけでいい¥
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