マギアルシャード   作:椎名真白

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加護

 帆奈と瀬奈、響きが似てるね何て言うみことは帆奈のことを帆奈ちゃんと、対し帆奈は名前で呼ぶのが恥ずかしかったのが瀬奈と呼び捨てで呼ぶ事となった。みこととしても、似た響きの瀬奈帆奈と呼び合う事が気に入ったらしく、その場の流れもあって二人は交流をするようになる。

 一人で戦うのは不安だから協力したい。みことの申し出は帆奈にとってもありがたい内容だった。何せ戦いの中で全く手も足も出せなかったのだから当たり前だ。

 やはり戦い方を理解しておかなければならないと、キュゥべえを探してみたけど出てこない。突然出てくる癖にこういう時に限って見つからないのだから使えない白タヌキだ。

 そしてみことはキュゥべえを知らないと言う。何だそれは。

 

「キュゥべえ……って、昔の時代劇に出て来そうな名前だね~」

「ほんとに? ほんとに知らないの……?」

「うん!」

 

 まじかーと面食らった顔をする。なら願いを叶えて貰えた自分は特別なのだろうか。むしろ逆かもしれない。他のクエスターを知らないのだから、みことだけがキュゥべえを知らない可能性もある。

 もしくは別の姿をしているとか? 一応詳しく見た目も描いて再度訊ねる。我ながら上手く描けた。

 

「わっ、可愛いね~っ! 魔法少女ってそういう……?」

「ち、違うから! あたしの妄想とかじゃなくて、ほんとに契約したんだって……」

「分かってる分かってる!」

「その顔は分かってない顔だ……」

 

 そんな風に話しながら、互いにおかしくなって笑い合う。

 帆奈とみことが出会ってから結構な日にちが経った。既にこの段階で二人には信頼関係が出来ており、最初はみことの事を利用するだけしてやろうと思っていた帆奈の中にも、愛情と言うべき感情が芽生えていた。

 みことから幾つか技術も伝授して貰い、何とか戦う事が出来ている。そんな中、あの奈落の使徒(アポストル)、蛙のダークレイスと再戦する機会が訪れた。

 

「ここで会ったが百年目!」

「百年も経ってないでしょ」

 

 と、みことに冷静にツッコミを入れつつも警戒する。この世界には本当にここで会ったが百年目をしたクエスターがいるとかいないとか。百年振りとも言う。

 今までは下っ端とばかり戦ってきた。だが、こいつは違う。大物だ。クエスターが持つという加護の力抜きに勝つのは不可能だろう。

 しかし、未だに帆奈の加護は判明していない。みことの加護であるオーディン、ブラギ、イドゥンはどれも使い勝手が良いものらしく、この奈落との戦いでも存分に効果を発揮した。一度死んだと思った帆奈も息を吹き返した時には驚いたものだ。

 イドゥンの加護で現世へ舞い戻った帆奈であったが、奈落の使徒(アポストル)が加護を残す中、みことは全て使い切ってしまっている。

 そんな中、未だ残していたニョルドにより二人は絶対絶命の危機に陥った。

 

「この……ままじゃ……っ!」

 

 オーディンがあれば、そんなたらればの時の事を考えた帆奈のソウルジェム……みこと曰くシャードが光り輝いた。

 するとどうだろうか。奈落のニョルドを消し去ったではないか。

 

「まさか、オーディン!?」

「クッ……加護が使えないものかと思っていれば……!」

 

 ここぞとばかりに反撃に転ずる二人。致命的な一撃をみことが与えたかに思えたがしかし奈落の使徒(アポストル)は死の間際にタケミカヅチと言う受けたダメージを跳ね返す加護を使いみことを道連れにしようとする。

 オーディンは既に使ってしまった。ブラギで回復できれば……帆奈がそう考えると、再びシャードが輝いた。言った通りにブラギが発動し、オーディンを回復。そのままタケミカヅチを無力化し、みことの一撃が奈落の使徒(アポストル)を倒し切ったのだ。

 

「やったね帆奈ちゃん! オーディンにブラギか~、名前の響きもそうだし、私たちって似た者同士だね!」

「……そうかな……」

 

 確かに加護はそっくりだ。けれど、人として似ているかと言うと、光と影くらいに違いがあると帆奈は思う。

 それに加護も……みことと帆奈の戦い方は結構な違いがある。だからこそ、加護が似通っているのに違和感を覚えたのだ。

 

 帆奈の加護がみこととは違う。その証拠はすぐに見つかる事となる。

 

 ある日のこと。珍しく一人でいた帆奈は、見つけてしまった奈落の結界に飛び込み、そこで別のクエスターと出会う事になった。

 

常盤(ときわ)ななかと申します。以後、どうぞよしなに」

 

 はだけた和服の下に洋風の衣装を着ているクエスターだった。筒形の鞘の両端に長い剣と短い剣をさした、独特の形状の日本刀を武器にしている。

 どうやらななかも偶然この結界を見つけたらしく、帆奈は協力して結界の主であるダークレイスを叩く事となった。

 奈落の使徒(アポストル)と違い、奈落の種子を芽吹かせただけのスペクターはそこまで強くない。けれども中々に侵食されていたようで、加護の力も使い抵抗して来た。

 その加護はオーディンで無力化したものの、ななかは奈落によりダメージを受けてしまう。

 

「あなたの攻撃は中々に効きました。ですので……お返ししようと思います」

 

 剣神フツノミタマの魂を斬る力を降ろしたななかの刀は、今まで受けた攻撃のダメージを乗せ、さらにトールの加護も加えた神なる一撃がスペクターの中に芽吹くアビスシードを粉々に砕き、救済した。

 

「すっかり夜も深まりましたわね。帆奈さん、この度は大変助かりました」

「あんたにお礼を言われるほど活躍してないけどね……ほとんどあんた一人で倒しちゃったし」

「そうでしょうか? 帆奈さんの加護が無ければ死んでいたかもしれません」

「一回くらい死んでも何とかなるでしょ」

 

 もうこの時点で思考がクエスターに染まってきたのか、一度死んでも大丈夫、でも一度死んだら次は無いからやっぱり大丈夫じゃない、なんて考えになってきていた。

 クエスターの持つシャードは宿主であるクエスターの危機を察知し戦闘不能を回避し、さらに身体能力を極限まで強化するという性能を有している。

 これが無ければ蛙の奈落の使徒(アポストル)との戦いで加護があっても帆奈は死亡していたし、みことが決定打を与える事も出来なかった。

 今回の戦いでななかはブレイクすらしていなかったのだから、もし帆奈がいなくても余裕で勝てたように思える。

 

「このお礼はまた後日」

「あ……うん……いや別にお礼とか……っていないし」

 

 何だかお礼はお礼でもお礼参りされそうで怖いんだよなあと帆奈は思った。

 

 そして後日、みことと共に奈落との戦いに身を投じていたところ、加護に変化が見られた。ななかの使っていた加護、トールとフツノミタマが何故か使えたのだ。

 これはおかしい。明らかにおかしい。オーディン、ブラギを使おうとしたら使えなかった。もっとおかしい。

 そこで帆奈は自分の加護が他者の加護を上書きし使えるようにするものだと理解した。その上で、もっと詳しく加護について調べるべきだと思った。

 それから何度か別のクエスターと一緒に戦う機会があった事で、帆奈の加護がやはり他者の加護を上書きするものだと言う裏付けが取れた。

 

「つまり、色んな加護が使い放題ってこと? すごーい! 帆奈ちゃん凄いよ! っていうか……楽しそー!」

「別に楽しかないけど……それに、ちょっと他の加護も使ってみたけど、あんたの加護が一番使える」

「使える……?」

「便利だってこと」

 

 帆奈の上書きの加護は意識した相手の加護を全てコピーすることが出来る。しかし変えてから一定期間は変更が不可能らしく、ここぞと言う時に思う様にいかない事も多かった。

 特に帆奈はどちらかと言うと後方支援が得意な構成だ。日々の戦いの中で基本的な魔法戦術も使えるようになったことで、戦闘ではみことが前衛、帆奈が後衛になる事が多かった。その戦いに慣れてしまった事もあり、相手の加護を好きな時に消せるオーディン、どんな加護でも回復できるブラギ、死した者を蘇らせるイドゥンは使い勝手が一番良く、重宝していた。

 勿論トールなどの他の加護も強い。特にみことは上記した三つの加護の構成なので、前衛だと火力不足が否めない。帆奈がトールを覚えていれば、それを補うだけの火力は出せるが……奈落と戦う中でトールによる支援をしようとしたところ、それをオーディンされみことがオーディンしそこをブラギされたオーディンでオーディンされみことがブラギでオーディンを回復した上でオーディンしたのに奈落はブラギを二個持っていてまたオーディンをブラギされてオーディンをオーディンされるというおでん合戦を見せられた。やはりオーディンブラギは正義だと帆奈は思った。

 時にソロで戦わないといけないこともあり、何かと融通が利くこの加護構成はやめられないのだ。そんなわけで、上書きできる加護であるが、帆奈の加護はオーディン、ブラギ、イドゥンだとして同じクエスター内で広まっていった。

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