キュゥべえと名乗った存在、
その報告のためにキュゥべえは主である女性の下へ向かう。
マスコットキャラクターらしく表情を作らず接するのは中々に困難を極めた。話していて笑ってしまいそうになった事が多々あった。
更紗帆奈。両親に迫害され、虐めにも遭っていた少女。願いの内容は簡単で、その存在を抹消するくらいなら造作もない。とは言え、本当に消せたのかと言うとそれは異なる。確かに普通人たちの記憶から消えたかもしれないが、個人情報をさらに詳しく調べて行けばその人物が生まれた履歴なんかは残ってしまっているだろう。
最も、更紗帆奈はそこまで調べようとはしないだろう。学校でいなくなっていた事を確認したことで、存在が消えたのだと確信してしまっているからだ。
「上手くことは運んでいるようだな、インキュベーター」
指定された場所に向かうと、別の空間に転移させられる。
ガイアのアバターが存在するといわれるウルドの泉が醸し出す清浄さとは正反対の不浄の沼。その沼の上にその女は立っていた。
見た目こそガイアのアバターと似た……最も、そのガイアのアバター自体がいくつもの容姿を取る為確定ではないものの、その少女と双子と言われてもおかしくない少女だ。
その姿は香奈が招かれ話した少女と瓜二つ。目の前の少女は、最初に香奈を招いた時は上手く暗示をかけたものだと我ながら天晴笑いだす。
「シャドウガイア様」
キュゥべえがシャドウガイアと呼んだ人物。ガイアのアバターを光とするならば、シャドウガイアは闇、或いは影と言うべき存在だ。
七瀬市を舞台としたクエスターと奈落による大抗争。その果てに、ガイアのアバターは闇の太母エキドナに一部の力を奪われた。クエスターたちに倒される直前に生み出した娘は力を継承し、生まれながらにしてガイアの一部であるシャドウガイアはある意味で繋がっており、不可分となっている。
シャドウガイアの力で作り出された特別なアビスシード、シャドウガイアの瞳を渡された者はダークレジェンドと言う下僕へと変わる。
更紗帆奈が受け取った、魔法少女の変身アイテムだと言う宝石、ソウルジェムの正体がこれだ。既にその命はシャドウガイアの瞳へと内包され、同化しており、これが砕けた時、更紗帆奈は死に至る。
純粋なクエスターに近い存在として生まれ変わった更紗帆奈は同じクエスターに近づかせるのに丁度良い手駒であった。その力は奈落の力を知らずのうちに感染させ、やがて絶望はクエスターの持つシャードをも飲み込み、新たな存在へ変えるだろう。
「インキュベーター。引き続き神浜市での活動を命じる。オレを楽しませてくれよ?」
「仰せのままに……」
ブルースフィアへ再び現れたキュゥべえは神浜市へ戻ると、ああ、悪いね更紗帆奈と心にもない言葉を浮かべた。
インキュベーターに渡されたシャドウガイアの瞳は、新たな
「この国では、成長途中の女性のことを『少女』って呼ぶんだろう? だったらやがて魔女になる君たちのことは、『魔法少女』と呼ぶべきだよね」
インキュベーターはかくて嗤う。